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内分泌代謝内科 備忘録

内分泌代謝内科臨床についての論文のまとめ

福島原発のメルトダウンでどのくらい癌が増えるのか?

2024-03-23 22:08:21 | 公衆衛生
カルフォルニア大学バークレー校特別講義エネルギー問題入門 (楽工社 2014)

福島原発のメルトダウンでどのくらい癌の発症率が増えるのかを試算しているのが興味深い。

広島·長崎の被爆者の過剰発がん症例の研究から、250 mSv の放射線に曝されると発がんの可能性は 1%、500 mSv で 2%、750 mSv で 3% 増加することが知られている。なお、何もなくても癌の発症率は 20%ある。つまり、被爆しなくても私たちは 20%の確率で癌になる。

より低線量でもこの比例関係が成り立つのかは不明だが、ひとまず成り立つと仮定している。

観測された最も高い線量は 220 mSv (平均値はもっとずっと小さい) なので、仮にこの最も高い線量の放射線に曝されながら避難しないで生活し続けた場合、癌の発症率は 0.88%増加する。この確率を域内の人口 22,000人に乗じると 194名。実際には速やかに避難は行われ、平均線量は上の値よりもずっと小さいのでこの推計値は相当に「盛って」いる。

周辺の地域は平均線量が 15 mSv なので、癌の発症率は 0.06%増える。この地域の人口は 4万人なので、0.06%×4万=24人のがん患者が増える。この地域の人々も実際には速やかに避難しており、上記の数字は何も対策をしなかった場合の推計であることは注意が必要。

おそらく癌が増えたとしても 100人以下であり (最大線量ではなく平均線量を用いて計算した場合の推定)、その多くは比較的予後の良い甲状腺癌だろうとのこと。

エネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義 https://amzn.asia/d/3dJVpID

ノンアルコール飲料の提供でアルコール摂取量が減る。

2023-10-13 14:27:01 | 公衆衛生
ノンアルコール飲料の提供がアルコール摂取に及ぼす影響:ランダム比較試験
BMC Medicine 2023; 21: 379

目的
ノンアルコール飲料が過度の飲酒者の飲酒に影響を与えるかどうかを検証すること。

背景
過剰なアルコール摂取は世界的な公衆衛生問題である。2020 年には、推定 13 億 4,000 万人(男性 10 億 3,000 万人、女性 3 億 1,000万人)が有害な量のアルコールを摂取し、世界中で年間 300 万人以上がアルコール関連の問題で死亡している。

世界保健機関(world health organization: WHO)は、過度の飲酒はアルコール依存症などの健康問題を引き起こすだけでなく、家庭内暴力や飲酒運転による交通事故など、他の深刻な問題にもつながると主張している。そのため、アルコール飲料の値上げや課税、認定店のみでのアルコール販売許可、未成年者の飲酒や飲酒運転に対する罰則強化など、エビデンスに基づいた対策を推奨している。

日本は飲酒に関して比較的寛容である。例えば、一部の飲食店では「飲み放題」制度があり、アルコール飲料は 24 時間、年中無休で購入できる。このような状況を改善する施策の必要性は、国際的な報告書でも指摘されている。

日本では、日本の一次予防戦略である「健康日本 21」や「アルコール健康障害対策基本法」の施行により、過度の飲酒を減らす努力がなされてきたが、その効果は不十分であった。日本における「生活習慣病のリスクを高めるアルコール量」は、男性で 40 g/日以上、女性で 20 g/日以上の純アルコール摂取量(以下、飲酒量)と定義されている。

2019 年には、2010 年と比較して、上記の量を飲酒する人の割合は、男性では増減がなく、女性では有意に増加したと報告されている。健康日本 21 の重要な目標のひとつは、生活習慣病のリスクを高める量の飲酒者を減らすことであり、それが達成されていない以上、さらなる対策が必要である。

これまで議論されてきた戦略のひとつに、低アルコール飲料やノンアルコール飲料の利用がある。ノンアルコール飲料は、アルコールを含まないアルコール風味の飲料である。アルコール飲料の代替品であり、理論的には、アルコール飲料に取って代われば、公衆衛生上の利益につながる可能性がある。

WHO は、「アルコールの有害な使用を減らすための世界戦略」において、アルコール業界に対し、製品のアルコール含有量を減らすなどして、アルコールの有害な使用を減らすことに貢献するよう要請している。Rhem らは、低アルコール飲料やノンアルコール飲料がアルコールの有害な使用に与え得る影響として、以下の3つを挙げている: (1)標準的なアルコール飲料を同様の低アルコール飲料に置き換えることで、摂取する液体の量を増やすことなく、アルコール含有量の低い飲料を摂取できる可能性がある、(2)アルコール飲料を一定期間ノンアルコール飲料に置き換えることで、飲酒者の平均エタノール摂取量を減らすことができる可能性がある、(3)低アルコール飲料やノンアルコール飲料を摂取することで、禁酒していた人が飲酒を再開する可能性がある。したがって、ノンアルコール飲料は、過度の飲酒者のアルコール消費を減らすための効果的な手段となりうる。

現在、ノンアルコール飲料の効果に関する証拠は限られており 、ノンアルコール飲料の提供がアルコール消費に直接影響するかどうかに関する研究は不十分である。著者らは、アルコール依存症を除く過度の飲酒者を対象としたランダム化比較試験で、この疑問を検討した。アルコール消費を減らすための効果的な方法を検証することは、個人に対する介入を開発するためだけでなく、世界的な戦略や政策立案などの地域社会へのアプローチを策定するためにも非常に価値がある。


研究方法
20 歳以上でアルコール依存症と診断されておらず、週に 4 回以上飲酒し、その日の飲酒量が男性で 40 g 以上、女性で 20 g 以上の参加者を募集した。

参加者は、乱数表を用いた単純無作為化により、介入群と対照群に無作為に割り付けられた。介入群では、12 週間にわたり 4 週間に 1 回(計 3 回)非アルコール飲料が無料で提供され、その後 20 週間までアルコール飲料と非アルコール飲料の摂取量が記録された。アルコール飲料と非アルコール飲料の消費量は、過去 4 週間のデータを記録した飲酒日誌に基づいて算出された。

主要エンドポイントは、12 週目の過去 4 週間の総アルコール消費量のベースラインからの変化とした。参加者には群分けの盲検化は行われなかった。


結果
54 名(43.9%)が介入群に、69 名(56.1%)が対照群に割り付けられた。介入群では脱落者はなく、対照群では 2 名(1.6%)であった。

アルコール消費量の変化は、第 12 週時点で介入群 -320.8 g(標準偏差 [standard deviation: SD]: 283.6)、対照群-76.9 g(SD: 272.6)であり、有意差が認められた(P <0.001)。第 20 週(介入終了から 8 週間後)でも、その変化は介入群で -276.9g(SD: 39.1)であり、対照群の -126.1g(SD: 41.3)よりも有意に大きかった(P <0.001)。

