Dark matter, Hawking radiation, black holes,

Approaching the Identity of Dark Matter

日経サイエンスでたどるダークマターの 直接探索の歴史と結果

2024-07-01 | 日記

この辺りで「ダークマターの 直接探索の歴史と結果」を振り返っておきましょう。

まずは探索領域からレビューします。

「我々の宇宙のための超弦理論」: https://conference-indico.kek.jp/event/236/contributions/4346/attachments/3265/4462/2023122_KEK_yamazaki.pdf :の資料の9ページ目にダークマター探索のエネルギー範囲が載っています。

それを見ますと10^-22eVから10太陽質量を超えるあたりまで

アクシオン~電磁波あたりから原始ブラックホール(PBH)あたりまで、本当にひろい質量範囲になっています。

そうして今ではダークマターの代表的な候補としては

・Weakly Interacting Massive Particle (WIMP)
・ Strongly/self- interacting massive particle (SIMP)
・ sterile neutrinos「ステライルニュートリノ」
・ axion and/or axion-like particle (ALP)「アクシオン」
・ primordial black hole (PBH)…「原始ブラックホール」
mass range: 10^−22 eV ≲ m ≲ 10^5M⊙

と言われています。

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ダークマター探索の歴史

1933年:フリッツ・ツビッキー:1933年にフリッツ・ツビッキーは銀河団中の銀河の軌道速度における"欠損質量" (missing mass ミッシングマス) を説明するために仮定した[6][7]。彼は、ビリアル定理をかみのけ座銀河団に適用し、未観測の質量の証拠を得た(と考えた)[8]。

1936年:Sinclair Smith:1936年にツビッキーの同僚の Sinclair Smith はおとめ座銀河団に関して同様の解析を30個の銀河を用いて行い、ほぼ同様の結果を得た[10]。

1937年:ツビッキー:1937年にツビッキーはこれらの成果をよりメジャーなアストロフィジカルジャーナルに投稿し、かみのけ座銀河団の質量光度比はおよそ 500 以上であり、天の川銀河における太陽系近傍の質量光度比の数百倍であると主張した[10]。

1961年:1961年にサンタバーバラで開催された会議では、大きな質量光度比は光で検出されない銀河間物質が寄与しているためという可能性が支持を集めた[14]。

1971年7:John F. Meeking ら:しかしながら、アーノ・ペンジアス[18]、Herbert Rood[19]、Neville Woolf[20]、Barry E. Turnrose & Herbert Rood[21]といった研究を経て、1971年に John F. Meeking らはかみのけ座銀河団をX線で観測し高温の銀河団ガスの質量は銀河団が重力的に束縛されているために必要な値の2%しかないことを示した[22][14]。

1970年代:ヴェラ・ルービン:暗黒物質の存在の「間接的な発見」は、1970年代にヴェラ・ルービンによる銀河の回転速度の観測から指摘された[23]。水素原子の出す21cm輝線で銀河外縁を観測したところ、ドップラー効果により星間ガスの回転速度を見積もることができた。彼女はこの結果と遠心力・重力の釣り合いの式を用いて質量を計算できる、と考えた。すると光学的に観測できる物質の約10倍もの物質が存在するという結果が出た。この銀河の輝度分布と力学的質量分布の不一致は銀河の回転曲線問題と呼ばれている。この問題を通じて存在が明らかになった、光を出さずに質量のみを持つ未知の物質が暗黒物質と名付けられることとなった。

1980年代 - ゲルマニウム半導体検出器を使用し、暗黒物質と通常の物質の反応断面積に上限があることが判明した[35]。

1998年 - イタリアの研究グループ(DAMA)が、6月に最大となり12月に最小となる季節変動があることを報告した[35][37]。しかし他機関による研究では否定的な結果が得られている[38][39]。

2000年 - DRIFTが観測開始。
2003年 - CDMS(英語版)が観測開始。
2010年 - XMASSが観測開始。
2019年 - 重力波望遠鏡を使用した観測方法が提案された[40]。

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1990年代前半

:ダークマターはMACHO(Massive Compact Halo Object) だ!
!- もっとも ナイーブ な候補「暗い星」 
!- MACHOが前を通った時の背景の星の増光を見る
!- 1990年代前半には「天下取り」直前 
!- 現在では主要候補からは除外

「暗黒物質研究の現状」: http://ppwww.phys.sci.kobe-u.ac.jp/~miuchi/education/lecture/miuchi_20110419_darkmatter.pdf :の6ページ記述参照

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『"LSPがダークマターだ"という考えが一般的になり始めたのは、1990年代後半から2000年代初頭のころです。これは、超対称性理論がダークマターの候補として注目されるようになった時期と一致しています。』

『この考え方は、超対称性理論を研究する多くのグループや個々の研究者によって提案されました。具体的な個人やグループを挙げることは難しいですが、1980年代から1990年代にかけて、超対称性理論の研究が盛んになり、ダークマターの候補として注目されるようになりました。その後、実験データや理論的な議論が進展するにつれて、この考え方がより具体化され、検証されるようになりました。』以上、GPT3.5

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2002年以前のダークマターについての日経サイエンスの記事はネット上には見当たらず。(byグーグル)

・日経サイエンス  2002年11月号
・本当は存在しない?暗黒物質
: https://archive.md/VwhWl : https://www.nikkei-science.com/page/magazine/0211/dark.html

『「力は加速度に比例する」という有名なニュートンの第2法則を,極めて小さな加速度の下では「加速度の2乗に比例する」とした修正ニュートン力学を提唱したのだ。不思議なことにこのように修正を施すと,暗黒物質の存在を想定しなくても驚くほど矛盾なくさまざまな観測結果を説明できる。そのうえ修正ニュートン力学が予想したいくつもの現象も,その後の観測で確認された。』

 

・日経サイエンス  2003年6月号
・暗黒物質ニュートラリーノを追う (<--これはWIMPの一種:注)
: https://archive.md/vUIZ5 : https://www.nikkei-science.com/page/magazine/0306/dark.html

『ダークマター存在の証拠をつかもうと,世界中で観測プロジェクトが進行している。ダークマターはどんな物質もすり抜けてしまう超対象性粒子のニュートラリーノでできていると考えられ,直接観測することはできない。だが,2002年のノーベル物理学賞を受けた小柴昌利東京大学名誉教授がニュートリノの観測に使った方法なら可能性がある。
 ニュートラリーノは非常にまれだが,原子核と衝突することがある。これが「反跳現象」で,ニュートラリーノとぶつかった原子核はその運動エネルギーを周囲の物質に受け渡したり,電子を外側の原子核に弾き飛ばして励起状態になったりする。このときに起こるわずかな温度上昇や電離現象の痕跡を拾い出せれば,ダークマターが存在する証拠を観測できるわけだ。・・・

太陽系は天の川銀河(銀河系)の中心に対して秒速220kmで周回しているが,地球の公転運動を考慮すると,北半球の夏と冬とではダークマターが地球に降り注ぐ量が違う。
 この差を検出したとイタリアのDAMAプロジェクトが発表したが,追試の結果では否定的だ。しかし,現在進行している観測プロジェクトによって,ダークマターが存在するか否定されるか,明らかになるはずだ。』

 

・暗黒物質を“発見”〜日経サイエンス2007年1月号より
: https://archive.md/tZiHz : https://www.nikkei-science.com/?p=17756

『ダークマターの存在を裏付ける証拠の1つとして、2つの銀河団の衝突が観測されました。衝突では、プラズマと暗黒物質が分離して運動し、重力レンズ効果によって背後の光が曲がる様子が捉えられました。研究結果は、重力の主因が暗黒物質であることを示し、重力理論の大幅な変更は不要ということを示唆しています。』

 

・見え始めた宇宙の暗黒物質〜日経サイエンス2007年4月号より
: https://archive.md/DMIWw : https://www.nikkei-science.com/?p=17698

