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家の中で「着込まず」に過ごすと、物忘れが減り、脳が衰えづらくなる

2020-11-02 13:58:22 | 日記

下記の記事はプレジデントオンラインから借用(コピー)です。

高知県梼原町の高齢化率は40%以上で世界トップクラスだ。その町で、2002年以降、寿命が延びている。なぜ寿命が延びているのか。その最大のポイントは「室温」を保つことだという。現地を取材したジャーナリストの笹井恵里子氏の著書『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)から、一部を紹介しよう——。

寒い家に住む人は、脳神経の質が低下する
室温は、脳の若さに影響を与える――。
そう知ったら、とても驚くのではないでしょうか。
慶應義塾大学の伊香賀俊治教授率いる研究チームが40代から80代までの約150人の脳を特殊なMRIで調べると、「寒い家に住む人」は「暖かい家に住む人」と比べて、脳神経の質が低下する傾向にあったのです。
伊香賀教授と、星旦二医師らは、2002年から高知県梼原ゆすはら町で全町民のおよそ3分の1を対象に、「住まいと健康」に関する大規模疫学調査を行ってきました。なぜ梼原町なのかというと、この町では高齢者が40%以上を占め、“日本の2050年の姿”とされているためです。国土交通省は梼原町の調査で得られた成果を、これから高齢化を迎えようとする都市部を含めた全国へ応用したいと考えました。
調査の結果、驚くべき事実が次々と明らかになりました。
「調査を始めた当初より寿命が延びている」
たとえば高血圧発病確率。夜中の0時の時点で居間の室温を18度以上に保てていた人の高血圧発病確率に対して、18度未満の家に住む人は高血圧を6.7倍も発症しやすいという結果でした。発病確率ではなく死亡確率でみると、夜間室温が9度未満の室内環境で生活している人は、9度以上の室内環境で生活している人よりも4年間に循環器疾患で死亡するリスクが4.3倍高くなることがわかりました。これらの研究は年齢や性別、職業、喫煙、飲酒、食事の味付けなどはすべて調整してあります。つまり簡単にいうと「室温」のみで、ここまでの差が出てしまうということです。
高知県と聞くと、南国土佐の暖かいイメージがありますが、梼原町は標高220~1455メートルの急峻な地形で、同じ町内でも気候の差があるものの、全体的には冬場寒くなる町です。その上、高齢化率も世界トップクラスなのですが、町民の健康状態は上向きになっているとのこと。「調査を始めた当初より寿命が延びている。住まいの効果が出てきていると思う」と星旦二医師も補足します。
本書の「はじめに」で、梼原町の方たちが少しずつ「健康的な住宅」を追求していくようになったと書きましたが、いったい何が起きているのでしょうか。
その暮らしぶりを見るために、2019年冬に取材に出かけました。
「健康を守るのに家ほど大事なものはない
「年を取るとともに寒いとなったら工夫をしないと。これぐらいは我慢できる、という気持ちはダメ。24時間のうちの半分以上は家で生活していて、人生100年なら50年以上は家の中という計算。健康を守るのに家ほど大事なものはない」
梼原町の中心部から車で40分ほどの山間部にある松原地区に住む、82歳の下元廣幸さんはそう言い、「松原地区では80代前半の私も若いほうに入る」と笑います。60代はまだま“若造”というほど、梼原中心部よりも松原地区では高齢化が進んでいます。
下元さんの家は築24年と、それほど新しくはないのですが、窓を複層ガラスにしているため、室内にお邪魔すると、鋭い寒さは感じませんでした。お会いした時は夜で、外気温は7度でしたが、下元さんの家の玄関先は20度近くまであったのです。
後ほど詳しく解説しますが、室内を暖かくするポイントは「窓」にあります。冬場は窓からおよそ60%の熱が逃げます。そのため、通常の窓に内窓をプラスしたり、複層ガラスの性能のいい窓に交換したりすると、暖房の効きがよくなって室内の寒さが和らぐのです。
私が梼原町に行き、一番驚いたことは、どの家にも複数個の室温計が置いてあることです。みなさんの家にはありますか。今、この本を読んでいる部屋の室温は何度でしょうか。ぜひ一室に1個、室温計を置き、今何度なのか、常にチェックしてください。だんだん肌感覚で“健康にいい室温”がわかるようになってきます。