図: ベースラインからのアルコールおよび非アルコール飲料の消費量の変化
https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-023-03085-1#Fig2

12 週目の非アルコール飲料消費量の変化とアルコール消費量の間のスピアマン順位相関係数は、介入群でのみ有意に負であった(P = -0.500, P<0.001)。試験中に有害事象の報告はなかった。


議論
この研究では、12週間の無料ノンアルコール飲料の提供は、アルコール消費を有意に減少させた。介入群では、この効果は介入期間中だけでなく、12週間の介入終了後8週間まで持続した。本研究は、ノンアルコール飲料の提供がアルコール消費を減少させることを示唆した最初の研究である。

12 週目の時点で、アルコール消費量は 1 日平均 11.5 g 減少した。一方、1 日あたりのノンアルコール飲料の平均摂取量は 314.3 mL であった。相関分析により、アルコール消費量と非アルコール飲料消費量のベースラインからの変化には有意かつ中等度の負の相関が認められたが、これは介入群のみであった。このことは、介入群におけるアルコール消費量の減少が、アルコール飲料を提供されたノンアルコール飲料に置き換えたことによる可能性を示唆している。以前の研究では、ノンアルコール飲料の入手可能性が高いほど、アルコール飲料ではなくノンアルコール飲料を選択する確率が高くなることが示された。

しかし、介入群におけるアルコール摂取量の変化と非アルコール飲料摂取量の相関は、8 週目以降徐々に弱まり、20 週目には有意な相関は消失した。その理由は不明であるが、0 週目、4 週目、8 週目に提供された非アルコール飲料の一部が、12 週目以降も介入群の参加者に消費された可能性がある。このように、アルコール飲料の代替効果は一定期間持続したが、入手可能な非アルコール飲料がすべて消費されると、その効果は弱まった。研究期間中、参加者はアルコール飲料も非アルコール飲料も購入することを制限されなかったが、参加者からの情報は消費量のみであったため、消費された非アルコール飲料が提供されたものなのか、自発的に購入したものなのかを区別することはできなかった。

結論
ノンアルコール飲料の提供はアルコール摂取を有意に減少させ、その効果は介入後 8 週間持続した。

https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-023-03085-1

加糖飲料が世界の肥満と慢性疾患に与える影響

2023-09-10 07:12:58 | 公衆衛生
加糖飲料が世界の肥満と慢性疾患に与える影響
Nat Rev Endocrinol 2023; 18: 205-218

加糖飲料(Sugar Sweetened Beverages: SSB)は、食事における添加糖の主な摂取源である。SSB の習慣的摂取は、体重増加や、2型糖尿病、心血管疾患、一部のがんのリスク上昇(SSB の摂取頻度が低い場合との比較)につながるという確固としたエビデンスがあり、SSB は政策や規制の明確なターゲットとなっている。

本総説では、SSB と肥満、代謝·循環器疾患およびがんとを関連づけるエビデンスに関する最新情報を提供する。著者らは、糖類が肥満や代謝·循環器疾患およびがんの発生に寄与する生理機序について議論する。

また、糖摂取量の世界的傾向や代替飲料(人工甘味飲料を含む)、さまざまな国や地域で行われている SSBs を対象とした政策についても考察する。

コホート研究や臨床試験から得られた強力なエビデンスは、体重増加や循環および代謝疾患との関連において SSBs が病因的役割を果たすことを裏付けている。

低・中所得国においては SSB 消費量の増加は都市化と経済成長に関連している。そのため、SSB の摂取量を減らし、肥満と慢性疾患の世界的な負担を軽減するためには、より一層の政策努力が必要である。

要点

SSBs は世界的規模で消費されており、多くの高所得国では遊離糖 (free sugar, 添加糖に蜂蜜、シロップ、フルーツジュースに自然に含まれる糖を加えたもの) の 1 日推奨摂取量を超えており、低・中所得国でも増加傾向にある。

前向きコホート研究や臨床試験により、SSBs と体重増加および慢性疾患のリスクとの間に病因学的関係があることを示す強力な証拠が得られている。

SSBは、1. SSB 自体のカロリー、2. ブドウ糖の急速な吸収によって引き起こされる高インスリン血症、そしておそらく 3. ドーパミン作動性報酬系の活性化によって体重増加を促進する。

SSBは、1. 体重増加、2. 糖毒性によって引き起こされる危険因子の発現、3. SSBに含まれる糖由来の過剰な果糖が肝臓で代謝されることにより、慢性疾患リスクの原因となる。

様々な統治レベルにおいて同時に採用できる、1. 社会規範を変え、2. 個人や集団における SSB の摂取量を制限するための政策や規制戦略がいくつか存在する。

様々な集団においてエビデンスが一貫していることと SSB の摂取量が世界的に多いことを考えると、SSB の摂取量を減らすことは、食事の質と代謝および循環器系の健康を改善するための重要な一歩である。

1. はじめに

過体重と肥満の世界的な有病率は、過去40年間でおよそ 3倍に増加し、21世紀における最も深刻な未解決の公衆衛生課題の一つとなっている。

世界の人口ベースの研究から得られた推計値をまとめると、肥満の有病率は 1975 年から 2016 年の間に、子どもでは 1%未満から 6-8%に、男性では 3%から 11%以上に、女性では 6%から 15%に増加した。

21億人以上、つまり世界人口の 30%近くが過体重または肥満であり、健康、社会、経済に多大なコストを生じさせている。

過体重は 2型糖尿病(T2DM)の主要な危険因子であり、冠動脈性心疾患(CHD)、脳卒中、多くの癌など、多くの慢性疾患の原因にもなる。

肥満による世界的な経済効果はおよそ -2兆米ドル、世界全体の国内総生産の -2.8%と推定されており、これは喫煙や武力紛争による世界的な経済効果とほぼ同等である。

肥満はエネルギー収支をプラスにする、生理的、環境的、行動的、社会政治的要因に起因する複雑な病態である。

健康的な体重の維持は修正可能なライフスタイルによる部分が大きい。すなわち、食料品の入手しやすさや価格などの環境がライフスタイルを形成する。

これらの要因の中で、SSB は重要な危険因子であることが明らかになってきており、SSB を体重増加やT2DM、CVD、特定のがんのリスクと関連付けるエビデンスが数多く報告されている。

SSB は食事における添加糖の最大の摂取源である。一般的な 12オンス(355ml)の炭酸飲料は、35.0-37.5g の糖と 140-150 キロカロリーを含んでいる。

保健当局の多くが炭酸飲料の消費削減を呼びかけており、健康増進と医療費の高騰を抑えるために、炭酸飲料の摂取を制限する多くの公共政策が実施されている。

2. SSBの世界的摂取傾向

米国の全国調査データによると、SSB の摂取量は2000 年代初頭から緩やかに減少しているが、消費量は依然として高い。2011 年から 2014 年にかけて、米国の成人は 1日あたり 145 kcal を SSB から摂取していると推定され、これは 1日のカロリーの 6.5%に相当する。この摂取量だけで、米国人のための食事摂取基準や WHO を含む複数の保健当局が提唱する、加糖または遊離糖からの摂取が総カロリーの 10%以下という 1日の推奨値をほぼ満たしている。