『宇宙の最大の謎のひとつ暗黒物質(ダークマター)。星や星間ガスと違って,電波も赤外線も可視光もX線も放出しないので,宇宙のどこにどれくらい存在するのかわからない。その正体は,陽子や中性子といった私たちになじみのある物質「バリオン」ではないことは確かなのだが,では何かというと,わからない。・・・では,どうやって暗黒物質をとらえたのか。それは「重力レンズ効果」だ。

 COSMOS計画では,すばる望遠鏡によるさらに精密なスペクトル測定で銀河の距離の誤差を縮めると同時に,X線や赤外線などによる銀河の観測結果も合わせて総合的に分析する。これによって,暗黒物質と銀河の関係がより詳しくわかってくるとみられる。その正体とされる粒子についても,ある程度の物理的な制約をつけられる可能性がある。欧州合同原子核研究機構(CERN)で稼働する大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の実験研究とつながりができるかもしれない。』

 

・暗黒物質は暗くない?〜日経サイエンス2007年6月号より
: https://archive.md/77aV6 : https://www.nikkei-science.com/?p=17662

『暗黒物質は見えないが、銀河の形成に影響を与える。最近の研究では、ダークマターが異なる光源を生む可能性を示唆し、ガンマ線や陽電子の観測を通じてその特性を解明しようとしている。一部の研究者は、重い粒子が高速で移動し、衝突する際に電子と陽電子を生成する可能性があると提案している。これにより、暗黒物質の性質や相互作用に関する新たな理解がもたらされる可能性がある。・・・

重粒子が猛スピードで宇宙を飛び交っているとすると,運動エネルギーの一部が内部エネルギーに変換され,その後に電子と陽電子を放出する可能性があると,今年1月の米国天文学会で報告した。・・・

ともあれ,今秋に米航空宇宙局(NASA)が打ち上げるガンマ線観測衛星GLASTによって仮説を検証できるはずだ。暗黒物質の実体と作用が徐々に解明されるにつれ,暗黒粒子にはきちんとした名前がつけられるだろう。また,「暗黒物質」という名称も,実体が何もわかっていないことの裏返しにすぎないわけで,それ自体が暗闇に葬られるだろう。』

 

・暗黒物質は近くにも存在?〜日経サイエンス2009年3月号より
: https://archive.md/0Udyd : https://www.nikkei-science.com/?p=17111

『宇宙の5倍の暗黒物質が通常の物質とは異なり、重力効果でのみ存在が示される。地球と月の引力を測定し、その差が暗黒物質ハローによる可能性を示唆。さらに、暗黒物質が惑星の温度を上げる可能性も提案され、科学者は新データを求めて探索を続けているが、データ公表の倫理についても議論されている。

物理学者たちは暗黒物質に関する新データを渇望しているので,一部の研究者は何にでも飛びつく。2006年に打ち上げられたPAMERA衛星の最新結果から暗黒物質と通常物質との相互作用が明らかになったというウワサが2008年に広まった。しかし同ミッションの研究者たちは学会で数枚のスライドを映写しただけで,それ以上のデータを公表しなかった。・・・』

 

・幽霊粒子が大量に〜日経サイエンス2011年3月号より
: https://archive.md/jEJzh : https://www.nikkei-science.com/?p=16008

『ニュートリノは極めてとらえにくい粒子で、通常のニュートリノと異なり、相互作用しない「ステライルニュートリノ」の存在が示唆されている。最近の実験では、暗黒物質の正体がステライルニュートリノである可能性が浮上しており、超新星の動きやX線の観測などでその証拠が見つかっている。さらに、地上実験でもステライルニュートリノの存在を検証するための試みが行われている。

彼らはチャンドラX線望遠鏡を使って,暗黒物質を豊富に含むと考えられている近くの矮小銀河を観測し,ステライルニュートリノの崩壊から予想されるのと同じ波長のX線が他の波長よりも強く出ていることを発見した。
 また,超新星の観測から別の証拠が見つかっている。ステライルニュートリノが実在するなら,超新星から磁力線に沿って細く絞られた強いステライルニュートリノ流が飛び出し,その反動で超新星の中央部にあるパルサーが宇宙空間を移動しているはずだ。まさにその通りの現象が観測された。超新星のパルサーは秒速数千kmの速さで宇宙空間をすっ飛んでいる。
ステライルニュートリノの証拠を地上の実験に求めることもできる。米国立フェルミ加速器研究所の研究チームは最近,その証拠を探るために16年前の実験結果を検証した。通常のニュートリノを500m離れた地中の検出器に向かって発射した実験だ。ニュートリノは飛行中にタイプが変わるが(ニュートリノ振動という現象),その変化の仕方が,ステライルニュートリノが実在する場合に予想されるものとまさに一致した。』

 

2012年~13年:LHCにてヒッグス粒子の検出と確認がなされた。このイベントは標準理論の一応の完成を意味する。そうであればこれ以降は「標準理論を超えた新物理」に一層の焦点が当たる事となった。

 

・ステライルニュートリノ見つからず〜日経サイエンス2015年3月号より
: https://archive.md/WzHwo : https://www.nikkei-science.com/?p=45805

『例えば宇宙に広がって通常の物質を重力で引き寄せているとされる謎の暗黒物質の一部は,ステライルニュートリノなのかもしれない。

だが数十年に及ぶ探索にもかかわらずステライルニュートリノは見つかっておらず,最新の検出実験も空振りに終わった。中国で実施されている国際的なニュートリノ実験「ダヤベイ(大亜湾)ニュートリノ研究」は,7カ月間の探索の末にステライルニュートリノの証拠を何も見つけられなかった。

現地の物理学者たちは今後,捜索範囲を広げて実験を続ける予定だ。何しろ,ヒッグス粒子探しも最初の30年間ほどは何もつかめなかったのだから。』

 

・暗黒物質探索に見えた手がかり〜日経サイエンス2015年8月号より
: https://archive.md/0aGMF : https://www.nikkei-science.com/?p=47638

『暗黒物質の正体に迫る過去の試みは、暗黒物質が何でないかを明らかにすることに焦点があり、候補が次々に除外される中、新種の力が暗黒物質の相互作用を示唆する手がかりが見つかりました。この手がかりは「エイベル3827銀河団」を観測するなかで見つかった。

同銀河団で衝突しつつある4つの銀河にある暗黒物質の位置を,重力レンズ効果(光が大質量天体の近くを通る際に曲げられる現象)をもとに追跡した。ハッブル宇宙望遠鏡とチリにある超大型望遠鏡VLTが行った観測によって,これら銀河の少なくとも1つを取り巻く暗黒物質が,そこにある通常の物質よりも遅れて動いていることがわかった。暗黒物質粒子どうしが相互作用して自らの動きを遅らせていることを示唆しており,初めて見つかった現象だ。

エイベル3827銀河団の観測では、暗黒物質の動きが通常の物質よりも遅れていることが発見され、暗黒物質粒子同士の相互作用によって生じたものと考えられています。この相互作用は通常の物質には影響しないため、暗黒物質に特有の重力以外の新しい力が関与している可能性が示唆されています。』

 

・あるはずだが見えない「暗黒物質」 謎の存在に新説 2015/8/29
: https://archive.md/RKJKB : https://www.nikkei.com/article/DGXMZO90615230X10C15A8000000/

『村山機構長らが提唱したのがSIMP(シンプ)説だ。暗黒物質粒子は1種類ではなく、複数種類あって、それらは極微の世界を支配するもう1つの力、「強い力」とそっくりの力を持つ重い粒子であるとする。』

 

・日経サイエンス  2015年10月号
・特集 暗黒物質に異説
: https://archive.md/dlTUO : https://www.nikkei-science.com/201510_028.html

『もしかしたら実験で検証しようとしている暗黒物質の仮説に問題があるのではないかとの見方が出てきた。ではいったいどんなモデルが有望なのか,理論研究が活発になっている。実験や観測も熱を帯びている。』

・日経サイエンス  2015年10月号
特集:暗黒物質に異説
・WIMPではなくてSIMP
: https://archive.md/tarDC : https://www.nikkei-science.com/201510_040.html