「着込まない」ことが脳の健康につながる
町の中心部に14年前、美容室兼自宅を新築した戸梶圧美さん宅は、暖房なしでも室内が均一の温度に保たれていました。自宅と美容室がひと続きの構造で、美容室は比較的日当たりがよく、自宅はあまり日が入らないのですが、室温計はどの位置でも18度以上を示していました。戸梶さんは「今の家は最高。健康には食事も運動もだけど、環境も大事よね」と繰り返し言います。
「前の美容室では暖房をなんぼ入れても、お客さんから足元が寒い寒いって言われていたんです。でも今はお店も自宅も、誰からも寒いとは言われません。真冬でなければ暖房がいらないぐらい暖かい。だから私もたくさん着込みません。外が雪でも、部屋着のワンピース1枚でいられる。羽織っても1枚です」
この「着込まない」ということが、居住者の室内における活発性を増し、筋肉量の維持、脳への健康につながることがわかっています。
「寒い家」に住むグループは、たった2年で脳機能が低下
長年梼原町の脳ドックを解析している内田脳神経外科の内田泰史医師は「暖かい家にいることで背筋が伸び、動きやすい姿勢になる。よく動くことで筋力が鍛えられ、活動することで脳の前頭前野の部分が活発になる」と説明してくれました。
脳の前頭前野とは、人の意欲の根源である場所。認知症初期には「物忘れ」が増えますが、これは前頭前野の働きが悪くなることから始まるのです。楽しみでやっていたこと、趣味などに興味がわかなくなるのが、脳の衰えの一歩というわけですね。
戸梶さんは71歳ということですが、少なくとも10歳以上若く見えました。内田泰史医師によると「見た目」と「脳の若さ」も関係あるそうです。暖かい家に住む→体が動きやすい→動くことで脳が刺激を受け、さらに活動の意欲がわく→脳神経が若くなる、というよい循環なのでしょう。
実際に伊香賀俊治教授の脳検査では、戸梶さんの血管年齢は50代だったといいますから驚きです。2年前と現在で「脳の状態」を比較する検査でも、戸梶さんを含む「暖かい家」に住むグループは、高齢にもかかわらず、脳機能が2年前と同等に維持されていました。一方、「寒い家」に住むグループは、たった2年で脳の機能低下が認められていたのです。
不眠に悩んだ時期があったが、今はあっという間に眠れる
前の家とほぼ同じ場所に建つ戸梶さん宅ですが、質のいい断熱材を使用しているため、現在の美容室や住居はかつてより圧倒的に保温性に優れているというのです。
断熱とは、冬は外に逃げていく熱を、夏は内側へ入ってくる熱を断つこと。壁や床などに熱を通しにくい素材の断熱材を詰める手法で、その「質と厚み」により住宅の断熱レベルが変わります。断熱が貧弱だと、冬は室内から外へと大量に熱が逃げてしまうんですね
一方で、昨年末に新築住宅を建てたという大㟢和江さんは「私は脳年齢の結果が悪かった」と肩を落としていました。最新性能の住宅で暮らし、どんなに検査結果がいいだろうと期待していたのに、実年齢を上回っていたそうです。
星旦二医師は「住まいを暖かくする対策をしても、それが数値として表れるには5~10年かかる」とみています。
「ですが、風邪をひかなくなったり、よく眠れるようになるなど、すぐに効果を感じることもあるはず。最新住宅ではアレルギー症状が治まったり、血圧も安定するでしょう」
その通り、梼原町内で断熱改修工事をした人には頭痛や肩こりが改善したという声がありました。大崎さんも“熟睡感”が違うと話します。
「古い家に住んでいた時、主人は不眠に悩んだ時期があったんです。今は二人ともあっという間に眠りにつきますよ。以前はお風呂から出ると寒くて早く洋服を着なきゃと思いましたが、今は脱衣所でもゆったり身支度ができる。窓も結露しなくなったし、家にいることが快適になりました」
暖房がついていなくても、室温18度近くになる一戸建て
そして私も梼原町で、室内の暖かさと深い睡眠を実感しました。梼原町には国土交通省から支援を受け、伊香賀俊治教授監修のもとに健康と環境を考えて建設された体験型モデル住宅が2棟あります。断熱性に優れ、家の中のほとんどが17度以上に保たれているという一戸建てのモデル住宅に宿泊すると、東京都内の自宅マンションとは全く違う安らぎ感がありました。
