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岸惠子さん - そのドラマチェックな人生

2019-04-06 00:01:09 | 岸惠子

明治座6月「朗読劇 わりなき恋 l'amour」岸惠子よりコメントが届きました

 

  女優の岸惠子さんが書き下ろした小説「わりなき恋 (幻冬舎文庫)」。69歳の女と58歳の男の恋を鮮烈に描き、25万部のベストセラーとなった。

--物語の流れは、笙子自身がその時ヨーロッパにいたことで目にした1968年の「プラハの春」から、2010年に起こった「アラブの春」までの42年間の時の流れを巧みに取り入れている。
 2011年3月の東日本大震災をも織り交ぜ,家庭を犠牲にしてまで会社という共同体に尽くしてきた男が、東日本大震災という未曾有の天災に当たりどう行動するか……。
 日本で2人が共に体験する読者を引き付けている。 2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震。

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◆p104

 侵入してきた九鬼兼太を受け入れながらも激痛が走った。固く閉じたオブジェの扉は開くことができないでただ裂けた、ように笙子は感じた。身を反らせながら発した自分の叫び声に自分で傷つき、蒼ざめていった。この世の果てのような暗がりのなかで笙子はもがいた。
           
 
ほっそりとした体が慄(おのの)いた。自分では恥じいる枯渇したその姿態にしたたかなエロティシズムが潜むことなど笙子は知る由もなかった。
「ごめんなさい」
 九鬼兼太の手が、滑るように背中を這って、襟首をつたい髪の毛に潜った。「ごめんなさい」再びささやく兼太に、笙子は声も出なかった。
「ごめんなさい……でも、ぜったいに離れないで。ぜったいに消えてしまわないで。ぼくにとってあなたがどれほど大切か……」


 p112~P113

 九鬼兼太さま

 むかし、『かくも長き不在』 という映画がありました。あなたは映画というものを観る方かしら? たしかマルグリット・デユラスの原作で、アリダ・ヴァリが主演でした。一九六〇年代はじめにカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品です。
 ストーリーはよく覚えてはいないけれど、長く暗い話だったように思います。
 ナチスのゲシュタポが絡んでいたように思いますが、長いこと生き別れになっていた夫に酷似した記憶喪失のホームレスを見て、愕然とするアリダ・ヴァリのクロ-ズアップが,昨夜から今朝にかけて脳裏いっぱいにひろがっています。不朽の名作『第三の男』であれだけ知的で美しかった顔が年月に晒されて無残に老いていた。その無残さに当時感銘を受けたのを覚えています。さいわい結末は忘れました。
 
かくも長き不在のあとの私のみじめを、どうぞお捨て置きくださいませ。私の長すぎた不在は、私の孤独癖と異端にちかい私流の美学が選びとったものだっただけに、そのしっぺ返しのひどさに茫然としています。あなたは私にとっても、かけがえなく大事に思われる人になっています。
 このまま大事にさせてください。ごく自然に、ごく日常的に、歩調を合わせて、ただ時折、いっしょに人生を歩く人でいてください。
今朝の私は凍えています。
                                伊奈笙子

 岸惠子さん-87歳  -1953年に映画「君の名は」で一躍スターに

岸惠子さんは1932年生まれ。(87歳)。いつまでも若々しく美しい。日本映画界で絶大な人気を誇る女優となった岸さんは、1957年に24歳でフランス人映画監督のイブ・シァンピ氏と結婚。大スターとして扱われていた自分に“一人の女の子”として接してくれたイブに惹かれていくが、当時の日本では、民間海外旅行が禁止されていたためフランスへ渡り国際結婚をするということは相当な覚悟が必要であった。以来、日仏両国を拠点に女優として、ジャーナリストや作家として国境をまたいだ活躍を続けてきた。そのドラマチェックな人生。小説「わりなき恋」でも、70歳を迎えた女性の恋と生き様を赤裸々に描き話題を呼んだ。

 

あの頃映画 君の名は 第1部 [DVD]

眞知子と春樹、その純真な愛と波乱の人生。
      佐田啓二 (出演),‎ 岸惠子 (出演),‎ 大庭秀雄 (監督) 形式: DVD

「あの頃映画 松竹DVDコレクション 第2シリーズ」 対象。お求めやすい価格\2,800(税抜)で登場!

すれ違いの悲恋を綴った大庭監督の本格派メロドラマ 昭和20年5月24日、東京大空襲の夜に数寄屋橋の上で互いの命を助け合った若い男と女。ふたりは名も明かさず、「もしも生き延びていたのなら、半年後の11月24日の夜、この橋の上で再会を…」と、約束を交わし別れる。

時がたち約束の夜、男は待ち合わせ場所へ。しかし、女は無理解な縁談を強いられ、遠く佐渡ヶ島にいたのだった。幾多の障害にあいながらも、互いに想いを絶ちきれず、それから1年後の11月24日、ふたりは再会し名乗り会うことに。

男は春樹、そして女は眞知子。だが眞知子は、明日は人の妻になる身であった。真実を打ち明けられた春樹は・・・。

松竹 価格: ¥ 1,982 
わりなき恋 (幻冬舎文庫)

 

国際的なドキュメンタリー作家・伊奈笙子、六十九歳。大企業のトップマネジメント・九鬼兼太、五十八歳。偶然、隣り合わせたパリ行きのファーストクラスで、二人がふと交わした「プラハの春」の思い出話。それが身も心も焼き尽くす恋の始まりだった……。成熟した男女の愛と性を鮮烈に描き、大反響を巻き起こした衝撃の恋愛小説。待望の文庫化!

 

幻冬舎刊 岸惠子著 650円 

 


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