『新たな暗黒物質の説として、WIMPに代わる有力な候補としてSIMPが提案されています。
SIMPは強い力に似た相互作用を持つ重い粒子であり、WIMPとは異なる特性や質量を持っています。
しかし、SIMPはWIMPと同様に宇宙全体の暗黒物質の性質や量を説明するだけでなく、銀河レベルの暗黒物質の分布を再現することが可能です。』

 

・日経サイエンス  2015年10月号
特集:暗黒物質に異説
・ダーク銀河の謎
: https://archive.md/0QGB1 : https://www.nikkei-science.com/201510_030.html

『暗黒物質の証拠を探すための実験が進行中であり、これにより、暗黒原子や暗黒分子が形成され、さらにはそれらが銀河円盤や渦巻銀河の腕に重なっているかもしれないという仮説が検証されています。』

 

・日経サイエンス  2015年10月号
特集:暗黒物質に異説
・暗黒物質を捉える
: https://archive.md/3RXjz : https://www.nikkei-science.com/201510_048.html

『太陽系には暗黒物質の風がはくちょう座の方向から吹いているとされ、地球の公転によって風速が年周期で変動すると考えられる。暗黒物質の季節変動を捉えた観測データが報告されているが、それを否定する実験結果もあり、議論が続いている。日本では神岡鉱山のXMASS実験をはじめとする複数の実験が進行中である。』

 

・日経サイエンス  2015年10月号
特集:暗黒物質に異説
・すばるが見た暗黒宇宙
: https://archive.md/863zX : https://www.nikkei-science.com/201510_044.html

『星のように遙か彼方にあるのならともかく,身の回りに存在しているのなら,つかまえられてもよさそうだが,いまだに成功していない。現実には,手の届かない星の世界,それも太陽系や天の川銀河よりもさらに遠く離れた宇宙に存在する暗黒物質の方がよく捉えられ,研究が進んでいる。現在,世界の数多くの大型望遠鏡が暗黒物質の観測を重点テーマにしている。
この暗黒物質観測で大きな存在感を示しているのが,ハワイ島マウナケア山頂(標高約4200m)にある国立天文台の口径約8mの「すばる望遠鏡」だ。つい最近も暗黒物質関連の2つの重要研究成果が相次いで発表された。すばるは宇宙のダークサイドを覗き見る窓になっている。』

 

・暗黒物質粒子の検出へ王手〜日経サイエンス2016年4月号より
: https://archive.md/BRiD0 : https://www.nikkei-science.com/?p=49429

『物理学者たちは、ダークマターの正体を突き止める好機が現在訪れており、WIMPと呼ばれる暗黒物質の候補粒子を追求しています。XENON1Tという最新の実験では、これまでの検出器とは異なる高感度を誇ります。もし数年後にもWIMPが発見されない場合、物理学者たちはより異端な説明を模索する必要性を迫られるでしょう。WIMPは超ひも理論に基づく粒子であり、ダークマターの量と一致する可能性があるため、支持を集めています。これまでの探索実験でWIMPが見つからなかったため、新たな可能性の中から解が見つかることを期待しています。

物理学者は、WIMPと呼ばれるダークマターの候補粒子を追求しています。XENON1T実験は、これまでの検出器よりも高感度であり、成功の可能性が高まっています。もしWIMPが発見されない場合、新たな説明を模索する必要が生じるでしょう。』

↑↑↑2016年時点での業界の読みは随分と楽観的だった様です。そうしてその期待に反する様に2024年現在でもXENONnT(=XENON1Tの次のバージョン)からは「ダークマター検出」という知らせは届いてはおりません。

 

・宇宙の暗黒物質の固まり、少ない可能性 国立天文台など観測 2018/2/27
: https://archive.md/rl5du : https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27459130X20C18A2CR8000/

『暗黒物質の固まりとみられる場所を65カ所確認したが、当初予想よりも少なかった。現在主流の「宇宙は加速度的に膨張している」との理論の一部見直しにつながる可能性がある。

宇宙の膨張ペースの変化が速いと暗黒物質がなかなか集まれず、固まりになりにくいという。
今回の結果は宇宙の膨張が予想より急激だった可能性を意味している。』

 

・特集:暗黒物質の正体ダークホース新粒子「アクシオン」
L. ローゼンバーグ(ワシントン大学)
: https://archive.md/dpN8G : https://www.nikkei-science.com/201805_036.html
・日経サイエンス 2018年5月号

『暗黒物質の候補のなかでも穴馬的な存在が,理論上の粒子「アクシオン」だ。暗黒物質を説明できるだけでなく,原子核を1つにまとめている「強い力」の謎を解くことができると考えられている。
米国で進む「アクシオン暗黒物質実験」が新段階に入り,最も可能性の高い質量のアクシオンを検出(またはそれが存在しないことを証明)できる感度を達成している。』

 

・日経サイエンス  2018年5月号
特集:暗黒物質の正体
・もうひとつの見えない粒子「ステライルニュートリノ」
: https://archive.md/2OfFj : https://www.nikkei-science.com/201805_052.html

『ニュートリノは電子型,ミュー型,タウ型の3種類の存在が知られる。それらの質量などに関する情報は,ニュートリノが飛行する間に種類が変わる「ニュートリノ振動」の実験によってかなりわかってきた。ただ一部のニュートリノ振動実験では,未知の種類の存在を示唆する結果が報告されている。他の実験結果との整合性を考えると,未知の種類は既知の3種類と違って,放射性元素の崩壊などを起こす「弱い力」が作用しない「ステライル型」だと考えられている。ステライル型が実在するのかどうか確かめるため,大強度陽子加速器施設「J-PARC」で大がかりな実験が年内にも始まる予定だ。』

 

・日経サイエンス  2018年9月号
特集:究極の未解決問題
・暗黒物質とは何か
: https://archive.md/CQ54o : https://www.nikkei-science.com/201809_052.html

『宇宙物理学者と天文学者はこの宇宙の物質の大半が「暗黒物質(ダークマター)」だと結論づけている。私たちが通常の物質を見るときのような電磁気的な影響を通じてではなく,重力の効果からその存在が推論されている物質だ。

宇宙の大半は暗黒物質(ダークマター)であり、その存在は重力の効果から推測される。暗黒物質は通常の物質とは異なり、人間の視点では理解しにくいが、物質が原子から成る必要はない可能性がある。』

 

・ダークマターの正体に迫る
東京大学カブリIPMU主任研究者 村山斉氏 2019/4/19
: https://archive.md/pLu0h : https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43894550Y9A410C1TJN000/
『ダークマターはこれまで、質量はあるが互いにぶつかって跳ね返るといった相互作用は起こさないと考えられていた。すばる望遠鏡で銀河を詳しく観測、ダークマターの正体を解き明かそうとしている。』

 

・日経サイエンス  2020年7月号
・重力レンズ天文学誕生に貢献 謎の天体ダークマターに迫る:大栗真宗
: https://archive.md/EE6WF : https://www.nikkei-science.com/202007_008.html

『光の進路が曲がり遠くの星や銀河が変形して見える「重力レンズ効果」
この現象を利用した新しい天文学の誕生に大きく貢献した
重力レンズ効果をもたらすダークマター(暗黒物質)の解明に取り組む』

 

・新たな宇宙論への道?巨大銀河団に高密度ダークマター 2020/10/5
: https://archive.md/nK7Qk : https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63855550V10C20A9000000/

『最新の研究によれば、銀河団内に存在するダークマターの密度が、従来の理論であるラムダCDMモデルの予測よりもはるかに高いことが示唆されている。これにより、宇宙の構造や進化を説明するための新たな理論が必要とされています。この研究では、銀河団の周りを通過する光が曲げられる現象を観測し、その結果、ダークマターの領域が標準モデルよりも10倍以上も多いことが明らかになりました。これにより、宇宙のダークマターに関する理解が深まり、新たな宇宙論の発展への可能性が示唆されています。』

