烏鷺鳩(うろく)

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ウドムルト共和国 恐竜 加刷切手 (2)

2018-04-06 | 切手
大体、この切手が恐竜の図案であると分かったのは、真ん中のスピノサウルスらしきものがいたお陰だ。背中の帆でかろうじてスピノサウルスだと分かったけれど、そして右端の竜脚類らしきものがいたから恐竜だと分かったけれど、他の図案はまるでカンガルーの化け物である。どうしてこんな風になったのだろうと一人いぶかしむ。黒一色の印刷のためか、スピノサウルス以外は、もはやどんな種類の恐竜なのか見当も付かない。印刷がつぶれてしまっている。


漠然と「これ、元ネタあるんじゃないの?」という疑問が浮かぶ。国名と額面はともかく、肝心の図案があまりにも不鮮明だからである。何かイラストなり他の切手なりをコピーした物ではないかという予想がつく。


というわけで、図書館にて今はもう絶版になってしまった本を借りる。『よみがえる恐竜たち(切手ミュージアム1)』である。子ども向けの本だ。前半には様々な国から発行された恐竜の切手をカラーで紹介している。後半では、恐竜についてこれまで分かっている事が、生態や絶滅した理由、古生物学史などを交えながら詳しく説明されている。途中、年代の誤記と思われる箇所や、植物食恐竜のデンタルバッテリーに関する説明図が抜け落ちている辺りは残念でならないが、恐竜に関する情報を十分概観する事ができる。さらに、最後の方には切手の用語についての説明まで載っている。あなどるなかれ、である。これはかなり面白くためになる本だ。恐竜切手を収集する際、知っておくと便利な情報が盛りだくさんである。大人が読んでも勉強になる。


カラーで恐竜切手を紹介するページが、全体のちょうど半分位である。ぱらぱらとページを繰るだけでも楽しい本だ。と、





これって・・・






そういうことだよね・・・。






というわけで、「ウドムルト共和国 恐竜 加刷切手」の元ネタが判明した。ガンビアから1992年に発行された恐竜シリーズの切手である。


これでウドムルト共和国切手の図案が何の恐竜であるかが分かった。左からドリオサウルス、サウロロフス、スピノサウルス、スクレルモクス、ケティオサウルスである。


なぜにガンビアの切手図案をコピーしたのであろうか?当時、ウドムルト共和国、もしくはロシア連邦とガンビアとの間に、何か特別な友好関係でもあったのだろうか?それとも、単に良い切手だなあ、ということでコピーしちゃったのだろうか。ウドムルト共和国大使館というのは無いから、ロシア大使館にでも行ってお訊きしたいくらいである。


そもそも、ガンビアの切手、4種類を除き、全て恐竜がカンガルー座りなのだ。しっぽの付け根の辺りを地面に下ろし、後ろ足を折り曲げて座り込んでいる。しっぽは足の間にある。どうしてそんなポーズを図案化したのだろう。お世辞にも魅力的とは言えない。縦型・長方形という切手の形とサイズによる制約だったのかもしれない。確かに手持ちの恐竜切手は、横型・長方形が多いような気がする。獣脚類の恐竜を縦型に図案化すると、しっぽがどうしても描きづらい。その結果、足の間から前に向かってしっぽを下ろす、という姿勢になってしまうのかもしれない。


「しっぽが足の間に」、という姿勢は、当時、恐竜、特に獣脚類の復元図で主流であった「ゴジラ型」のポーズが影響していると思われる。ご存じのように、昔の恐竜の絵と言えば、ティラノサウルスがゴジラのように直立してしっぽをひきずっていた。それが、1993年公開の「ジュラシックパーク」を機に、頭としっぽが水平の、新しい復元モデルが切手界でも浸透し始める事になる。とはいえ、1990年代の恐竜切手は、ほとんどが「ゴジラ型」のしっぽ引きずりモデルがまだまだ多くを占めていたように思われる。


図案の謎はある程度解けた。次は加刷されている、“地”のロシア切手と額面に注目してみると、この「ウドムルト共和国 恐竜 加刷切手」がいつ頃発行された物であるのか、ある程度絞り込める事が分かった。
さらに続く。



【参考文献】
・『よみがえる恐竜たち(切手ミュージアム1)』長谷川善和・白木靖美 著 (未来文化社 1994年)

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