米国では、若者や若年成人、非ヒスパニック系黒人、ヒスパニック系男女の摂取量が、他の属性に比べて高いことが報告されている。こうした摂取量の傾向は、肥満や慢性疾患の有病率における格差と一致している。

SSB 摂取量の減少または停滞という同様の傾向は、他の高所得国でも観察されている。対照的に、多くの低・中所得国(low-income and middle-income countries: LMIC)では、都市化と経済発展によりこれらの飲料が手に入りやすくなったため、SSB の摂取量が増加している。

187 カ国の成人における SSB 消費量の調査によると、高所得国または低所得国のいずれかと比較して、中所得国で摂取量が多いことがわかった。

SSB の摂取量はラテンアメリカとカリブ海諸国で最も多く、1990 年から 2015 年にかけて摂取量は着実に増加している。一方、SSB 摂取量が最も少ないのはアジアであり、世界全地域で概して女性よりも男性の方が高いことが観察された(図1)。

図1. 男女別、世界の地域別の SSB 摂取量の傾向
https://www.nature.com/articles/s41574-021-00627-6/figures/1

1990 年と 2015 年の各国におけるSSBsの世界摂取量を比較すると、南米と中米の国々、アフリカ南部と北部の一部で顕著な増加が観察された(図2)。

図2. 世界の地域毎の SSB の平均摂取量 (a: 1990年、b: 2015年)
https://www.nature.com/articles/s41574-021-00627-6/figures/2

青少年の摂取傾向は、一般的に成人の摂取傾向と類似している。LMICs 53ヵ国の青少年の調査データによると、SSB 摂取量は中南米で最も多く、東南アジアで最も少なかった。

注目すべきは、青少年の 54%が 1日 1回以上 SSB を摂取していたことである。東欧の青少年では、2002 年から 2018 年にかけて SSB 類の 1日摂取量が減少しており、より豊かな層ほど減少幅が大きいことが示されている。これらの減少傾向は、西欧州、米国、カナダでの観察と一致している。

3. SSB と肥満

米国の過去のデータを分析したところ、加糖食品(主に SSB )の消費量の増加と肥満およびT2DM の流行との間に並行した傾向があることが示さた。一方、2000 年代初頭から SSB の摂取量が減少しているにもかかわらず、肥満の有病率は減少していない。しかし、この観察は SSB と体重増加との関連を否定するものではない。体重の変化は緩やかな過程であり、肥満の有病率が大きく逆転することは、集団レベルではまだ期待できない。

さらに、肥満と T2DM は複雑な病態であるため、時系列データだけから因果関係を推論することはできない。SSB 摂取と体重変化、あるいは肥満および肥満の合併症の発症との間に関連性があることを証明できる、前向きコホート研究やランダム化臨床試験によるエビデンスが求められる。

SSB と体重増加や肥満に関するエビデンスは、多くのメタ分析で統合されている。大半は正の関連を示しているが、小児を対象とした研究のメタ分析では無効の関連を示している。しかし、このメタ分析には総エネルギー摂取量で調整した推定値が含まれており、全体的な関連性は弱まっている。SSB は食事にカロリーを追加するものであり、総エネルギー摂取量で調整することは、総エネルギー摂取量とは無関係に SSB による体重への影響を評価することと同じである。

我々が以前に行ったコホート研究のメタ分析では、SSB の 1日に飲む回数が 1回増えるごとに、成人では 1年間で 0.12 kg の体重増加と関連し、小児では 1年間で 0.05 kg/m2 の BMI 増加と関連していた。総エネルギー摂取量で調整されていない推定値も含めたため、研究間で観察された違いの一部が説明できるかもしれない。

メタ分析の結果は控えめに見えるが、体重増加は緩やかな過程であり、成人の平均体重増加は年間約 0.45 kg である。したがって、SSB の摂取を制限することは、加齢に伴う体重増加を予防する効果的な方法となりうる。小児の SSB 摂取量の制限は、小児が健康的な体重の軌跡を描くための重要な戦略である。

コホート研究から得られた知見は、我々が以前に行った遺伝子と SSB の相互作用の解析からも支持されている。3 件の大規模コホートのデータを用いて、1 日に 1 回以上 SSB を摂取する人は、BMI の上昇と肥満の遺伝的リスクが高いことがわかった。この所見から、遺伝的に肥満の素因を持つ人は、そうでない人に比べて、 SSB の摂取と体重増加との間の不利な関連に影響されやすい可能性が示唆される。

SSB と体重増加との関連については、ライフコースの様々な時点における研究によって、さらなる裏付けが得られている。例えば、出生コホートから得られた知見では、周産期の SSB 摂取と母親の分娩後の体重保持率および子供の脂肪率との間に正の関連が示されている。

SSB 摂取の効果を評価したランダム化比較試験の多くは体重変化に対する短期的な効果を評価したに過ぎない。我々が以前に実施した成人における 5件の臨床試験のメタ分析では、SSB を食事に加えると、統計的に有意に体重が増加することが明らかになった(加重平均差 0.85 kg, 95%信頼区間: 0.50-1.20 kg)。同様に、7件のランダム化比較試験を対象とした別のメタ分析では、SSB を参加者の食事に加えた場合、統計的に有意な用量依存性の体重増加が認められた(標準化平均差 0.28 kg, 95%信頼区間: 0.12-0.44 kg)。

これらの研究は、SSB 摂取による追加カロリーは、その後の食事における他のカロリー源の減少によって自然には補われないことを示している。

高カロリー試験から得られたエビデンスは成人に限られている。対照的に、SSBの摂取を減らす研究(低カロリー試験)は、小児および成人を対象に行われている。

小児を対象とした低カロリー試験のメタ分析では、 SSB 摂取量を減らすと BMI の経時的増加が抑制されることが示された。注目すべきは、痩せ型の小児と比較して、過体重や肥満の小児でより顕著な効果が観察されたことである。成人および小児を対象とした低カロリー試験のメタ分析でも同様の結果が観察され、 SSB 摂取量の減少が体重に及ぼす全体的な利益が示されたが、この利益は過体重および肥満の参加者においてより顕著であった。

これらの知見は、SSBをノンカロリー飲料に置き換えることで、中心性肥満を有する成人の体重が減少したことを明らかにした 2020 年の試験と一致している。これらの低カロリー試験のメタ分析には、サンプルサイズが小さい、期間が短い、盲検化がなされていない、アドヒアランスが悪いなどの制限のある研究が多く含まれている。

また、大半は行動修正の有効性を検討することを目的とした試験であり、因果関係よりも介入方法を検証するものであった。そのため、有益性の欠如は因果関係を否定するものではなく、むしろ特定の介入方法が行動を変えるのに効果的でなかった可能性がある。

