この辺りで「ダークマターの 直接探索の歴史と結果」を振り返っておきましょう。
まずは探索領域からレビューします。
「我々の宇宙のための超弦理論」: https://conference-indico.kek.jp/event/236/contributions/4346/attachments/3265/4462/2023122_KEK_yamazaki.pdf :の資料の9ページ目にダークマター探索のエネルギー範囲が載っています。
それを見ますと10^-22eVから10太陽質量を超えるあたりまで
アクシオン~電磁波あたりから原始ブラックホール(PBH)あたりまで、本当にひろい質量範囲になっています。
そうして今ではダークマターの代表的な候補としては
・Weakly Interacting Massive Particle (WIMP)
・ Strongly/self- interacting massive particle (SIMP)
・ sterile neutrinos「ステライルニュートリノ」
・ axion and/or axion-like particle (ALP)「アクシオン」
・ primordial black hole (PBH)…「原始ブラックホール」
mass range: 10^−22 eV ≲ m ≲ 10^5M⊙
と言われています。
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ダークマター探索の歴史
1933年:フリッツ・ツビッキー:1933年にフリッツ・ツビッキーは銀河団中の銀河の軌道速度における"欠損質量" (missing mass ミッシングマス) を説明するために仮定した[6][7]。彼は、ビリアル定理をかみのけ座銀河団に適用し、未観測の質量の証拠を得た(と考えた)[8]。
1936年:Sinclair Smith:1936年にツビッキーの同僚の Sinclair Smith はおとめ座銀河団に関して同様の解析を30個の銀河を用いて行い、ほぼ同様の結果を得た[10]。
1937年:ツビッキー:1937年にツビッキーはこれらの成果をよりメジャーなアストロフィジカルジャーナルに投稿し、かみのけ座銀河団の質量光度比はおよそ 500 以上であり、天の川銀河における太陽系近傍の質量光度比の数百倍であると主張した[10]。
1961年:1961年にサンタバーバラで開催された会議では、大きな質量光度比は光で検出されない銀河間物質が寄与しているためという可能性が支持を集めた[14]。
1971年7:John F. Meeking ら:しかしながら、アーノ・ペンジアス[18]、Herbert Rood[19]、Neville Woolf[20]、Barry E. Turnrose & Herbert Rood[21]といった研究を経て、1971年に John F. Meeking らはかみのけ座銀河団をX線で観測し高温の銀河団ガスの質量は銀河団が重力的に束縛されているために必要な値の2%しかないことを示した[22][14]。
1970年代:ヴェラ・ルービン:暗黒物質の存在の「間接的な発見」は、1970年代にヴェラ・ルービンによる銀河の回転速度の観測から指摘された[23]。水素原子の出す21cm輝線で銀河外縁を観測したところ、ドップラー効果により星間ガスの回転速度を見積もることができた。彼女はこの結果と遠心力・重力の釣り合いの式を用いて質量を計算できる、と考えた。すると光学的に観測できる物質の約10倍もの物質が存在するという結果が出た。この銀河の輝度分布と力学的質量分布の不一致は銀河の回転曲線問題と呼ばれている。この問題を通じて存在が明らかになった、光を出さずに質量のみを持つ未知の物質が暗黒物質と名付けられることとなった。
1980年代 - ゲルマニウム半導体検出器を使用し、暗黒物質と通常の物質の反応断面積に上限があることが判明した[35]。
1998年 - イタリアの研究グループ(DAMA)が、6月に最大となり12月に最小となる季節変動があることを報告した[35][37]。しかし他機関による研究では否定的な結果が得られている[38][39]。
2000年 - DRIFTが観測開始。
2003年 - CDMS(英語版)が観測開始。
2010年 - XMASSが観測開始。
2019年 - 重力波望遠鏡を使用した観測方法が提案された[40]。
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1990年代前半
:ダークマターはMACHO(Massive Compact Halo Object) だ!
