それから程なくして、予鈴が鳴った。このクラス以外の者は自分のクラスに戻り始め、
このクラスの者はそれを見送る。もちろん俺達のグループも例外ではない。
「あら、結構時間とられちゃってたのね……それじゃ、そろそろ戻るわ」
「ほんじゃね、みんな」
そう言って三組の二人が歩き出そうとした時、二組(仮)が急に声をあげ、
「あっ! あの二人あのまんまだ! すいませんちょっと行ってきます!」
走って行ってしまった。
いや、ちょっと行ってくるって言うか帰ってこなくていいんだぞ。
……あの二人ってどなた?
「放っときゃいいのに……」
そう言ったのは岩白だった。どうやらその二人を知っているらしい。
「誰のことだ?」
「向こうでちょっとね。顔見知りが増えたってとこかしら」
「告白してきたやつ……か?」
だとしたら逞しい男だ。転んでもただでは起きぬと言うか、そんな感じ。
……俺は冷静になってていいんだろうか?
「惜しい。その連れ二人よ。まあ男の癖に一人で来れないっていうのも私的には駄目ね」
確かにちょっとどうかと思うが、普通は告白なんてむしろ一人でやりたいことだと思うぞ。
友人の前で告白なんて、普通にするよりよっぽど勇気がいると思うのだが。
もし俺の時に誰か居たら……うわ、絶対無理!
まあ、あの状況で誰か居るなんてほぼないと言っていいけど。深夜だったし。
「じゃあね。あ、そうそう。帰り、校門で待ってるわよ」
話が終わり、今度こそ教室に戻ろうとする。
「解ってるよ」
前回と変更点はなし。わざわざ別れて帰る理由もないからな。
「あ、あの、もしよかったらうちらも一緒に……」
今日香がそう言ったが、
俺の頭の中では言われるまでもなくそうなることになっていた。
明日香もそうらしく、特に反応は示さない。
「ああ。大歓迎だ」
「じゃ、じゃあまた校門で」
そして二人は我が一組から退場した。
「……まあ、無理に訊き出すつもりもあらへんけどな……」
二人が出て行った後、明日香が独り言のようにつぶやく。
「何がだ?」
「あ、聞こえた? いやいやなんでもないねん。気にせんとって」
ホントに独り言だったらしい。……ん。無理に訊き出すと言えば。
「右耳と頬がまだ痛いぞアホ二人」
あの間抜けな刑が俺から何かを訊き出そうとしての犯行なのか、
それともただのいじめだったのかは解らんが。
「は? 左耳は?」
「あだだだだだだ!」
『アホ二人』と言い切った瞬間に鼻を思いっきり摘んで引っ張られた。
あの刑も、左耳以外は最初こんな感じだったのだ。
時間が経つにつれて力が抜けていっただけで。
「……今日香は耳を掴んでただけだよ。お前らと違って優しいねぇ」
「…同じく掴んでただけのつもりだったんだが」
三組の二人が出て行った辺りから既にきちんと前を向いて座り直しているアホその一が、
そのままの姿勢できちんと答えた。
「あれで『掴んでただけ』かよ。どんな馬鹿力なんだお前」
「…それ程でもない」
それ程だよ。
優しくて力持ちっつーか、優しいつもりが力持ち。カレーでも食ってろイエロー(偽)。
「確かに今日香は優しいでぇ。うちとは大違いや」
アホその二も何か言い出した。
「そら双子ゆうてもなんもかんも全部同じゆうわけにはいかんしな。
もしそやったら……えらいことになっとったわ」
「えらいこと?」
「…なんのことだ」
二人とも解らない。頼むよその一。
「明。うちと今日香、どっちのんがええ?」
にぃっと笑みを浮かべながら訊いてきた。
「現状では今日香が一歩リードだな」
つまりはこういうノリの軽い会話なのだろう。
まあ、鼻摘まれた後じゃな。寛に訊けばまた違うだろうに。
「そか。それでええねん。上でも下でもええから、うちと今日香、別個で見たってや」
このクラスの者はそれを見送る。もちろん俺達のグループも例外ではない。
「あら、結構時間とられちゃってたのね……それじゃ、そろそろ戻るわ」
「ほんじゃね、みんな」
そう言って三組の二人が歩き出そうとした時、二組(仮)が急に声をあげ、
「あっ! あの二人あのまんまだ! すいませんちょっと行ってきます!」
走って行ってしまった。
いや、ちょっと行ってくるって言うか帰ってこなくていいんだぞ。
……あの二人ってどなた?
