センの体力が回復するまで待ち、車道を挟んで眼前にそびえるデパートに向かう。
と思ったら信号がタイミングよく赤に変わった。
ほとんどの車が信号の手前にあるデパートの駐車場に入るので、
待ったところで車なんぞ通りゃしないが赤は赤だ。待つべし。
「あ、そうだ」
ぼけ~っと突っ立っていると、割とどうでもいいことを思いついた。
「なんですか?」
「切符代、食わせてやりゃよかったかな」
買い物するたびに金を渡すという習慣がまだ備わらない。
いっそ買い物はこいつに任せようか? ……冗談冗談。やめた方がいいのは解ってるさ。
そんな事したら毎回金を渡すという手間の四・五倍は面倒なことになりそうだからな。
低く見積もっても。
「ああ、それならご心配なく。あの機械から直接頂きましたから」
「あの機械って切符販売機か? 直接食うなんて、そんなことできるのかよ?」
「そりゃあ消えてる間は機械でもなんでもすり抜けられますからね。
お金に手が届きさえすればいいんです」
言われてみれば、そりゃそうだ。機械の中だろうが金庫の中だろうがお構いなしだよな。
コンビニの時みたいにリボンが邪魔にならなければ、だが。
信号が青になり、俺達二人とその他数人が歩き出す。
「まあ、食べるために消えるってことはあまりしないですけどね。
食事するためにお腹空かせてちゃ意味ないですし」
そう言えば消えるのには体力使う、とか言ってた気もするな。
「どのくらい腹が減るのかは知らんが、デパートにはレジが大量にあるぞ。
消えてて腹が減る分を考えても、十分お釣りが来るんじゃないか?」
要は消費を供給が上回ればいいわけだ。
まあ消えずに食えりゃそれが一番なんだろうが、少々無理があるからな。
「なるほど、いい考えですね! これはますます楽しみですねぇデパート!」
とここまで話を進めて、あることに気が付いた。
今俺達って、かなり電波な会話してたんじゃないか?
一緒に横断歩道を渡ったその他数人を見渡してみる。
気づいていないのか気づいていない振りをしているのか、
特にこちらを奇異な目で見る人間はいなかった。
『人は他人に興味がない』ね。確かに。なら俺もあまり気にしないことにしよう。
デパートの入り口前に到着。
「どうする? ここで消えとくか」
「そうですね。中は人多いでしょうし」
カメラとかもあるしな。
というわけで、入り口からちょっと離れた所で早速消えてもらう。我ながら大胆だな。
ちょっと離れたのは大胆になりきれない部分の現れだ。
大胆になりきれない……そこはかとなく大人の香り。
「じゃあ行くぞ。あんまり離れるなよ」
もちろん返事なし。
開きっぱなしのドアを抜け、その後すぐに自動ドア。なんでわざわざ二重扉なのかね?
まあそれは置いといて、自動ドアは俺に反応して開いてる間に二人で通ればいい。
というわけで、とりたてて何をするでもなく普通に自動ドアを通過した。
もう一人が通過したかどうかは確認不可能だが。
とその時手に何かふわふわしたものと硬いものが触れたが、そちらを見ても何もない。
ということは触れたものはあいつのあれだろう。他に何があろうか。いや、ない。
「そんじゃレジ巡り開始だな」
まずはとりあえず一階から攻める事にした。薬局、酒屋、宝くじ売り場等々。
商品を見るでも買うでもなく、ただただレジの前を通過する。
しかし、ペットショップだけは避けた。後ろに居るであろう透明人間が暴走しかねないのでな。
途中掃除機のフィルターを発見し、購入。
さて、小物が片付いたところで残るは大物、横一列にずらりと並ぶ食品売り場のレジのみ。
「じゃあここで待ってるから、全部食ったら戻って来い。
戻ってきたらさっきの合図してくれよ」
返事の代わりに『さっきの合図』をして、センは歩き去った。
と思ったら、合図が止まない。手がペシペシとはたかれ続けている。
なんだ? 行かないのか?