小児と青少年を対象に実施された、これまでで最も厳密な 2 件のランダム化比較試験は、これまでの試験の限界の多くを克服している。これらの試験では、SSB をノンカロリーの選択肢に置き換えることが体重増加に有益であるという強力な証拠が示された。成人を対象とした試験を対象にした別のメタ分析では、SSB を他の炭水化物に置き換えた等エネルギー条件下(アイソカロリック試験)では、体重の変化は観察されなかった。これは、SSB はカロリーの変化を通じて体重の変化に寄与することを示唆している。

4. SSB と 2型糖尿病

SSB 摂取は、体重増加を通じて、あるいは他の代謝経路を通じて、T2DM のリスク上昇と関連することが、多くの文献で述べられている。

高い費用などの制約のためにランダム化比較試験によるエビデンスは不足しているが、前向きコホート研究から得られた知見は一貫した関連を示している。例えば、17 件の前向きコホート研究を対象にしたメタ分析 (BMI で調整していない) では、1日 1回 のSSB摂取量の増加はT2DM のリスクを18%高めること(95%信頼区間: 9-28%)と関連していた。BMIで調整すると、関連は13%(95%信頼区間: 6-21%)に減弱した。これは BMI が SSB 摂取量と T2DM との関連を部分的に媒介することを示唆している。

表: SSB 摂取量と T2DM との関連
https://www.nature.com/articles/s41574-021-00627-6/tables/1

果汁飲料および人工甘味飲料(artificially sweetened beverages: ASB)の摂取と T2DM リスクとの間にも、SSB で観察されたような強い関連は認められなかったものの、正の関連が観察された。

また、この研究では、10年以内の T2DM 発症リスクについて、米国では 8.7%(95%信頼区間: 3.9-12.9%)、英国では 3.6%(95%信頼区間: 1.7-5.6%)が SSB に起因すると推定されており、長期間にわたる SSB の大量摂取によって相当な数の T2DM が新規発症している可能性を示唆している。

これらの所見は、以前に発表されたメタ分析や、過去5年間に発表された Mexican Teacher's Cohort、Northern Manhattan Study、Women's Health Initiative などの最近の研究結果とともに、様々な集団において SSB の摂取がT2DM のリスク上昇と用量反応的に関連していることを示す強力な証拠となっている。

5. SSB と心血管疾患

体重増加や T2DM に関する文献と同様に、SSBの摂取と CVD リスクとの関連についてもエビデンスが蓄積されている。例えば、7 件の前向きコホート研究を統合したメタ分析では、SSB の摂取量が 1 ヵ月に 1 回以下の人と 1 日 1 回以上の人とを比較した場合、後者では CVD リスクが 9%高いことが明らかになった(相対リスク(RR): 1.09, 95%信頼区間: 1.01-1.18 )。

この関連は直線的で、1日あたりの SSB 摂取量が 1 回増えるごとに CVD リスクは 8%上昇した(RR: 1.08, 95%信頼区間: 1.02-1.14)。層別解析では、1日あたりの SSB 摂取量が 1 回増えるごとに CHD リスクが 15% 上昇した(RR: 1.15, 95%信頼区間: 1.09-1.22)が、脳卒中との有意な関連は認められなかった(RR 1.05、95%CI 0.95-1.16)(この辺りの説明はよく分からない。SSB をほとんど飲まない人と比べて毎日飲む人とで CHD のリスクが 9%高く、CHD のリスク上昇は SSB の消費量と直線的な関係があることまでは理解できる)。

これらの結果は、脳卒中との関連はないとした以前のメタ分析の結果と一致している。しかし、その研究のサブグループ解析では、女性では SSB 摂取と虚血性脳卒中との間に有意な正の関連が認められたが(RR 1.33, 95%信頼区間: 1.07-1.66)、男性や出血性脳卒中の男女では関連は認められなかった。

T2DM の研究と同様に、推定値を BMI で調整すると、SSB と CHD との関連はやや弱まり、肥満が部分的な媒介因子であることが示唆された。

コホート研究からも、SSB 摂取とメタボリックシンドロームのリスクとの関連を裏付けている。

小児を対象とした観察研究と臨床試験のレビューでは、SSB 摂取量が増加するにつれて心代謝系リスクが増加するという一貫したエビデンスが得られており、肥満の増加や脂質異常症のリスクについても強いエビデンスが指摘されている。

T2DM と CHD の中間リスク因子に対する SSB またはその構成糖類の影響を調べた成人における短期ランダム化比較試験の結果は、疫学研究で観察された関連性を病態生理学的に裏付けるものである。

例えば、少なくとも2週間の介入を行ったランダム化比較試験のメタ分析では、SSB かつ/または砂糖の摂取量が多い場合と少ない場合では、中性脂肪(平均差: 0.11 mmol/l, 95%信頼区間: 0.07-0.15 mmol/l)、総コレステロール(平均差: 0.16 mmol/l, 95%信頼区間: 0.10-0.24mmol/l)およびLDL-コレステロール(平均差: 0.12 mmol/l, 95%信頼区間: 0.05-0.19 mmol/l)の血清濃度が有意に上昇することが明らかになった。

SSB かつ/または砂糖の摂取はまた、少なくとも8 週間継続した研究において、参加者の血圧を統計学的に有意に上昇させることが示された(収縮期血圧; 平均差: 6.9 mmHg, 95%信頼区間: 3.4-10.3 mmHg, 拡張期血圧; 平均差: 5.6 mmHg, 95%信頼区間: 2.5-8.8 mmHg)。

果糖ブドウ糖液糖をエネルギー所要量の 10%、 17.5%または 25%含む飲料を参加者が摂取した 2週間の並行群間比較試験では、食後の中性脂肪、LDL-コレステロール、尿酸の血清濃度が、用量依存的に直線的に有意に上昇した。

過体重の参加者を対象に行われた 10 週間の試験では、ショ糖の多い食事は、人工甘味料の多い食事と比較して、食後の血糖値、インスリン血症、脂質の血清濃度を統計学的に有意に上昇させた。標準体重の男性を対象とした 3週間のクロスオーバー試験では、中等量の SSB 摂取により、糖代謝と脂質代謝の障害および炎症を来すことが明らかになった。他の研究では、炎症マーカーに関する結果は一貫していないが、これはおそらく研究の質と期間の違いによるものであろう。

注目すべきは、Ebbeling氏らによる2020 年のランダム化比較試験で、12 ヵ月間 SSB を ASB または水に置き換えても、中性脂肪/HDL-コレステロール比やその他の心代謝リスクマーカーに影響を及ぼさなかったことである。著者らは、このネガティブな所見は他の炭水化物源の代償的変化によるものではないかと推測している。