11月のある日の21時すぎ、梼原町の外気温は7.5度で、手がかじかむほどでした。でもモデル住宅に一歩足を踏み入れると、ふわっと木の香りが漂い、暖かい空気に包まれるのです。暖房はついていませんでしたが、室温計は18度近くを示していました。家の中のすべてが均一の温度空間を体感すると、普段の自分が無意識に廊下、トイレ、風呂などで「寒いはず」と身構えているのがわかります。初めて訪れる家なのに心身が緩む、不思議な感覚でした。
そして普段の私は眠りについてから3、4時間すると目が覚めてしまい、トイレに行くことが多いのですが、このモデル住宅では朝まで一度も起きることがなかったのです。
寒い家は暖かい家の1.6倍、頻尿になる
暑いと眠れないのは何となく理解できますが、寒い環境でも眠りが浅くなるのはなぜでしょうか。
伊香賀俊治教授は「布団の中が暖かくても、頭や肩は露出していますし、吸い込む空気も冷たい。体が冷えてしまい、尿意を催すのではないか」と指摘します。就寝前の居間の室温が18度の群を1とすると、12度未満の家では1.6倍、過活動膀胱(頻尿)の症状が多く出ていることも、それを裏付けます(国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業調査成果、泌尿器国際医学誌「Urology」2020年8月号掲載)。
また暖かい環境で眠ると、厚く重たい布団を使わなくてもいいのです。大崎さんも新築宅では冬場に軽い布団1枚で済むようになったと言いますが、私もモデル住宅で薄手の掛布団1枚のみの使用でした。日本エネルギーパス協会代表理事の今泉太爾氏によると「本来はお気に入りの掛布団1枚で眠れるくらいの室温がいい」そうです。
「一般的に掛布団は2キロ以下の重さにすると、スムーズに寝返りが打てるようです。室温が寒すぎると、掛布団+毛布など複数の寝具によってかなり重たくなってしまいます。掛布団を2キロ以内、お気に入りの掛布団1枚で済ますには、個人差があるものの、だいたい15度~18度以上の室温だと可能になるようです。そのあたりを目安に、自分が快適に眠れる室温を探すことが、質のいい睡眠をとるための第一歩です」
笹井恵里子『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)
翌朝の起床もスムーズでした。寒い時期に温かい布団から気合いを入れて起きた経験は誰でもあるでしょう。それがモデル住宅ではすっと布団から出られるのです。
室内は朝でも空気が冷えきっていません。前夜に1時間ほどペレットストーブ(※おが屑を高温で固めた「ペレット」を燃やして、室内の空気は汚さず暖をとる方法。間伐時に生じるクズを原料としているため、地域の森林資源の循環を目指す、環境に配慮した暖房機器として知られる)を焚いていたのですが、その温かさがほんわか残ったマイルドな空気なのです。
一歩外に出れば、外気温は8度で、頬に冷気が突き刺さるようなのですが、住居が厚いバリアで覆われているような、外と中との境界線がしっかりしています。それがつまりは断熱性の優れている住宅ということです


7時間睡眠の人が「ウイルスに強い」決定的証拠

2020-11-02 10:44:36 | 日記

薬を飲んでも風邪は治らない、というのは間違い
ちょっとのどが痛くて「風邪かな?」と思ったから、暖かくして早めに寝たら翌日にはすっかり調子がよくなった、というような経験はありませんか。これがウイルス性の症状なら、自然免疫の力で睡眠中にウイルスを倒した証しです。
反対に、ひどいせきが出たり高熱にうなされたりしてよく眠れず、翌朝には体調が悪化したという経験もあるかもしれません。これは、せきや発熱で睡眠が浅くなり、体が持つウイルスを倒す力を活用できなくなっていたからです。
たとえば仕事や家事をする際に、高熱が出ていて頭痛や吐き気、せきや鼻水が止まらなかったとしたら、どうなるでしょうか。おそらく本来の力を発揮できず、やりたいことの半分もできないと思います。
免疫の力も、それは同じ。さまざまな症状や睡眠時の環境によって睡眠が妨害されれば、免疫細胞のはたらきを高める「体内環境」が悪化することになります。
風邪を引いたらとにかく汗をかいたほうがいい、とばかりに厚着して何枚もふとんをかぶる人がいますが、それで眠りが浅くなったら本末転倒です。たしかに体温を上げると免疫細胞は活性化し、代謝はよくなってウイルスの増殖は抑えられます。しかし体温が上がりすぎてうまく眠れなくなると、ウイルスを倒したり細胞を修復したりする力は大幅に低下してしまうのです。