 

・東北大と東大、ダークマターの正体を新粒子・アクシオンとする説を提唱 2020/10/13
: https://archive.md/vOpG3 : https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP541599_T11C20A0000000/

『●ダークマターの直接探索実験であるXENON1T(*1)によって捉えられていた予想外の電子散乱事象は、光とほとんど相互作用をしないアクシオンという新粒子がダークマターであれば説明可能であることを示しました。

●さまざまな星の進化の観測からもアクシオンの存在が示唆されており、XENON1T実験における過剰な電子散乱事象から導かれるアクシオンの質量および相互作用の強さと見事に一致することを明らかにしました。
●これにより、ダークマターの直接探索実験とさまざまな星の進化の観測が一つの事実「アクシオンダークマター」により説明される可能性が開かれました。
●本研究の発見が今後の実験で確定的なものとなれば、宇宙論および素粒子理論の発展に大きく貢献します。』

↑↑↑:この話は「予想外の電子散乱事象は偶然の産物、もしくはバックグラウンドの放射線検出の結果」が結論でした。お粗末様。

 

・日経サイエンス  2020年11月号
・特集:暗黒物質の有力候補 ステライル ニュートリノを追う
: https://archive.md/ofayN : https://www.nikkei-science.com/202011_061.html

『ステライルニュートリノは重力以外の力が作用しないので,もし存在すれば,暗黒物質の有力候補になる。第4のニュートリノは本当に存在するのか。その確証を得るため,新たな3つの実験が近く始まる。米国立ロスアラモス研究所のCCM実験と米国立フェルミ加速器研究所のSBN実験,日本の大強度陽子加速器施設「J-PARC」で行われるJSNS2実験だ。』

 

・日経サイエンス  2020年11月号
特集:暗黒物質の有力候補ステライルニュートリノを追う
・動き出した米国の探索実験
: https://archive.md/zwqWB : https://www.nikkei-science.com/202011_062.html

『素粒子物理学の標準モデルではニュートリノは3種類しかないと想定されているため,ステライル型が存在すれば,標準モデルを超える新領域が開かれるだろう。第4のニュートリノは本当に存在するのか。それを確かめるための実験が米国立ロスアラモス研究所で近く本格的に始まる。』

 

・日経サイエンス  2020年11月号
・特集:暗黒物質の有力候補 ステライルニュートリノを追う
・精密実験で正体を探る: https://archive.md/SsApO : https://www.nikkei-science.com/202011_070.html

『ニュートリノは電子型,ミュー型,タウ型の3種類が知られるが,「ステライル型」と呼ばれる第4の種類の存在が一部の実験で示唆されている。ただ,確証を得るには至っていないため,日本と米国で決定打となる新たな3つの実験の準備が進んでいる。 日本が主導するのは大強度陽子加速器施設「J-PARC」で実施する「JSNS2(スクエア)実験」で,2020年6月,試運転に成功,2020年秋から実験を本格的に始める。』

 

・LHCレポート:Search for squarks and gluinos in final states with jets and missing transverse momentum using 139 fb−1 of s√ =13 TeV pp collision data with the ATLAS detector「ATLAS検出器を使用して、ジェットと欠けている横運動量を持つ終状態におけるスクォークとグリュイーノの捜索:13TeVのpp衝突データ139 fb^(-1)を用いて」[Submitted on 27 Oct 2020 :last revised 1 Mar 2021 (this version, v2)]

結果は『ATLAS 実験によって、質量中心エネルギーでの陽子-陽子衝突で記録されたものです。s√= 大型ハドロン衝突型加速器の実験 2 では 13 TeV、』
「13 TeVまで探したが何もない」が結論です。このレポートの内容が従来言われていた「ダークマター=WIMP説」をほぼ否定した形になっています。

という訳で、時代は又一つ先に進む事になりました。

 

・ダークマターの正体は何か?広大なディスカバリースペースの網羅的研究領域(2020-11-19 – 2025-03-31)村山etc: https://archive.md/mgUpN : https://member.ipmu.jp/DarkMatter/overview.html :https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-AREA-20A203/20A203_saitaku_gaiyo_ja.pdf : 

『研究領域 (略称) ダークマター
研究課題/領域番号 20A203
研究種目 
学術変革領域研究(A)

領域代表者 村山 斉  東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (20222341)
研究期間 (年度) 2020-11-19 – 2025-03-31
この領域に属する研究課題 公募研究 (26件)   計画研究 (11件)   総括班 (1件)

サマリーおよび審査結果の所見: https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-AREA-20A203/20A203_saitaku_shoken_ja.pdf :』

 

・宇宙の暗黒物質を探せ 素粒子実験が難航、研究広がる 2022年3月19日 
: https://archive.md/bdqeU : https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD108TF0Q2A210C2000000/

『宇宙に存在する物質の約8割を占めるが正体がわかっていない暗黒物質(ダークマター)を探す研究が大きく変わりつつある。有力候補と考えられていた素粒子を探す実験が難航、探索する範囲を広げる必要があるという見方が台頭しているためだ。既存の研究施設も活用しながら、視野を広げて暗黒物質を探す研究が始まっている。

岐阜県飛驒市の神岡鉱山跡に建設された重力波望遠鏡「KAGRA(かぐら)」は、アインシュタインが理論上予測した重力波の観測装置です。』

 

・宇宙の暗黒物質、まばらに存在 近畿大など 2023/9/14
: https://archive.md/OcgF4 : https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0808S0Y3A900C2000000/

『近畿大学の井上開輝教授や国立天文台などは、正体不明の物質「暗黒物質(ダークマター)」が約3万光年単位で、密になったり、まばらになったりしていることを解明した。これは従来考えられていた距離の10分の1以下だ。暗黒物質は宇宙の誕生や形成に関わっているとされ、局所的に存在する性質が重要な働きを及ぼした可能性がある。』

 

・銀河作る暗黒物質、太陽5兆個分の質量 東大など推定 2023/9/21
: https://archive.md/yUfYm : https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC143LS0U3A910C2000000/

『遠方のクエーサー観測を目的としてすばる望遠鏡を活用するプロジェクトで得られたデータを詳細に調べたところ、130億年前のダークマターハローの質量を推定できた。その量は他の時代の推定とほぼ同じだった。』

 

日経サイエンスとしては2020年11月号の

「・特集:暗黒物質の有力候補 ステライルニュートリノを追う」の記事を最後にその後3.5年間にわたって「ダークマター関連の記事」は掲載がない様です。

これは「現状がいかにダークマター探索に難航しているのか」という事をよく表しています。

そうしてまたそうであればこそ「アメリカが今、本気になってダークマター探索に乗り出した」のであります。

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現代物理学の展望 記事一覧

 

 


ダークマターの 直接探索について

2024-06-26 | 日記

2018年~2019年頃の資料

「ダークマターの 直接探索」: https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/prwps/wp-content/uploads/DM.pdf :

資料1~9ページまでが「観測的に確認されているダークマターの証拠」

10ページ目が「ダークマターと素粒子物理学の関係について」の記述

11ページ目以降は神岡で行われていたXMASS実験の報告。(注1

たXMASS実験は2010年10月から観測開始。

その後、2012年6月から改修のため一時検出器の運転を停止し、改修終了後の2013年11月から観測を再開した。

観測終了は2019年2月20日。この日にXMASS-I検出器から液体キセノンを回収。

この実験の後はイタリアのグランサッソでのXENONnT実験に参加する事になった。

 

XENONnTの前実験はXENON1T。(注2

XENON1Tの初観測は2016年11月から2017年1月にかけて行われた測定の34日。

2016年に観測を開始、2018年末に次世代検出器XENONnT検出器 の建設のために観測を終了。

ここまではXENON1TとXMASS-Iはパラレル観測。

この後でこの2つの組織は合流してXENONnTとなる。

XENONnT検出器は2020に完成・測定を開始した。

 