6. SSB と非アルコール性脂肪肝疾患

非アルコール性脂肪性肝疾患
SSBの摂取と非アルコール性脂肪肝疾患(non alcoholic fatty liver disease: NAFLD)の発症との関連は、果糖や果糖ブドウ糖液糖に含まれる糖、特に果糖部分の代謝に起因するという証拠が蓄積されている。

少数の疫学研究を統合したメタ分析は、小児および成人における SSB の摂取と NAFLD の発症との正の関連を支持している。12 件の研究(コホート研究 1件、症例対照研究 2件、横断研究 9件)に基づき、Chen らは、SSB の 1日あたりの摂取量が1回増えるごとに NAFLD のリスクが 39%(95%信頼区間: 29-50%)上昇することを明らかにした。以前のメタ分析や定性的レビューでも同様の結果が報告されている。しかし、これらのメタ分析の解釈は、含まれる研究の質が低いために複雑である。

果糖、ショ糖、果糖ブドウ糖液糖の摂取に関するランダム化比較試験のメタ分析によると、高カロリー試験において、健康な成人にこれらの糖質を過剰に摂取させると、肝細胞内の脂質と肝機能のバイオマーカーであるアラニントランスアミナーゼの血清濃度が上昇する。しかし、等カロリー食試験において、果糖を含む糖質を他の糖質と等カロリーに交換しても NAFLD に関連した変化はみられないことから、SSB の肝臓への悪影響は果糖よりも過剰なカロリーに起因する可能性が示唆されている。

興味深いことに、動物を用いた等カロリー研究では、果糖を与えたラットは、群間で体重増加に差がないにもかかわらず、メタボリックシンドロームの特徴を呈した。NAFLD における SSB と病理組織学的変化との関係については、より大規模で長期かつ質の高い観察研究およびランダム化比較試験が必要である。

7. SSB と痛風

SSB や果糖を含む糖類を日常的に摂取していることも高尿酸血症や痛風と関連している。例えば、3つの前向きコホート研究のメタ分析では、SSB の摂取量が最も多い場合と、最も少ない場合とで比較すると、痛風のリスクが前者で 2 倍高いことが明らかになった(リスク比: 2.08, 95%信頼区間: 1.40-3.08)。

また、用量反応関係も観察され、SSB の摂取量が週当たり1回増えるごとに痛風のリスクが4%高くなることが示された(リスク比: 1.04, 95%信頼区間: 1.02-1.07)。

この研究では、果汁の摂取量と痛風との間に、正の、しかし弱い関連が観察されたが、全果実の摂取量には関連は観察されなかった。

これらの所見は、SSB の摂取と高尿酸血症とを関連づけた横断研究や、SSB や果糖の摂取によって血清尿酸濃度が上昇することを示したランダム化比較試験と一致している。

8. SSB とがん

SSBの摂取は、過剰な脂肪と代謝の乱れによって特定のがんのリスクを高める可能性がある。肥満、インスリン抵抗性、T2DM は様々な癌の確立された危険因子である。しかし、SSB の摂取とがんのリスクとの関連を示す疫学的証拠は限られており、矛盾しているため、国際的な保健当局は確固たる結論を出すことができないでいる。

この矛盾はメタ分析やレビューでも認める。27 件の前向きコホート研究および症例対照研究を含む最新のメタ分析では、摂取量の極端なカテゴリー(個々の研究で定義されている)を比較した場合、SSB 摂取量と乳がん(リスク比: 1.14, 95%信頼区間: 1.01-1.30)および前立腺がん(リスク比: 1.18, 95%信頼区間: 1.10-1.27)および果汁摂取量と前立腺がん(リスク比:1.03、95%信頼区間:1.01-1.05)との間に正の相関が認められた。サブグループ解析でも、SSB 摂取と閉経前乳がんリスクとの間に、閉経後乳がんリスクと比較してより強い関連が認められた。SSB 摂取量と大腸がんおよび膵臓がんのリスクとの間にも正の相関がある傾向がみられた。一方、SSB 摂取と膀胱がんや腎細胞がんとの間には関連は認められなかった。

このメタ分析の対象となった研究のうち、フランスの大規模コホートを対象とした NutriNet-Santé 研究では、SSB 摂取量と全がんリスクおよび乳がんリスクとの間に正の関連が認められ、閉経前乳がんリスクとの関連は閉経後乳がんリスクと比較して強かった。前立腺がんや大腸がんリスクとの関連は観察されなかったが、これは著者らが指摘したように症例数が限られていたためであろう。

Melbourne Collaborative Cohort Study では、SSB 摂取と閉経後乳がんおよび大腸がんとの間に統計学的に有意な正の関連が観察された。スペインの Seguimiento Universidad de Navarra(SUN)コホートにおいても、SSB 摂取と閉経後乳がんとの間に正の関連が観察された。

対照的に、Framingham Offspring Cohort では、糖入り飲料( SSB またはフルーツジュース)の摂取と、過剰脂肪率に関連する複合がんおよび部位特異的がん(乳がん、前立腺がん、大腸がん)との間に関連は観察されなかった。しかし、サブグループ解析では、中心性脂肪率の高い参加者において SSB 摂取とがんリスクとの間に正の関連が観察された。

食品群と大腸がんリスクに関するメタ分析では、SSB との関連は認められず、これは California Teacher's Study における解析と一致している。SSB と膵がんに関するエビデンスはまちまちであり、いくつかの研究では全体的な関連性、または SSB と膵がんとの関連性が肯定的であるとしている。

母集団の特徴、研究デザイン、解析方法の違いにより、これらの研究間には異質性が存在するが、大半は BMI で調整されている。この事実は、体重増加以外の因子が SSB とがんとの関連に関与している可能性を示唆している。

部位特異的ながんの病因が多様であることを考えると、がんの種類別に SSB の摂取量との関連を調べることが望まれる。

9. SSB と死亡率

SSB 摂取と死亡率との間に関連があることが示されている。著者らが以前に行った Nurses' Health Study(NHS)と Health Professional Follow-Up Study(HPFS)の解析では、SSB と死亡率との間に正の用量反応関係が認められ、その主な原因はCVD 死亡率であり、男性よりも女性でより強い関連が観察された。

SSB を 1日 2回以上摂取する場合、1ヵ月に 1回も摂取しない場合と比べて、CVD による死亡リスクが 31%高いこと(リスク比: 1.31, 95%信頼区間: 1.15-1.50)と関連していた。6件のコホート研究の 2021年のメタ分析では、1日あたりの SSB 摂取が 1 回増えるごとに CVD 死亡リスクが 8%高くなることがわかった(リスク比: 1.08, 95%信頼区間: 1.04-1.13)。

2019年、Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke: REGARDS 研究では、1 日あたりの SSB 摂取が 1 回増える毎に、全死因死亡リスクが 11%高くなることが明らかになった(リスク比: 1.11, 95%信頼区間: 1.03-1.19)。しかし、CHD 死亡率については、症例数が限られていたためか、関連は認められなかった。