風邪薬には治療効果がないし症状を抑えるだけだから飲んでも意味がないという話を耳にすることがありますが、これは誤解です。症状を軽くすることで睡眠の質を高め体に備わっている免疫機能を充分に発揮させるという点では、薬は重要な役割を果たしています。
免疫機能が高まった状態をつくるには、毛細血管の血流をよくし体のすみずみまで免疫細胞が届いていること、そしてその免疫細胞が活発にはたらく時間をしっかり確保することが非常に有効です。良質な睡眠には、この状態をつくる力があります。
では良質な睡眠を得るには、どうしたらいいのでしょうか。
まず押さえるべきは、睡眠中に副交感神経を優位にすることです。副交感神経が優位ならウイルスを倒すリンパ球が血液中に増えますし、毛細血管へのルートも開くことでリンパ球が体のすみずみまで届くようになるからです。
また睡眠中は、健全な細胞を酸化させたり、毛細血管を傷つけて劣化させたりする活性酸素を、効率的に除去できるタイミングでもあります。活性酸素は、ストレス過多で交感神経優位が続きすぎたり睡眠不足だったりすると大量に発生する物質です。この活性酸素が体内に増えすぎると免疫機能が低下してしまうため、できるだけ留めておきたくありません。
ここで活躍するのが「睡眠ホルモン」とも呼ばれるメラトニンです。メラトニンは非常に強い抗酸化作用を持つため、睡眠中に活性酸素を除去し、毛細血管の劣化と体の酸化を防いでくれます。同じ睡眠時間を確保しても、メラトニンがしっかり分泌された状態で眠るのと分泌されずに眠るのとでは、疲れの取れ方もウイルスを倒す力も圧倒的な差がつくと考えてください。メラトニンを活用し、リンパ球を増やす対策が必要です。
睡眠時間が短いほど免疫機能は落ちやすい?
世の中には、風邪を引きやすい人と引きにくい人がいます。免疫機能に影響するような薬を服用していたり持病があったりしたら、それが関係していそうですが、健康上の問題を指摘されていない働きざかりでも、しょっちゅう風邪を引いてしまう人がいます。この背景には、いったい何があるのでしょうか。
最近では「働き方改革」が叫ばれるようになり、リモートで労働時間をコントロールする人も増えました。しかし、いまも残業や長い通勤時間に苦しむ人は多いかもしれませんし、仕事でなくても、やりたいことがあると削られがちなのが睡眠です。1日は24時間と決まっているので、どうしてもそうなってしまうのでしょう。しかし最も大切な資産である体が知らぬ間に消耗し衰えてしまうことを考えると、7時間は確保したいところです。
7時間というのは、世界中のさまざまな研究によって導き出された値です。私が勤務するブリガム・アンド・ウイメンズ病院で睡眠時間と寿命の関連性を調べたところ、睡眠時間が7時間の人に比べると、5~6時間の人と8時間以上の人は死亡率が15%も高いという結果が出ました。また、6時間以下の睡眠を1週間続けると、免疫や炎症、ストレス反応などに関連する711個もの遺伝子に悪影響が出たというイギリスでの研究結果もあります。
ウイルスを攻撃するリンパ球の最大の活動時間は副交感神経のはたらきが高まる睡眠中で、睡眠時間が減れば減るほどウイルスと戦うための時間も減ります。
それを端的に示すものとして、徹夜するとリンパ球の比率が10%下がり顆粒球の比率が10%上がったという研究結果もあるからこそ、睡眠時間の確保が重視されるのです。もちろん7時間眠りさえすればいいかというと、答えはNO。
良質な睡眠でなければ、体に備わった免疫機能を活かせません。
現代人は睡眠時間が減っているだけでなく、睡眠の質も大きく低下しています。
「ベッドに入ってもなかなか寝つけない」
「夜中に何度も目が覚めてしまう」
「寝足りないのに朝早く目覚めてしまう」
「たくさん寝ているのに疲れが取れない」
「眠りが浅い気がする」
などは睡眠の質が低下したシグナルです。
睡眠時間は確保できているのに、眠りを良質にできず体を弱らせ続けている人の多さには、日々の診療でも強い危機感を覚えています。特に中年を過ぎてからは、睡眠の質を上げられるかどうかが人生を楽しめる時間の長さを大きく左右する、と言っても過言ではありません。
そもそも「良質な睡眠」とは?
