(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子164 コーラを飲むなら急がば回れ

2007-05-18 20:35:16 | 欲たすご縁は女の子   七日目
「お、やってるやってる……って、寛くん!? へぇ、やったことあるんや……」
ドアを開けて入ってきた今日香が、俺には理解不能な動きを見せる寛に驚く。
「日永君と勝負なんじゃなかったっけ?」
もう片方は、座り込んで画面に流れる譜面と、
それを演奏する二人の動きを見比べる俺を見下ろしてそう言った。
「初見でできるわけないだろこんなの……まずは経験者にお手本を見せてもらってだな」
見たところでできるようになるわけじゃないのは解ってるけどもね。
とりあえず差し出されたコップを受け取る俺。
「これ、もう開けちゃっていいのか?」
コーラのペットボトルを指差して今日香に尋ねる。
その今日香はと言うと、寛だか叩かれているドラムだかをじっとみつめていた。
そして一秒ほど送れて俺の問いかけに反応する。
「あ、ああ、ええですよ。二本もあるし、じゃんじゃん飲んじゃってください。
 余ったらむしろ困ってまいますし」
「じゃあ遠慮なく」
蓋を開け……ると、コーラが中から吹き出してきた!
「おわわわっ! きょ、今日香! ティッシュあるか!? コーラがコーラがっ!」
一応ペットボトルを持ち上げ、床から離す。しかし、受け皿などないので意味はない。
「あわわ、コーラが噴水しちゃってます~!」
「あらあら」
この二人の温度差はなんだ!
「あぁ~、えっとえっと……あった! 明くんはいティッシュ!」
いや、渡すんじゃなくてお前がそのまま拭いてくれると助かる!
「どうした後ろ! 何が起こっとんのや!?」
この手のゲームに中断がないことくらいは知ってるが、
後ろ向くくらいはしてくれてもいいんじゃないか?
寛も前向いたままだし……いや、こいつは普段からそうか。
「お前コンビニの帰り、思いっきり走っただろ! コーラが噴き出してきたぞ!」
木張りの床を四人がかりで拭きつつ、なおも演奏中のギターさんに確認。
他に原因は考えられないからな。……しかし、カーペットとかじゃなくてよかった。
どさくさに紛れてクロが床にこぼれたコーラを舐めてた気もするが、まあどうでもいいや。
「あー、すまんすまん。楽しみで楽しみでついな」
「…走るような距離じゃないだろ」
寛が言い終わったところで、ちょうど演奏終了。みかんが食べたくなった。
「ほな次、どうする? 明やってみるか?」
仕上げにペットボトルをふきふきしていると、明日香はギターを肩から降ろした。
「いや、やり方が全然解らんのだが……説明書ある?
 あ、でもその前に手洗ったほうがいいか。洗面所どこ?」
拭いてただけの他三人と違って、
コーラが流れ出るペットボトルを掴んでいた俺の右手はベタベタだった。
「あ、ついて来てください」
そう言われたので、今日香に続いて部屋を出た。

「あのドアです」
一階のリビング前にあるドア。あの先が洗面所らしいのだが、
そのドアを抜けようとした時、リビングからあの声が再び。
「あらぁ。うふふ~、久しぶりにぃ家の中が賑やかやわぁ。
 どぉお今日香ぁ? 盛り上がってるぅ?」
「あはは……盛り上がったって言うか、事故ったって言うか……」
苦笑する今日香に、にっこにこした表情を変えないまま首をかしげるお袋さん。
「事故ってぇ? その子ぉ、怪我したとかちゃうやんなぁ? 大丈夫ぅ?」
「いえ、コーラがこぼれてしまって。すみません」
俺のせいではないが、客として頭を下げる。
するとお袋さんの首の角度が、ゆっくりと元に戻った。
「あぁあ。明日香ぁ急いでたみたいやったからなぁ。運が悪かったなぁ。うふふ~。
 それじゃぁあ、引き続きぃごゆっくりぃ」
「あ、はい……」

手を洗い終え、再び二階に戻る最中。
「お母さん、変な人ですやろ?」
「いや、そんなことは」
ここでそんな質問に頷けるわけがない。
友達に持ちかける身内の卑下というのは、だいたいがそういう結果になると思う。
「あれで学生時代は成績よかった、なんて言いはるんですけど、信じられへんですよねぇ?」
信じられん。
「いやいやそんなことは」

「お、戻ってきたな。ほんじゃいってみよかいなぁ!」
「いやだから説明書を……」
「あ、じゃあその間うちやるわ。寛くん、ドラム代わってもろてええかな?」

今日香、お前もか……


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