!- もっとも ナイーブ な候補「暗い星」
!- MACHOが前を通った時の背景の星の増光を見る
!- 1990年代前半には「天下取り」直前
!- 現在では主要候補からは除外
「暗黒物質研究の現状」: http://ppwww.phys.sci.kobe-u.ac.jp/~miuchi/education/lecture/miuchi_20110419_darkmatter.pdf :の6ページ記述参照
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『"LSPがダークマターだ"という考えが一般的になり始めたのは、1990年代後半から2000年代初頭のころです。これは、超対称性理論がダークマターの候補として注目されるようになった時期と一致しています。』
『この考え方は、超対称性理論を研究する多くのグループや個々の研究者によって提案されました。具体的な個人やグループを挙げることは難しいですが、1980年代から1990年代にかけて、超対称性理論の研究が盛んになり、ダークマターの候補として注目されるようになりました。その後、実験データや理論的な議論が進展するにつれて、この考え方がより具体化され、検証されるようになりました。』以上、GPT3.5
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2002年以前のダークマターについての日経サイエンスの記事はネット上には見当たらず。(byグーグル)
・日経サイエンス 2002年11月号
・本当は存在しない?暗黒物質
: https://archive.md/VwhWl : https://www.nikkei-science.com/page/magazine/0211/dark.html
『「力は加速度に比例する」という有名なニュートンの第2法則を,極めて小さな加速度の下では「加速度の2乗に比例する」とした修正ニュートン力学を提唱したのだ。不思議なことにこのように修正を施すと,暗黒物質の存在を想定しなくても驚くほど矛盾なくさまざまな観測結果を説明できる。そのうえ修正ニュートン力学が予想したいくつもの現象も,その後の観測で確認された。』
・日経サイエンス 2003年6月号
・暗黒物質ニュートラリーノを追う (<--これはWIMPの一種:注)
: https://archive.md/vUIZ5 : https://www.nikkei-science.com/page/magazine/0306/dark.html
『ダークマター存在の証拠をつかもうと,世界中で観測プロジェクトが進行している。ダークマターはどんな物質もすり抜けてしまう超対象性粒子のニュートラリーノでできていると考えられ,直接観測することはできない。だが,2002年のノーベル物理学賞を受けた小柴昌利東京大学名誉教授がニュートリノの観測に使った方法なら可能性がある。
ニュートラリーノは非常にまれだが,原子核と衝突することがある。これが「反跳現象」で,ニュートラリーノとぶつかった原子核はその運動エネルギーを周囲の物質に受け渡したり,電子を外側の原子核に弾き飛ばして励起状態になったりする。このときに起こるわずかな温度上昇や電離現象の痕跡を拾い出せれば,ダークマターが存在する証拠を観測できるわけだ。・・・
太陽系は天の川銀河(銀河系)の中心に対して秒速220kmで周回しているが,地球の公転運動を考慮すると,北半球の夏と冬とではダークマターが地球に降り注ぐ量が違う。
この差を検出したとイタリアのDAMAプロジェクトが発表したが,追試の結果では否定的だ。しかし,現在進行している観測プロジェクトによって,ダークマターが存在するか否定されるか,明らかになるはずだ。』
・暗黒物質を“発見”〜日経サイエンス2007年1月号より
: https://archive.md/tZiHz : https://www.nikkei-science.com/?p=17756
『ダークマターの存在を裏付ける証拠の1つとして、2つの銀河団の衝突が観測されました。衝突では、プラズマと暗黒物質が分離して運動し、重力レンズ効果によって背後の光が曲がる様子が捉えられました。研究結果は、重力の主因が暗黒物質であることを示し、重力理論の大幅な変更は不要ということを示唆しています。』
・見え始めた宇宙の暗黒物質〜日経サイエンス2007年4月号より
: https://archive.md/DMIWw : https://www.nikkei-science.com/?p=17698
『宇宙の最大の謎のひとつ暗黒物質(ダークマター)。星や星間ガスと違って,電波も赤外線も可視光もX線も放出しないので,宇宙のどこにどれくらい存在するのかわからない。その正体は,陽子や中性子といった私たちになじみのある物質「バリオン」ではないことは確かなのだが,では何かというと,わからない。・・・では,どうやって暗黒物質をとらえたのか。それは「重力レンズ効果」だ。
