安倍首相は2015年10月22日、記者団の質問に対し、野党5党が21日に、憲法53条にもとづき臨時国会召集の要求書を衆参両院に提出したことについて、
「与党ともよく相談して決定したい」
と述べるにとどめ、召集するかしないかを検討すると言いました。
検討するも何も、憲法53条は、衆参いずれかの4分の1以上の議員の要求があれば内閣は臨時国会召集を決定しなければならないとしているのです。
安倍首相は、憲法を破るかどうか、与党ともよく相談して決定したいと言っているも同然です。
日本国憲法
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
菅官房長官は、 21日の会見で、臨時国会召集は、
「首相の外交日程や年末の予算編成も考慮しなければならない」
と表明しましたが、国民代表機関である国会の承認あっての外交、予算ですから説得力はまったくありません。
また、菅官房長官は
「臨時国会を開かなかった先例もある」
とも言いましたが、それは憲法違反をした内閣があると言うだけで、何の根拠にもなりません。
確かに、小泉純一郎首相は2003年、05年と、野党の要求にもかかわらず開催しませんでした。
しかしいずれの年も、衆院選にともない、選挙後の特別国会は開き、国会が年に3回なるところだったという理由がまだしもありました。
そうなると、戦後、日本国憲法制定後と言い換えてもいいですが、臨時国会も特別国会も召集されなかった年はなく、安倍政権が今回、臨時国会召集を回避すれば前代未聞の事態となります。
そもそも、安倍首相は10月7日の第三次安倍内閣発足後の会見では、
「未来へ挑戦する内閣」
だと言い切っていたのです。
それなのに、国政を何か月も停滞させて、憲法規定にもとづく臨時国会召集要求から逃げるのでしょうか。ちゅうか、与党の国会議員は給料泥棒でしょう。
臨時国会を開けば、自分たちが先の通常国会に提出しておいて先送りになったさまざまな法律を成立させるチャンスもあるのです。その中には、通信傍受法改正による盗聴の拡大など私から見て悪法と思われる法律も多々ありますから、召集を要求する側も危険があるのです。
それでも、安倍首相が臨時国会を開かないとなると、安保法制の運用やアベノミクス新3本の矢なるものの説明、大筋を閣僚で合意したとされている環太平洋連携協定(TPP)や今月からもう通知が始まり1月から制度が始まってしまうマイナンバーなど、よほど都合が悪いことがあるのだろうということになります。
実際、新閣僚の所信表明もまだですし、沖縄の辺野古基地問題も国民への説明が急務であり、国民の代表で構成する国会を開かないということは、政府による説明責任放棄、民主主義の否定です。
法に則って政治を行うことを法治主義、政治を行うものによってコロコロ話が変わる政治を人治主義と言います。
安倍首相は、たとえば徴兵制は絶対にありえないと言い切ったのですが、その根拠は意に反する苦役を禁じた憲法18条に反するからだとおっしゃいました。
けれども、
「臨時国会を召集しなければならない」
と憲法に書いてあっても、招集するかしないか与党と相談する、検討する、というのでは、これは自民党・公明党が与党だったら、安倍首相(や小泉首相)が総理だったら何をするかわからないという人治主義です。
戦争を放棄すると憲法9条の書いてあってもアメリカの戦争に参戦する、という安保法制と問題は全く一緒です。
立憲主義の破壊。
憲法に規定されていても守らないことがある、という姿勢で、どうして中国の南シナ海進出や、北朝鮮の核兵器保有を批判することができるでしょうか。
自他ともに認める安倍政権応援団の産経新聞でさえ、「政権の鈍感さにはあきれる」、と言っています。
鈍感さと共に、安倍政権の自信のなさにも驚きます。それほど、中身が明らかになるのが怖いのか。
安倍政権を支持するブロガーに、臨時国会を召集せよという方が今のところ見当たらないのが残念です。
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参考記事
政府・与党は逃げるなー直ちに臨時国会を開け
ナベテル法蕩記より
安倍政権が臨時国会を召集しなければ憲法違反となる
はじめての憲法教室 立憲主義の基本から考える (集英社新書) | |
水島朝穂 著 | |
集英社 |
憲法学者・水島朝穂が、立憲主義の本質から解き明かす"憲法論"の決定版!
これが憲法だ! | |
長谷川恭男、杉田敦 著 | |
朝日新聞出版 |
検証・法治国家崩壊 (「戦後再発見」双書3) | |
吉田 敏浩 (著), 新原 昭治 (著), 末浪 靖司 (著) | |
創元社 |
1959年12月16日、在日米軍と憲法九条をめぐって下されたひとつの最高裁判決(「砂川事件最高裁判決」)。アメリカ政府の違法な政治工作のもと出されたこの判決によって、在日米軍は事実上の治外法権を獲得し、日本国憲法もまた、その機能を停止することになった…。大宅賞作家の吉田敏浩が、機密文書を発掘した新原昭治、末浪靖司の全面協力を得て、最高裁大法廷で起きたこの「戦後最大の事件」を徹底検証する!!
