現代ビジネスより
日本ではバブル崩壊後、経済の低迷が長期化し、世界における経済的な地位が下降してしまった。この30年間でどのくらい低迷してしまったのか、まずは数字を確認してみる。
スイスにルーツを持ち世界的にビジネススクールを展開するIMD(International Institute for Management Development)の世界競争力ランキングによると、日本のランキングは1989年には世界1位だったが、2019年には30位まで落ちた。判断基準となる項目別では、日本は「ビジネスの効率性」が低く、ビッグデータの活用や分析、国際経験、起業家精神は63ヵ国中最下位だった。
何よりわかりやすいのは企業の時価総額ランキング。時価総額で見た1989年の世界トップ企業20社のなかには日本企業が14社ランクインしており、世界1位はNTT。バブル景気のピーク直前だったので多くの企業が時価総額を伸ばしていた。ところが現在、世界トップ企業20社にランクインしている日本企業はゼロ。トヨタの36位が最高だ。
なぜこんなに日本の経済は弱くなってしまったのか。その原因として、人口減少を挙げる人がいる。しかし現在の75歳は昔の65歳と同じ体力なので、生産年齢人口を75歳まで拡大して考えると、75歳までの人口はそれほど減少していないので、これが原因といえるかどうかは疑問。
デフレもよく原因に挙げられるが、新しい産業がどんどん生まれ、経済が成長したら自然に物価は上がる。デフレはよいことではないが、現在のデフレは新しい産業が生まれず、日本の経済が活性化せず成長しなかったために起こった結果とみるべきで、順序が逆。そこで企業時価総額ランキングに目を向けてみる。トップ20社の中に14社も入っていた日本企業が姿を消した代わりに、GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)が入った。日本経済の停滞の要因はGAFAやその予備軍と目されるユニコーン企業を生み出せなかったところにある。ユニコーン企業とは未上場で評価額が10億ドル以上のベンチャー企業を指す。ユニコーン企業は2019年7月末時点で、世界計380社のうち、アメリカが200社弱、中国が100社弱と全体の8割を占め、日本はわずか3社にすぎない。問題の核心がここにある。
戦後の日本の高度成長は製造業が牽引してきた。ところが製造業がGDPに占める割合はおよそ20%。雇用に占める製造業の割合に至っては17%に過ぎない。もはや製造業には日本全体を引っ張る力のないことは明らか。
日本経済の低迷は、新たな産業社会の牽引役になれるユニコーンがなかなか生まれないところに根本的な原因がある。ユニコーンを生むキーワードは、女性・ダイバーシティ・高学歴の3つだ、と結ぶ。
まず女性だが、現在の世界はサービス産業が引っ張る方向に向かっている。そしてサービス産業のユーザーは女性が6~7割と大勢を占めている。わが国の女性の社会的地位は153ヵ国中121位。これでは女性の望む新しいサービスのアイデアが生まれるはずもない。
ダイバーシティについては、ラグビーワールドカップにおける日本チームの活躍振りを見れば誰しも理解できる。日本人だけで戦ってベスト8に入れたか。混ぜることでチームは強くなる、まさにOne Team。日本の企業は日本人の男性だけでワールドカップを戦っている。
日本の大学進学率は53%前後でOECD(経済協力開発機構)平均より7ポイント程度低い。つまり、日本は先進国のなかでは大学進学率の低い国なのです。
大学に進学しても学生があまり勉強をしない。これは学生ではなく企業側に責任がある。新卒採用面接で「アルバイトやクラブ活動でリーダーシップをとった経験は?」などという質問をしている限り、誰が勉強するでしょう。グローバル企業はこうした成績軽視の在り方とは真逆。グローバル企業はたとえハーバード大学の学生でも、成績が真ん中より下だったら見向きもしない。理由は簡単で、ハーバード大学の学生だから地頭はいいかもわからない。しかし成績が真ん中以下ということは、大学時代を勉強の手を抜いて過ごした人間である、と考える。一方でどこの大学出身であろうと成績が全優の学生は喜んで採用する。大学院生を積極的に採用しないのも一般的な日本企業の傾向です。「なまじ勉強した奴は使いにくい」というのがその理由。
以上のような記述を読むと「日本のダメさ加減」が際立つ。しかしこの筆者は、大学生の不勉強を企業のせいにしているが、果たしてそうだろうか。そして、学校の成績優秀な学生は将来、本当に企業のためになるのだろうか。読者に多くの示唆を与える記事ではある。
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