COSMOS計画では,すばる望遠鏡によるさらに精密なスペクトル測定で銀河の距離の誤差を縮めると同時に,X線や赤外線などによる銀河の観測結果も合わせて総合的に分析する。これによって,暗黒物質と銀河の関係がより詳しくわかってくるとみられる。その正体とされる粒子についても,ある程度の物理的な制約をつけられる可能性がある。欧州合同原子核研究機構(CERN)で稼働する大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の実験研究とつながりができるかもしれない。』
・暗黒物質は暗くない?〜日経サイエンス2007年6月号より
: https://archive.md/77aV6 : https://www.nikkei-science.com/?p=17662
『暗黒物質は見えないが、銀河の形成に影響を与える。最近の研究では、ダークマターが異なる光源を生む可能性を示唆し、ガンマ線や陽電子の観測を通じてその特性を解明しようとしている。一部の研究者は、重い粒子が高速で移動し、衝突する際に電子と陽電子を生成する可能性があると提案している。これにより、暗黒物質の性質や相互作用に関する新たな理解がもたらされる可能性がある。・・・
重粒子が猛スピードで宇宙を飛び交っているとすると,運動エネルギーの一部が内部エネルギーに変換され,その後に電子と陽電子を放出する可能性があると,今年1月の米国天文学会で報告した。・・・
ともあれ,今秋に米航空宇宙局(NASA)が打ち上げるガンマ線観測衛星GLASTによって仮説を検証できるはずだ。暗黒物質の実体と作用が徐々に解明されるにつれ,暗黒粒子にはきちんとした名前がつけられるだろう。また,「暗黒物質」という名称も,実体が何もわかっていないことの裏返しにすぎないわけで,それ自体が暗闇に葬られるだろう。』
・暗黒物質は近くにも存在?〜日経サイエンス2009年3月号より
: https://archive.md/0Udyd : https://www.nikkei-science.com/?p=17111
『宇宙の5倍の暗黒物質が通常の物質とは異なり、重力効果でのみ存在が示される。地球と月の引力を測定し、その差が暗黒物質ハローによる可能性を示唆。さらに、暗黒物質が惑星の温度を上げる可能性も提案され、科学者は新データを求めて探索を続けているが、データ公表の倫理についても議論されている。
物理学者たちは暗黒物質に関する新データを渇望しているので,一部の研究者は何にでも飛びつく。2006年に打ち上げられたPAMERA衛星の最新結果から暗黒物質と通常物質との相互作用が明らかになったというウワサが2008年に広まった。しかし同ミッションの研究者たちは学会で数枚のスライドを映写しただけで,それ以上のデータを公表しなかった。・・・』
・幽霊粒子が大量に〜日経サイエンス2011年3月号より
: https://archive.md/jEJzh : https://www.nikkei-science.com/?p=16008
『ニュートリノは極めてとらえにくい粒子で、通常のニュートリノと異なり、相互作用しない「ステライルニュートリノ」の存在が示唆されている。最近の実験では、暗黒物質の正体がステライルニュートリノである可能性が浮上しており、超新星の動きやX線の観測などでその証拠が見つかっている。さらに、地上実験でもステライルニュートリノの存在を検証するための試みが行われている。
彼らはチャンドラX線望遠鏡を使って,暗黒物質を豊富に含むと考えられている近くの矮小銀河を観測し,ステライルニュートリノの崩壊から予想されるのと同じ波長のX線が他の波長よりも強く出ていることを発見した。
また,超新星の観測から別の証拠が見つかっている。ステライルニュートリノが実在するなら,超新星から磁力線に沿って細く絞られた強いステライルニュートリノ流が飛び出し,その反動で超新星の中央部にあるパルサーが宇宙空間を移動しているはずだ。まさにその通りの現象が観測された。超新星のパルサーは秒速数千kmの速さで宇宙空間をすっ飛んでいる。
ステライルニュートリノの証拠を地上の実験に求めることもできる。米国立フェルミ加速器研究所の研究チームは最近,その証拠を探るために16年前の実験結果を検証した。通常のニュートリノを500m離れた地中の検出器に向かって発射した実験だ。ニュートリノは飛行中にタイプが変わるが(ニュートリノ振動という現象),その変化の仕方が,ステライルニュートリノが実在する場合に予想されるものとまさに一致した。』
2012年~13年:LHCにてヒッグス粒子の検出と確認がなされた。このイベントは標準理論の一応の完成を意味する。そうであればこれ以降は「標準理論を超えた新物理」に一層の焦点が当たる事となった。
・ステライルニュートリノ見つからず〜日経サイエンス2015年3月号より
: https://archive.md/WzHwo : https://www.nikkei-science.com/?p=45805
『例えば宇宙に広がって通常の物質を重力で引き寄せているとされる謎の暗黒物質の一部は,ステライルニュートリノなのかもしれない。
