■ [4-3-3]の源流オランダ代表に迫る |
現代サッカーにおける[4-3-3]というフォーメーションを確立したのはアヤックス・オランダ代表(源流)と考えるのが通説だと思います。しかし、現在欧州クラブで多い[4-3-3(4-1-4-1)]は、源流の[4-3-3]フォーメーションとは概念が違うと思うのです。(但し、バルセロナは源流に最も近い。監督がライカールトだしね)
◆源流も変化し続ける。オランダ代表のフォーメーションの推移図
現在の[4-3-3(4-1-4-1)](※以下[4-3-3]、[4-1-4-1]は同義)は、『[4-1-4-1]の原型に関する一考察』で書いたようにフォアリベロ(ボランチ)がキープレーヤーとなっています。つまり、中央の守備ブロックのウェイトが大きい(3センター)ということです。乱暴な表現をすれば、3センターにする為の[4-3-3]と言えます。
しかし、[4-3-3]の源流とも言えるオランダ代表に関しては、自分達のルーツ(源流)にわりと忠実なポジションがあります。それはウィングです。近年のオランダ代表のフォーメーションの推移をご覧下さい。(2000年のユーロに関するデータは、友人からのメールで聞いたもので、詳細不明)
98年ヒディンク監督 | 00年ライカールト監督 |
04年アドフォガード監督 | 06年ファンバステン監督 |
こうやって時系列ごとに並べて見ると分かると思いますが、どのフォーメーションであっても、明確な事は、「サイドを両ウィングを使う」というオランダ代表のスタイル(源流)ということです。
例外的に見える98年フランスW杯の時の[4-4-2]のような布陣ですが、アルゼンチンを圧倒していたオランダは3トップのような形でコクー、ヌマンのポジションを1つ前にシフトしたような変則的な布陣(3-4-3)で戦っていました。
また、00年は[4-2-3-1]のような形ですが、実際に見ていないのでなんとも言えませんがベルカンプを2列目気味のポジションで使うのはアーセナルでの使われ方と似ていたのかな?と思う次第です。さらに当時[4-2-3-1]はトレンドなフォーメーションでもありました。
04年以降は、オランダ代表にとっては純正な左ウィングのロッベンの登場が大きいと思います。それにより再びオランダは自分達の源流により近い形へと回帰した感じもします。また、04年はベテランといわれる選手も多くいました。しかし、06年以降はだいぶ世代交代を推し進めて2000年のユーロのメンバーはスタメンでは3人だけとなっています。
元々、ファンバステンが監督に就任当初から「世代交代」を一つのマニフェストのように掲げていました。協会側も08年のユーロをピークと迎えるような方針を持っていたので、04年のドイツでのベスト16での“ポルトガルとの格闘技”の結果に対してはわりと寛容だったのだと思います。(深読みすれば、ファンバステン自体は、次期監督(ライカールトなどへの繋ぎだったのかもしれません・・・ここはまだ監督をやっているので憶測でしかないのですけどね)
ただ、どの年代でも言えることですが、2センター(CB)の前に1フォアリベロ(ボランチ)を置くというシステムのようには見えません。98~00年の頃は、2ボランチという形を取っていますが、あくまでも一過性のような形だと思われます。トータルフットボールの基本的な思想の半分だけを踏襲していると言ってもいいかもしれません。
06年ドイツW杯の際にも中盤の底でプレーしたスナイデルはそれほど守備重視の選手だと思いません。むしろレジスタ的なプレーをするタイプだと思うのです。そういう意味で近年の流れである「2センター+1フォアリベロ(ボランチ)」とは違います。04年の方がダービッツがいる分中央での守備ブロックという意味では強固だったでしょうしね。
◆トータルフットボールが拠り所
そもそもオランダのサッカーの場合、トータルフットボールの概念が根強く存在するのではないでしょうか・・・「ボールポゼッションが高ければ相手に攻撃のチャンスを与えることはない、つまりボールを支配することが攻撃でもあり守備でもある」というベースがあるのかもしれません。イタリアのカテナチオがそうであるように・・・勿論、どの年代のオランダ代表でも個々の選手やチームとして明確な守備の意識、戦い方は存在すると思います。あくまでも概念上の話としてです。
■ サイド重視への流れと中央の守備ブロック |
◆[4-3-3]と[4-1-4-1]における両ウィングの使い方の違い
オランダ代表のウィングの使い方の特徴の一つとして、「ドリブル」があると思います。このドリブルは縦へ突破してクロス。というのが基本です。実際歴代のオランダ代表のウィングの選手を見ると縦へのドリブル突破を特徴とする選手が並んでいます。(細かい部分は省略)
[4-1-4-1]の場合も攻撃に関しては、基本はオランダ的な概念と同じだと思います。
但し、両ウィングがドリブラーである必要はなく、むしろサイドプレーヤーという広義で構わないと思うのです。つまり、前線のスペースへ飛び出したり、相手のSBを封じる為の選手であったり等と・・・
また、余談ですが、近年サイドの選手が利き足でないプレーヤーの場合があります。(例:セルティクの中村)これは、サイド(ウィング)が縦へ突破するという基本的な考えの上に中央へという考え方が加わったというものでしょう。また、最大の理由は、ウィングタイプの選手の需要に供給が追い付いていないというギャップを埋める為の一つの方法論だと思います。
◆ 中央の守備を強めたことによるサイド攻撃への流れ
