孫耀威：出会えてよかった！

香港出身の人気歌手、孫耀威。1973年生まれで英語名エリック・ソンです。小さいときから成績が優秀で、香港で行なわれた国際的な音楽大会で優れた成績を挙げたのがきっかけで、18年前の1993年に芸能界入りを果たしました。当時19歳だった彼はデビュー後、香港のみならず、台湾や日本、韓国でも活躍していました。特に、１994年、当時の日本の人気歌手、酒井法子さんと中国語で歌った“有縁千里”という曲で人生のピークを迎えました。1998年、日本でコンサートを開く際、あちこちから殺到したオファーの影響で、ちっともコンサートに備える時間がなかったそうです。これではまずいと思って意見を述べたら、逆に日本の会社の人に叱られ、それで彼はコンサートを開く前夜、日本を離れることを決意しました。結局、勿論コンサートも開くどころではありませんでした。 

 

音楽に対して自分の考えを持っているのに、アイドルという肩書きが重荷になって、自由に演技する環境が与えられなかったエリック・ソン。日本を離れたのち、ついに歌謡界から姿を消すことになりました。その後2年間、すっかり仕事がなくなり、生活が苦しい中、台湾の人気アイドルドラマのプロデューサーに声をかけられ、それからの6年間、中国大陸を拠点に、歌手の代わりに俳優として活躍していました。

 

音楽に対する夢をあきらめていない彼はシンガーソングライターとして2007年に香港の歌謡界に復帰し、広東語のアルバムをリリースしたのち、今年8月5日に、台湾でおよそ10年ぶりとなる北京語アルバム“没有説再見（さよならを言わなかった）”をリリースしました。 

 

CDプラスDVDの2枚セットのアルバムです。CDには全10曲のオリジナル曲が収録されていて、収録曲のおよそ80％はエリック・ソンが作詞または作曲を担当したものです。歌詞と楽曲両方を手がけた歌もあります。ほかには、マレーシア出身のシンガー・ソングライター陳威全や、台湾の人気ユニット、F.I.Rのギタリスト、阿沁（リアル）が提供した曲もあります。DVDには彼の365日創作日記と新曲4曲のミュージックビデオがそれぞれ収録されています。

 

エリック・ソンは人気絶好調だった2001年に、ファンたちにさよならを告げることなく、突然歌謡界から姿を消してしまいました。10年後、今回の新作で再び台湾の歌謡界にカムバックしたわけですが、新作のタイトル“没有説再見（さよならを言わなかった）”について、「当時、さよならを言わなかったことは、必ずまた戻ってくることを意味していた」と説明しました。 

 

今月16日、台湾で小型のライブを初めて行なった彼は、体調を崩したにもかかわらず、大勢のファンで埋まる会場で18番のほかに、アメリカの人気シンガー、レディーガガの代表曲も披露しました。これまでの彼のイメージからはまったく考えられないことですが、バラードもよくこなすなど、ちっとも病気で歌唱力が落ちたりすることはなかったそうです。ライブで台湾中の人に幅広く知られたデビュー曲の、“認識你真好（出会えてよかった）”も披露、彼がチャーミングな明るい笑顔を振りまきながら、この歌を歌っている姿が当時、どれくらいの台湾の女性ファンを虜にしたかわかりません。 

 

エリック・ソンは将来、台北の多目的体育館、台北アリーナでコンサートを開くことを夢見ています。それだけでなく、「台湾は私が仕事を始めた場所で、自分は半分台湾の人だと思っている。将来は台湾で結婚して仕事に専念したい」とも話すなど、台湾は彼にとって、もうすっかり第2のふるさとになったようです。「台北の中山北路や繁華街の東エリアを歩いたり、自転車で行って人ごみやビルを見たりするのが好きだ。マイホームを買うなら、大直一帯の物件がいいと思う。自転車に乗ったり、ジョギングしたりできるほか、静かで生活機能も整っているから」と彼は言っていますが、大直はちょうど、台湾国際放送の局舎の近くにありますので、そのうち、会社の近くで彼とばったり会うことがあるかもしれませんね。（00）