フランチェスコ・メーリの今日の東京公演は伝説のコンサートになった、と言いたい。
東京文化会館に詰めかけたほとんどの人たちも同じ思いだとぼくは信じる。
プログラムは意欲的で格調高いものだった。歌曲の前半には、フランチェスコの友人でもある現代音楽の作曲家ルイージ・マイオの4部作。全曲は世界初演。ずっしりときた。
それから5曲続けたトスティ。トスティの歌曲がこれほど心に沁みたことはない。「最後の歌」では、明日結婚すると言われた男の絶望。「君なんかもう愛していない」では失意と諦め。胸が締めつけられた。「理想の人」では理想の女性を求める青年の憧れ、情熱に感情移入。
後半はオペラ。マノン「目を閉じれば」は田園で結婚生活を送ろうと甘美に。ルイザミラー「穏やかな夜には」は裏切りへの怒りと悲嘆。トスカ「星は光りぬ」の絶望感。
張りのある美しい声、豊かな声量、弱声部の技術、溢れる情感、表情、身のこなし、何もかも素晴らしく。
カーテンコールが止まなかった。
そして伝説の始まり。
アンコールを重ねても、拍手と歓声は大きくなるばかり。
フランチェスコも喜びを溢れさせ、5曲目には自らピアノを弾きながらトスティ。
そこからはスタンディングオベーションになった。1曲、また1曲。妙なる調和、カタリカタリ、オーソレミヨ、メリーウイドゥ、などなど。10曲目の頃は総立ちだったろう。
こうしてぼくにとっての、伝説のコンサートは終わった。
新国立オペラ・トスカ、今日のコンサートでフランチェスコの東京は終わる。
偉大な歌手よ、ありがとう。また来てほしい。みんな待ってるよ。