ベッドサイドのフレンドから健康アドバイザーのみんなへ☆:ホスピタルラジオの野望
BMJ 2024; 387 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.q2788
ホスピタルラジオは、病棟での交友関係から、地域社会に健康とウェルビーイングを伝える放送へと進化している、とリチャード・ハーリーは指摘する。
general practitioner: GP のビクトリア・ウィルソンは、病棟を訪問して音楽のリクエストやお手紙を受けつけた後、ホスピタルラジオ・エクセター (エクセター: イングランド南西部の都市) で毎週生放送の番組を担当している。「患者と交流するいい方法です。患者さんの中には、おしゃべりはしたいけれど、曲のリクエストはしないという人もいます。でも、彼らが会話を楽しんでくれたなら、それは同じように価値のあることなのです」。
ウィルソンはこう説明する。「患者は雑誌や本を持っていることが多いのですが、具合が悪いときには、ベッドで目を閉じて何かを聴く方が、エネルギーが少なくて済むかもしれません」。
病院放送協会は、「患者の回復を助け、すべてのリスナーに健康とウェルビーイングを促進する 」ことを目的として、英国の 170 の放送局(ほとんどが慈善団体)とウィルソンのような数千人のボランティアを支援している。
今でも多くの患者が病院のベッドサイドでラジオを聴いている。2024 年 11 月現在、英国全土で 1 日平均 1231 人、1 人 6.2 時間となっている。しかし、壊れたベッドサイド・ユニットは交換されないことが多く、病院のラジオは FM や DAB(digital audio broadcast デジタル音声放送)、オンライン、アプリやスマートスピーカーで聴けるようになってきている。患者によっては自分のデバイスを持っていなかったり、使うのに苦労したりすることもあり、ラジオ局は資金調達をして病棟にラジオを配布することもある。
多くの放送局は NHS の敷地内で運営されているが、スペースの需要が高いため、戸棚 (cupboard) の中で運営されることが多い。しかし、最近では地域にスタジオを持つ放送局も増え、医院やケアホーム、より広い一般市民に向けて放送するところもあり、健康とウェルビーイングに関する番組やメッセージも増えている。
患者を元気づけるベッドサイドに友人がいることは、ホスピタルラジオの第一の目標であると長い間言われてきた。病院放送協会のサム・スメット評議委員長は言う。「患者とボランティアとの個人的で感情的なつながりが、患者を元気づけ、その日一日を少しでも良くしてくれることを願っています」。
病棟から直接放送している局もある。オックスフォードのラジオ・チャーウェルが生放送している子供向け番組では、ボランティアがベッドサイドでゲームをしたり景品を配ったりしている。大人向けの別の生放送クイズ番組では、さまざまな病院の現場が競い合う。「マイクを持った病棟の訪問者が患者のチーム・キャプテンになります。マイクを持った病棟の訪問者が患者のチームのキャプテンになります。 かなりの戦いになることもあります」。
病院放送協会が委託した 2016 年のレビューは、来年アップデートされる予定だが、ホスピタルラジオは、娯楽、社会的交流、帰属意識を患者に提供し、患者の話や好みを聞くことを可能にすることによって、入院中の退屈、孤独、不安、見当識障害、非人格化に対抗するのに役立つかもしれないと結論づけている。入院患者の心理社会的ニーズを満たすことは、入院期間を短縮し、コストを削減することにもつながる。
パブリックヘルスについての情報
COVID-19 のパンデミック規制が開始された 2020 年、マット・ハンコック保健相は下院で次のように述べた。ホスピタルラジオは常に重要であるが、訪問者が病院に入ることができない場合は、さらに重要である。司会者やボランティアの多くは、自宅から放送するために自分で機材を購入した。チャールズ皇太子や歌手のジェームス・ブラントは、専用の番組を主催した。
放送局はまた、パブリックヘルスの情報や最新の規制を患者に広めるための準備も整えた。例えば、ラジオ・ホートンは最近、血圧キャンペーン「Know your numbers!」や、10 月の禁煙を奨励する「Stoptober」を特集した。
