ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

悲しみの港

2019-03-28 18:10:16 | 読書
小川国夫『悲しみの港』


 色とりどりのストライプの背が並ぶ棚。

 手に取ると、ちょっとずんぐりした感じのB6サイズ。

 小学館のP+D BOOKSというシリーズだ。

 年配の人向けの本なのか、そう思って開くと、若干文字組がゆったりしている。

 紙は、P+D(ペーパーバックとデジタル)の名の通りいい感じにチープさが漂い、ガツガツと読みたくなる造り。

 渋いラインナップの中から、まだ読んだことのない小川国夫を買ってみた。

 
 とても簡単にいうと、親のすねをかじりながら、小説を書いている青年の話。

 文学を生み出そうと苦しんでいるのに、周囲の人たちの温かいまなざしに鈍感で、青臭い。

 原稿がやっと雑誌に掲載されることになるが、原稿料は出ない。

 一度も働いたことがなさそうなのに、肉体労働ならできると思い込む。

 けれども身体は弱い。

 感情移入がまったくできない主人公。

 恋する女性の家に押しかけ求婚するものの、娘の父親に優しく諭され、無力なまま帰宅する、あまりに不器用な姿が哀れ。

 最後は、苦しまぎれの明るさが、切ない。(2017)


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