(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子166 眼鏡の奥の、その瞳

2007-05-20 21:10:18 | 欲たすご縁は女の子   七日目
「ほんじゃはい。明がギターやねんな?」
「……ああ」
ギターを受け取り、肩にかける。さあやってまいりました俺の番。
楽しみよりも不安と恥ずかしさのほうが圧倒的に大きいけど気にしちゃ負けだ。
「一番簡単な曲でええかな?」
「そのほうが嬉しいわね」
ドラムのほうは、交替する前に今日香がぽぽんと曲選び。
「あ、ちょっと待って。ごめん、いっちゃん難しいやつのまんまやったわ」
「へ? この曲が一番簡単なんだろ?」
今日香の曲選びは既に完了している。あとは決定ボタンを押すだけ……じゃないのか?
「あ、いやいや。曲とはまた別んところで難しさが選べてな。緑押したまんま二回弾いて」
言われた通りに操作すると、画面から声がして表示が変わった。
しかし変わったのは解るのだが、どこが変わったのは解らなかった。
「これでいいのか?」
「ええよ。ほなスタート!」
「明さんも春菜さんも頑張れ~」

――演奏中――

「おお、意外となんとかなるもんだな」
「明、おんなじボタン押すときは一回一回押し直さんでええんやで? 押しっぱなしで」
「そ、そうなのか? じゃあ次の曲やってみるか……」

――演奏中――

「手と足がバラバラに動かせないわね……」
「あ、じゃあ足のとこだけオートにする?」
「いえ、このままでいいわ。何事も練習だしね」

――演奏中――

「……休憩していいか? 意外と疲れるなこれ」
「あ、じゃあ私も」
なんとなく三曲終了した所で、再び明日香にバトンタッチ。ドラムは今日香に。
「格好よかったですよ! わたしもやってみようかな?」
そう言いながら完璧に目を覚ましてしまったクロを膝の上で撫でるセン。
クロのほうもセンに慣れてきたのか、案外気持ちよさそうにしていた。
「格好よかったと言われても、あれと比べるとなぁ」
後ろを向くと、
開始五秒でゲームオーバーになりそうな譜面を当たり前のようにこなしていく広瀬姉妹。
難易度云々どころか、最早別のゲームだった。
「でもいいじゃない。私は面白かったわよ?」
そう言ってコーラを一口。
しかしこいつとゲームってのも妙な組み合わせだな。面白かったのは確かだけど。
「ねえ、クロ貸してもらってもいい?」
「あ、はいどうぞ」
センに脇を抱えられ、クロの体がぶらーんと宙に浮く。
「結構伸びるんだな猫の体って」
猫に詳しいわけじゃないから、
普段が丸いからそう見えるのか本当に伸びてるのかは知らないが。
「柔らかいですよ~。明さんもあとで抱いてみます?」
岩白の膝の上に移ったクロの頭を撫でながら、にこにこして俺に問う。
「気が向いたらな」
クロも男よりは女の方が気持ちいいだろ。……なんとなくだけど。柔らかさとか?
「そうですかぁ? じゃあ、寛さんはどうですか?」
残念そうな顔をした後、今度は寛に同じ質問。
「…いえ、俺はどうやら嫌われてるようなので」
その答えに、俺の時以上に残念そうな顔になるセン。
「そう言えばデパートでもそうでしたよね。なんでだろう?」
とクロの方を向き直る。そのクロは岩白に撫でられて気持ちよさそう。
そしてセンの目が岩白に向けられると……何故かセンが俺に近寄り、小声で話し掛けてきた。
「明さん! は、春菜さんが」
「なんだよ」
「見てください!」
「なにが…………っ!」
センに言われて岩白を見る。俺は正直、その光景に息を呑んだ。
岩白がクロを撫でている。それはいいのだが、
その岩白の表情は、これまでに見たことがないほどの優しさと暖かさを湛えていた。
綺麗とか可愛いとかそういう話ではない。
見ているこっちが暖かくなりそうなほどの抱擁感。これは……我が子を抱く母親の表情?

「ん? な……何よ二人してじろじろと……そ、そんなに変な顔してた?」


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