だが数十年に及ぶ探索にもかかわらずステライルニュートリノは見つかっておらず,最新の検出実験も空振りに終わった。中国で実施されている国際的なニュートリノ実験「ダヤベイ(大亜湾)ニュートリノ研究」は,7カ月間の探索の末にステライルニュートリノの証拠を何も見つけられなかった。
現地の物理学者たちは今後,捜索範囲を広げて実験を続ける予定だ。何しろ,ヒッグス粒子探しも最初の30年間ほどは何もつかめなかったのだから。』
・暗黒物質探索に見えた手がかり〜日経サイエンス2015年8月号より
: https://archive.md/0aGMF : https://www.nikkei-science.com/?p=47638
『暗黒物質の正体に迫る過去の試みは、暗黒物質が何でないかを明らかにすることに焦点があり、候補が次々に除外される中、新種の力が暗黒物質の相互作用を示唆する手がかりが見つかりました。この手がかりは「エイベル3827銀河団」を観測するなかで見つかった。
同銀河団で衝突しつつある4つの銀河にある暗黒物質の位置を,重力レンズ効果(光が大質量天体の近くを通る際に曲げられる現象)をもとに追跡した。ハッブル宇宙望遠鏡とチリにある超大型望遠鏡VLTが行った観測によって,これら銀河の少なくとも1つを取り巻く暗黒物質が,そこにある通常の物質よりも遅れて動いていることがわかった。暗黒物質粒子どうしが相互作用して自らの動きを遅らせていることを示唆しており,初めて見つかった現象だ。
エイベル3827銀河団の観測では、暗黒物質の動きが通常の物質よりも遅れていることが発見され、暗黒物質粒子同士の相互作用によって生じたものと考えられています。この相互作用は通常の物質には影響しないため、暗黒物質に特有の重力以外の新しい力が関与している可能性が示唆されています。』
・あるはずだが見えない「暗黒物質」 謎の存在に新説 2015/8/29
: https://archive.md/RKJKB : https://www.nikkei.com/article/DGXMZO90615230X10C15A8000000/
『村山機構長らが提唱したのがSIMP(シンプ)説だ。暗黒物質粒子は1種類ではなく、複数種類あって、それらは極微の世界を支配するもう1つの力、「強い力」とそっくりの力を持つ重い粒子であるとする。』
・日経サイエンス 2015年10月号
・特集 暗黒物質に異説
: https://archive.md/dlTUO : https://www.nikkei-science.com/201510_028.html
『もしかしたら実験で検証しようとしている暗黒物質の仮説に問題があるのではないかとの見方が出てきた。ではいったいどんなモデルが有望なのか,理論研究が活発になっている。実験や観測も熱を帯びている。』
・日経サイエンス 2015年10月号
特集:暗黒物質に異説
・WIMPではなくてSIMP
: https://archive.md/tarDC : https://www.nikkei-science.com/201510_040.html
『新たな暗黒物質の説として、WIMPに代わる有力な候補としてSIMPが提案されています。
SIMPは強い力に似た相互作用を持つ重い粒子であり、WIMPとは異なる特性や質量を持っています。
しかし、SIMPはWIMPと同様に宇宙全体の暗黒物質の性質や量を説明するだけでなく、銀河レベルの暗黒物質の分布を再現することが可能です。』
・日経サイエンス 2015年10月号
特集:暗黒物質に異説
・ダーク銀河の謎
: https://archive.md/0QGB1 : https://www.nikkei-science.com/201510_030.html
『暗黒物質の証拠を探すための実験が進行中であり、これにより、暗黒原子や暗黒分子が形成され、さらにはそれらが銀河円盤や渦巻銀河の腕に重なっているかもしれないという仮説が検証されています。』
・日経サイエンス 2015年10月号
特集:暗黒物質に異説
・暗黒物質を捉える
: https://archive.md/3RXjz : https://www.nikkei-science.com/201510_048.html
『太陽系には暗黒物質の風がはくちょう座の方向から吹いているとされ、地球の公転によって風速が年周期で変動すると考えられる。暗黒物質の季節変動を捉えた観測データが報告されているが、それを否定する実験結果もあり、議論が続いている。日本では神岡鉱山のXMASS実験をはじめとする複数の実験が進行中である。』
・日経サイエンス 2015年10月号
特集:暗黒物質に異説
・すばるが見た暗黒宇宙
: https://archive.md/863zX : https://www.nikkei-science.com/201510_044.html
『星のように遙か彼方にあるのならともかく,身の回りに存在しているのなら,つかまえられてもよさそうだが,いまだに成功していない。現実には,手の届かない星の世界,それも太陽系や天の川銀河よりもさらに遠く離れた宇宙に存在する暗黒物質の方がよく捉えられ,研究が進んでいる。現在,世界の数多くの大型望遠鏡が暗黒物質の観測を重点テーマにしている。