それでこの話のポイントは「宇宙論的には観測的に確認されているダークマターの証拠」でそれなりにダークマターの研究は実行できるし、今もそうやって研究されている。

で注目すべきは「そこに素粒子物理学がからんでくる」という所にあります。

というのも「インフレーションービッグバン宇宙論の成立」の前にSUSYやらGUTが提唱されていて、それらは「素粒子物理学が抱えていた問題を解くために考え出されたもの」なのでした。

もちろん「ダークマターとSUSYやらGUTが関係を持つ」などという事はそれらが提唱された当時は誰も考えてはいなかった事でしょう。

そもそも「宇宙観測」と「素粒子物理学」の間に緊密な関係がある、などという事は「素粒子物理をやっている当時の物理屋さん達には思いもよらない事であったはず」です。

そうしてその状況を変えたのが前のページで示した2003年の「標準宇宙論の成立」なのでした。

ここで『宇宙の組成は4%が通常の物質、23%が正体不明のダークマター、73%がダークエネルギーである。
このことからいわゆるΛ-CDMモデル(Λ-CDM:宇宙定数+冷たい暗黒物質)と呼ばれる宇宙モデルとの一致が確認された。』が確認されたのです。

他方で、

『"LSPがダークマターだ"という考えが一般的になり始めたのは、1990年代後半から2000年代初頭のころです。これは、超対称性理論がダークマターの候補として注目されるようになった時期と一致しています。』(注3

『この考え方は、超対称性理論を研究する多くのグループや個々の研究者によって提案されました。具体的な個人やグループを挙げることは難しいですが、1980年代から1990年代にかけて、超対称性理論の研究が盛んになり、ダークマターの候補として注目されるようになりました。その後、実験データや理論的な議論が進展するにつれて、この考え方がより具体化され、検証されるようになりました。』

『LSPは「最も軽い超対称性粒子(Lightest Supersymmetric Particle)」の略称です。そうしてSUSYではLSPは安定して存在する、とされている為に一般的にはダークマターの候補として注目されています。』以上、GPT3.5

そうなりますと「通常の物質では説明がつかないダークマターと言うのはLSPだろう」という事になります。

しかもこのSUSY粒子は「存在が確認できると素粒子物理学上で問題になっていた事柄の回答になっている可能性がある」と認識されました。

それらの問題は例えば次のようなものでした。(注4

『・素粒子標準模型に含まれるヒッグス場は強い紫外発散を生ずる。くりこみ理論の処方箋にしたがって発散を消すことはできるが、理論のもつパラメータを微調整することになって気持ち悪い(階層性問題)。超対称性(SUSY)があれば、もっとも強い紫外発散を打ち消してくれるので気持ち悪さが軽減される。

・ここで超対称性をもちこむと、電磁気力、強い力、弱い力の3つの結合定数が高エネルギーでぴったり一致するするところがある。これは大統一理論(GUT)につながっているはずだ。

・既知の素粒子すべてに対応する超対称性粒子があらわれ、そのうちの最も軽い粒子は他の粒子に壊れることができない(LSP)。こうして残ったものは暗黒物質にぴったり。

・階層性問題を解決するには、超対称性粒子はヒッグス粒子の質量よりそんなに重いはずはない。このくらいの質量をもつ粒子が宇宙初期に作られる量は、予想される暗黒物質の量に近い。

・超対称性模型には数多くのパラメータが含まれ、当時問題になっていたいくつかのアノマリー(標準模型と実験のずれ)を説明するのに十分だ。etc』

 

さてこの状況はつまりは「宇宙で見つかったダークマターという『正体不明の穴』にピッタリと合うパズルのピースが素粒子物理にあって、それがLSPだ」という事です。

ただしこのLSP=SUSY粒子は未だ見つかった事はなく、「単なる理論上の存在」なのですが「もしそれが予定していた場所に見つかった」ならば、「宇宙論の問題を解く」だけではなくて「素粒子物理の問題も解いてしまう」という「たいへんなもの」なのです。

そうであればこの「期待の新人の大捜索=ダークマターの直接観測に世界中の関係者が熱中する状況になっている」と言うのが現状と言えます。(注5

 

注1:XMASS実験: https://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/xmass/news/index.html :

注2:XENON実験: https://ja.wikipedia.org/wiki/XENON%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%9B%B4%E6%8E%A5%E6%8E%A2%E7%B4%A2%E5%AE%9F%E9%A8%93 :

注3:MACHO(Massive Compact Halo Object) 
!- もっとも ナイーブ な候補「暗い星」 
!- MACHOが前を通った時の背景の星の増光を見る
!- 1990年代前半には「天下取り」直前 
!- 現在では主要候補からは除外

「暗黒物質研究の現状」: http://ppwww.phys.sci.kobe-u.ac.jp/~miuchi/education/lecture/miuchi_20110419_darkmatter.pdf :の6ページ記述参照

注4: https://archive.md/UNjfB :

注5:特にアメリカはこの「期待の新人の大捜索にかじを切った」と言えます。

対してセルンは「ダークマターは横目でにらみますが、当面はヒッグスだ」となっている模様です。

 

追記:ダークマターと並んで流行っているコトバは「新しい物理」(注6

「新物理(BSM=Beyond the Standard Model)」とは「標準理論を超えた物理」という事らしい。

と言うのも「標準理論を超えた現象が見つからない=いつまでたっても標準理論の枠組みの中にいる事」への不満がある模様。

で、その標準理論と言うのが「実験結果を計算できる」のはいいのだが「その理由を説明しない理論」=「当面の寄せ集めの理論」であって「最終理論とはとても呼べない形をしている」のだそうな。(注7

そうであれば「標準理論を超えた、もっと基礎的な理論があるはず」ということで、それが物理やさん達の新理論構成のモチベーションになっている。

それでSUSYやらGUTやら超弦理論が考え出された。

しかしながらそれらの理論は「実験での検証がいまだできていない理論」なのです。

さて、とは言いながら「まだよく分かっていないヒッグス粒子をよく調べれば新物理への道が見えるのでは?」という読みがあります。

また「ニュートリノ振動」というこれは明らかに「標準理論を超えた現象が見つかっている」のですから「これをよく調べよう」というのがアメリカの戦略です。

いずれにせよ「ヒッグス粒子の探究」やら「ニュートリノ振動の探究」が「ダークマターの探究」と並んで「新物理への具体的な突破口となる可能性」があるのです。

 

注6:たとえばこんな記事があります。

「なぜ新物理があると考えられるか」: https://indico.cern.ch/event/1029546/contributions/4322819/attachments/2262661/3840927/SUSY_DM2021.pdf :

注7:「超空間」:ミチオ・カク著:

P186『・・・標準理論はこの方法で組み立てられている。つまり、互いに独立している3つの多重項を粘着テープで張り合わせているのだ。見た目は悪いが、少なくとも3つのピースは粘着テープでつながっている事になる。』

p187『標準理論は全く異なる相互作用を大ざっぱにつなぎ合わせたものである為に、全くエレガントでないという事だ。・・・』

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現代物理学の展望 記事一覧

https://archive.md/NwpDO

 

 


現代物理学の展望 記事一覧

2024-06-25 | 日記

現代物理学の展望一覧

現代物理学が追いかける2つの聖杯、あるいは「物理学の危機?」

素粒子物理学の展望

 セルン

 ・その1・素粒子物理学の展望:セルンの1

 ・その2・素粒子物理学の展望:セルンの2

 ・その3・素粒子物理学の展望:セルンの3

 日本

 ・その4・素粒子物理学の展望:日本の1

 ・その5・素粒子物理学の展望:日本の2

 ・その6・素粒子物理学の展望:日本の3

 ・その7・素粒子物理学の展望:日本の4

 ・その8・素粒子物理学の展望:日本の5

アメリカ

 ・その9・素粒子物理学の展望:アメリカの1

 ・その10・素粒子物理学の展望:アメリカの2

セルン+アメリカ+日本

 ・その11・素粒子物理学の展望:セルン+アメリカ+日本

超対称性(SUSY)、力の統一(GUT)、超弦理論とダークマターの歴史(1915~2003年)

