小林信彦著『うらなり』(文藝春秋)は、夏目漱石『坊っちゃん』の登場人物“うらなり”の視点から『坊っちゃん』の世界を描いた小説だ。
小林信彦は、『ちはやぶる奥の細道』『裏表忠臣蔵』など、有名な古典を本歌取りしたパロディ作品が数多くある。
角度を変えてよく知られた作品を読んでみると、新鮮な魅力が発見できるといういい見本だ。
“うらなり”は、“坊っちゃん”が名付けたアダ名で、青く脹れているという意味。目立たない地味なキャラクターである。
『坊っちゃん』の後日談を“うらなり”の側から小説的想像力を駆使し、描写する。
“うらなり”は、“マドンナ”と“赤シャツ”の三角関係にあり、“赤シャツ”の陰謀によって、転任させられてしまう。
さびしい末路をたどるキャラクターに着目するところが独創的だ。
『うらなり』は、『坊っちゃん』の作品批評にもなりえている。
『坊っちゃん』は、登場人物を“赤シャツ”“山嵐”などアダ名を付けて痛快な小説だと思われているが、“坊っちゃん”とは“赤シャツ”側から「あのべらんめえと来たら、勇み肌の坊っちゃんだから愛嬌がありますよ」と、“世間知らず”の意味合いで名付けられるアダ名なのだ。
(なんとなく下女の清が親しみを込めて呼ぶ愛称だと思っている人が多いのではないだろうか)
笑っていた者が笑われていた皮肉。『坊っちゃん』は明るさの中に苦みがあるところが隠し味になっている。
昔読んだけど、どんな内容か覚えてないなあという人、“うらなり”君に写った『坊っちゃん』の世界を再読してみてはいかがですか?
小林信彦は、『ちはやぶる奥の細道』『裏表忠臣蔵』など、有名な古典を本歌取りしたパロディ作品が数多くある。
角度を変えてよく知られた作品を読んでみると、新鮮な魅力が発見できるといういい見本だ。
“うらなり”は、“坊っちゃん”が名付けたアダ名で、青く脹れているという意味。目立たない地味なキャラクターである。
『坊っちゃん』の後日談を“うらなり”の側から小説的想像力を駆使し、描写する。
“うらなり”は、“マドンナ”と“赤シャツ”の三角関係にあり、“赤シャツ”の陰謀によって、転任させられてしまう。
さびしい末路をたどるキャラクターに着目するところが独創的だ。
『うらなり』は、『坊っちゃん』の作品批評にもなりえている。
『坊っちゃん』は、登場人物を“赤シャツ”“山嵐”などアダ名を付けて痛快な小説だと思われているが、“坊っちゃん”とは“赤シャツ”側から「あのべらんめえと来たら、勇み肌の坊っちゃんだから愛嬌がありますよ」と、“世間知らず”の意味合いで名付けられるアダ名なのだ。
(なんとなく下女の清が親しみを込めて呼ぶ愛称だと思っている人が多いのではないだろうか)
笑っていた者が笑われていた皮肉。『坊っちゃん』は明るさの中に苦みがあるところが隠し味になっている。
昔読んだけど、どんな内容か覚えてないなあという人、“うらなり”君に写った『坊っちゃん』の世界を再読してみてはいかがですか?