テレビの前で体育座りしているセンの横に腰を降ろす。
「あの、さ」
一瞬訊くか訊くまいか躊躇ったが、やっぱり訊いておくことにした。
「なんですか?」
「あの……やっぱり、こういうのが金の中に入ってることもあるのか?」
顔をテレビの画面に向ける。依然、同じニュースが続いていた。
記事を読み上げる女性キャスターの何の感情も含まない声に苛立つ。何故かは解らないが。
「……もちろんありますよ。欲ですから」
僅かに間を置き、センが答えた。
「じゃあそれを食うとかは……?」
「普通に食べます。食べるまで中身解りませんからね」
「そうか……」
暫らくお互い無言でニュースを見続ける。
やがてニュースが終わり、もうすぐ七時だと気がつく。
「七時になったらもうちょい面白い番組あるだろ」
適当にチャンネルを回すが、どこも番組と番組の間のCMなのは解っている。
「やっぱり、不気味だったりしますか?」
体育座りの自分の膝に頭を預ける姿勢で、唐突にセンが話し掛けてきた。
「何がだ?」
チャンネルを一周し、元のチャンネルで手を止める。
「さっきみたいなのも食べてるって」
俺を見詰めるその目は、少し悲しそうだった。
「……変なこと訊いたな。悪かった」
気使いよりも好奇心を優先させたことを後悔した。やっぱり、訊くんじゃなかった。
「い、いえ悪いだなんてそんな……」
顔を上げ、手を振って否定する。
「やっぱり、少しは怖いと思った」
センの手が止まった。
「でもなぁ。よくよく考えればお前より俺等の方が怖いんだよな」
本当によく考えたわけじゃないのは自分でも解ってる。
俺が言おうとしてることはその場しのぎのでまかせだということも。
「どういうことですか?」
「お前が食ってるのはイメージだろ? じゃあ俺等が食ってるのはなんだ?」
「えっと……」
「本物だよ。他の生き物の死体。野菜にしろ肉にしろな」
もちろん普段からそんなこと考えてもの食ってるわけじゃないが。
「そう……ですね。言われてみれば」
「そうだろ? だからあんま気にすんな。って気にさせたの俺だけどな」
「そうか……そうですよね……」
想像以上に納得してもらえたようだ。
しかし、その場しのぎのつもりが別の場を作ってしまったらしい。
つまりは、
「や、そんな真剣にならなくても」
ということ。
「あ、ああそうでした。気にするなって話でしたよね」
「そうそう」
「あの時も気にしなければよかったよかったんですね……」
俺に、と言うよりは独り言のように呟いた。
「あのと……」
っとしまった。話広げてどうする。
「はい?」
「いやいやいやいやなんでもない気にするな」
「はあ……ともかく、ありがとうございました。凄く勉強になりました」
「そ、そうか。それはよかった」
その時どうやら七時になったようで、テレビの番組が始まった。
「あ! 犬ですよ犬!」
動物番組だった。見た途端にいつものセンに戻る。動物の魅力は凄まじいものらしい。
容姿だけで場を和ませるとは……
「かわいいですねえ」
「そうだな」
動物ならなんでもかわいいんだろうなお前は。カエル追っかけるくらいだし。
基本的に両生類は『気持ち悪い』の一言で括られてしまうやつらだと思うのだが。
他にすることもないのでその動物番組を見続ける。
動物が何かする度に横ではしゃぐセン。一人で見てたら途中でチャンネル変えるだろうが、
賑やかな奴が居るだけで結構楽しめるもんだな。言ってしまえば釣られてるだけなのだが。
「あれは何やってるんですかね?」
いわゆる『箱の中身はなんだろな』である。中身は定番のデカめなカエル。
お前には何にビビってるか解らんだろうな。やらせたら箱から引きずり出しそうだし。
「あの、さ」
一瞬訊くか訊くまいか躊躇ったが、やっぱり訊いておくことにした。