この暗黒物質観測で大きな存在感を示しているのが,ハワイ島マウナケア山頂(標高約4200m)にある国立天文台の口径約8mの「すばる望遠鏡」だ。つい最近も暗黒物質関連の2つの重要研究成果が相次いで発表された。すばるは宇宙のダークサイドを覗き見る窓になっている。』
・暗黒物質粒子の検出へ王手〜日経サイエンス2016年4月号より
: https://archive.md/BRiD0 : https://www.nikkei-science.com/?p=49429
『物理学者たちは、ダークマターの正体を突き止める好機が現在訪れており、WIMPと呼ばれる暗黒物質の候補粒子を追求しています。XENON1Tという最新の実験では、これまでの検出器とは異なる高感度を誇ります。もし数年後にもWIMPが発見されない場合、物理学者たちはより異端な説明を模索する必要性を迫られるでしょう。WIMPは超ひも理論に基づく粒子であり、ダークマターの量と一致する可能性があるため、支持を集めています。これまでの探索実験でWIMPが見つからなかったため、新たな可能性の中から解が見つかることを期待しています。
物理学者は、WIMPと呼ばれるダークマターの候補粒子を追求しています。XENON1T実験は、これまでの検出器よりも高感度であり、成功の可能性が高まっています。もしWIMPが発見されない場合、新たな説明を模索する必要が生じるでしょう。』
↑↑↑2016年時点での業界の読みは随分と楽観的だった様です。そうしてその期待に反する様に2024年現在でもXENONnT(=XENON1Tの次のバージョン)からは「ダークマター検出」という知らせは届いてはおりません。
・宇宙の暗黒物質の固まり、少ない可能性 国立天文台など観測 2018/2/27
: https://archive.md/rl5du : https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27459130X20C18A2CR8000/
『暗黒物質の固まりとみられる場所を65カ所確認したが、当初予想よりも少なかった。現在主流の「宇宙は加速度的に膨張している」との理論の一部見直しにつながる可能性がある。
宇宙の膨張ペースの変化が速いと暗黒物質がなかなか集まれず、固まりになりにくいという。
今回の結果は宇宙の膨張が予想より急激だった可能性を意味している。』
・特集:暗黒物質の正体ダークホース新粒子「アクシオン」
L. ローゼンバーグ(ワシントン大学)
: https://archive.md/dpN8G : https://www.nikkei-science.com/201805_036.html
・日経サイエンス 2018年5月号
『暗黒物質の候補のなかでも穴馬的な存在が,理論上の粒子「アクシオン」だ。暗黒物質を説明できるだけでなく,原子核を1つにまとめている「強い力」の謎を解くことができると考えられている。
米国で進む「アクシオン暗黒物質実験」が新段階に入り,最も可能性の高い質量のアクシオンを検出(またはそれが存在しないことを証明)できる感度を達成している。』
・日経サイエンス 2018年5月号
特集:暗黒物質の正体
・もうひとつの見えない粒子「ステライルニュートリノ」
: https://archive.md/2OfFj : https://www.nikkei-science.com/201805_052.html
『ニュートリノは電子型,ミュー型,タウ型の3種類の存在が知られる。それらの質量などに関する情報は,ニュートリノが飛行する間に種類が変わる「ニュートリノ振動」の実験によってかなりわかってきた。ただ一部のニュートリノ振動実験では,未知の種類の存在を示唆する結果が報告されている。他の実験結果との整合性を考えると,未知の種類は既知の3種類と違って,放射性元素の崩壊などを起こす「弱い力」が作用しない「ステライル型」だと考えられている。ステライル型が実在するのかどうか確かめるため,大強度陽子加速器施設「J-PARC」で大がかりな実験が年内にも始まる予定だ。』
・日経サイエンス 2018年9月号
特集:究極の未解決問題
・暗黒物質とは何か
: https://archive.md/CQ54o : https://www.nikkei-science.com/201809_052.html
『宇宙物理学者と天文学者はこの宇宙の物質の大半が「暗黒物質(ダークマター)」だと結論づけている。私たちが通常の物質を見るときのような電磁気的な影響を通じてではなく,重力の効果からその存在が推論されている物質だ。
宇宙の大半は暗黒物質(ダークマター)であり、その存在は重力の効果から推測される。暗黒物質は通常の物質とは異なり、人間の視点では理解しにくいが、物質が原子から成る必要はない可能性がある。』
・ダークマターの正体に迫る
東京大学カブリIPMU主任研究者 村山斉氏 2019/4/19
: https://archive.md/pLu0h : https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43894550Y9A410C1TJN000/