 ・超対称性(SUSY)、力の統一(GUT)、超弦理論とダークマターの歴史(1915~2003年)

ダークマターを求めて

 ・ダークマターの 直接探索について

 

 

 

 

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現代物理学の展望 記事一覧

 


超対称性(SUSY)、力の統一(GUT)、超弦理論とダークマターの歴史(1915~2003年)

2024-06-21 | 日記

1915~1916年 一般相対論の発表 アインシュタイン
・・・そうしてすべてはここから始まったのであります。

1914年(?):ノルドシュトルム:五次元 (Five-dimensional space) 目の時空をアインシュタイン方程式に四次元をマクスウェル方程式に分割する方法は、1914年にグンナー・ノルドシュトルムによって初めて発見された。(グンナーの重力理論(英語版)参照)しかし、この理論は忘れ去られた。

1916年:カール・シュヴァルツシルトが、アインシュタイン方程式を球対称・真空の条件のもとに解き、今日ブラックホールと呼ばれる時空を表すシュヴァルツシルト解を発見した。

1917年: アインシュタイン論文『一般相対性理論についての宇宙論的考察』(S.B. Preuss. Akad. Wiss., 142-152)・・・膨張も収縮もしない、静的な宇宙を表現するための宇宙項についての考察

1918年: アインシュタイン論文『重力波について』(S.B. Preuss. Akad. Wiss., 154-167)

1919年4月:カルツア:アインシュタインに手紙を送る:カルツアの5次元理論:マックスウエルの方程式とアインシュタインの方程式がそこから出てくるもの。

1920~1950年:アインシュタイン:「統一場の理論」検討:但しこの理論はアインシュタインの努力にもかかわらず完成しなかった。

1922年:宇宙膨張を示唆するフリードマン・ロバートソンモデルが提案される。
・・・フリードマン方程式、さらにはシュヴァルツシルト解は本当に一般相対論発表後、すぐに提案されている事が良く分かります。
・・・ウィレム・ド・ジッターとアルベルト・アインシュタイン (Albert Einstein) は、1920年代にライデンで、宇宙の時空の構造について研究を共にした。
(ド・ジッター宇宙・・・密度と圧力がともにゼロで、宇宙項が正の値をとる宇宙である。)
(フリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー計量・・・1920年代に アレクサンドル・フリードマン、ジョルジュ・ルメートル、ハワード・ロバートソン、アーサー・ウォーカーらによって独立に議論されていたものである。)

1921年~1926年:カルツァ=クライン理論:重力と電磁気力を統一するために五次元以上の時空を仮定する理論である。理論物理学者のテオドール・カルツァが1921年に提唱し、1926年にオスカル・クラインが修正した。

クラインは、五次元時空の理論に余剰次元を非常に小さなスケールに折りこむというコンパクト化の理論を組み込んだ。

1927~33年:膨張宇宙説、ジョルジュ・ルメートル、彼が1927年から1933年にかけて発表した理論は特にアルベルト・アインシュタインの一般相対性理論に基づいたものであった。

1928年:ディラック:1928年 - ポール・ディラックが相対論的量子力学により、電子の反粒子の存在を予言(ディラック自身はこの粒子を陽子と解釈しようとした)

1948年:- 朝永振一郎、リチャード・P・ファインマン、ジュリアン・シュウィンガーによる量子電磁力学の繰り込みの発表:QED

1948年にジョージ・ガモフは高温高密度の宇宙がかつて存在していたことの痕跡として宇宙マイクロ波背景放射 (CMB) が存在することを主張、その温度を5Kと推定した。<--後にビッグバン宇宙論と呼ばれる事になる。

1954年: - 楊振寧、ロバート・ミルズによりヤン・ミルズ理論が発表された[4]。

1964年:マレー・ゲルマンによりクォーク模型が提唱された[9]。
ピーター・ヒッグスによりヒッグス機構が提唱された[10]。

1964年、CMB が1964年になって発見されたことにより、ビッグバン宇宙論の対立仮説(対立理論)であった定常宇宙論の説得力が急速に衰えた。
(1964年にアメリカ合衆国のベル電話研究所(現ベル研究所)のアーノ・ペンジアスとロバート・W・ウィルソンによってアンテナの雑音を減らす研究中に偶然に発見された。)

1967年:- スティーブン・ワインバーグにより後のワインバーグ=サラム理論が発表された[11]。(1968年にアブドゥッサラームも独立に発表[12]。)

1968年:超弦理論: ベネツイアーノ、鈴木:オイラーのベータ関数に行き当たる。

1969年:KSV予想:吉川、崎田、ヴィラソロ

1970年:超弦理論:南部

1970年代、暗黒物質(ダークマター)の存在の「間接的な発見」は、1970年代にヴェラ・ルービンによる銀河の回転速度の観測から指摘された。

1973年:小林誠と益川敏英により小林・益川理論が提唱された[15]。

ガーガメル実験により、中性カレント反応(Zボゾンを介した相互作用)が発見された。

1974年:GUT(Grand Unified Theory):歴史的には、単純なリー群 SU(5)に基づく最初の真の GUT は、1974 年にHoward GeorgiとSheldon Glashowによって提案されました。[3] Georgi-Glashow モデルには、半単純なリー代数Pati-Salam モデルが先行しました。

同じく 1974 年にAbdus SalamとJogesh Patiによって作成されました [4] 。ゲージ相互作用を統一するというアイデアの先駆者です。

1975年:ホーキングの原論文は「Particle Creation by Black Holes」Received April 12, 1975:Commun. math. Phys. 43, 199--220 (1975):BHは最終的にホーキング放射で蒸発する、とした。

1977年:ピエール・ファイエ:SUSY:素粒子物理学では、標準モデルの最初の現実的な超対称バージョンが 1977 年にピエール・ファイエによって提案され、最小超対称標準モデル(略して MSSM)として知られています。とりわけ、階​​層問題を解決することが提案されました。

1980年頃:標準模型(Standard Model)は、1960年代から1970年代にかけて発展し、1970年代後半から1980年代初頭にかけてその基本的な構造が確立されました。

1981年、インフレーション宇宙論、この理論は、1981年に佐藤勝彦、次いでアラン・グースによって提唱された。
この膨張宇宙の時間発展は正の宇宙定数を持つド・ジッター宇宙と同様のものである。
そしてインフレーションによって、1970年代に指摘されていたビッグバン宇宙論のいくつかの問題点が解決される。

1984年:超弦理論:グリーン、シュワーツ:超弦理論が量子重力を記述するただ一つの矛盾のない理論である事の証明

超弦理論のブーム到来

1985年:超弦理論:エドワード・ウィッテン登場:コホモロジー理論による弦の場の理論発表

1989年頃:「局所場から超ひも理論へ - (現代物理思想の一潮流)」

http://repository.tokaigakuen-u.ac.jp/dspace/bitstream/11334/1237/1/KJ00000119040.pdf

6ページにアインシュタインに始まった「統一場の理論」構築の流れが「超弦理論」に至るまでの流れとしてその当時の認識として図示されている。

そうして2024年時点でもこの認識に変わりは無いように見える。


1991年 COBE報告 (COBE:1989年打ち上げ)<--リンク
CMBは、100,000分の1のレベルで、固有の「異方性」を初めて持つことがわかりました。
宇宙マイクロ波背景(CMB)スペクトルは、2.725 +/- 0.002 Kの温度を持つほぼ完全な黒体のスペクトルです。
この観測結果は、ビッグバン理論の予測と非常によく一致。<--ビッグバン理論の最終検証。

1998年:DAMA: DAMAは 1998年に季節変動を捉えることでダークマターを検出したという報告をして以降,検出器の改良を経て観測を継続,これまでに通算20 年分の季節変動を観測している.但しそれ以外の直接観測での追試では観測されていない。

