(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子80 その間、俺はずっと

2007-02-23 21:17:32 | 欲たすご縁は女の子   五日目
「あのね、セン」
肩に手を置く。華奢なのが制服の上からでも解った。
「はい?」
日永君には小さすぎるんじゃないかしら?
と言っても日永君自身は普通の身長なんだけど。
う~ん、やっぱり成長期の食糧不足が原因だったりするのかしら……
色々と小さすぎるわよねやっぱり。……色々と。
などと肩に手を置いたまま考えていたので、気付くとセンが困惑気味だった。
手を引っ込めて、言うべきことを言い始める。
「あ、そのね、言ってることは凄く解るんだけど……
 私にそこまで言わなくてもいいんじゃないかなー、ってね。
 まあ訊き出したのは私だけど」
私じゃなくて日永君に言うべきだと思うのよね。
「あっえっ、そっそういうものなんですか? うぅ……まだまだ未熟者なんですね……」
まだまだってことは……今までも何かやらかしたのね。頑張って日永君。
……いや、もしかしたらそういうところが好きなんだったりして。
「ほら、二人だけの内緒の話とか……そういうのっていいと思わない?」
私がこんなこと言うのも変な話だけど。そういう経験ないしなぁ……
「おお! 何やら非常にいい響きですね! 二人だけの……うわわわわぁっ」
口に出して何が頭に浮かんだのか、また顔が真っ赤になった。
……今のこの会話の根底にあるのは、あの日のことだ。センもそれは忘れようがない筈。
でもさっきの不自然な笑顔とは違って、真っ赤な今の顔は自然な、ごくごく自然な顔。
日永君と一緒なら、あの記憶を克服するのはそれほど難しいことでもないのかもしれない。
でも……
『打ち明けるのは、怖くない?』
そんな質問が頭をよぎる。どんなに上手く脚色したって、いい気分がする話じゃない。
もしかしたら、日永君がセンを見る目が変わってしまうかもしれない。
でも質問するのは止めておいた。
一番解ってるのは本人だ。怖くないわけがない。
解っていてそうすると決めたのなら私が何を言ってもそうするだろうし、
私がそんなこと言うべきではない。
そう思ったから。
「セン。ちょっと相談があるんだけど」
センは教室の外から回り込むので、校舎に入る前に別れる。
その前にしておきたい相談があった。
「なんですか?」
「あのね……」

「はぁ!? 告られた!? な、なんや。結局そやったんかいな……」
「だそうです。すいませんお騒がせしちゃって。……ところでこの状況は一体……」
「…………あ、ああ、これはやな……」
明日香が妙な間の後、この状況の説明をしようとするが、言葉に詰まった。
俺は今、明日香に右耳、今日香に左耳、寛に両の頬を引っ張られている。
なんなんだろうな。俺が知りたいよ。
「うちは嫌やったんですけど、明日香が怖くて……」
「…明日香がやれと」
二人が主犯格に目をやる。
「せやかてこいつがセンちゃん一人で行かせろ言うから頭きてやな。
 どついたろか思たけどなんか考えがあるんやろし、手ぇだしにくぅて……
 そんでこんな中途半端な仕打ちになってもうたんや」
「ほひあへふ、ははへ」
とりあえず、離せ。と言ったつもりだぞ。俺としては。

三人がアホな刑を執行し終え、晴れて俺は自由の身になる。
シャバの空気はいつも通りだぜ……
「日永君が皆を止めてくれてたのね?」
騒動の発端が問い掛けてきた。
「ああ。……つーかセンがそうしろって言ったからそうしただけだ。
 お陰で酷い目にあったがな」
すると岩白は物凄くいい笑顔になった。
「ありがとう」
悪態の一つでもついてやろうと思ったが、それを見てそんな気は引っ込んだ。
「……それでその告白ってのはどうだったんだよ」
俺は照れ隠しでそう……って、照れてねーよ別に!
……窓の方から何か怖い気を感じます! 気のせいですよね!
「振った」
岩白は笑顔のままで、あっさりと言い放った。
まあ明日香に良からぬことを考えてるとまで言われてたからな……
「顔がムカツクんだもの」

男、哀れなり。顔だけで女子二人から滅多打ち……挫けるな、男。


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