(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子84 突っ込みのおもちゃの意中の人

2007-02-27 21:59:18 | 欲たすご縁は女の子   五日目
その声で初めて明日香の存在に気付いた。
どうやら他の皆もそうらしく、視線が声の主に集まる。
「明日香! 捕まえたって、んな言い方ないやん!
 うちはただ、一緒に待とうって……」
顔を赤くしながら異議を申し立てる今日香。
待ったところですぐ別れるんだから、
捕まえたと言うのもあながち間違いでもないんじゃないか?
と思ったが、言うのは止めておいた。
言った後の反応を予想するに、今日香が気の毒そ~な感じになる確率が高かったからだ。
これが他のやつだったら遠慮せずにからかえそうな気もするが。……なんでだろうな?
「ほぉ~。ほなら『今日香』と喋るためと違て、
 『うち』を待つためにここに居ててくれたんやね。悪かったなぁ寛。
 お礼に今度、デートしたろか。デート」
そう言いながら顔はニヤニヤ。今日香への当てつけなのは明白だった。
「えっ!? ちょっ、あ、明日香ぁ!?」
効果は凄かったようで、視線をあわあわと寛と明日香の間で往復させる。
さて返事は?
「…考える時間をくれ」
そう言って腕を組む。……そこで悩むなよ。
「何をぉ! 考えることがぁ! あるかあぁぁい!」
「…冗だむ゛っ」
明日香の拳突っ込み、もとい右ストレートを目では追っていたが、
特に受けるでもかわすでもなくそのままモロに喰らう。決まりきった流れなのだろうか?
思いっきりミゾに入ってたような……
それでも微動だにしない寛。不動にも程があるだろ。
「…む゛。…む゛。…む。…冗談だ」
しかし苦しいことは苦しいらしく、
息を整えているような妙な声の後、途切れた台詞を言いなおした。
「うちかて冗談や」
苦しませた張本人、けろりと言い放つ。ついでに殴る際にぶん投げたカバンを拾う。
「冗談にしちゃツ突っ込み強過ぎだろ……」
された本人は平然としているが、俺が喰らったらと考えると恐ろしい。
「ひ、寛さん、大丈夫なんですか?」
余りに壮絶なじゃれ合いにセンが声を掛ける。
「…いつものことですから」
「いつもなんだ……」
岩白苦笑い。多分俺も同じ表情。
「見慣れてるとは言え……明日香、もうちょっと優しくできへんかなぁ」
「優しくしたるんはあんたの役目やろ。ほな後は任したで、今日香」
優しいの意味が違うだろ。今日香は手を抜けと
「え!? や、優しく!? うちが!?」
……まるで明日香のおもちゃだな。
「で、でもどないしたら……」
今日香の目の前には大型ポーカーフェイス。
何をされたところでこいつは眉毛一本動かさないだろう……
さあどうやってこいつを癒す!? これは難題だぞ今日香!
「え、えぇぇ~っと……」
長考に入る。
そうだ、じっくり考えろ。なにしろ反応を見て判断するわけにはいかないんだからな。
知らない間に逆に不快にさせていたなんてことも充分にあり得るのだ!
ここは慎重に……
「ひ、寛くん……」
答えが出たようだ。
俺、岩白、センの三人は固唾を飲んでその答えを待つ。あとの二人は知らん。
「う、う、うちとデートせえへん?」
三人に電撃が走る! あまりに大胆! あまりに直接的! そしてあまりに無表情!
もちろん最後のは寛が、だが!
「…構わんが」
いつもの感じでそう答えるが、一方今日香は。
「な、なんてな。冗談冗だ……」
そこまで喋ってようやく返事の意味を理解したのか、動きが停止しカバンを落とす。
「…今日香、冗談なんだが」
「………………はっ!? やっ、えっあっ、そそ、そうそう冗談冗談!
 いやごめん、たた、立ち眩みしてもうて……」
カバンを拾いながらバレバレの嘘をつく。貧血どころか血圧最高潮だろあんた。
「…今日香。…お前」
寛、まさか気付いたのか? いや、さすがにこれは疑いようもない。今日香はお前が……

「…もっと鉄分を摂るといい」


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