「よし、俺の質問にはいなら一回、いいえなら二回合図しろ。
えー、もういいのか?」
質問するぞと宣言した割には文章として色々と不足した質問であるが、
返事は「はい」だった。
デパートから一旦出て、姿を現したセンに再度質問。
「どうかしたのか?」
「もう食べられませんです……」
と思ったら信号がタイミングよく赤に変わった。
ほとんどの車が信号の手前にあるデパートの駐車場に入るので、
待ったところで車なんぞ通りゃしないが赤は赤だ。待つべし。
「あ、そうだ」
ぼけ~っと突っ立っていると、割とどうでもいいことを思いついた。
「なんですか?」
「切符代、食わせてやりゃよかったかな」
買い物するたびに金を渡すという習慣がまだ備わらない。
いっそ買い物はこいつに任せようか? ……冗談冗談。やめた方がいいのは解ってるさ。
そんな事したら毎回金を渡すという手間の四・五倍は面倒なことになりそうだからな。
低く見積もっても。
「ああ、それならご心配なく。あの機械から直接頂きましたから」
「あの機械って切符販売機か? 直接食うなんて、そんなことできるのかよ?」
「そりゃあ消えてる間は機械でもなんでもすり抜けられますからね。
お金に手が届きさえすればいいんです」
言われてみれば、そりゃそうだ。機械の中だろうが金庫の中だろうがお構いなしだよな。
コンビニの時みたいにリボンが邪魔にならなければ、だが。
信号が青になり、俺達二人とその他数人が歩き出す。
「まあ、食べるために消えるってことはあまりしないですけどね。
食事するためにお腹空かせてちゃ意味ないですし」
そう言えば消えるのには体力使う、とか言ってた気もするな。
「どのくらい腹が減るのかは知らんが、デパートにはレジが大量にあるぞ。
消えてて腹が減る分を考えても、十分お釣りが来るんじゃないか?」
要は消費を供給が上回ればいいわけだ。
まあ消えずに食えりゃそれが一番なんだろうが、少々無理があるからな。
「なるほど、いい考えですね! これはますます楽しみですねぇデパート!」
とここまで話を進めて、あることに気が付いた。
今俺達って、かなり電波な会話してたんじゃないか?
一緒に横断歩道を渡ったその他数人を見渡してみる。
気づいていないのか気づいていない振りをしているのか、
特にこちらを奇異な目で見る人間はいなかった。
『人は他人に興味がない』ね。確かに。なら俺もあまり気にしないことにしよう。
デパートの入り口前に到着。
「どうする? ここで消えとくか」
「そうですね。中は人多いでしょうし」
カメラとかもあるしな。
というわけで、入り口からちょっと離れた所で早速消えてもらう。我ながら大胆だな。
ちょっと離れたのは大胆になりきれない部分の現れだ。
大胆になりきれない……そこはかとなく大人の香り。
「じゃあ行くぞ。あんまり離れるなよ」
もちろん返事なし。
開きっぱなしのドアを抜け、その後すぐに自動ドア。なんでわざわざ二重扉なのかね?
まあそれは置いといて、自動ドアは俺に反応して開いてる間に二人で通ればいい。
というわけで、とりたてて何をするでもなく普通に自動ドアを通過した。
もう一人が通過したかどうかは確認不可能だが。
とその時手に何かふわふわしたものと硬いものが触れたが、そちらを見ても何もない。
ということは触れたものはあいつのあれだろう。他に何があろうか。いや、ない。
「そんじゃレジ巡り開始だな」
まずはとりあえず一階から攻める事にした。薬局、酒屋、宝くじ売り場等々。
商品を見るでも買うでもなく、ただただレジの前を通過する。
しかし、ペットショップだけは避けた。後ろに居るであろう透明人間が暴走しかねないのでな。
途中掃除機のフィルターを発見し、購入。
さて、小物が片付いたところで残るは大物、横一列にずらりと並ぶ食品売り場のレジのみ。
「じゃあここで待ってるから、全部食ったら戻って来い。
戻ってきたらさっきの合図してくれよ」
返事の代わりに『さっきの合図』をして、センは歩き去った。
と思ったら、合図が止まない。手がペシペシとはたかれ続けている。
なんだ? 行かないのか?
「よし、俺の質問にはいなら一回、いいえなら二回合図しろ。
えー、もういいのか?」
質問するぞと宣言した割には文章として色々と不足した質問であるが、
返事は「はい」だった。
デパートから一旦出て、姿を現したセンに再度質問。
「どうかしたのか?」
「もう食べられませんです……」
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