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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

関東大震災での朝鮮・中国人虐殺について「調査した限り、政府内で事実関係を把握できる記録が見当たらない」と記者会見で述べた松野博一官房長官が、政府の公文書を元に朝鮮人虐殺について国会質問していた。

2023年09月13日 | 歴史修正主義に反対する

映画「福田村事件」より。

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 今から100年前の1923年9月1日に起きた関東大震災の中で、朝鮮人や中国人が日本の官憲や市民の手で数千人虐殺された問題。

 これについて、岸田政権の松野博一官房長官は2023年8月30日の記者会見で、関東大震災の直後に起きた朝鮮人虐殺について

「調査した限り、政府内で事実関係を把握できる記録が見当たらないところだ」

と大嘘を述べて、政府による公式の歴史修正主義だと猛批判を受けました。

 

 

 まず、政府の中枢である内閣府が事務局を務める中央防災会議に設置された「災害教訓の継承に関する専門調査会」は、2009年3月に取りまとめた関東大震災に関する報告書1923 関東大震災 第2編の中で、震災直後の殺傷事件で中心をなしたのは朝鮮人への迫害であり、流言がそのきっかけになった、と明記しています。

「関東大震災時には横浜などで略奪事件が生じたほか、朝鮮人が武装蜂起し、あるいは放火するといった流言を背景に、住民の自警団や軍隊、警察の一部による殺傷事件が生じた。(中略)(9月)3日までは軍隊や警察も流言に巻き込まれ、また増幅した」(概要・第4章)

「既に見てきたように、関東大震災時には、官憲、被災者や周辺住民による殺傷行為が多数発生した。武器を持った多数者が非武装の少数者に暴行を加えたあげくに殺害するという虐殺という表現が妥当する例が多かった。殺傷の対象となったのは、朝鮮人が最も多かったが、中国人、内地人も少なからず被害にあった。加害者の形態は官憲によるものから官憲が保護している被害者を官憲の抵抗を排除して民間人が殺害したものまで多様である」(第4章2節)

「自然災害がこれほどの規模で人為的な殺傷行為を誘発した例は日本の災害史上、他に確認できず、大規模災害時に発生した最悪の事態として、今後の防災活動においても念頭に置く必要がある」(同)

読売でさえ認める朝鮮人虐殺を認めない小池百合子都知事と岸田政権。

読売新聞2023年6月23日付け『[関東大震災100年]教訓<5>流言・暴力 一気に拡大』より

 

 

 そしてこの報告書の206ページには、下記のように「官庁記録による殺傷事件被害死者数」の表も掲載されています。

 ちなみに、内閣府の防災情報のホームページによると、この「災害教訓の継承に関する専門調査会」は、過去の大災害について、被災状況や政府の対応などの情報を収集し、被災経験の継承や防災意識の向上などを目的に2003年、内閣府を事務局とする中央防災会議で設置が決まった組織です。

 この中央防災会議は、内閣総理大臣をはじめとする全閣僚や公共機関の代表、学識経験者で構成しています。

「官庁記録による殺傷事件被害死者数」

 同誌「第5章 治安保持」には、流言の拡散を背景に「(民衆が)朝鮮人に対して猛烈な迫害を加え、勢いが過激になり、ついに殺傷した」ことが記録されています。

 「朝鮮人が井戸に毒薬を投入した」、「朝鮮人が放火や略奪をし、婦女に暴行した」

など、警察が覚知した流言も警察自身が記載されているのです。

 そのうえ、関東大震災直後の朝鮮人虐殺に関する公文書の存在を、防衛省も認めています。

 2023年6月の参議院法務委員会では、社民党の福島瑞穂議員が、関東大震災の後に当時の内務省警保局長から全国の地方長官宛てに送付された電信文(1923年9月3日付)を示した上で、防衛省が保管しているか否か質問しました。

 この電信文は、朝鮮人による放火や爆弾所持といった流言を内務省が事実とみなし、取り締まりを全国に求める内容でした。

 この質問に対して防衛省の安藤敦史・防衛政策局次長はこの文書を同省の防衛研究所戦史研究センターで保管していることをはっきり認めました。

 このように、少なくとも一般に公開されている内閣府の調査会の報告書にも、大震災後の殺傷事件では

「虐殺という表現が妥当する例」

が多く、朝鮮人の犠牲者が最も多かったことが記されています。

 このように、関東大震災後の朝鮮人虐殺に関する公文書は存在し、政府も保管していることを認めています。

2023年9月1日は関東大震災における朝鮮人・中国人虐殺から100年目。歴史修正主義の政府を正し、内なる差別意識を直視し、我々のような普通の市民が二度と同じ惨劇を繰り返さないようにしたい。

 

 

 そして、当の松野官房長官自身が、民主党政権下だった2011年7月、当時は野党だった自民党の議員として、衆院文部科学委員会で、以下のように関東大震災で朝鮮人虐殺が存在したことを踏まえた形で質問を行っています。

