日曜日の夜だったか。あのお互い告白した夜のように、また部屋が青白く染まる。
センはベッドの上でうつむいていた。いや、もしかしたら手を見ているのかもしれない。
寝てしまえば明日の朝までは体感上、あっという間だ。
そしてその時、まだ手が動くという保障はどこにもない。
「あの、そっちに行ってもいいですか?」
それを考えると、センのその提案が酷く淋しいものに思えてきた。だから、
「ああ、構わないぞ」
断ることなんて、できやしなかった。
そしてセンがもそりと動き、結果、重力になんの抵抗もせずベッドの縁から足が垂れる。
その両足が床にぶつかり、だん、と音がした。
「いや、やっぱり俺がそっちに行くよ。それでもいいだろ?」
センが無言で頷く。見てられなかった。
床にぶつかった足も、それを自分の手で引き上げて再び元の位置に戻るセンの姿も。
はっきりとは見えないけどセンは今……泣いているかもしれない。
ベッドの上で座る……いや、もうそれ以上腰をあげられないセンの隣に、俺は座り込んだ。
「ま、また怖く……なってきちゃいました」
「無理しなくていいからな。
寝たくないんだったら寝なくていい。俺も一緒に起きててやるから」
「うぅっ……う……明さぁん……」
ぽすんと力なく俺にもたれかかると、前回とはうってかわって静かに泣き出した。
「ほ……本当は、もう……もう………」
「どうした?」
かすれるような声にこっちまで泣きたくなる。でもそうなったらもう収集がつかなくなる。
そう思って堪えつつ、先を促す。
その『先』が良くないことであるのは、口調からなんとなく解っていた。
「もう……手が、痺れた感じになってきてるんです……」
「……くそっ」
予想はしていたものの、やはり辛かった。
抱き合っているセンにも聞こえないような声で小さく悪態をつき、さらに強く抱きしめる。
「明日の朝には、多分、もう……だからせめて、今晩だけでも一緒に……」
肩が冷たい。頬を伝って流れた涙が、上着に染み込んでいるんだろう。
こいつはあとどれだけ泣けばいいんだ? 明日もまた泣くのか?
明日も俺はどうせ何もできずに、ただこうして傍に居ることしかできないのに。
でもそれだけしかできないのなら、
「もうずっと一緒に居るよ。学校も休む」
「あは、は……そんなの駄目ですよ」
「駄目か?」
「…………」
「頼む、そうさせてくれ。
こんな状態のお前一人置いて学校なんて行っても授業なんかまともに受けられそうにない。
それどころかいきなり叫んだりしてしまいそうだ」
「……解りました。ありがとうございます、明さん」
そして肩から離れ、向かい合う俺とセン。
まだ涙は流れ続けていたが、その表情は穏やかだった。
それに吸い込まれるかのように顔を近づける。
こうして唇を重ねるのももう……いや、もう数えるのやめた。
「好きです明さん。大好き」
「俺も大好きだよ、セン」
時が止まれとは言わない。せめてこの時間を一時間、いや一分でも長く感じさせてくれ――
目が覚めた……のか? 俺は寝てたのか? 寝ぼけながら起きてたのか?
