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ジーコ前監督の黄金の中盤とオシム監督のポリバレント - オシム・コードの解明 2

2006年10月14日 | 考察集
■ ポリバレントとスペシャリスト

※ 昨日のエントリー『 21世紀型トータルフットボール - オシム・コードの解明 』から一部項目分割・改編版です。

■ 引用元:◆ ポリバレント
ガーナ戦前の会見で「ポリバレント」という言葉をオシム監督は使いました。(化学用語らしい)そしてその時の会見では、下記のような発言でした。
日本の攻撃陣の中にはポリバレント--複数のポジションをこなせる選手を入れようと思っている。攻撃もできるけれど、守備もできる、そういう選手だ。

スポナビ - ガーナ戦前日 オシム監督会見

私自身も『ガーナ戦を図解で分析(前半) - 良かった攻撃と守備』の最後に書きました。ところが、インド戦後のオシム監督の会見では、下記のような事を言っていました。

DFがオーバーラップしてセンタリングすることは、ポリバレントの範囲には入らない。それはいいDFであれば、誰でもやることだ。ポリバレントという意味で、今日一番のプレーヤーは鈴木だった。つまり中盤の底でやって、アクシデントに対応して1枚下がってリベロになった。それから山岸が、最初は左サイドでプレーして、その後は右サイドになった。両サイドができるというのはポリバレントである。それができる選手がそろっていると、メンバーを交代せずにチームの中でポジションを変えて、全く違う戦い方ができる。そういう可能性を実現させることがポリバレントな選手だ。チーム全員がポリバレントである必要はない。

■ 引用元:スポナビ - インド戦後 オシム監督会見

現時点でオシム監督の推し進める「日本化」というものが、プロのライター(ジャーナリスト)の方々、そしてサッカーを長く見て来た人々であれば、「オシム監督の目指す方向性であったり、ビジョンがなんとなく分かる」と思うのです。しかし、まだ、明確ではない。
また、ポリバレントな選手だけではなく、スペシャリストもオシム監督としては、チームを作る上では必要と考えていると思います。但し、ポリバレントは、あくまでもチームの骨格の二次的な要素、11人中(多くて)3~4人ではないでしょうか?!残りの選手は、当然スペシャリストであるべきと考えているはずです。(参考:『 21世紀型トータルフットボール - オシム・コードの解明 』)

そもそも、なぜ昨日のエントリーと本日のエントリーを分割・改編したかと言いますと、オシム監督の狙いであるチーム内でのポリバレントな選手の直接的な効果について思ったからです。その点をジーコJAPANの時と比較してみました。(昨夜、ふと思い気づいたんですけどね)

■ ジーコ前監督の黄金の中盤とオシム監督のポリバレント

◆ジーコJAPAN「3バック→4バックへのシフト」
 
基本的に、ジーコ前監督は、就任時から4バックがベースのチーム作りをしました。しかし、一部選手から3バックの方がやり易いなどの要請があったとかなかったとか、そして、ジーコ監督自身も明確に戦術的なオプションとして3バックも採用するようになりました。最終的に、W杯イヤー2006年は、ほとんどの試合を3バックでスタートしていました。(この辺の明確な分岐点となったのは、アジアカップかな?2003年のコンフェデレーションズカップでの3試合は、4バックを採用していました)


まず、上記図が、わりと多かったスタメンだと思うのですが、3バックからスタートする基本的なスタンスとしては、守備的に行くケースです。過去の試合ですとチェコ、イングランド、ドイツ(W杯直前)、オーストラリア(W杯第1戦)では、3バックでスタートしています。

そして「3バック→4バックへのシフト」を行う際に、ほぼ100%田中誠を外しました。そして、中盤の選手(小笠原、小野、稲本など)を投入しました。『 選手交代に見る、ジーコ采配 』でも書いたのですが、ジーコ前監督の交代枠3人の1枚目のカードがほとんどのケース中盤の選手でした。(詳細データ

つまり、ジーコ前監督は、中盤へのこだわり、攻撃へのこだわりというのがあって、そのポジションに対する直接的な選手交代によってチームに変化(システムも含む)をもたらそうとしていました。しかし、必然的に、交代枠3人の内1人は、この変更の為に必要でしたし、基本的に1人目の交代枠は、この「3バック→4バック」への切り替えの為に使っていました。

