このブログで1月31日と2月2日に論じた米国ハーバード大学のラムザイヤー教授による慰安婦に関する論文の件は、韓国で大々的に報道され大騒ぎになっている。その報道をいくつか、かいつまんで引用する(青字)。
●朝鮮日報:キム・ウォンウン光復会長は「ラムザイヤー教授が反人類的戦争犯罪を庇護することは学問の自由の範囲ではない」とし「特に日本戦犯企業三菱の資金支援を受けて、日本政府から旭日章勲章まで受けたその教授は、学者としての基本がなっていない人だ。彼が韓国にいたら、すでに追放されたであろう」と述べた。
さらに、キム会長は「国際法上、国家が外国人の入国を許可する一般的義務は存在せず、外国人の入国を許可するかどうかは、当該国が独自の裁量で決める事項だ」と強調した。
(追記:この後、ラムザイヤー教授の入国を禁止する法案が議会に提出された)
●CBSニュース:これらの偏向資料は、日本外務省が巨額を投じて組織的に米国社会に流布した文書である。・・・・ラムザイヤー教授は自分に都合のいい資料だけを取り合上げた。韓国には同教授の説を覆す資料がいくつもある。
●中央日報:共和党所属のヨン・キム連邦下院議員(カリフォルニア)は「ラムザイヤー教授の主張は真実ではなく、事実をミスリードしていて非常に不愉快」とツイートした。
●ハンギョレ新聞:ハーバード大で韓国史を教えるカーター・エッカート教授は、ラムザイヤー教授の論文について「経験的、歴史的、道徳的に悲惨なほど欠陥がある」とし、歴史学科のアンドルー・ゴードン教授とともにラムザイヤー教授の主張に反論するジャーナルを準備していると述べた。
1990年代にシカゴ大学でラムザイヤー教授の講義を受けたと明かすコネチカット大学歴史学科のアレクシス・ダードン教授も「根拠資料が不十分で、学問的証拠を考慮すると間の抜けた学術作品」とし「ラムザイヤー教授は前後の事情や実際に何があったのかが理解できていないため、あの論文は概念的に誤った理解に基づいて書かれている」と述べた。
●ハーバード大学の韓国人学生会はラムザイヤー教授に論文の撤回を求める声明を大学新聞に発表した。(頑固爺所感:言論を集団の力で弾圧するなど、民主主義社会では許されないことをこの学生たちは知らないのか。言論には言論で対抗すべきである。)
以上はラ教授を批判するものだが、その批判を批判する意見もある。それは、韓国と日本でベストセラーになった「反日種族主義」の共同執筆者の李宇衍(イウヨン)氏の「メディアウォッチ」に掲載された論文。その全文は下記のシンシアリーのブログに掲載されているが、キモの部分を引用する(赤字)。
私は、韓国のジャーナリストたちは、論文を読んでいないか、読んだとしても要旨を把握できていないと確信する。・・・
韓国の反日種族主義者たちが「強制連行説」の証拠として提示することは、元慰安婦の "証言"だけだ。自分が日本人兵士によって、警察によって連行されたという、その証言。しかし、私はその証言を信頼しない。ラムザイヤー教授のように外国人として客観的な態度が取れる立場の人なら、なおさら信じないだろう。
このように、ラムザイヤー論文は韓国社会に多大の波紋を呼んでいるが、日本のマスコミは産経新聞以外まったく報じていない。これは、産経の記事が特種だったために、他社はメンツの点で追従するわけにはいかないのだろう。それでも、韓国で大騒ぎになっていることはニューズヴァリューがあると思うのだが・・・。
日本メディアの動向はともかく、李宇衍氏が指摘しているように、韓国人のラ教授批判は産経新聞に掲載された論文の要約を対象にしていることは明白である。要約を読んだだけで、カッと頭に血がのぼり、口汚く罵っている感がある。
問題のラムザイヤー論文の全文は、ハーバード大学が発行するInternational Review of Law and Economics 3月号に掲載される。同誌が発行されれば、日本のマスコミも取り上げるだろうし、韓国のマスコミも改めて論じるだろう。
その時に日本のマスコミに期待することは、朝日新聞が慰安婦拉致の誤報を謝罪していること(2014年)を指摘することである。
さらにこれを機会に、河野洋平氏自身が1993年の河野談話の真相を明らかにすることを期待する。
【追記】ここまで書いてから、シンシアリーのブログを覗いたら、韓国の某政治家が、「国連の場で人権問題として取り上げるよう働きかける」と述べた、とあった。売春が合法であった時代のことを現代の価値観で非難しようというのだから、もう笑い話である。そして、この政治家は、1950年代に米国駐留軍のための公認売春施設が韓国に存在したことを知らないのだろうか(笑)。