SSB 摂取と死亡率との正の関連は、UK Biobank や Western New York Exposures and Breast Cancer ( WEB ) Study でも認められている。メキシコにおける 2020 年の調査では、成人死亡の推定 6.9%( 95%信頼区間5.4-8.5%)が SSB に起因しており、年間 40,842人が超過死亡している。同様に、2012 年の NHANES のデータに基づくと、米国における心代謝関連死亡の推定 7.4%が SSB に起因している。

10. 病態生理

SSB と体重増加を関連付ける主な生理学的機序としては、SSB 摂取後の満腹感が食事による満腹感と比べて低く、SSB 摂取によって減る食事のエネルギーよりも SSB のエネルギーの方が大きいことが挙げられる。しかし、この代償反応の欠如の根本的なメカニズムは依然として不明である。

SSB の早期摂取は、甘味嗜好を促進する可能性があるため、小児においては特に有害である。

SSB の過剰摂取を引き起こすと考えられる要因として、砂糖中毒への関心が高まっている。砂糖の摂取は、脳内の強化行動の主要部位である側坐核で内因性オピオイドを放出し、ドーパミン作動性報酬系を活性化することが示されている。

砂糖を断続的に摂取するラットは、モルヒネやコカイン中毒で起こるのと同じように側坐核のドーパミン D2 受容体 mRNA レベルの減少を示し、摂取のエスカレーション、禁断症状、渇望といった中毒の特徴を示す。

これらの知見は、甘い食べ物や飲み物は潜在的に報酬をもたらし、中毒に似た行動を引き起こす可能性があり、それが過剰摂取の原因となっている可能性を示唆している。しかし、このテーマに関する様々な総説には矛盾があり、ヒトにおける知見は動物における研究結果よりも一貫していない。

ブドウ糖や果糖を含む糖類を摂取すると、味覚がないマウスでもメタボリックシンドロームが誘発されることが示されており、これはおそらく、消化後の報酬シグナルによる過剰摂取が原因であろう。これらの知見がヒトに当てはまるかどうかは不明である。

SSB 類の摂取は、ブドウ糖およびインスリンの血中濃度を急激に上昇させる作用があるため、代謝に悪影響を及ぼし、体重増加を促進する可能性もある。

一般に、SSB 類の グリセミックインデックス ( glycemic index: GI ) 値は中等度から高度であり 、大量に摂取されることと相まって、食事による血糖負荷が高くなる。高血糖負荷の食事は、血清中のインスリンとグルカゴンの食後濃度比を上昇させ、空腹感を増大させ、エネルギー消費量を減少させることにより、体重増加を促進する可能性がある。

内臓脂肪が多い人は、糖分の摂取に反応してインスリン分泌が亢進しやすい。したがって、このグループの血糖負荷量を減らすことが、代謝に最も顕著な効果をもたらす可能性がある。

SSB は、体重増加を通じて、またブドウ糖や果糖の独立した代謝作用を通じて、心代謝性疾患や一部のがんの発症に関与している(図3)。

図3: SSB と肥満、心血管疾患、その他の慢性疾患との相関図
https://www.nature.com/articles/s41574-021-00627-6/figures/3

SSB は、高血糖負荷食への関与を通じて、インスリン抵抗性を促進し、炎症性バイオマーカーを悪化させ、T2DM および CHD のリスク増加と関連している。SSB の習慣的摂取は、高インスリン血症やインスリン様成長因子軸の活性化を介してがんリスクにも影響を及ぼす可能性がある。

動物における研究では、ブドウ糖の代謝作用の一部は、肝臓におけるブドウ糖から果糖への変換によって引き起こされる可能性が示唆されている。このように、果糖は高血糖負荷食が代謝に及ぼす影響に関与している可能性がある。

果糖はショ糖や果糖ブドウ糖液糖の成分としてSSB から摂取され、肝臓での代謝を通じて心代謝リスクに寄与すると考えられている。

腸管での果糖の吸収は、ブドウ糖の存在下で促進される。このため、SSB のようにショ糖 (果糖とブドウ糖からなる二糖) や果糖ブドウ糖液糖のかたちで摂取すると、果糖もブドウ糖もすばやく吸収される。

肝臓におけるブドウ糖の取り込みは厳密に調節されているが、果糖の取り込みと代謝は、フルクトキナーゼを介しており、調節されていない。

適度に摂取すると、果糖は肝臓でブドウ糖、乳酸、脂肪酸に変換され、代謝基質として利用される (?果糖からブドウ糖に変換できるか?)。しかし、果糖が過剰に摂取されると、肝での de novo 脂肪新生が増加し、アテローム性脂質異常症やインスリン抵抗性を引き起こす可能性がある。

血中脂質値を上昇させるのに必要な果糖の量については議論があるが、1 日 に必要な総カロリーの 10~25%を含む加糖飲料を摂取すると、食後の中性脂肪が顕著に直線的に上昇することが示されている。この所見は、果糖の摂取と中性脂肪の増加との間に用量反応関係があることを示唆している。

肝臓の脂質濃度が上昇すると、VLDL の産生と分泌が増加し、中性脂肪の血中濃度が上昇する。果糖の過剰摂取はまた、VLDL によって誘導されるリポ蛋白のリモデリングに起因する small dense LDL-C 粒子の産生とも関連している。

ヒトにおいて、果糖の摂取が内臓脂肪組織の蓄積と異所性脂肪沈着を促進することを示した研究もある。肝臓における果糖の代謝はまた、肝細胞の細胞内 ATP を枯渇させ、尿酸産生の増加につながる可能性がある。このような果糖による肝代謝の変化により、SSB は NAFLD やその他の代謝性合併症の発症に関与している。

果糖は、肝臓の尿酸産生を増加させることが知られている唯一の糖である。高尿酸血症は痛風の前兆であり、痛風と高尿酸血症はともに高血圧、T2DM、CVD と関連している。

高尿酸血症の発症は、肥満や T2DM の発症に先行することが示されている。さらに、高尿酸血症は、腎疾患の誘発、内皮機能障害、レニン-アンジオテンシン系の活性化を通じて、SSB 摂取と高血圧との関連を媒介する可能性がある。尿酸の過剰産生は、内皮細胞における一酸化窒素濃度の低下にも関連しており、果糖を含む飲料と CHD の関連を部分的に説明できるかもしれない。

11. 人工甘味飲料 (artificially sweetened beverages: ASB)

公衆衛生対策として、体重増加や心代謝性疾患を予防するために SSB の摂取量を減らすことが求められ続けている。そのため、代替飲料への関心が高まっている。その中でも ASB が最も注目されている。

ASB はカロリーが低く、糖質も含まないにもかかわらず、成人のコホート研究の中には、ASB の摂取量と体重増加、T2DM および CVD のリスクとの間に正の相関があることを見出したものもある。これらの研究結果の解釈は、ASB 摂取に関連する未測定または不十分な測定因子による交絡が残存する可能性があるため、複雑である。