「放っときゃいいのに……」
そう言ったのは岩白だった。どうやらその二人を知っているらしい。
「誰のことだ?」
「向こうでちょっとね。顔見知りが増えたってとこかしら」
「告白してきたやつ……か?」
だとしたら逞しい男だ。転んでもただでは起きぬと言うか、そんな感じ。
……俺は冷静になってていいんだろうか?
「惜しい。その連れ二人よ。まあ男の癖に一人で来れないっていうのも私的には駄目ね」
確かにちょっとどうかと思うが、普通は告白なんてむしろ一人でやりたいことだと思うぞ。
友人の前で告白なんて、普通にするよりよっぽど勇気がいると思うのだが。
もし俺の時に誰か居たら……うわ、絶対無理!
まあ、あの状況で誰か居るなんてほぼないと言っていいけど。深夜だったし。
「じゃあね。あ、そうそう。帰り、校門で待ってるわよ」
話が終わり、今度こそ教室に戻ろうとする。
「解ってるよ」
前回と変更点はなし。わざわざ別れて帰る理由もないからな。
「あ、あの、もしよかったらうちらも一緒に……」
今日香がそう言ったが、
俺の頭の中では言われるまでもなくそうなることになっていた。
明日香もそうらしく、特に反応は示さない。
「ああ。大歓迎だ」
「じゃ、じゃあまた校門で」
そして二人は我が一組から退場した。
「……まあ、無理に訊き出すつもりもあらへんけどな……」
二人が出て行った後、明日香が独り言のようにつぶやく。
「何がだ?」
「あ、聞こえた? いやいやなんでもないねん。気にせんとって」
ホントに独り言だったらしい。……ん。無理に訊き出すと言えば。
「右耳と頬がまだ痛いぞアホ二人」
あの間抜けな刑が俺から何かを訊き出そうとしての犯行なのか、
それともただのいじめだったのかは解らんが。
「は? 左耳は?」
「あだだだだだだ!」
『アホ二人』と言い切った瞬間に鼻を思いっきり摘んで引っ張られた。
あの刑も、左耳以外は最初こんな感じだったのだ。
時間が経つにつれて力が抜けていっただけで。
「……今日香は耳を掴んでただけだよ。お前らと違って優しいねぇ」
「…同じく掴んでただけのつもりだったんだが」
三組の二人が出て行った辺りから既にきちんと前を向いて座り直しているアホその一が、
そのままの姿勢できちんと答えた。
「あれで『掴んでただけ』かよ。どんな馬鹿力なんだお前」
「…それ程でもない」
それ程だよ。
優しくて力持ちっつーか、優しいつもりが力持ち。カレーでも食ってろイエロー(偽)。
「確かに今日香は優しいでぇ。うちとは大違いや」
アホその二も何か言い出した。
「そら双子ゆうてもなんもかんも全部同じゆうわけにはいかんしな。
もしそやったら……えらいことになっとったわ」
「えらいこと?」
「…なんのことだ」
二人とも解らない。頼むよその一。
「明。うちと今日香、どっちのんがええ?」
にぃっと笑みを浮かべながら訊いてきた。
「現状では今日香が一歩リードだな」
つまりはこういうノリの軽い会話なのだろう。
まあ、鼻摘まれた後じゃな。寛に訊けばまた違うだろうに。
「そか。それでええねん。上でも下でもええから、うちと今日香、別個で見たってや」
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