「ほほう。で、実際のところはどうだったんだよ?」
悪い人ではないと言われても、自分でそんな自覚があるわけじゃないしな。
いじわるだって自覚はあるけど。
「自分の胸に手を当てて考えてみたらどーですかっ」
悪戯っぽく微笑みながらそう仰るので、胸に手を当ててしばし考える。
「最高にいい人だな。完全無欠のパーフェクトだ」
もちろんからかうつもりで言ってるのだが、
「つまり、そういうこと言っちゃうような人ですよ」
センが微笑んだままでそう返した時、俺は敗北を察した。
俺がそういうこと言うって読まれてたのか……
「さ、さてそろそろ風呂入ってくるかなー」
「ごゆっくりー」
勝者の余裕というものを見せ付けられ、敗者はすごすごと風呂場に向かうのであった。
「ふう~」
なんだかんだで結構疲れてたので、その分風呂は気持ちいい。
こうして一人でゆっくりするのもやっぱりいいものだな。
まあ普段が二人って状況になったからそう思うんだろうが。
それまで家ではずっと一人で暇だったからなぁ。遊びに行くような所もないし。
でもあいつが来て……そうだ。あいつは逆に、岩白とずっと二人だったんだな。
じゃあセンがこっちに来て岩白はどう思ってるんだろうか?
金と縁がないなんて理由でせっかく出てきたセンがこっちに来て……あれ?
あいつの食事って、別に家に金がなくてもいいんじゃないか?
事実、今のあいつだって学校やら駅やらコンビニやらデパートやらで相当食べてるし。
神社の外のことを殆ど知らなかったセンはいいとしても、
岩白はあいつが消えたりできることを知ってたわけだしなぁ。
なんでセンが俺について行くって言った時、あんなにあっさり同意したんだ?
五年ぶりに出てきたってのに。しかも初対面の俺に任せるなんて……
風呂に浸かったまま考える。
のぼせそうになりながら思いついたのは、
『賽銭箱から出たついでに神社の外も見せてやろう』
……いや自分で連れてきゃいいんだし、これもないな。
せっかくの考えに自分でダメ出しをしたところで頭がくらくらしてきたので、
考えるのを止めて冷ためのシャワーを浴びた。
……これはなかなか気持ちいいぞ。今度から毎回やってみようかな。風邪ひきそうだけど。
「あ、今日はお風呂長かったですね」
部屋に戻ると、センが居た。
「考えごとしててな。それで、今日はまだ起きてるのか?」
俺もセンも、部屋の隅に畳んで置いてある布団に目が行く。
それが誰の布団で何故ここにあるのかは……まあその、ほら、ね。
センも同じことを考えてしまったのか、顔が少し赤くなっていた。
「……でも、今日はもう寝ます」
何も言ってないのに『でも』とつく辺り、ビンゴだろう。
「いや、別に寝ろって催促してるわけじゃないんだぞ。俺もまだ暫らく起きてるし」
もしかしたら俺、起きてて欲しいかも。……なんて、言えやしないけど。
「やっぱり眠くて……でも、少しずつ起きてられるようにしていきます」
あれ。考え読まれてる? それともセンも同じ考えなのか?
センは立ち上がり、布団を持ち上げた。
「今日はもう寝ますね。
せっかく自分の部屋を頂いたんですから使わないと申し訳ないですし。
……起きてたら、またこの部屋で寝ちゃいそうで」
そう言った後、恥ずかしかったのかやや駆け足気味に部屋を出ようとするも、
布団がドアの所で思いっきり引っかかる。
「あれ? う~んっ……あれれ?」
そりゃあ真っ直ぐ突っ込めばそうなるわな。横向けばなんとか通れるのに。
しかし慌てているからか、それでも後ろに引こうとせずに無理矢理押し出そうとしている。
「いったんストーップ! 二歩下がって右向け~右!」
「え、は、はい!」
意図は解ってないだろうが、とりあえず言われた通りに動く。
布団が重いのか、よたよたとした危なっかしい動きだったが。
「その向きのままドアに横歩き!」
「はい!」
軽く引っかかりはしたものの、そのまま無事ドアを通過した。
「いやよかったよかった」
「だ、駄目ですね慌てちゃって。あはは」
照れ隠しに笑うが、隠せてない。
「じゃ、おやすみ。今日はさっさと寝るかねお互いに」
「そ、そうですね。寝不足でしたもんね昨日は。おやすみなさい」
そう言って、またおぼつかない足つきで自分の部屋の方を向き直り……
「あ、明さん。わたしの部屋のドア、開けてくれませんか?」
悪い人ではないと言われても、自分でそんな自覚があるわけじゃないしな。
いじわるだって自覚はあるけど。
「自分の胸に手を当てて考えてみたらどーですかっ」
悪戯っぽく微笑みながらそう仰るので、胸に手を当ててしばし考える。
「最高にいい人だな。完全無欠のパーフェクトだ」
もちろんからかうつもりで言ってるのだが、
「つまり、そういうこと言っちゃうような人ですよ」
センが微笑んだままでそう返した時、俺は敗北を察した。
俺がそういうこと言うって読まれてたのか……
「さ、さてそろそろ風呂入ってくるかなー」
「ごゆっくりー」
勝者の余裕というものを見せ付けられ、敗者はすごすごと風呂場に向かうのであった。
「ふう~」
なんだかんだで結構疲れてたので、その分風呂は気持ちいい。
こうして一人でゆっくりするのもやっぱりいいものだな。
まあ普段が二人って状況になったからそう思うんだろうが。
それまで家ではずっと一人で暇だったからなぁ。遊びに行くような所もないし。
でもあいつが来て……そうだ。あいつは逆に、岩白とずっと二人だったんだな。
じゃあセンがこっちに来て岩白はどう思ってるんだろうか?