臨時国会なしの影響多く 同意人事の委員ら空席、法案棚上げも
2015年10月22日 東京新聞 朝刊
政府・与党が年内の臨時国会召集に難色を示している。開会されない場合、任期満了を迎える政府人事の国会同意手続きが遅れるなど、さまざまな影響が出るおそれもあり、野党は批判を強めている。 (宮尾幹成)
召集要求書を衆院に提出したのは民主、維新、共産、生活、社民の野党五党など。参院は民主、共産、生活、社民の野党四党と参院会派「無所属クラブ」など。
要求書は、内閣改造を受けた新閣僚の所信聴取のほか、安全保障関連法の運用や、大筋合意した環太平洋連携協定(TPP)について政府から説明を受けるため、早期の臨時国会召集を強く求めている。
憲法五三条は衆参両院いずれかで「総議員の四分の一以上」の要求があれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと規定。要求書は衆院(定数四七五)で百二十五人、参院(同二四二)で八十四人が連名で提出し、要求条件を満たした。
自民、公明の与党は、都内で幹事長、国対委員長が会談し、十一月十、十一両日に衆参両院の予算委員会で、安倍首相と全閣僚出席でTPPなどをテーマに審議する「閉会中審査」を開く方向で野党に打診することを確認。菅義偉(すがよしひで)官房長官も記者会見で「首相の外交日程を優先せざるを得ない事情や年末の予算編成をこなす必要がある」と慎重姿勢を示した。
年内に臨時国会がない場合、国会で同意が必要な政府人事のうち、十二月に任期が切れる公正取引委員(一人)や会計検査院の検査官(一人)は不在になる。一月の通常国会開会を待っても、二月中ごろまでに任期満了を迎える人事は、すぐに同意手続きに入れない可能性もある。
野党側は「極めて重要だからこそ国会同意人事になっている。空席は論外」(水野賢一参院議員)と政府・与党の姿勢を批判している。
必要な法整備の面でも、八月の人事院勧告に基づいて国家公務員の給与を引き上げる法案が棚上げされたままになるといった影響も出そうだ。
臨時国会「見送り」 国民への説明を怠るのか
政府・与党が秋の臨時国会の召集を見送る考えだという。
日本の経済、社会に大きな影響を与える環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が大筋合意にこぎつけた。内閣の顔ぶれも大幅に変わった。
国会を通じて国民に説明すべき内容はいくらでもある。「召集の必要性は感じない」と口にする政権の鈍感さにはあきれる。
安倍晋三首相の外遊日程が立て込んでいる、などと理由にならない事情を挙げている。国会を開けば、よほど都合の悪いことがあるのか。いらぬ疑いも招こう。
堂々と国会を開き、目指す政治の道筋を語るときである。
議会制民主主義のもと、国会議員は国民の代表である。国政の重要案件について、政府に疑問点をただし、建設的な討論をする重責を担っている。
政府には、国会で説明を尽くす義務がある。それは国民への説明でもある。召集しなければ党首討論も今年はもう開かれない。
安倍首相は、世界の国内総生産(GDP)の4割近くを占める貿易圏を生み出すTPPを「国家百年の計」と位置付けていた。合意内容を丁寧に説明し、国民の不安を拭いたいと、自ら口にしたばかりではなかったのか。
多国間の秘密交渉が重ねられたTPPは、国会議員にも詳細な合意内容が伝えられていない。国民の理解など進みようもない。TPPをいかに成長のテコにするか、日本にとっての利益と不利益はなにか。首相や閣僚は先頭に立って説明に努める必要がある。
第3次改造内閣は発足したばかりで、新閣僚が国会で最初にすべき所信の表明もまだしていない。来年の通常国会まで先送りするつもりか。
首相が経済再生に向けて打ち出した「新しい三本の矢」や「1億総活躍社会の実現」といったテーマも、国会でかみ砕いて説明をする必要があろう。
海洋覇権をねらう中国が招いた南シナ海問題や、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「南京大虐殺文書」を記憶遺産にした問題への対応も問われる。
議題は山積している。政府はたった数日間、予算委員会を「閉会中審査」として開き、お茶を濁すつもりとも聞く。質疑や批判に堪えられない仕事をしていると、認めるようなものではないか。
岡田代表 臨時国会召集要求無視は憲法違反
また、岡田氏は大阪市の橋下市長が結成する新党への対応を巡り、維新の党が事実上の分裂状態となったことについて、「野党の中が混乱することは望ましいことではない。早く収まることを期待している」と述べました。
野党、21日にも憲法53条手続き…臨時国会
与野党は20日、国会内で幹事長・書記局長会談を開いた。
野党側は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の大筋合意や改造内閣発足を受け、臨時国会を早期に召集するよう与党側に求めた。政府が応じない場合、衆参いずれかで4分の1以上の議員の要求があれば、内閣は臨時国会を召集しなければならないとする憲法53条を使い、21日にも正式な召集要求を行う考えも伝えた。与党側は「政府に伝える」とだけ答えた。
これに関連し、菅官房長官は20日の記者会見で、「(憲法53条の)要求があっても開かなかった例もある」と指摘した。
そうとは知らず郵政民営化賛成してた自分を恥じたいです。
つまり、「内閣は、その召集を決定しなければならない。」と憲法に書いてある、その次に、「但し、首相は、その可否について決定できる。」とあるのだ、と読むのが正しい、と言われるのでしょうね。
このまま、日本国が、この首相の下で推移すると、どうなるか。 其処で、またまた、一句。
ぼんぼんの わがままとおり 国破れ
国破れ、とは、戦争のみではないですよ。 念のため。 因みに、安倍一派の軍事オタクには、次の言葉を進呈します。
「戦争とは他の手段をもってする政治の継続である」 カール・フォン・クラウゼヴィッツ(Carl Philipp Gottlieb von Clausewitz)「戦争論」(Vom Kriege)