それすら解らないが、とにかく朝がきた。
俺の隣ですやすやと眠るセンが、たまらなく愛しい。
握り合った右手の代わりに左手でセンの長い髪を撫でる。さらさらしていた。
「ん……おはようございます、明さん」
「あ、起こしちゃったか。悪い」
まさかこれだけで起きるとは思ってなかっただけに、ちょっと慌てる。
「えへへ、寝てる時間がもったいないので良しとしておきます」
そう言って上体を……起こそうとしたらしい。
少し背中が反るが、すぐにぺたんとベッドに伏してしまった。
「腕が……」
覚悟はしていたが、
「……動かないです」
「マジかよ……」
その手を握る右手に力が入る。しかし痛いとも言わないし、握り返しもしなかった。
「でも明さん、居てくれるんですよね。学校をお休みして、ずっと居てくれるんですよね」
埋め合わせになるであろうことを必死で唱える。痛々しいくらいに必死に。
もはやその場から動くことすら難しくなってしまった愛しい人に、
俺は一体何がしてあげられるんだろう? ……そんなの決まってる。残念ながらな。
「ああ。ずっと居てやる。俺にはそれだけしかしてやれないから……」
センはベッドの上でうつむいていた。いや、もしかしたら手を見ているのかもしれない。
寝てしまえば明日の朝までは体感上、あっという間だ。
そしてその時、まだ手が動くという保障はどこにもない。
「あの、そっちに行ってもいいですか?」
それを考えると、センのその提案が酷く淋しいものに思えてきた。だから、
「ああ、構わないぞ」
断ることなんて、できやしなかった。
そしてセンがもそりと動き、結果、重力になんの抵抗もせずベッドの縁から足が垂れる。
その両足が床にぶつかり、だん、と音がした。
「いや、やっぱり俺がそっちに行くよ。それでもいいだろ?」
センが無言で頷く。見てられなかった。
床にぶつかった足も、それを自分の手で引き上げて再び元の位置に戻るセンの姿も。
はっきりとは見えないけどセンは今……泣いているかもしれない。
ベッドの上で座る……いや、もうそれ以上腰をあげられないセンの隣に、俺は座り込んだ。
「ま、また怖く……なってきちゃいました」
「無理しなくていいからな。
寝たくないんだったら寝なくていい。俺も一緒に起きててやるから」
「うぅっ……う……明さぁん……」
ぽすんと力なく俺にもたれかかると、前回とはうってかわって静かに泣き出した。
「ほ……本当は、もう……もう………」
「どうした?」
かすれるような声にこっちまで泣きたくなる。でもそうなったらもう収集がつかなくなる。
そう思って堪えつつ、先を促す。
その『先』が良くないことであるのは、口調からなんとなく解っていた。
「もう……手が、痺れた感じになってきてるんです……」
「……くそっ」
予想はしていたものの、やはり辛かった。
抱き合っているセンにも聞こえないような声で小さく悪態をつき、さらに強く抱きしめる。
「明日の朝には、多分、もう……だからせめて、今晩だけでも一緒に……」
肩が冷たい。頬を伝って流れた涙が、上着に染み込んでいるんだろう。
こいつはあとどれだけ泣けばいいんだ? 明日もまた泣くのか?
明日も俺はどうせ何もできずに、ただこうして傍に居ることしかできないのに。
でもそれだけしかできないのなら、
「もうずっと一緒に居るよ。学校も休む」
「あは、は……そんなの駄目ですよ」
「駄目か?」
「…………」
「頼む、そうさせてくれ。
こんな状態のお前一人置いて学校なんて行っても授業なんかまともに受けられそうにない。
それどころかいきなり叫んだりしてしまいそうだ」
「……解りました。ありがとうございます、明さん」
そして肩から離れ、向かい合う俺とセン。
まだ涙は流れ続けていたが、その表情は穏やかだった。
それに吸い込まれるかのように顔を近づける。
こうして唇を重ねるのももう……いや、もう数えるのやめた。
「好きです明さん。大好き」
「俺も大好きだよ、セン」
時が止まれとは言わない。せめてこの時間を一時間、いや一分でも長く感じさせてくれ――
目が覚めた……のか? 俺は寝てたのか? 寝ぼけながら起きてたのか?
それすら解らないが、とにかく朝がきた。
俺の隣ですやすやと眠るセンが、たまらなく愛しい。
握り合った右手の代わりに左手でセンの長い髪を撫でる。さらさらしていた。
「ん……おはようございます、明さん」
「あ、起こしちゃったか。悪い」
まさかこれだけで起きるとは思ってなかっただけに、ちょっと慌てる。
「えへへ、寝てる時間がもったいないので良しとしておきます」
そう言って上体を……起こそうとしたらしい。
少し背中が反るが、すぐにぺたんとベッドに伏してしまった。
「腕が……」
覚悟はしていたが、
「……動かないです」
「マジかよ……」
その手を握る右手に力が入る。しかし痛いとも言わないし、握り返しもしなかった。
「でも明さん、居てくれるんですよね。学校をお休みして、ずっと居てくれるんですよね」
埋め合わせになるであろうことを必死で唱える。痛々しいくらいに必死に。
もはやその場から動くことすら難しくなってしまった愛しい人に、
俺は一体何がしてあげられるんだろう? ……そんなの決まってる。残念ながらな。
「ああ。ずっと居てやる。俺にはそれだけしかしてやれないから……」
うわぁぁぁぁぁぁぁああああああ
はい、こうなりました。
いやもう書く側としてもいろいろいっぱいいっぱいです。
特に寝る前くらいになると悶絶です。
顔から火が出そうです。寝付けやしません。
やたらと抱き合……って、そっちの話じゃないですね。
さあこれからどうなるでしょうね?
辛い話は難しいですなあ……