『ダークマターはこれまで、質量はあるが互いにぶつかって跳ね返るといった相互作用は起こさないと考えられていた。すばる望遠鏡で銀河を詳しく観測、ダークマターの正体を解き明かそうとしている。』
・日経サイエンス 2020年7月号
・重力レンズ天文学誕生に貢献 謎の天体ダークマターに迫る:大栗真宗
: https://archive.md/EE6WF : https://www.nikkei-science.com/202007_008.html
『光の進路が曲がり遠くの星や銀河が変形して見える「重力レンズ効果」
この現象を利用した新しい天文学の誕生に大きく貢献した
重力レンズ効果をもたらすダークマター(暗黒物質)の解明に取り組む』
・新たな宇宙論への道?巨大銀河団に高密度ダークマター 2020/10/5
: https://archive.md/nK7Qk : https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63855550V10C20A9000000/
『最新の研究によれば、銀河団内に存在するダークマターの密度が、従来の理論であるラムダCDMモデルの予測よりもはるかに高いことが示唆されている。これにより、宇宙の構造や進化を説明するための新たな理論が必要とされています。この研究では、銀河団の周りを通過する光が曲げられる現象を観測し、その結果、ダークマターの領域が標準モデルよりも10倍以上も多いことが明らかになりました。これにより、宇宙のダークマターに関する理解が深まり、新たな宇宙論の発展への可能性が示唆されています。』
・東北大と東大、ダークマターの正体を新粒子・アクシオンとする説を提唱 2020/10/13
: https://archive.md/vOpG3 : https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP541599_T11C20A0000000/
『●ダークマターの直接探索実験であるXENON1T(*1)によって捉えられていた予想外の電子散乱事象は、光とほとんど相互作用をしないアクシオンという新粒子がダークマターであれば説明可能であることを示しました。
●さまざまな星の進化の観測からもアクシオンの存在が示唆されており、XENON1T実験における過剰な電子散乱事象から導かれるアクシオンの質量および相互作用の強さと見事に一致することを明らかにしました。
●これにより、ダークマターの直接探索実験とさまざまな星の進化の観測が一つの事実「アクシオンダークマター」により説明される可能性が開かれました。
●本研究の発見が今後の実験で確定的なものとなれば、宇宙論および素粒子理論の発展に大きく貢献します。』
↑↑↑:この話は「予想外の電子散乱事象は偶然の産物、もしくはバックグラウンドの放射線検出の結果」が結論でした。お粗末様。
・日経サイエンス 2020年11月号
・特集:暗黒物質の有力候補 ステライル ニュートリノを追う
: https://archive.md/ofayN : https://www.nikkei-science.com/202011_061.html
『ステライルニュートリノは重力以外の力が作用しないので,もし存在すれば,暗黒物質の有力候補になる。第4のニュートリノは本当に存在するのか。その確証を得るため,新たな3つの実験が近く始まる。米国立ロスアラモス研究所のCCM実験と米国立フェルミ加速器研究所のSBN実験,日本の大強度陽子加速器施設「J-PARC」で行われるJSNS2実験だ。』
・日経サイエンス 2020年11月号
特集:暗黒物質の有力候補ステライルニュートリノを追う
・動き出した米国の探索実験
: https://archive.md/zwqWB : https://www.nikkei-science.com/202011_062.html
『素粒子物理学の標準モデルではニュートリノは3種類しかないと想定されているため,ステライル型が存在すれば,標準モデルを超える新領域が開かれるだろう。第4のニュートリノは本当に存在するのか。それを確かめるための実験が米国立ロスアラモス研究所で近く本格的に始まる。』
・日経サイエンス 2020年11月号
・特集:暗黒物質の有力候補 ステライルニュートリノを追う
・精密実験で正体を探る: https://archive.md/SsApO : https://www.nikkei-science.com/202011_070.html
『ニュートリノは電子型,ミュー型,タウ型の3種類が知られるが,「ステライル型」と呼ばれる第4の種類の存在が一部の実験で示唆されている。ただ,確証を得るには至っていないため,日本と米国で決定打となる新たな3つの実験の準備が進んでいる。 日本が主導するのは大強度陽子加速器施設「J-PARC」で実施する「JSNS2(スクエア)実験」で,2020年6月,試運転に成功,2020年秋から実験を本格的に始める。』