病院放送協会は、元 BBC レポーターのドミニク・アークライトが専門家や有名人と健康に関する話題について話す「ヘルス・トゥデイ」などの番組を加盟局に提供している。「The Word on Health」 は 21 年間、メンタルヘルス、予防接種、検診プログラム、感染症対策などのトピックについて、ひとくちサイズの知恵を提供してきた。「10 Today」は、10 分間の運動やストレッチのクラスを通じて、高齢者に活動的でいることを奨励している。また、各局は独自の健康やウェルビーイングのコンテンツを制作しており、Age UK などのトラストや慈善団体からのお知らせを放送することもある。
バンベリーの Radio Horton で毎週番組を担当しているスメットは、"いつもそこにいる there all the time "スタッフの興味を引くような番組を、放送局はますます追求するようになっていると言う。ラジオ・ホートンは、例えば、トラストの職員表彰を取り上げたことがある。
サッカー解説
英国のホスピタルラジオは、1920 年代にヨーク病院で始まったと病院放送協会は言う。最初の動機は、試合を見に行けない患者にサッカーの解説をすることだった。病院放送局は世界中に点在しているが、「非常に英国的なものです」とピネル氏は言う。病院放送協会はフランスとオランダの放送局の立ち上げを支援し、オーストラリア、ブラジル、アメリカの病院からも問い合わせがあった。
英国の放送局は、スポンサーからの資金援助と地域社会でのイベント開催によってサービスを維持している。ラジオ病棟のボランティアを経験した患者は、「何かお返しがしたい」と、回復後にボランティアになってくれることもあると彼は言う。
ヴェロニカ・ブロムヘッドは定年退職後、ラジオ・ホートンのボランティアとして、患者のラジオやヘッドホンのセットアップを手伝ったり、リクエストを受けたりしている。15 歳のとき、彼女は盲腸破裂で入院していた。「本当に具合が悪かったんです。私のようなラジオ・ボランティアが、レコードをかけてほしいかどうか尋ねてきたんです」。ブロムヘッドは、ベイ・シティ・ローラーズの I only want to be with you を流してほしいと頼んだ。「彼らはそれをかけてくれたんです。それは私をこの上なく勇気づけてくれました。」彼女は自分がボランティアになるチャンスに飛びついた。「自分の気持ちを思い出したの。入院中は昼も夜も長い。眠れなくても、私たちの放送局は 24 時間ついています」。「ラジオは患者さんやスタッフに元気を与えてくれます。たった一人でも、その日一日が楽しくなるのなら、私は自分の仕事をしたことになるのです」。
サイモン・ティドマーシュはコベントリー・ホスピタル・ラジオの司会者である。ホスピタルラジオが人気なのは、超地域密着型だからだと彼は言う。彼は、ラジオ業界に入るきっかけとして、2011 年にボランティアを始めた。ジェレミー・ヴァイン、フィリッパ・フォレスター、ジャッキー・オートリーなどのプレゼンターがこの道を歩んできた。BBC のニュース・時事問題の司会者であるアンドリュー・ピーチは、キャリアの初期にバーミンガムの BHBN 病院ラジオでボランティアをしたことで、「ラジオについて最も重要なことを教わった 」と言う。
健康とウェルビーイングの促進
スマートフォンや音楽ストリーミングサービスが普及し、ここ数十年で放送局数が減少しているにもかかわらず、ホスピタルラジオはその価値を再認識している。患者やスタッフにとってのホスピタルラジオの価値を認識していないトラストもあり、放送局が閉鎖されることは「本当に悲しく、つらいことです」とスメットは言う。
「ラジオ放送が始まったときと同じように、今日もラジオは重要なのです」とピネルは言う。「健康とウェルビーイングを促進する、より広範なサービスへと変貌しつつあります」。スメットは、「健康とウェルビーイングのコンテンツを共有し、精神的あるいは肉体的な健康増進に役立つ地域社会の活動に対する認識を高めることで、NHS の負担を減らすことができる」と考えている。
病棟を越えて一般に放送することで、ホスピタルラジオは、地域ケアや virtual ward (NHS が提供する在宅医療) にいる患者や、最近退院した入院患者など、つながりや健康に焦点を当てたメッセージから恩恵を受けられる患者を増やすことができる、と病院放送協会のレビューは結論づけた。
virtual ward
https://www.england.nhs.uk/virtual-wards/
ウィルソン医師は、リスナーにもっと多くの臨床情報を提供したいと考えている。「ただ、それをうまく取り入れられるかどうかが問題です」。病院ラジオとボランティア活動に関連して、彼女は言う。「患者にとって本当に良いサービスです。本当にやりがいのあることです」。