烏鷺鳩(うろく)

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カンボジア 恐竜切手 1995年:多彩な角竜類(1)

2018-06-12 | 切手


角竜類。大きな襟飾りと角を持つ。その襟飾りと角の形は多彩であり、近年、北アメリカから様々な種類が発見されている。
上段左から、プシッタコサウルス、プロトケラトプス、モンタノケラトプス。下段左から、セントロサウルス、スティラコサウルス、トリケラトプス。


いずれも恐竜界の人気者達である。トリケラトプスを始めとする角竜類(つのりゅうるい)は私の一番好きな恐竜である。
特に、トリケラトプスの鼻角と後眼窩角の三本角の配置、フリルのついた襟飾り、太くたくましい四肢、背中から尾にかけての緩やかなカーブ。何だか、完成された造形美のようなものを感じさせるのだ。とてつもなく魅力的だ。


カンボジアで1995年に発行されたシリーズである。国名の”ROYAUME DU CAMBODGE”はフランス語で「カンボジア王国」ある。かつては旧フランス植民地であった。現在ポピュラーなのは英語だそうだが、高齢者や医者などの特別な職業に就いている人々にはフランス語がある程度通じるのだそうだ。通貨はリエル(Riel)である。

カンボジアと言えば、1975年に政権に着いたポル・ポトの独裁下で無数の人々が犠牲となった。その後の内戦でも数え切れない人々が亡くなっている。国連による統治が始まったのが1992年である。その間17年。このことを思い起こさずにはいられない。

そのカンボジアもようやく平和になり、こんな素敵な恐竜切手を発行するようになったのだろうか、と、ふと考えてしまう。


さて、切手に描かれている恐竜たちに注目しよう。
まずは、プシッタコサウルスである。原始的な角竜類で、アジアに生息していた。その後に派生してくる様々な角竜類とは異なり、プシッタコサウルスは2足歩行をしていた。大きさも1.8m、推定体重10~20kgと小型だ。1億2600万年前頃生息していた。
切手には描かれていないのだが、2002年に報告された中国の化石には、なんと羽毛が残っていたのである。



もっとも羽毛とはいっても長さは数十センチ、幅数ミリの竹ひごみたいなものである。しっぽの辺りからもさっと生えていて、少しヤマアラシに似ている。しかしトゲではない。しなやかに曲がっているのだ。(『大人の恐竜図鑑』p.151)

モンゴル中部や中国の山東省などから見つかっている。ちなみに、カンボジアのお隣、タイでも発見されているのだ。その名は「オウムトカゲ」である。

このプシッタコサウルス、角も襟飾りも持たない。どうして角竜(ケラトプシア類)の仲間に入るのかというと、以下のような特徴によるのだ。

角があろうとなかろうと、それがケラトプシア類だと判別できる特徴がある。ケラトプシア類にはすべて、その先端にある鋭く湾曲したくちばしを備えた幅の狭い頭骨をもっていたが、その頭骨は頬の領域で左右に張り出すという特徴をもっていた。そして上顎の吻部の先端には、ケラトプシア類が固有に進化させた吻骨が備わっていた。(『恐竜学入門』p.111)

「角竜」というけど、角のない仲間も結構含まれているのである。角竜を角竜たらしめているのはオウムのような口と頬の張り出しと吻骨なのである。


プシッタコサウルスやインロンといった原始的な角竜類から次に派生したのが、プロトケラトプスやモンタノケラトプスである。
プロトケラトプスといえば、白亜紀後期のモンゴルから発見された、「格闘恐竜化石」で有名である。


『恐竜学入門』p.187

この標本では、ヴェロキラプトルの両後肢が、亜成体のプロトケラトプスのお腹に蹴り込まれており、これから餌にされようとしてるプロトケラトプスの顎に手でつかみかかっている(または顎にくわえ込まれている)。(『恐竜学入門』p.188)

プロトケラトプスは体長約2m、推定体重50kgとやや大きくなった。名前は「始めの(prot)角(cera)の顔(tops)」という意味だ。モンタノケラトプスは体長3mである。プロトケラトプスには角が無いが、モンタノケラトプスには鼻先に立派な角がある。両者ともいかにも角竜っぽい、しかしながら小さな襟飾りができてきて、四足歩行するようになる。


アジアで誕生した角竜類は、この後、北アメリカ大陸を中心に多種多様な種類が派生することになるのだ。
角竜類についてはまだまだご紹介したいので、次回へ続く。



【参考サイト・文献】
・ウィキペディア 「カンボジア」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%82%B8%E3%82%A2
・『大人の恐竜図鑑』(ちくま新書1315)北村 雄一 著 (2018年3月10日、筑摩書房)
・『恐竜学入門』Fastovsky, Weishampel 著、真鍋真 監訳、藤原慎一・松本涼子 訳 (東京化学同人、2015年1月30日)
・『世界恐竜発見地図(ちしきのぽけっと 18)』 ヒサ クニヒコ 絵・文 (岩崎書店、2017年5月31日)
・『ニュートン(2015年10月号)』(2015年10月7日、ニュートン プレス)

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