肥満や血糖値やインスリン値の上昇など T2DM の他の危険因子を持つ人が、SSB から ASB に切り替えている可能性があり、そのために見かけの正の相関を認めるのかもしれない。

統計解析においてこのようなバイアスに対処することは困難であるが、食事を繰り返し評価する研究は、経時的な摂取量の変化を調べることができるため、逆の因果関係が生じにくい。この種の研究では、ASB と体重増加および心代謝系アウトカムとの間に統計的に有意でないわずかな関連性が示されている。

コホート研究では、SSB を ASB に置き換えた場合、体重増加、T2DM、死亡率との間に逆相関があることが示されている。これらの知見は、健康な小児や過体重・肥満の有無を問わない成人を含む様々な集団を対象とした短期試験で、SSB を ASB に置き換えた場合に体重や代謝リスク因子に対して弱い効果があることが示された結果と一致している。

しかし、ASB が体重増加や心代謝系の健康に悪影響を及ぼすを可能性を示唆する生理学的機序が数多く提案されている。例えば、人工甘味料の強い甘味は、甘いものへの嗜好性を高める可能性がある。さらに、ASB は甘味受容体を刺激し、cephalic phase insulin response : CPIR を活性化する可能性がある。

また、ASB は腸内ホルモンの分泌も刺激するかもしれない。さらに、ASB に対する神経反応は、食物報酬反応を引き起こすかもしれない。さらに、ASB の摂取は食欲調節を調節するかもしれない。最後に、ASB は腸内細菌叢の変化を引き起こすかもしれない。

興味深いことに、これらのメカニズムは十分に解明されておらず、人工甘味料の種類によって異なる生理学的作用が誘発される可能性がある。例えば、サッカリンとスクラロースは CPIR を刺激するようだが、アスパルテームとステビアは刺激しない。過体重または肥満の成人を対象とした 2019 年のRCTでは、スクラロースの摂取で体重がわずかに減少し、サッカリンで体重がわずかに増加し、アスパルテームとステビアでは体重に影響がないことが示されている。

超加工食品はカロリーとは無関係に体重増加を増加させる可能性があることから、SSB と ASB の両方の加工が肥満に関与している可能性があるが、この仮説には調査が必要である。個々の甘味料の影響と生涯にわたる ASB 摂取の結果をよりよく理解するためには、さらなる研究が必要である。現在のエビデンスに基づけば、SSB の代わりに ASB を摂取することは、水や他の健康的な飲料に切り替えるという最終的な目標に向けて、心代謝リスクを低減するための有用な戦略となりうる。

12. フルーツジュース

果汁100%のジュースが SSB の代替品として受け入れられるかどうかも、大きな関心を集めている問題である。ほとんどのジュースにはビタミンや栄養素が含まれているため、フルーツジュースは健康に良いと思われがちである。しかし、フルーツジュースの中には、SSB と同程度のカロリーと糖分を含むものもある。

米国で行われたコホート研究の結果では、果汁の摂取は体重増加や T2DM のリスクと関連することが示唆されているが、果物をそのまま食べる場合はその逆であることが示されている。

この知見は、フードマトリクスの違いと吸収への影響によって説明できる。果汁に含まれる糖質は、果実に含まれる糖質よりも早く吸収されるが、これは果実に含まれる線維質が吸収速度を遅らせるためである。

果汁に含まれる果糖の吸収は速く、大量に摂取され得ることから、肝臓における果糖の濃度が上昇し、de novo 脂質合成が促進される可能性がある。

果汁の摂取量が多いと、少ない場合に比べて死亡リスクが高くなる。しかし、果汁の心代謝リスクに対する有益性もいくつか報告されている。

果汁については、栄養プロファイルや糖含量がおそらく異なるため、各国で消費されているさまざまな種類の果汁を考慮したさらなる研究が必要である。

13. 水、お茶、コーヒー

水は糖分もカロリーもなく、水分補給に最適な飲料と考えられている。ハーバード大学のコホートの分析では、1日あたり 1回分の炭酸飲料を水に置き換えると、体重増加とT2DMのリスクに逆相関があることがわかった。

水への需要が高まるにつれ、さまざまなタイプの発泡酒やフレーバー飲料(人工甘味料を含むものもある)が販売されるようになり、常習的な炭酸飲料の消費者が水に切り替えるのに役立っているかもしれない。飲料水へのアクセスを確保し、環境と健康の両面からペットボトル入りの水の使用を制限することは、炭酸飲料の代わりに水の摂取を促進する上で重要な取り組みとなる。

レギュラーコーヒーやカフェインレスコーヒー、紅茶の適度な摂取(1日2~5杯)は、T2DM や CVD のリスク低下と関連することが多くの研究で示されている。ある研究では、1日 1回分の炭酸飲料をコーヒー(カフェインレス・カフェイン入り;甘味の有無は不明)に置き換えると、T2DM リスクが 17%低下することが明らかになった。

禁忌事項がなく、カロリーの高い甘味料やクリーマーの使用が制限されていれば、コーヒーや紅茶は SSB に代わる健康的な代替品となりうる。妊娠中の女性や小児などの特定のグループは、カフェイン含有飲料を慎重に摂取すべきである。

14. 政策

現在のエビデンスに基づき、各国および国際機関は、糖質制限食品の摂取制限を推奨している。

WHO、米国およびカナダの食事ガイドラインでは、加糖または遊離糖の摂取上限を総エネルギーの 10%としている。この勧告は、多くの医学会によって支持されている。

これらの勧告に沿って、SSB の消費パターンを変えるための公共政策が数多く知られている。最も一般的なものには、SSB への課税、学校での販売や自動販売機の禁止、不健康な食品や飲料の子供への販売に関する政府の規制、公衆衛生教育キャンペーン、パッケージ前の警告ラベルなどがある。

いくつかの国やアメリカの都市では、SSB の摂取を抑制し、収入を得るための戦略として、SSB に物品税を導入している。2014 年、メキシコは SSB に10%の物品税(つまり 1 リットル当たり 1 ペソ)を課し、世界的な関心を呼んだ。実施から 2年後、 SSB の売上は 7.6%減少したが、水などの非課税飲料の売上は 2.1%増加した。

モデル化されたデータに基づき、この課税の潜在的な効果は、2013 年から 2022 年の間に、〜20 万人の肥満発症を予防し、国際的に 9億 8000 万ドルの医療費を節約したと推定された。カリフォルニア州バークレー市は、SSB に 1オンスあたり 1ペニーの物品税を導入した最初の都市である。税導入前と導入 1年後の動向を比較したところ、SSB の売上は 9.6%減少したが、非課税飲料の売上は 3.5%増加した。

