背を向けた若い女性のいる室内
クレスチャンボー宮殿、晩秋
デンマークの19世紀から20世紀にかけて活躍した画家ヴィルヘルム・ハンマースホイ。
9年前、初めて彼の絵を観た。
フェルメールの「青いターバンの少女」の展覧会があった同じころ、彼の絵も近くの美術館で展示されていた。
「背を向けた若い女性のいる室内」が、ポスターで巷に張られているのを見て、気持ちがひかれたのがきっかけだ。
展示されている絵は、灰色を基調とした、いかにも北欧の雰囲気を伝えている。
描かれるものも、人気のない建物、人のいない室内あるいは一人だけまるで室内の一部のように置かれている、時が止まり音の消えうせたそのような世界だけ。
でも、それは死んだ世界ではない。
深く深く心の中に吸い込まれていくような、甘美な追憶のほのかな優しさがある。
私は、彼の絵を追いながら、コペンハーゲンの路地を歩いては心の糸を辿っている気持になった。
絵にはいろいろな作用があるけれど、内省を促すような絵を描いてみたいという願いも起きるような体験だった。
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