では睡眠の質とは、具体的には何を指しているのでしょうか。それを知っていただくには、まず睡眠中に体内で何が起きているかの把握が必要です。
個人差はあるものの、睡眠中はおよそ90分周期でノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しています。細胞の修復を促すホルモンは、眠りに落ちてから90~180分後のいちばん深いノンレム睡眠中に最も多く分泌されるという特徴があり、それが毛細血管を介して全身くまなく運ばれて体の修復が進むというのが大まかな流れです。だいたい午前3~4時が、骨や肌、筋肉が再生される細胞分裂のピークとされています。
傷つき疲弊した細胞にホルモンという修復指示が行き渡るのに3時間、酸素や栄養素という材料が届いて細胞呼吸を繰り返しながらジワジワと修復が進むのに4時間程度は必要と考えると3時間プラス4時間。これが推奨する7時間睡眠の内訳です。
では良質な睡眠を確保するには、どうすればいいのでしょうか。
実は朝まで熟睡できなかったり眠りが浅くなったりする方の多くは、本来睡眠中に優位になるはずの副交感神経のはたらきが上がっていません。
これまで数千人の被験者に協力いただき睡眠中の自律神経の変動を測定してきましたが、よく眠れていない自覚のある方の多くに睡眠中の副交感神経のはたらきが充分に上がらず、交感神経優位の傾向が見られました。そういう方に多いのが、ふとんに入っても手や足の先が冷えたままでなかなか眠れないというケースです。これは交感神経優位の時間が続きすぎて、末梢の毛細血管への血流が低下している証拠の1つです。
赤ちゃんは眠くなると手足がポカポカと温かくなるのを、ご存じでしょうか。赤ちゃんほど顕著ではありませんが、大人でも通常は眠くなると手や足などの体表温度が上がります。これは副交感神経が優位になって毛細血管が開き、末梢への血流が増えるからです。日中は、体を活動状態にするために脳や心臓、筋肉など体の中心部に血液が集まっていますが、夜になると体を休め修復するために血液が中心から末梢へと分散されます。
この、温かい血液の移動とともに体の中心部の熱は下がり、体の末端が温かくなって手先や足先などの表面から熱が放出されるのです。よく聞く「深部体温を下げる」とは、これを指します。
眠り始めに手足が温かくなるのは、自律神経が副交感神経優位に切り替わったサインです。冷え性で寝つきが悪くて困っている人の多くは、交感神経が高ぶって自律神経の切り替えがうまくいかなくなっています。
なぜ眠る数時間前からが大事と言われるのか
睡眠に問題のある人の診察で生活習慣を確認すると、自律神経のバランスやパワーを損ねる要因が隠れていることがほとんどです。非常に多いのは、仕事やプライベートで強いストレスを抱えていたり、朝早くから夜遅くまで忙しく活動しすぎていたりするケースで、この傾向がある人は交感神経優位が続きすぎているため、夜になっても下がりきらず深く眠れないのです。
『ウイルスから体を守る』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら
夜遅くにたくさん食べる、寝酒をする、テレビやパソコン、スマートフォンからの光を見るなど、寝る直前の習慣も見過ごせません。呼吸法などで瞬時に交感神経と副交感神経のバランスを整えることも可能ですが、体にとって自然なのは体内時計にしたがって夕方から夜にかけて交感神経が徐々に鎮まり、副交感神経のはたらきが高まる流れです。
これが夕方以降も、仕事などで神経が高ぶる状態が続いたり夜遅く食事を摂ったりして、眠る直前まで脳や内臓をフル稼働させていると寝つきが悪くなり、睡眠中も交感神経優位の状態がしばらく続きます。
睡眠の質を高めるには、夕方以降は副交感神経の働きを邪魔する行動をなるべく避け、副交感神経のはたらきを上げる行動に変えていくのが効果的です。