SSB 税を評価した研究のメタ分析によると、課税によって課税飲料の販売、購入、消費が減少した。

より最近では、2018 年に英国が SSB に対して、糖分含有量に基づく段階的な課税(100 ml 当たり総糖分 8 g 以上の飲料は 1 リットル当たり 0.24 ポンド、100 ml 当たり総糖分 5 g 以上8 g 未満の飲料は 1 リットル当たり 0.18 ポンド)を実施したが、これは糖の含有量が少ない飲料の販売を奨励するためのものであった。清涼飲料水の糖分含有量と売上高を分析すると、課税後の意図された効果がよくわかる。税引き前の傾向と比較すると、実施から 1 年後には、以下のような結果が出ている。

課税前の傾向と比較すると、実施 1 年後には清涼飲料の購入量に変化はなかったが、これらの飲料に含まれる砂糖の購入量は、1 世帯あたり 1 週間あたり 30 g 減少した。この知見は、段階的課税が業界の売上を害することなく砂糖摂取量を減らす可能性があることを示唆している。糖質制限飲料税によるこうした初期の効果が継続し、健康状態の改善につながるかどうかは、今後注視すべき重要な要素である。

米国とカナダでは、包装された食品と飲料の栄養成分表示が最近改訂され(それぞれ 2021 年と 2022 年が遵守期限)、消費者が糖分摂取量が推奨の範囲になるのに役立つように、包装された製品の加糖(米国)と総糖(カナダ)の含有量と 1 日当たりの割合の表示が義務付けられた。

消費者が十分な情報を得た上で選択できるよう、各国でさまざまなタイプのパッケージ前面表示が実施されている。

チリは、マーケティング規制や学校でのカロリー、糖分、ナトリウム、飽和脂肪の高い製品の禁止とともに、全国的にパッケージ前の警告を実施した最初の国である。

これらの政策の初期評価では、実施前の傾向と比較して、高カロリー飲料(添加糖分、飽和脂肪、塩分、または基準値を超えるカロリーを含むもの)の購入が 23.7%減少した。観察された減少率は、ラテンアメリカにおける SSB 課税を含む単独の政策実施後の購入量の変化よりも大きかった。

SSB の消費パターンを変えるには、飲料習慣をめぐる社会規範を変える重要なステップとして機能する広範な公衆衛生教育とともに、さまざまな統治レベルにまたがる政策の組み合わせが必要である。

研究者や政策立案者にとっての重要な優先課題は、短期的な行動の変化と臨床的転帰に関連して、これらの政策を継続的に評価し、長期的な有効性を確保することである。

https://www.nature.com/articles/s41574-021-00627-6

人工甘味料の健康と疾病に対する影響

2023-09-01 21:36:54 | 公衆衛生
スクラロースとエリスリトール
ー甘いばかりではない
NEJM 2023; 389: 859-861

歴史的に、食習慣の改善や人工甘味料への置き換えによって砂糖の摂取量を減らすことで、代謝に有益な効果をもたらすと考えられてきた。いくつかの人工甘味料が食品添加物として食品医薬品局(および欧州食品安全機関)によって認可され、米国では砂糖代替品の売上がこの 10年の終わりまでに 100億ドルに達すると予想されている。

当初は人工甘味料はほとんど吸収されないので、砂糖の過剰摂取と比べれば代謝に対して有益な効果をもたらし、ヒトで安全に使えると考えられた。今日、人工甘味料は加工食品、清涼飲料水、ソース、キャンディーなどに広く使われている。

一方、人工甘味料は代謝に影響を与えない健康的な化合物であるという見方が覆されつつある。そのため、世界保健機関は最近、体重をコントロールするために人工甘味料を使用することに反対する暫定勧告を発表した。

最近の研究では、人工甘味料であるスクラロースとエリスリトールの使用は、自己免疫疾患のリスクを軽減する効果は認められるものの、免疫と心臓血管の健康に有害な影響を及ぼすことが明らかになった。

Zani らはマウスを用いた動物実験でスクラロースが T細胞免疫と免疫が関与する疾患に及ぼす影響を調べた。スクラロースに曝露されると、ex vivo および in vivo で CD4+ および CD8+ T 細胞の増殖と分化が阻害された。また、リステリア菌感染モデルマウスでは、スクラロースに曝露されると、感染が成立しやすくなった。これらの効果はサッカリンナトリウムへの曝露では認めなかった。スクラロースはまた、T細胞受容体の下流で細胞内カルシウム動員を減少させることも明らかになった。

次に彼らは、リンパ腫と膵臓癌のマウスモデルにおいて、スクラロースによる T細胞免疫抑制の効果を評価し、両モデルにおいて腫瘍浸潤 T細胞の減少と腫瘍増殖の増加を認めた。

一方、1型糖尿病モデルマウスでは、スクラロースの曝露は T細胞が関与する自己免疫に対して保護的にはたらき、1型糖尿病の発症が抑制された。

さらに、T細胞が関与する大腸炎モデルマウス(図1)では、スクラロース曝露により炎症細胞の数が減少した。この所見はスクラロース曝露による T細胞反応の抑制と矛盾しない。

健康なマウスでは、生後 12週までのスクラロース曝露は、摂餌量、体重、空腹時インスリン濃度、耐糖能に影響を与えなかった。

一方、Witkowski らは加工食品に砂糖の代用品として広く使われている(自然に存在する量に比べて過剰に使用されることが多い)天然の炭素数 4の糖アルコールであるエリスリトールの影響を調べた。

心疾患の診断を受けた 1157人の患者を対象として、あらかじめ特定の化合物を標的とせずにメタボローム解析を行ったところ、血中のエリスリトール(および他のポリオール)濃度と 3年以内の心血管有害事象のリスクとの関連が同定された(図1)。

図1. 人工甘味料の生体への影響
https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/2023/nejm_2023.389.issue-9/nejmcibr2303516/20230827/images/img_medium/nejmcibr2303516_f1.jpeg

この関連は、2件の独立したコホート研究で他の心血管の危険因子を調整した後の解析でも確認された。

実験的には、エリスリトールは in vitro で血小板を活性化すること、ヒトの血液およびマウスの頸動脈内での血栓形成を促進することが示されている。

さらに、エリスリトール入りの清涼飲料水を飲んだ健康なボランティアの血中エリスリトール濃度は、血小板を活性化させるエリスリトール濃度の範囲内に入っていた。

Zani、Witowski、および他の研究者によって報告された研究は、いくつかの人工甘味料の有益な効果についての認識を覆すものである。さらに、120人の健康な成人を対象とした最近の研究では、人工甘味料が血漿中のメタボロームだけでなく、口腔内および糞便中のマイクロバイオームにも影響を及ぼし、1日に通常摂取される量よりも少ない量で耐糖能を障害することが示された。

人工甘味料の種類が多いことと、人工甘味料が腸内細菌叢に影響を与えるかもしれないこと (それ自体が疾病リスクをもたらす可能性がある) は、人工甘味料が健康に与える影響についての問題を複雑にしている。しかし、最近の研究の結果を踏まえると、人工甘味料のヒトの健康と疾病に対する影響を評価する臨床試験が必要であると考えられる。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcibr2303516