頑固爺の言いたい放題

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中国が乗っ取ったモーリタニアのタコ漁業

2021-04-05 15:24:35 | メモ帳
何年も前のことだが、次のような新聞(か雑誌)の記事を読んだことがある。

<日本の公的機関からアフリカのどこかの国に派遣された職員がタコの資源が豊富であることに着目して、日本からタコ壺を輸入し、タコ漁を始めた。これが大当たりで、タコの対日輸出がその国の大きな産業になった>

爺は商社マン時代に食品を担当し、開発輸入を何度か手掛けたことがあるので、こうした類の話には興味があった。そしてその人物の着想力と実行力に敬服した。それから数十年、この話は脳裏からすっかり消えていた。

ところが、WILL5月号の記事、“中国のせいで「たこ焼き」が危ない”(筆者は須田慎一郎)を読んで、昔の記憶が蘇った。

“中国のせいで・・・”の記事で改めて思い出したが、「アフリカのどこか」とはアフリカ大陸の西北部に位置するモーリタニアで、「日本の公的機関」とは国際協力事業団(現在のJICA―国際協力機構)だった。そして、その職員とは中村正明氏で、同氏がこのタコ事業を始めたのは1978年。

ちなみに、モーリタニア産の真蛸は水分を多く含んでおり、熱を通すと適度に水分が抜けてふっくらするため、タコ焼きにはうってつけなのである。

そして今や、タコがモーリタニアの水産物輸出の86%を占めるまでになった。その功績により、中村氏はモーリタニアの大統領から2010年に国家功労賞を受賞した(出所:Wikipedia)。

日本のタコ消費量は年間16万トンで、国産が5万トン、輸入が11万トン。その内、モーリタニア産が35%を占める。なお、世界中でもっとも多くタコを消費する国はダントツで日本であり、他の国ではスペイン、米国、中国がある。

ちなみに、モーリタニアの人口は約400万人。1960年にフランスから独立したイスラム国家である。

さて、この話が単なるサクセス・ストーリーで終われば“メデタシメデタシ“だが、そうはならなかった。問題は中国の介入である。

中國の「一帯一路」政策はモーリタニアにも及んでおり、国の基幹コンピュータ―システム、大統領公邸や国会議事場も中国の無償供与によるもの。同国の経済は中国によって支えられており、2017年にはそれまで右肩下がりだったGDPはプラス成長となっている(“中国のせいで・・・”より)。

ところが「一帯一路」政策はいいことづくめではなく、有償資金の返済が滞ることで、国の経済全体が中国の意のままになることもある。

モーリタニアのタコ漁業もその例にもれず、中國に乗っ取られた。中国人経営者が賃金をろくに支払わないから労働者が逃げ、その穴を刑務所に収監された犯罪者で埋めた。そして、収監者をタダ同然で働かせている(“中国のせいで・・・”より)。

それでもタコが十分に供給されていれば日本としては問題ないが、スペイン(パエリャの具とか酢漬けに使う)や中国などで需要が急増する一方、乱獲による資源の減少が懸念されているから、値上がりは避けられない状勢。

モーリタニアにはニチレイや東洋冷蔵などの水産会社が現地事務所を設け、タコの調達業務にあたっているが、相手が中国人に代わって、さぞ苦労していることだろう。日本のタコ焼き文化が崩壊しないことを願うのみである。


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