禅と薔薇

高島市 曹洞宗 保寿院 禅の話と寺族の薔薇のブログ

2015年01月01日 | 小さな法話
ひとりの羊飼いが、羊の群れを餌場に連れて行くために川を渡そうとしていました。
川は浅かったのですが、羊たちはなかなか渡ろうとしません。
というのも、群れの中に母羊と子羊がおり、子羊はまだ小さいものですから、母羊が心配して川を渡ろうとしなかったのです。
羊飼いは困りました。いくら叱っても怒鳴っても脅しても、母羊はいっこうに動きません。

そこにお釈迦様が通りかかりました。
お釈迦様は黙って羊の群れの中に入り、その中にいた子羊を抱きあげて、川を渡り始めました。
母羊は、お釈迦様の衣に口をつけながら後をついて行きました。他の羊たちもいっせいに川を渡り始めました。
渡り終わると、お釈迦様は子羊を岸に置いて去って行きました。
これを見ていた羊飼いは「叱ったり怒鳴ったり暴力をふるったりしても、決してうまくいかない。相手のことを思いやり、慈しみをもって接しなくてはならない。」ことに気づきました。

菩薩行とは、自らの事をはからわず、人のために尽くすことです。
お釈迦様が通りがかりに行われたこの行いは、菩薩行を自然に行える慈しみの心を持った私たちの生き方を示されたものです。
また「黙って」行われたことは、打算があったり、人に知らせたり、あるいは見返りを期待するものではなく、陰徳を積むことの大切さを示しておられるものです。

今年一年を、お釈迦様のみ教えのもと、菩薩行に励む一年としたいものです。

今年もたくさんの薔薇が咲きますように。