◆オシムJAPAN「4バック→3ックへのシフト」
 
オシム監督の場合は、現時点では明確な事が1つあり、対戦相手のFWの人数でDFラインのメンバー構成を決定しています。
「2トップならば、3バック」、「1トップならば、4バック(CBが2人)」

つまり、DFを1人余らせるという方法を取ります。
この采配の背景は、色々と考えられると思うのですが、オシム監督の場合は、ディフェンスの人数を試合開始前には決定せず?試合開始後に決定します。これまでの6試合で純粋な1トップで来たチームはないと思います。(サウジは純粋な1トップだったかな?)サウジ戦では「4バック→3バック」へシフトしました。

結果、相手のFWの人数に対して応じる為にはポリバレントな選手(この場合は阿部)が必要となるシステムなのです。また、先日のインド戦でも負傷した水本に変わりディフェンダーを投入するではなく、鈴木をDFラインに移動させ、長谷部をボランチへ投入しました。この変更の意図は、現時点では、試験的な要素が強かったと思われますが・・・仮に、阿部が負傷して試合そのものに出場出来ない場合には、阿部がやったポリバレントなプレー(3バックに入る)を鈴木が出来るという証明された試合であったと思います。

■ ポリバレントの実効性

勘の良い方であれば、すでにお気づきかと思いますが、ジーコJAPANの時の「3バック→4バック」の際には、そもそも「4バック→3バック」という、逆に戻すことが不可能でした。(やろうと思えばやれただろうが、そういう方法論はジーコ前監督の中にはなかったと思われる。)福西ではなく中田浩二であれば、ポリバレント的に出来たんでしょうけどね。

しかし、オシム監督の場合は、「4バック→3バック」「3バック→4バック」の切り替えが簡単に出来ます。つまり、守備的中盤の阿部・鈴木のポリバレントな選手のどっちかがいれば、「3バックor4バック」の切り替えは、容易に出来るというわけです。実際、さらにオシム監督としては、インド戦でポリバレントの幅を広げようと考えていたようです。
(前の引用部分の続き)
今日は負傷者が出たので交代カードを1枚切ったが、あれがなければ別のコンビネーションの可能性があった。田中隼磨を使おうと思っていた。そして駒野をストッパーに入れる。そういうアイデアを持っていた。それも選手のポリバレントの特性を生かすテストだった。しかしストッパーの1人が負傷したことで、緊急措置として長谷部を入れて、鈴木をディフェンスラインに下げた。

■引用元: スポナビ - インド戦後 オシム監督会見

今野、駒野がストッパーでどれだけ使えるか?をテストした場合、今後、守備面でのポリバレントがさらに増えると考えていると思われます。
実際、インド戦では、鈴木がDFラインに入るというポリバレントな使われ方をした結果、交代で入った長谷部では、中盤でのフィルターが機能しませんでした。マケレレと言われている鈴木のチェイス&チェックが消えたことが原因の一つかもしれません。誤解のないように言っておきますが、長谷部の守備的能力云々ということではなく、純粋に浦和での2選手の関係を見れば、分かると思います。(正直、インドのレベルであれば、2バックで2FWをマークするくらいでないとダメだと思いますけどね・・・まぁ、本職いれば、そうしたのかな・・・)


ちょっと話が逸れた感がありますが・・・もう1点ジーコJAPANとオシムJAPANのこの「3バック→4バック」の切り替えで大きなポイントが、3人の交代枠です。

ジーコ前監督の場合には、必ず1人の交代枠を使わざるを得ませんでした。しかし、オシム監督の方法論だと交代枠を使わずに済みます。この1人の交代枠は、チームにとっては大きなアドバンテージです。ここでも誤解のないように言っておきますが、ジーコ前監督のやり方がマズイという訳ではありません。あくまでも方法論の一つですし、ジーコ前監督は、あくまでも“攻撃ありき”の中盤の構成によって、システム上、ピッチ上の選手に変化を与えたいと思っていたからだと思うのです。しかし、仮説ですが・・・オシム監督も守備の選手にポリバレントを要求するということは、実質“3人の交代枠”をDFではなく、攻撃の選手に使いたいと思っているからかもしれません。

