(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子22 二つの二人、校門で

2006-12-24 22:11:13 | 欲たすご縁は女の子   二日目
「…冗談だ。…トイレ行くだけだ」
冗談になってねえよ。お前の頭の中に『邪魔』って単語が浮かんだ時点でな。
「ああ、いってらっしゃい」
からあげ二個目。
「邪魔って、何のことですかね?」
寛の後姿を見送りながら首をかしげる。
「知らん。冗談だってんだから気にすんな」
「はあ……」
ペットボトルの茶を一口飲む。
「もうすぐ授業始まるぞ。そろそろ消えとけ」
本当はもう少し余裕があるが、寛が居ない内に退場を願う。
あいつが帰ってきたらまた話し込みそうだからな。あんな冗談言われた後でそれは辛い。
「あ、そうですか? では、また後で」
「四時半に校門だからな」
「はい」
柱の影に身を隠す。多分そのまま姿を消しただろう。やれやれ。米を一口。

暫らくして、寛が帰ってきた。
「…センさんは」
「教室に戻ったよ」
最後のからあげを頬張りつつ答える。
「…そうか」
机を元に戻しながら返事。
「あー、やっと食い終わった」
「…大変だな」
元に戻した席に着き、いつものようにこちらは見ない。
「ああ。二日目にして限界を感じ始めるくらいにな」
「…そうか。…でもな」
こちらを向く。今度は何だよ。
「…だからといって午後の授業、寝るなよ」
「解ってるよ」
自信はないが。

さて、午後の授業。
「眠……」
起きてはいる。いるのだが、
今俺がノートに書いてる文字は恐らく判別不能な線の塊でしかないだろう。
教師が何を言ってるのか解らない。起きながら寝ている、といった状況だ。
すると、ぼやけた視界に何かがアップになる。寛の左手だった。
寛がこちらを向いている。左手の指が輪を作っている。
「何……」
いつものように『何だ』と訊こうとした、その時だった。
コッ。
「ぬっ! っつ~~~~」
小さな音。小さなうめき声。それと、隣の席から押し殺しきれない笑い。
三つの小さな音が教室の隅っこにだけ響いた。
所謂、デコピンだった。非常に痛かった。額を抑えて暫らく痛みを堪える。
顔をあげると、寛は何事もなかったかのようにいつもの壁になっていた。
目覚ましのおかげで、なんとか寝ずに授業終了。次の授業も眠くならずに済んだ。

掃除をすませ、寛と一緒に校門へ。
寛は駅がある側に住んでいるので、学校出たらすぐに別れるのだが。
俺は校門で立ち止まる。
「…帰らないのか」
「セン待ち」
「…そうか。…じゃあ、明日も頑張れよ」
「やかましい」
挨拶の変わりに嫌味な激励を残し、歩き去る。
歩く際に手は振らない。いつもながら動きが少ない奴だ。
時計を見てみる。四時二十五分。もう来ててもおかしくないな。
門の反対側を覗いてみる。
よくここで見かける女ともう一人、男が居るだけだった。俺と同じく、人待ちらしい。
いつもなら掃除当番の日は見かけないのだが……?
「日永君」
他人の観察などという見た目宜しくない事をしていると、後ろから声が掛かった。
「岩白? お前も掃除だったのか」
「ええ。で、セン待ち?」
「そうだ」
「じゃ、一緒に待たせてもらおうかしら」

なんとなく向こうの二人と俺達が似ている気がした。……何故だろうか?


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