「なんですか?」
「あの……やっぱり、こういうのが金の中に入ってることもあるのか?」
顔をテレビの画面に向ける。依然、同じニュースが続いていた。
記事を読み上げる女性キャスターの何の感情も含まない声に苛立つ。何故かは解らないが。
「……もちろんありますよ。欲ですから」
僅かに間を置き、センが答えた。
「じゃあそれを食うとかは……?」
「普通に食べます。食べるまで中身解りませんからね」
「そうか……」
暫らくお互い無言でニュースを見続ける。
やがてニュースが終わり、もうすぐ七時だと気がつく。
「七時になったらもうちょい面白い番組あるだろ」
適当にチャンネルを回すが、どこも番組と番組の間のCMなのは解っている。
「やっぱり、不気味だったりしますか?」
体育座りの自分の膝に頭を預ける姿勢で、唐突にセンが話し掛けてきた。
「何がだ?」
チャンネルを一周し、元のチャンネルで手を止める。
「さっきみたいなのも食べてるって」
俺を見詰めるその目は、少し悲しそうだった。
「……変なこと訊いたな。悪かった」
気使いよりも好奇心を優先させたことを後悔した。やっぱり、訊くんじゃなかった。
「い、いえ悪いだなんてそんな……」
顔を上げ、手を振って否定する。
「やっぱり、少しは怖いと思った」
センの手が止まった。
「でもなぁ。よくよく考えればお前より俺等の方が怖いんだよな」
本当によく考えたわけじゃないのは自分でも解ってる。
俺が言おうとしてることはその場しのぎのでまかせだということも。
「どういうことですか?」
「お前が食ってるのはイメージだろ? じゃあ俺等が食ってるのはなんだ?」
「えっと……」
「本物だよ。他の生き物の死体。野菜にしろ肉にしろな」
もちろん普段からそんなこと考えてもの食ってるわけじゃないが。
「そう……ですね。言われてみれば」
「そうだろ? だからあんま気にすんな。って気にさせたの俺だけどな」
「そうか……そうですよね……」
想像以上に納得してもらえたようだ。
しかし、その場しのぎのつもりが別の場を作ってしまったらしい。
つまりは、
「や、そんな真剣にならなくても」
ということ。
「あ、ああそうでした。気にするなって話でしたよね」
「そうそう」
「あの時も気にしなければよかったよかったんですね……」
俺に、と言うよりは独り言のように呟いた。
「あのと……」
っとしまった。話広げてどうする。
「はい?」
「いやいやいやいやなんでもない気にするな」
「はあ……ともかく、ありがとうございました。凄く勉強になりました」
「そ、そうか。それはよかった」
その時どうやら七時になったようで、テレビの番組が始まった。
「あ! 犬ですよ犬!」
動物番組だった。見た途端にいつものセンに戻る。動物の魅力は凄まじいものらしい。
容姿だけで場を和ませるとは……
「かわいいですねえ」
「そうだな」
動物ならなんでもかわいいんだろうなお前は。カエル追っかけるくらいだし。
基本的に両生類は『気持ち悪い』の一言で括られてしまうやつらだと思うのだが。
他にすることもないのでその動物番組を見続ける。
動物が何かする度に横ではしゃぐセン。一人で見てたら途中でチャンネル変えるだろうが、
賑やかな奴が居るだけで結構楽しめるもんだな。言ってしまえば釣られてるだけなのだが。
「あれは何やってるんですかね?」
いわゆる『箱の中身はなんだろな』である。中身は定番のデカめなカエル。
お前には何にビビってるか解らんだろうな。やらせたら箱から引きずり出しそうだし。
今年もよろしく。
ガキの使い見てたらもう全然手が進まなくて……
ひさびさに大爆笑しましたよ。人選びそうな番組ですけどね。
年跨いでるのに生番組じゃないというバカ加減が大好きです。
今年もよろしく。