最後に・・・就任時から、松井(ルマン)の評価が高い理由として、スペシャルかつポリバレントな側面を有した選手だからかもしれません。松井のポリバレント性は、攻撃的な両サイドが出来るということです。つまり、右サイドでスタートしても場合によっては、左サイドへシフトしても同レベルのパフォーマンスを期待出来るからだと思います。個人的には、3トップへシフトした際のウィング的な使い方も可能だと思います。
さらに、中田浩二もボランチとDFラインならどこでも出来ますので、スペシャル&ポリバレントな選手だと思います。現在、バーゼル(スイス)では、CBをやっているみたいなので、阿部よりはずっとレベルの高いポリバレントでしょうね。こうやって考えるとオシムJAPANの骨格が明確になってきませんか?!

■ 関連記事
・『5つのアクシデントを乗り越えて』 - 宇都宮徹壱
・『「ポリバレント」という光明』 - 宇都宮徹壱



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5 コメント

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コメントのお返事 (コージ)
2007-05-10 03:16:34
CSKA352さん

こんばんは。ご指摘の点・・・

「代表監督は、やりたいサッカーをやるのに最適の人材を選べるところがい」

ここについては、個人的には始めの頃から思っていました。ただ、まだこれからだと思える部分(選手選考も含め)が半分はあるのかな?と思うのです。表現は正しいか分かりませんが、現状ではジェフのちょっと進化形程度のレベルでしかないと思うのでね・・・

今回はこれくらいにしますが、かなり頭の中では妄想・予想が広がっています(笑)
実際、現状のクオリティの選手、戦術で2010年に臨むのかな?って思ったら、味気ないと思うんですよね。
まぁ、この辺はアジアカップの頃にでも・・・^^;
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選考の影響 (CSKA352)
2007-05-09 19:35:04
こう見るとフォーメーションの形ではジーコもオシムも大して変わらないですね。

今回肝心の戦術は抜きにしてタレントの話にしますが、
ベテラン(経験者)や(ボール扱いが巧い)テクニシャンが多いジーコのチーム。
運動量の少ない低めの守備、ポゼッションに向いています。
若くて判断力も早い動ける選手を集めたオシムのチーム。
連動したプレッシング、フリーランニングやオーバーラップがたくさんできます。

代表監督は、やりたいサッカーをやるのに最適の人材を選べるところがいいですね。
周囲の雑音には屈しない必要がありますが。
ジェフでは限界があって無理だったことをやって見せて欲しいです。
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コメントのお返事 (コージ)
2006-10-17 02:35:47
jiggaさん

>コメントありがとうございます。なぜかこっちでコメント入らないので、jiggaさんの方へお返事しました。スイマセンm(__)m
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サッカーで大切なこと (jigga)
2006-10-17 02:04:49
コージさんを批判しているわけでは決してありませんので、ご理解下さい。



オシムのいうポリバレンントとは、トルシエがいうところのユーティリティー性と何ら変わりはないと思いますし、インド戦の采配は不可解極まりないと思っています。



満足していなかったという割には、インドのFWを相手に3バックのままでした。2CBにして前線か中盤を厚くし、攻撃で押し込むことによって形勢を変えることもインド相手なら十分にできたはずです。



インド戦では終止、右WBは駒野、左WBは三都主だったはずです。

オシムのいう山岸の両サイドでのプレーというのも、何のことか理解できません。



コメントでは限界がありますので、もしよろしければ、コージさんと僕とで課題や疑問点を投げ合うことで、何か見えてくればなあと思った次第です。



よろしくお願い致します。

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サッカーで大切なこと (jigga)
2006-10-17 01:46:20
コージさん、はじめまして。コメントありがとうございます。コージさんのサイトもかなり影響力をもってそうなものでしたので、お邪魔しました。



最初にご理解して頂きたいのは、僕は『オシム Japanを疑え』というスタンスに立っているということです。もちろん、オシムは素晴らしい監督だと思います。埼スタでのバーレーン戦の後は、ジーコを解任してオシムに指揮を任せるべきだと感じていました。



でも、ドイツW杯を終えた後となれば、オシムではないと感じています。メディアがこぞって肯定的な理由も見当たりません。



                         続く



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