金と縁がないなんて理由でせっかく出てきたセンがこっちに来て……あれ?
あいつの食事って、別に家に金がなくてもいいんじゃないか?
事実、今のあいつだって学校やら駅やらコンビニやらデパートやらで相当食べてるし。
神社の外のことを殆ど知らなかったセンはいいとしても、
岩白はあいつが消えたりできることを知ってたわけだしなぁ。
なんでセンが俺について行くって言った時、あんなにあっさり同意したんだ?
五年ぶりに出てきたってのに。しかも初対面の俺に任せるなんて……
風呂に浸かったまま考える。
のぼせそうになりながら思いついたのは、
『賽銭箱から出たついでに神社の外も見せてやろう』
……いや自分で連れてきゃいいんだし、これもないな。
せっかくの考えに自分でダメ出しをしたところで頭がくらくらしてきたので、
考えるのを止めて冷ためのシャワーを浴びた。
……これはなかなか気持ちいいぞ。今度から毎回やってみようかな。風邪ひきそうだけど。
「あ、今日はお風呂長かったですね」
部屋に戻ると、センが居た。
「考えごとしててな。それで、今日はまだ起きてるのか?」
俺もセンも、部屋の隅に畳んで置いてある布団に目が行く。
それが誰の布団で何故ここにあるのかは……まあその、ほら、ね。
センも同じことを考えてしまったのか、顔が少し赤くなっていた。
「……でも、今日はもう寝ます」
何も言ってないのに『でも』とつく辺り、ビンゴだろう。
「いや、別に寝ろって催促してるわけじゃないんだぞ。俺もまだ暫らく起きてるし」
もしかしたら俺、起きてて欲しいかも。……なんて、言えやしないけど。
「やっぱり眠くて……でも、少しずつ起きてられるようにしていきます」
あれ。考え読まれてる? それともセンも同じ考えなのか?
センは立ち上がり、布団を持ち上げた。
「今日はもう寝ますね。
せっかく自分の部屋を頂いたんですから使わないと申し訳ないですし。
……起きてたら、またこの部屋で寝ちゃいそうで」
そう言った後、恥ずかしかったのかやや駆け足気味に部屋を出ようとするも、
布団がドアの所で思いっきり引っかかる。
「あれ? う~んっ……あれれ?」
そりゃあ真っ直ぐ突っ込めばそうなるわな。横向けばなんとか通れるのに。
しかし慌てているからか、それでも後ろに引こうとせずに無理矢理押し出そうとしている。
「いったんストーップ! 二歩下がって右向け~右!」
「え、は、はい!」
意図は解ってないだろうが、とりあえず言われた通りに動く。
布団が重いのか、よたよたとした危なっかしい動きだったが。
「その向きのままドアに横歩き!」
「はい!」
軽く引っかかりはしたものの、そのまま無事ドアを通過した。
「いやよかったよかった」
「だ、駄目ですね慌てちゃって。あはは」
照れ隠しに笑うが、隠せてない。
「じゃ、おやすみ。今日はさっさと寝るかねお互いに」
「そ、そうですね。寝不足でしたもんね昨日は。おやすみなさい」
そう言って、またおぼつかない足つきで自分の部屋の方を向き直り……
「あ、明さん。わたしの部屋のドア、開けてくれませんか?」
というわけで修正しました。