子供だけではもったいない、ロアルド・ダール”奇才ヘンリー・シュガーの物語"

映画”チャーリーとチョコレート工場”の原作、”チョコレート工場の秘密”の作者といえば分かってもらえるだろう、イギリスの児童文学者ロアルド・ダール。
彼の”奇才ヘンリー・シュガーの物語”は、まだ人生の初めに立っている子供達にも、いささか人生の荒波にもまれて疲れている大人たちにも、読んでもらいたい１冊。
ウイットに富んだ文章で、人生をまじめに楽しみながら生きていこうと、包容力豊かに書き上げている。
自分が、子供の頃に出合ってみたかった本。
いや、ある程度生きてきたから、この本が面白く思えるのかもしれないが。

我が家の中くらいの人に、勧めてみたけれど、読む気配はない。
彼は今、ライトノベルを好んで読んでいるから。
自発的に読んでいるから、これが本当の読書なので問題はない。
しかし、時には、人の推薦本を読んでもいいとは思うけれど。

生き方は、星の数ほどもある。
でも、あまたのうちに唯一つしか辿れる道はない。
だからこそ、人一人の人生はユニークなのであり、尊重されるべきものといえよう。
その人生を、大切に生き切るためのガイド役に、本は相応しい。
控えめに、しかも従順に、さりとて迎合することなく、人に寄り添って支え、ともに人生を歩んでくれる。
このように人生をともにしてくれる本がある人は、ちょっと幸せではないだろうか。
自分には、何冊あるだろう。
心の本棚にある本、１０冊くらいはありそうだ。
”奇才ヘンリー・シュガーの物語”は、かなりいい線をいって入るが、出会うのが遅かった。
せめて２０年早ければ、心の本棚に収まったかもしれない。

いまだに夢見がちな自分にとって、それこそ”ヘンリー・シュガー”になれるものであればなりたいと、本気で思ってしまうのであった。
それくらい、がっちりと心を捉まえられる、ロアルド・ダールに拍手を送りたい。