前回のエントリーで[4-1-4-1]は、中央の守備ブロックを強固なものにする為の流れと締めましたが、その反射的結果として、サイドからの攻撃が重要になってきました。今シーズンのCLリーグに出場しているクラブで[4-3-3(4-1-4-1)]が多いのもこういう背景があるのかもしれません。また、1トップという形により、FWが中央のポジションに縛られる事なく左右へ移動したり、サイドの選手も元来のウィングというサイドに張るイメージよりも前方のスペース(FWが空けたスペースも含む)へ飛び出すイメージが強くなったと思います。
◆ シュートレンジの変化
さらに、ここで書いたように必ずしも中央だけが危険な訳でもなく、サイドからの攻撃も十分に危険な訳です。しかし、中央の守備ブロックを強固なものへ変えたのは、シュートレンジの変化があると思われます。
特に、以前はミドルレンジと言われるエリアが、近年では通常のシュートレンジに変わって来ていることす。
例えば、06年W杯で、ボールが変わったという側面もありますが、ミドルシュートが目立つ象徴的な大会だったと思います。特に、このミドルレンジの傾向が突出しているリーグがプレミアリーグのような気がします。この辺はデータ的な詳細は分からないのですが、他のリーグに比べて、プレミアリーグの方がCBが高さもパワーもあり強いがスペインのように選手がテクニカルではない・・・よって、プレミアリーグでは、ミドルシュートによって中央から攻撃をするという発想があるのかもしれません。
(特殊かもしれませんが)バルセロナであれば、勿論ミドルシュートもありますが、ある程度中央からでもテクニックにより守備ブロックを破るような気がします。この辺のディティールは、CLベスト16以降で検証しても良いかもしれませんね。
◆ 個々の能力が大きく問われる時代へ
ただ、フォーメーションは、ある種、概念のようなものなので、サイドの攻撃が中央の守備より大きなウェイトをもたらすような流れになれば、再びサイドの守備を強固にした[4-4-2]的な形がトレンドになるかもしれません・・・
もしかしたら、今後はフォーメーションよりも昔のサッカーのように個々の選手の突出した能力を生かすような流れになるかもしれません。なぜなら、現時点では考えられるフォーメーションやシステムがある程度出来上がって硬直化して来ているような感じもします。
サッカーは11人の選手(個性)が集結したチーム同士の対決です。その中で、自分達のストロングポイントを生かす為であったり、ウィークポイントを補う為のフォーメーション(システム)でした。しかし、結局は回りまわって原点である、“これまで以上に”個々(1対1)の能力により勝負が決するような時代になるのかもしれません。
日本が組織を生かしたサッカーを掲げているような感じもしますが、近頃、本当に大事なのは、個々の能力だったりする気がします。
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■ 参考資料:『 アヤックス・スタイルの源流とその行方 』- attacking phase
P.S.
この記事は、[4-1-4-1]の原型に関する一考察の補足かつ自分の記録的スタンスが強く、後半部分は訳が分からない状態になっていると思います。不明な点などは、コメント欄にどうぞ。
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>>こんにちは。
リティが横浜FC時代監督をしていた詳細が分からないので、福岡でどうやるのか?興味はありますね。
多分、ドイツ人なので、純粋な4-4-2だと思いますね。もしくは、日本人のDF力という面を考慮すれば、3-5-2でしょうね。
フォーメーションよりも彼自身が現役の時にそうだったように、ドリブラーなどをチーム内に組み込んだりとシステムに影響されない自分達のスタイルってのを確立してくれたら面白いんですけどね・・・
極端な話、3年くらいかけて川崎のようにチームとして形にならないと福岡に限らず、昇格・降格を繰り返しているチームは成長ないでしょうね。
我がアビスパ福岡はリトバルスキー新監督になりましたが、彼がこのチームを攻撃的に導いてくれるかがJ1昇格の鍵になると思います
彼がオランダ的4-3-3(4-1-4-1)の発想を考えているか、彼がとる基本フォーメーションで明らかになるでしょう
強力なサイドアタックというのは3-5-2(3-4-1-2)ではなく、4-3-3(4-1-4-1)だということが明らかにいえるのではないでしょうか!?
>>こんばんは、はじめまして。
オランダはやはりサイドが攻撃の肝でしょうね。
近年はロッベンが登場してから左サイドの脅威があります。
>>こんにちは。02年の時の両チームは懐かしいですね。デンマークは90年代がやっぱり魅力的でしたし、日本にもファンが多かったと思います。特に98年のベストゲームはベスト16だったかな?ブラジルvsデンマーク戦ですね。メンバーも個性豊かで魅力的でしたし何よりもスピーディーでアグレッシブでした。ちと、機会があればこの2チームのビデオ見てみたくなりました。
[4-3-3]の源流ってことになると、システムの特徴はウィングを使いサイド攻撃、ピッチ上に選手を均等に配置出来るなど・・・[4-3-3]の攻撃面の特性を最近は守備面での特性(サイドを2枚配置、フォアリベロを配置など)へと変換して使われているような気もします。
こちらは4-4-2や4-2-3-1といったサイドに二枚置く戦術の「守備面」を強化した考え方だと思います。
攻撃はセネガルがセンターハーフ中心、デンマークがウィング中心のカウンターだったのも興味深かったです。
でも4-1-2-3の源流はやはりオランダなんですかね。
こちらは「攻撃面」でWFがボールをキープすることで高い位置でのポゼッションを図ったものと思われます。
同じ4-3-3でも目的(戦術)や人材で用途はこと異なってきますね。
フォアリベロを起きたいという発想は似ているかもしれません。