歴タビ日記~風に吹かれて~

歴タビ、歴史をめぐる旅。旅先で知った、気になる歴史のエピソードを備忘録も兼ね、まとめています。

本と散歩と歴史と

2023-11-21 17:05:10 | 歴史 本と映画
前記事(「若き血・今昔」)で
深紅の優勝旗をもちかえった塾高(慶應義塾高校)ナインと
同じ慶應義塾の日吉にある第一校舎(現・慶應義塾高校校舎)で学んだ
かつて学徒出陣で出征、特攻死した二人について触れた。



ちょうど、そのとき
梨木香歩『歌わないキビタキ 山庭の自然誌』(毎日新聞出版)を
読んでいた。

梨木さんは、わたしの敬愛してやまない作家さんのひとり。
勝手に四半世紀のおつきあいの友人気分でもいるw

もちろん新作小説が出れば、予約して買いに走る!
今回はエッセイなので、図書館の本を借りて読んだのだが・・・w
やっぱり買わなくちゃな、と今、思っている。

というのは、梨木さんご自身が「持病」を患われたことと
(わたしにとっての「大病」と同義、前作のあとがきで触れていらした)
ほぼ同世代(梨木さんの方が少しお姉様)の共感が尽きなかったからだ。



さすが梨木さんだなぁと、うなずきながら読み進めていたら・・・

心臓がギュッとつかまれたような驚き!

突然に「岩井忠正/岩井忠熊」ご兄弟の名が出てきたのだ。
しかも、お二人の『特攻 最後の証言 100歳・98歳の兄弟が語る』
(河出書房新社)について一章をあてられている!


岩井兄弟は、学業半ばで学徒出陣。
兄・忠正氏が特攻兵器「回天(人間魚雷)」と
「伏龍」(潜水して上陸する敵を突こうというとんでもない兵器)に
弟・忠熊氏は特攻ボート「震洋」の乗務員だった。

『特攻』は、お二人の対談で進む。
梨木さんは、各章4頁ほどの2頁ほどを、
この本からの引用にあてている。

図書館に返却したので、
梨木さんの引用部分はわからなくなってしまったのは残念、
だからやっぱり手元にほしい。

わたしが又聞きした、岩井兄弟の言葉を挙げると・・・
「特攻で死ぬ気だったなら、死ぬ気で戦争反対を叫ぶべきだった」と
晩年、おっしゃっていたそうだ。


『特攻』では、こんな風に書かれている。

ーー 多くの若者が戦争に妥協してしまった…
 時の権力に対して口をつぐんでいた。その自責の念は75年経った今も
 胸に深く刻まれている。「自分の意見を言えないことがどれだけ
 恐ろしいことなのか」若い人たちは歴史から学んでほしい。

 そうですね。今の若い人たちは、「日本はこのままずっと戦争とは
 無縁だ」と思っているんではないでしょうか (131頁)ーー

弟が兄に対し、敬語を使うところが大正生まれ!?



兄・忠正氏は、この春、亡くなられた。(享年103歳)

そして、弟の忠熊氏は、「学徒出陣80年」の特集記事で
お元気に答えられるご様子を拝読していたのだが・・・
今月初め、急に食欲をなくされ、翌日亡くなったとのこと。
(享年101歳)

戦後、京都大学に働きながら復学し、
「戦争の無意味さを後世に伝えなければならない。
そのために生涯を懸けて戦争の真実を突き止めていく」と
近代史の研究に打ち込まれた。
 
「これからも身体が続く限り、ご要望があれば、どこへでも出かけて
『戦争の愚かさ』を伝えていく覚悟です」と、
『特攻』の「おわりに」のまさに末尾に書かれている。

それが2020年のこと、御年98歳でいらっしゃった。
頭が下がる・・・


兄・忠正氏は慶應義塾から学徒出陣している。
前記事で挙げた「塚本太郎君」についての記憶も語っておいでだ。
「回天」の基地に、塚本君が訪ねてきたのだという。
同じ慶應義塾に学んだ二人ならばの出会いだった。


先日、慶應義塾/三田キャンパスへ「建築さんぽ」に出かけ、
塚本太郎ら慶應義塾から学徒出陣した若者について
考えていたら・・・
大好きな作家・梨木香歩さんが、岩井兄弟について書かれたていた、
この偶然。

他人様からしたら、どうってことのないささやかなことながら、
梨木氏が同じように岩井兄弟のご本を読み、
熱く語られていらしたことが嬉しくてならない。

梨木さんも、岩井兄弟の訃報を聞かれただろうか・・・

最後に、岩井ご兄弟のご冥福を祈りたい。

***********************

おつきあいいただき、どうもありがとうございます。
書影は、それぞれの出版元HPよりお借りしました。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
« 「若き血」今昔 | トップ | 結ぶひと~『真実なる女性 ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (なおとも)
2023-11-21 22:03:54
こんばんは!

とても読み応えのある素晴らしいブログでした。
梨木香歩さんの本は随分前に読んだきりでした。
「西の魔女が死んだ」は私には衝撃的でした。今日ブログ拝読して、改めて本当に素晴らしい作家が沢山おられ、もっと本を読まなければと思いました。とても知的で素敵なお話に、私は感動しています。 なおとも
返信する
なおともさま (ぴあ野)
2023-11-22 07:36:13
なおともさん、おはようございます。
嬉しいコメントをどうもありがとうございます。
お褒めの言葉は元より過分ですが・・・
梨木さんに注目していただいたことが、とても嬉しくて❤
「西の魔女が死んだ」は、あのジャンルの児童文学の嚆矢、
若い人があとから読んで「よくある話」と言うので、
熱く語ったことがありますww
梨木作品は、ときどきついていけないこともあるのですが、四半世紀にわたる愛読者です。
世の中には、まだまだ作家さんも画家さんも音楽家さんも、素晴らしい方がたくさんいらして
忙しいですね~~~お互い頑張りましょう!
返信する

歴史 本と映画」カテゴリの最新記事