*新店長・岡野慶光が新しい店長として4月より、「さなぎの食堂」を支えています。(彼は調理師免許も取りました)この10年間に寿町も、食堂も大きく変貌したけれど、「目の前にいるお腹が空いている人に暖かいご飯を食べてほしい!」という開店時の原点をしっかりと見据え、これからも皆さんに愛される場所であり続けたいスタッフ一同心を引き締めて頑張っていく覚悟です。よろしくお願いします
ナラさん、ありがとう!
さなぎの食堂には、5~6年みんなと一緒に働いたNさんというスタッフがいた。
広島出身で年齢は60過ぎ、少しすきっ歯で体格はよく声は低く、お酒はダメだが煙
草を好み、持病があるのにつまみ食いが好きだった。
一見ぶっきらぼうのようだが面倒見がよく、初めてのスタッフやボランティアさんにも
いつも丁寧に接し教えてくれていた。仕事に対しても真面目で考えてくれていて、衝
突したりご指摘いただくことも多かった。休みのときは切りものなど、自分の利益度外視で手
伝ってくれた。話をするのも好きだった。3畳のドヤでの生活はなかなか合う人もいないのだろ
う、話をしている姿はほんとに楽しそうでいい笑顔をしていた。ときどき食堂に忘れた腕
時計や携帯電話を取りにくる、そんな姿が人間臭くて好きだなぁと思っていた。
そんなNさんが昨年12月の半ばに亡くなった。
引いた風邪が悪化し、肺に水が溜まっていた。
全身が浮腫んでしまい、1週間に7kgも体重が増えたという。
じつは、その前日は閉店後にミーティングがあった。
体調が悪く、息をするのも苦しいのにNさんはそれでも参加してくれた。
食堂がいろいろゴタゴタしていたときで
「和を大事にしようよ。」と言ってくれた、その晩に空へ旅立ってしまった。
急すぎて何が何だか分からなかった。
これからってときだったのに。
もっといろいろ話したかったのに。
もっといろいろ教わりたかったのに。
「ジュニアそれはなぁ・・・」てもっと叱って欲しかったのに。
みんなで最後の面会に行ったら木の箱の中の表情はとても穏やかだった。
結局どんな風にして寿町に来たかは聞けずじまいだった。
でもこれだけは分かる、Nさんはさなぎの食堂が好きでわりと楽しんで
やってくれていたってことが。
この春から食堂は新しい体制・スタッフになり、また新しい事業を
展開してゆくことになる。
小さいミスをして「あぁっ!」って声を上げるたびに、
「何をやってるんだよ(笑)」って言っているNさんの声がよく聞こえる。
彼の姿を見ていた僕は、
「がんばりますから!」って、
「安心して見守っていてください」って言うしかないのだ。
Nさんの写真はいつまでも食堂に飾ってある。
彼の想いを胸に、みんなでこの温かい食堂を続けていきたいとおもう。