1998年、宇宙の加速膨張の発見。<--リンク
2つのチーム(パールムッター、シュミット+リース)がほぼ同時にそれらの研究結果を発表。
2001年、SN1997ffというもっと遠方のIa型超新星爆発がハッブル宇宙望遠鏡により偶然観測されており、2001年にそのデータの再解析が行われました。
両者の傾向を同時に説明するためにはΩM=0.35、ΩΛ=0.65の理論曲線が良く合うことが示されている。(ΩM=物質+ダークマター、ΩΛ=ダークエネルギー)
A.G.Riess et al, Astrophys.J. 560 (2001) 49-71.<--理論曲線は宇宙の曲率はゼロとして計算したものと推定される。

2000年 BOOMERamG<--リンク (http://archive.fo/G6ykd)
CMBのはじめてシャープな分布図が得られた。(COBEの観測により得られた分布図は、まだピンぼけ画像のようなものに過ぎなかった。)
そして、今回ブーメラン・プロジェクトにより得られたマイクロ波宇宙背景放射のゆらぎの分布は、宇宙が「平坦な宇宙」であると仮定した場合予想される分布と非常によく一致していた。

2003年:標準宇宙論: WMAP報告・・・CMBの詳細解析<--リンク (WMAP打ち上げは2001年)
宇宙の組成は4%が通常の物質、23%が正体不明のダークマター、73%がダークエネルギーである。
このことからいわゆるΛ-CDMモデル(Λ-CDM:宇宙定数+冷たい暗黒物質)と呼ばれる宇宙モデルとの一致が確認された。

宇宙の組成やインフレーションを含めた標準宇宙論が確立したのは最近で、WMAP衛星の観測結果のでた 2003 年である。
『第4講 宇宙の幾何学』より引用<--リンク


ちなみにダークエネルギーというコトバはマイケル・ターナーが1998年に初めて使ったとされる。

宇宙の再加速膨張が観測されるまでは宇宙定数Λ(ラムダ)は主に宇宙年齢と球状星団の年齢との不整合を調整する目的で検討されていた。(注1
それが加速膨張の発見でダークエネルギー、宇宙の膨張を加速させる反重力源として扱われる様になった。
・・・・・
こうやってまとめてみますと、本当に直近の100年で爆発的に宇宙論が発展してきた事が良く分かります。

2003年と言うのが「標準宇宙論の完成の年」であり、それ以降「宇宙論」と「素粒子物理学」が本格的にお互いに関連性をもって発展していく事になりました。

さてそうであればこれ以降、本格的にダークマターの正体探しが始まったと見る事ができます。

 

追記:『"LSPがダークマターだ"という考えが一般的になり始めたのは、1990年代後半から2000年代初頭のころです。これは、超対称性理論がダークマターの候補として注目されるようになった時期と一致しています。』

『この考え方は、超対称性理論を研究する多くのグループや個々の研究者によって提案されました。具体的な個人やグループを挙げることは難しいですが、1980年代から1990年代にかけて、超対称性理論の研究が盛んになり、ダークマターの候補として注目されるようになりました。その後、実験データや理論的な議論が進展するにつれて、この考え方がより具体化され、検証されるようになりました。』

『LSPは「最も軽い超対称性粒子(Lightest Supersymmetric Particle)」の略称です。超対称性理論では、通常、電弱相互作用を媒介するヒッグスボソンやゲージ粒子のスーパーパートナー、または色相互作用を媒介するクォークやグルーオンのスーパーパートナーなど、標準模型の粒子のスーパーコンパニオンが存在すると考えられています。これらのスーパーコンパニオンの中で、最も軽いものがLSPと呼ばれ、一般的にはダークマターの候補として注目されています。』以上、GPT3.5

注1
『1990年以前に考えられていた宇宙定数の存在理由は基本的には年齢問題である。
球状星団の年齢から推定された宇宙の年齢の下限値は、150 億年~180 億年とされ、単純な Einstein -de Sitterモデルの予言である67h^-1 億年とは、当時のハッブル定数hの不定性(0.5 <h< 1.0)を考慮しても相容れない。
宇宙定数の導入によってこれを救おうとするわけである。
・・・・・
衛星による宇宙マイクロ波背景輻射および超新星モニターにより、本当に宇宙定数が存在するのか、またその値がいくつであるのかについては、遅くとも 10 年以内にはほぼ結論が確立するであろう。』
「宇宙定数」須藤 靖 2002年 P53 <--リンク

という予想通りに2003年に標準宇宙論が確立したのであります。

つまりは「我々の宇宙におけるバリオン、ダークマター、ダークエネルギーについての存在比率が確定した」のです。

『宇宙におけるバリオン、ダークマター、ダークエネルギーの存在比率は、現代宇宙論の観測結果に基づいて次のように示されます。

バリオン、ダークマター、ダークエネルギーの存在比率
・バリオン(通常の物質): 約 5%
・ダークマター: 約 27%
・ダークエネルギー: 約 68%
これらの値は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測結果や、銀河の運動、遠方の超新星の観測データなどに基づいて決定されています。

詳細な説明
・バリオン(通常の物質)
バリオン: 宇宙を構成する通常の物質で、原子や分子、星、惑星、そして生命体などを構成する物質です。
存在比率: 全宇宙のエネルギー密度の約5%を占めます。

・ダークマター
ダークマター: 直接観測することはできませんが、その重力効果を通じて存在が確認されています。銀河の回転曲線や銀河団の運動、重力レンズ効果などを通じてその存在が示されています。
存在比率: 全宇宙のエネルギー密度の約27%を占めます。

・ダークエネルギー
ダークエネルギー: 宇宙の加速膨張を引き起こしているとされるエネルギーです。その本質はまだよくわかっていませんが、宇宙の膨張速度の測定からその存在が示唆されています。
存在比率: 全宇宙のエネルギー密度の約68%を占めます。

観測方法
これらの比率は、以下の観測データに基づいて決定されています:

宇宙マイクロ波背景放射(CMB): ビッグバンからの残光で、宇宙の初期条件とエネルギー密度の情報を含んでいます。特に、WMAPやPlanck衛星による観測が重要です。・・・』by チャットGPTo

追記:ヒッグス粒子(ヒッグスボソン)の発見は、2012年7月4日。

「2012年7月のヒッグス粒子(ヒッグスボソン)の発見」をもって現在までの物理学上の主なイベントの終了と見なすことができます。

それ以降、今日に至るまでに言及すべき重要な進展は見当たりません。

『ヒッグス粒子(ヒッグスボソン)の発見は、2012年7月4日に発表されました。この発見は、CERN(欧州原子核研究機構)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を使用したATLAS実験とCMS実験の両方で確認されました。

詳細
・発表日: 2012年7月4日
・場所: CERN(欧州原子核研究機構)
・実験: ATLAS実験およびCMS実験
・加速器: 大型ハドロン衝突型加速器(LHC)

この発見は、素粒子物理学における標準模型の重要な要素であるヒッグス機構を実証するものであり、物理学の大きな進展とされています。この発見により、2013年にはピーター・ヒッグスとフランソワ・アングレールがノーベル物理学賞を受賞しました。』by チャットGPTo

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現代物理学の展望 記事一覧

https://archive.md/gwYBk

 


その11・素粒子物理学の展望:セルン+アメリカ+日本

2024-06-16 | 日記

・セルン

・今後の10年間、LHCとその高輝度アップグレードを含むLHCは、高エネルギーの最前線を探るための世界の主要なツールとしての地位を維持します。

・ヒッグス粒子の特異な性質から、"ヒッグスファクトリー"として動作する新しい電子-陽電子衝突器の設置(注2)には、科学的に説得力のある論文があります。そのような衝突器は、非常にクリーンな環境で豊富なヒッグス粒子を生成し、ヒッグス粒子と他の粒子との多様な相互作用を詳細にマッピングすることで、劇的な進歩をもたらすでしょう。