・LHCレポート:Search for squarks and gluinos in final states with jets and missing transverse momentum using 139 fb−1 of s√ =13 TeV pp collision data with the ATLAS detector「ATLAS検出器を使用して、ジェットと欠けている横運動量を持つ終状態におけるスクォークとグリュイーノの捜索:13TeVのpp衝突データ139 fb^(-1)を用いて」[Submitted on 27 Oct 2020 :last revised 1 Mar 2021 (this version, v2)]
結果は『ATLAS 実験によって、質量中心エネルギーでの陽子-陽子衝突で記録されたものです。s√= 大型ハドロン衝突型加速器の実験 2 では 13 TeV、』
「13 TeVまで探したが何もない」が結論です。このレポートの内容が従来言われていた「ダークマター=WIMP説」をほぼ否定した形になっています。
という訳で、時代は又一つ先に進む事になりました。
・ダークマターの正体は何か?広大なディスカバリースペースの網羅的研究領域(2020-11-19 – 2025-03-31)村山etc: https://archive.md/mgUpN : https://member.ipmu.jp/DarkMatter/overview.html :https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-AREA-20A203/20A203_saitaku_gaiyo_ja.pdf :
『研究領域 (略称) ダークマター
研究課題/領域番号 20A203
研究種目
学術変革領域研究(A)
領域代表者 村山 斉 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (20222341)
研究期間 (年度) 2020-11-19 – 2025-03-31
この領域に属する研究課題 公募研究 (26件) 計画研究 (11件) 総括班 (1件)
サマリーおよび審査結果の所見: https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-AREA-20A203/20A203_saitaku_shoken_ja.pdf :』
・宇宙の暗黒物質を探せ 素粒子実験が難航、研究広がる 2022年3月19日
: https://archive.md/bdqeU : https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD108TF0Q2A210C2000000/
『宇宙に存在する物質の約8割を占めるが正体がわかっていない暗黒物質(ダークマター)を探す研究が大きく変わりつつある。有力候補と考えられていた素粒子を探す実験が難航、探索する範囲を広げる必要があるという見方が台頭しているためだ。既存の研究施設も活用しながら、視野を広げて暗黒物質を探す研究が始まっている。
岐阜県飛驒市の神岡鉱山跡に建設された重力波望遠鏡「KAGRA(かぐら)」は、アインシュタインが理論上予測した重力波の観測装置です。』
・宇宙の暗黒物質、まばらに存在 近畿大など 2023/9/14
: https://archive.md/OcgF4 : https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0808S0Y3A900C2000000/
『近畿大学の井上開輝教授や国立天文台などは、正体不明の物質「暗黒物質(ダークマター)」が約3万光年単位で、密になったり、まばらになったりしていることを解明した。これは従来考えられていた距離の10分の1以下だ。暗黒物質は宇宙の誕生や形成に関わっているとされ、局所的に存在する性質が重要な働きを及ぼした可能性がある。』
・銀河作る暗黒物質、太陽5兆個分の質量 東大など推定 2023/9/21
: https://archive.md/yUfYm : https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC143LS0U3A910C2000000/
『遠方のクエーサー観測を目的としてすばる望遠鏡を活用するプロジェクトで得られたデータを詳細に調べたところ、130億年前のダークマターハローの質量を推定できた。その量は他の時代の推定とほぼ同じだった。』
日経サイエンスとしては2020年11月号の
「・特集:暗黒物質の有力候補 ステライルニュートリノを追う」の記事を最後にその後3.5年間にわたって「ダークマター関連の記事」は掲載がない様です。
これは「現状がいかにダークマター探索に難航しているのか」という事をよく表しています。
そうしてまたそうであればこそ「アメリカが今、本気になってダークマター探索に乗り出した」のであります。
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現代物理学の展望 記事一覧