アメリカの前々回のP5(May 2014)のメッセージは
『・ヒッグス粒子を新しい発見のツールとして活用する
・ニュートリノ質量に関連する物理学を追求する
・ダークマターの新しい物理学を特定する
・宇宙加速:ダークエネルギーとインフレーションを理解する
・未知を探求する:新しい粒子、相互作用、および物理的原則』
で設備投資は
『・計画された高ルミノシティアップグレードにより新しい時代に入るLHCの巨大な物理学の可能性を最大限に活用します。
・アメリカは、短基線および長基線のニュートリノ振動実験の最適なセットを備えた世界をリードするニュートリノプログラムを主催し、その長期的な焦点はここでは長基線ニュートリノ施設(LBNF)と呼ばれる再構築された取り組みです。フェルミラボのプロトン改善計画-II(PIP-II)プロジェクトは、必要なニュートリノ物理学の能力を提供します。
・Mu2e実験:Mu2e(ミュー・ツー・イー)は、米国のフェルミ国立加速器研究所(Fermilab)で行われている素粒子物理学の実験プロジェクトです。Mu2e実験の目的は、ミュオンが直接電子に変換される現象(ミュオン-電子変換)を探すことです。もしミュオンが直接電子に変換される現象が観測された場合、それは標準模型を超える新しい物理学の存在を示唆する可能性があります。』
そうして今回のP5(2023 年 12 月)では
『・量子の領域を解読する
ニュートリノの謎を解明する
ヒッグス粒子の秘密を明らかにする
・物理学の新しいパラダイムを探求する
新しい粒子の直接的な証拠を探す
新しい現象の量子的痕跡を追求する
・隠された宇宙を照らす
ダークマターの性質を特定する
宇宙進化の原動力を理解する』
設備投資は
従来からの継続分として
『最近のCERNのハイ・ルミノシティ・大型ハドロン衝突型加速器(HL-LHC)や、ディープ・アンダーグラウンド・ニュートリノ実験(DUNE)、ベラ・C・ルービン天文台(ルービン)への投資』
それらを含んだ形で集中的に研究する主要プロジェクト
『1、宇宙の最も初期の瞬間を振り返るCMB-S4。
2、長基線ニュートリノ振動実験の決定版として、強化された2.1 MWビームの早期実装による再構想されたDUNEの第二フェーズ。
3、ヒッグス粒子の秘密を明らかにするため、国際的なパートナーと協力して実現するオフショアヒッグスファクトリー。(海外ヒッグスファクトリー)
4、ニュートリノの霧に到達する究極の第3世代(G3)ダークマター直接検出実験。
5、DUNEに補完的であり、ダークマターの間接検出のためのビームを使用しないニュートリノの特性研究のためのIceCube-Gen2。』
アメリカの戦略は「加速器建設がメイン」と言う状況から「加速器については海外の計画に協力する」というスタンスに変わってきています。(注1)
そうしてその代わりに「宇宙そのものを観測する事」に重心を移してきています。
これはセルンが高エネルギー加速器の分野でリーダーシップを取っている事に対して「宇宙観測ではアメリカがリーダーシップを取る」という意思表明でもあります。
そうしてこの宇宙観測と言う中には「究極の第3世代(G3)ダークマター直接検出実験設備をアメリカに作る」という意思表明が含まれています。
それに加えてもう一つのアメリカの軸は「ニュートリノの謎を解明する事」に向けられています。
ちなみに「ヒッグス粒子の秘密を明らかにする事」については「国際協力をメインに進める」がアメリカの戦略の様です。
注1:とは言いながら『理論的、計算的、技術的な資源の開発を支援し、分野の20年ビジョンに不可欠な努力を推進します。これは、技術的に困難でありながら、10 TeVのパートン重心(pCM)コライダー(注5)への現実的な道を示す革命的な加速器設計を生み出す可能性のある積極的なR&Dプログラムを含みます。
特に、ミューオンコライダーオプションは、フェルミ研究所の強みと能力を活用し、米国で主要なコライダー施設を主催する私たちの願望を支援します。』と言うように「次の世代の特徴的な加速器計画は持っている」のです。
そうしてまたアメリカは「ミューオンの研究が新しい物理を見つける上で重要である」という認識を持っている模様です。
これはこれまでアメリカが主導的に行ってきた「BNL~フェルミ研でのミュオン異常磁気モーメント測定」という「歴史的な研究経緯を重要視」していて、「その継続を考えているもの」と推測できます。
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