「…冗談だ。…トイレ行くだけだ」
冗談になってねえよ。お前の頭の中に『邪魔』って単語が浮かんだ時点でな。
「ああ、いってらっしゃい」
からあげ二個目。
「邪魔って、何のことですかね?」
寛の後姿を見送りながら首をかしげる。
「知らん。冗談だってんだから気にすんな」
「はあ……」
ペットボトルの茶を一口飲む。
「もうすぐ授業始まるぞ。そろそろ消えとけ」
本当はもう少し余裕があるが、寛が居ない内に退場を願う。
あいつが帰ってきたらまた話し込みそうだからな。あんな冗談言われた後でそれは辛い。
「あ、そうですか? では、また後で」
「四時半に校門だからな」
「はい」
柱の影に身を隠す。多分そのまま姿を消しただろう。やれやれ。米を一口。
暫らくして、寛が帰ってきた。
「…センさんは」
「教室に戻ったよ」
最後のからあげを頬張りつつ答える。
「…そうか」
机を元に戻しながら返事。
「あー、やっと食い終わった」
「…大変だな」
元に戻した席に着き、いつものようにこちらは見ない。
「ああ。二日目にして限界を感じ始めるくらいにな」
「…そうか。…でもな」
こちらを向く。今度は何だよ。
「…だからといって午後の授業、寝るなよ」
「解ってるよ」
自信はないが。
さて、午後の授業。
「眠……」
起きてはいる。いるのだが、
今俺がノートに書いてる文字は恐らく判別不能な線の塊でしかないだろう。
教師が何を言ってるのか解らない。起きながら寝ている、といった状況だ。
すると、ぼやけた視界に何かがアップになる。寛の左手だった。
寛がこちらを向いている。左手の指が輪を作っている。
「何……」
いつものように『何だ』と訊こうとした、その時だった。
コッ。
「ぬっ! っつ~~~~」
小さな音。小さなうめき声。それと、隣の席から押し殺しきれない笑い。
三つの小さな音が教室の隅っこにだけ響いた。
所謂、デコピンだった。非常に痛かった。額を抑えて暫らく痛みを堪える。
顔をあげると、寛は何事もなかったかのようにいつもの壁になっていた。
目覚ましのおかげで、なんとか寝ずに授業終了。次の授業も眠くならずに済んだ。
掃除をすませ、寛と一緒に校門へ。
寛は駅がある側に住んでいるので、学校出たらすぐに別れるのだが。
俺は校門で立ち止まる。
「…帰らないのか」
「セン待ち」
「…そうか。…じゃあ、明日も頑張れよ」
「やかましい」
挨拶の変わりに嫌味な激励を残し、歩き去る。
歩く際に手は振らない。いつもながら動きが少ない奴だ。
時計を見てみる。四時二十五分。もう来ててもおかしくないな。
門の反対側を覗いてみる。
よくここで見かける女ともう一人、男が居るだけだった。俺と同じく、人待ちらしい。
いつもなら掃除当番の日は見かけないのだが……?
「日永君」
他人の観察などという見た目宜しくない事をしていると、後ろから声が掛かった。
「岩白? お前も掃除だったのか」
「ええ。で、セン待ち?」
「そうだ」
「じゃ、一緒に待たせてもらおうかしら」
なんとなく向こうの二人と俺達が似ている気がした。……何故だろうか?
冗談になってねえよ。お前の頭の中に『邪魔』って単語が浮かんだ時点でな。
「ああ、いってらっしゃい」
からあげ二個目。
「邪魔って、何のことですかね?」
寛の後姿を見送りながら首をかしげる。
「知らん。冗談だってんだから気にすんな」
「はあ……」
ペットボトルの茶を一口飲む。
「もうすぐ授業始まるぞ。そろそろ消えとけ」
本当はもう少し余裕があるが、寛が居ない内に退場を願う。
あいつが帰ってきたらまた話し込みそうだからな。あんな冗談言われた後でそれは辛い。
「あ、そうですか? では、また後で」
「四時半に校門だからな」
「はい」
柱の影に身を隠す。多分そのまま姿を消しただろう。やれやれ。米を一口。
暫らくして、寛が帰ってきた。
「…センさんは」
「教室に戻ったよ」
最後のからあげを頬張りつつ答える。
「…そうか」
机を元に戻しながら返事。
「あー、やっと食い終わった」
「…大変だな」
元に戻した席に着き、いつものようにこちらは見ない。
「ああ。二日目にして限界を感じ始めるくらいにな」
「…そうか。…でもな」
こちらを向く。今度は何だよ。
「…だからといって午後の授業、寝るなよ」
「解ってるよ」
自信はないが。
さて、午後の授業。
「眠……」
起きてはいる。いるのだが、
今俺がノートに書いてる文字は恐らく判別不能な線の塊でしかないだろう。
教師が何を言ってるのか解らない。起きながら寝ている、といった状況だ。
すると、ぼやけた視界に何かがアップになる。寛の左手だった。
寛がこちらを向いている。左手の指が輪を作っている。
「何……」
いつものように『何だ』と訊こうとした、その時だった。
コッ。
「ぬっ! っつ~~~~」
小さな音。小さなうめき声。それと、隣の席から押し殺しきれない笑い。
三つの小さな音が教室の隅っこにだけ響いた。
所謂、デコピンだった。非常に痛かった。額を抑えて暫らく痛みを堪える。
顔をあげると、寛は何事もなかったかのようにいつもの壁になっていた。
目覚ましのおかげで、なんとか寝ずに授業終了。次の授業も眠くならずに済んだ。
掃除をすませ、寛と一緒に校門へ。
寛は駅がある側に住んでいるので、学校出たらすぐに別れるのだが。
俺は校門で立ち止まる。
「…帰らないのか」
「セン待ち」
「…そうか。…じゃあ、明日も頑張れよ」
「やかましい」
挨拶の変わりに嫌味な激励を残し、歩き去る。
歩く際に手は振らない。いつもながら動きが少ない奴だ。
時計を見てみる。四時二十五分。もう来ててもおかしくないな。
門の反対側を覗いてみる。
よくここで見かける女ともう一人、男が居るだけだった。俺と同じく、人待ちらしい。
いつもなら掃除当番の日は見かけないのだが……?
「日永君」
他人の観察などという見た目宜しくない事をしていると、後ろから声が掛かった。
「岩白? お前も掃除だったのか」
「ええ。で、セン待ち?」
「そうだ」
「じゃ、一緒に待たせてもらおうかしら」
なんとなく向こうの二人と俺達が似ている気がした。……何故だろうか?
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