・LHCのエネルギースケールよりも1桁高い感度を持つ将来のハドロン衝突器を構築することです。これには、関連する技術的および環境的課題に対処します。

欧州の戦略

・ヒッグス粒子を発見したセルンの続きとして、いまだよく分かっていないヒッグス粒子の秘密を探る事、そうしてそこから新しい物理を見つける事が一つ。

・もう一つはWIMPをHI-LHCで見つける事。それは同時にダークマターの正体の解明とSUSYの証明にもつながる、という「おおきな目標」。

 

・アメリカ

『最近のCERNのハイ・ルミノシティ・大型ハドロン衝突型加速器(HL-LHC)や、ディープ・アンダーグラウンド・ニュートリノ実験(DUNE)、ベラ・C・ルービン天文台(ルービン)注1)への投資』

それらを含んだ形で集中的に研究する主要プロジェクト

『1、CMB-S4:宇宙の最も初期の瞬間を振り返るCMB-S4
2、DUNE:長基線ニュートリノ振動実験の決定版として、強化された2.1 MWビームの早期実装による再構想されたDUNEの第二フェーズ。
3、ヒッグス粒子の秘密を明らかにするため、国際的なパートナーと協力して実現するオフショアヒッグスファクトリー。(海外ヒッグスファクトリー)
4、ニュートリノの霧(注2)に到達する究極の第3世代(G3)ダークマター直接検出実験
5、IceCube-Gen2:DUNEに補完的であり、ダークマターの間接検出のためのビームを使用しないニュートリノの特性研究のためのIceCube-Gen2。』

アメリカの戦略

・宇宙の初期の観測による解明、およびダークマターの直接観測および間接的な観測による正体の解明をめざす。

・もう一つはいまだ不明な点が多いニュートリノの特性の解明とそこからの新物理への展開。「ニュートリノ科学の国際実験」: https://www.dunescience.org/ :

 

・日本

ILC:(International Linear Collider、国際リニアコライダー):ヒッグスファクトリーとして機能する。日本が主導的に動いているものの、建設予定地は未定。

『・ヒッグス粒子の性質の詳細な解明: ヒッグス粒子の質量や結合強度などの性質を精密に測定し、標準模型の理解を深めます。
・新物理の探索: 標準模型の補完や新しい物理の発見を目指し、暗黒物質や超対称性などの未解明の現象を探索します。』by GPT3.5

「国際リニアコライダーの技術開発を推進 「ITNインフォメーション会議」に28研究機関が参加」: https://archive.md/lNOlI :

「250 GeV ILC の物理の意義」: https://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/ILC/pdf/siryo2401-4.pdf :

継続投資分

・Belle II実験:KEKB加速器を使用して、Belle II実験が行われています。この実験は、Bファクトリーと呼ばれる高輝度電子・陽電子コライダーを使用して、B中間子やD中間子の振る舞い、CP対称性の破れ、およびレアな崩壊過程を研究することを目的としています。

これにはKEKB加速器の高輝度化が含まれる。

・T2K:(T2K実験、Tokai to Kamioka実験)は、日本の加速器施設であるJ-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)で行われているニュートリノ振動実験の一つです。T2K実験は短基線実験であり、J-PARCからニュートリノビームを生成し、地下の大規模な水チェレンコフ検出器であるカミオカンデまでニュートリノの振動を観測することを目的としています。

他方でアメリカのDUNEは長基線実験で相補的な観測を行う。

・ミュオン異常磁気モーメント+EDM測定実験

日本の戦略

・欧州およびアメリカで行われるビッグプロジェクトへの参加。

・ILCの実現と日本への誘致

・ニュートリノについてはT2K、CP対称性の破れについてはBelle IIで成果を出す。

・WIMP/新物理についてはミュオン異常磁気モーメント測定で一定の成果をめざす。

但し日本には「コミュニティー全員が合意している戦略」という概念がないように見えます。

あるいは「コミュニティー全員が合意できる戦略を作る」という発想がなく、ただ単にそれぞれの研究者が自分の好みによって研究方向を決めて予算を文科省に申請する、というやり方をしている様です。

そうしてまた文科省も「それを是」としていて、但し文科省は「短期的に目覚ましい結果が期待できそうな研究」、あるいは「有名な実績のある研究者の研究」に予算をつけている様に見えます。

そうしてその結果といえば「長期的な視野に立った野心的な、ブレークスルーをもたらすような可能性のある研究」には予算がつかない、という事になります。

そうであれば「日本のスタンスはセルンやアメリカに比べて近視眼的である」と言えます。

 

注1:ベラ・C・ルービン天文台:ベラ・C・ルービン『ベラ・ルービン(Vera Rubin)は、アメリカの天文学者であり、ダークマターの存在を初めて示したことで知られています。彼女は、1970年代に行った銀河の回転曲線の観測によって、銀河の回転速度が予想よりも速いことを発見しました。これは、通常の物質だけでは説明できない追加の重力源が存在することを示唆し、それが後にダークマターとして認識されることにつながりました。

ルービンの研究は、天文学や宇宙物理学におけるダークマターの理解を深め、宇宙の構造形成や進化に関する理論を発展させる上で重要な貢献をしました。彼女の業績は、その後の天文学や宇宙物理学の研究に大きな影響を与えました。』by GPT3.5

天文台にその名前を付ける程にアメリカはダークマター探究に本気になっている模様。

注2:ニュートリノの霧:大気ニュートリノの事らしい

大気ニュートリノ:『大気ニュートリノとは、地球の大気中で発生し、地球を横断するニュートリノのことを指します。これらのニュートリノは、太陽や宇宙空間からの宇宙線が大気中の原子核と衝突することによって生成されます。

大気ニュートリノは、主に以下の2つのプロセスによって生成されます。

太陽ニュートリノ生成: 太陽からの太陽ニュートリノが地球の大気に到達します。これらのニュートリノは、太陽の核融合反応で生成され、太陽の中心から地球に向かって放出されます。
宇宙線生成: 宇宙空間からの高エネルギー宇宙線が大気中の原子核と衝突することによって、ニュートリノが生成されます。このプロセスでは、宇宙線が原子核と衝突し、π中間子が生成されます。そして、これらのπ中間子が崩壊してニュートリノが生成されます。
大気ニュートリノは、その起源やエネルギーに関する情報を提供する重要な研究対象です。地球を横断するため、地中性子や荷電粒子が大気中を通過する際に受ける影響や相互作用を研究するための重要な手段として利用されています。』by GPT3.5

『大気ニュートリノは、ダークマターの直接検出実験において背景として邪魔になる可能性がありますが、その影響は実験の特性や設計によって異なります。

背景としての影響: ダークマターの直接検出実験では、非常に低いエネルギーのニュートリノが感知される可能性があります。大気ニュートリノは、宇宙線の相互作用によって生成されるため、その存在は実験の背景として考慮する必要があります。
背景の除去: 大気ニュートリノの影響を排除するために、直接検出実験ではさまざまな手法が使用されます。これには、実験装置の深い地下配置、シールドやバックグラウンドの抑制、さらには特定のエネルギー範囲や角度範囲での解析などが含まれます。
ダークマターの探索: 実験は、ダークマターからの信号を検出するために背景の最小化を試みます。これには、大気ニュートリノや他の背景源の除去や抑制が含まれます。さらに、特定のダークマターのシグナルを探索するための解析手法の開発も重要です。
総じて、大気ニュートリノはダークマターの直接検出実験における背景としての影響を持ちますが、実験の特性や設計によってその影響を最小限に抑えることが可能です。そのため、実験装置の設計やデータ解析の方法を適切に調整することで、大気ニュートリノの影響を十分に管理し、ダークマターの検出を試みることができます。』by GPT3.5

要するに「ダークマターの直接観測の感度を上げていく」と「通常は観測できない大気ニュートリノまで観測してしまう」=「それほどの感度を持ったダークマター観測器を『究極の第3世代(G3)』と呼ぶ」模様。

なんとなれば「それ以上感度を上げても大気ニュートリノを観測するだけ」になってしまうので「究極の=最後の」と呼ばれる事になります。

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現代物理学の展望 記事一覧

https://archive.md/dC24F