 松野議員は

「犠牲になった朝鮮半島出身者は、公的な記録、例えば裁判記録、また各担当省庁の調査による記録では何名というふうになっていますでしょうか」

などと質問し、当時の小川敏夫法務副大臣が「裁判記録等がないものが多数」「現時点からそれを把握しようとしましても困難」などとと答えたところ、

 松野氏は前述の公文書に触れながら、次のように発言したんですよ。

「内務省の警保局が取りまとめた発表によると、この事件でのお亡くなりになった被害者は231名というふうに発表をされております。

 また、別の公的な記録によりますと、朝鮮総督府の官房外事課では、地震による圧死、押しつぶされて亡くなられたり、火事、焼死者で亡くなられた方も含めて832名というふうに発表をされておりまして、これは地震による直接被害を含めた832名でありますから、これは文献からの又引きでありますが、恐らくこの殺害事件の被害者になった方はこの2割から3割ではないかと推測がされるという表記がありました。

 これから推測しても、832名の2割から3割でありますから、恐らく200名前後ということだろうというふうに思います」

 

参考記事 村野瀬玲奈の秘書課広報室さんより

「すぐばれる嘘をつくいつもの自民党。そこまで嘘をついてまで史実を曲げたいという自民党の鉄の意思は、事実を直視するという文明人なら当然の習慣をなくすだけでなく、過ちを反省して日本国や日本人を改善することを妨げます。つまり自民党は日本国と日本人に有害な政党です。」

『「記録がない」と言って朝鮮人虐殺の歴史的事実を無かったことにする松野博一官房長官の自民党論法は日本国と日本人に有害。』

 

 

 

 さらに、松野官房長官が国会議員としての国会質問では、朝鮮人虐殺の事実と政府の文書の存在を前提に

「内務省の警保局が取りまとめた発表によると、この事件でのお亡くなりになった被害者は231名というふうに発表をされております。」

「200名を超える被害者の方が流言飛語、全く悪質なデマ等によって犠牲になられたということは大変なことでありまして、私たちはこの悲しい歴史、現実というのをしっかりと記憶をして、反省をして、そして二度とこういうことが起こらないように努めていかなければなりません」 

などと質問しています。

関東大震災』の評価や評判、感想など、みんなの反応を1時間ごとにまとめて紹介!|ついラン

 

 

 ところが、松野氏は岸田政権の官房長官としては

「政府として調査したかぎり、事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」

などと言い逃れをする二枚舌と歴史修正主義は国際的にも日本の信用にかかわる大問題です。

 立憲民主党などまともな野党は、福島第一原発からの汚染水問題でも閉会中審査しか要求しないような及び腰ですが、野党は臨時国会召集を堂々と開催要求して、汚染水や軍拡問題のみならず、この政府の歴史修正主義を徹底追及すべきです。

 もちろん報道業者ことマスメディアも。

『横浜における関東大震災時朝鮮人虐殺』より

 

日本人による日本人虐殺を描いた映画「福田村事件」が公開中の森達也監督。

 

 

参考記事 

kojitakenの日記さんより

関東大震災から100年。震災直後に起きた朝鮮人虐殺に関する歴史修正主義とレイシズムについては松野博一もひどいが小池百合子も最悪

 

村野瀬玲奈の秘書課広報室さんより

関東大震災における朝鮮人虐殺事件。過去の教訓的史実を消す権力者や国家は、現在の現実について嘘をつき、偽り、自ら誤り、自ら失敗し、いずれ自らを滅ぼす。

 

 

2008年3月の中央防災会議では、恐ろしいことに関東大震災全体の犠牲者の1~数パーセントが日本人自警団などによる殺害によるものと推定されています(すなわち、1000~数千人)。

そして今回見たように、これだけの政府の公文書があるのに、

「政府として調査したかぎり、事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」

と言い張る松野官房長官。

松野氏は官房長官に留任し、また安倍派の5奉行として常任幹事会を引っ張っていくらしいのですが、これから記者会見でも国会質問でもその歴史修正主義者ぶりをガンガン追及しないといけません。

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松野官房長官「(関東大震災での朝鮮人虐殺について)事実関係を把握する記録は政府内に見当たらない」は不正確【ファクトチェック】

配信 日本ファクトチェックセンター

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発言は不正確だった

検証対象

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2023年8月30日の記者会見の動画より

 

災害教訓の継承に関する専門調査会の報告書より

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「大島町事件其他支那人殺傷事件」という文書

判定

 

2023年9月10日(日) しんぶん赤旗

朝鮮人虐殺

松野官房長官 公的記録で質問

2011年衆院委 「記録ない」と矛盾

 松野博一官房長官が先月30日の記者会見で、関東大震災当時の朝鮮人虐殺の事実についての記録は政府内に「見当たらない」と述べ、史実の歪曲(わいきょく)だなどの批判を浴びましたが、同長官はいまだに問題の発言を撤回していません。しかし、松野氏が2011年7月27日の衆院文部科学委員会で、朝鮮人虐殺が実際にあったことを示す公的な記録をもとに質問を行っていたことが、同委の会議録からわかりました。

 同日の質疑で松野氏は、教科書検定の事実認定のあり方として、関東大震災当時の朝鮮人虐殺への自警団や軍隊、警官の関与を明記している教科書が3冊、殺害された朝鮮人の死者数を数千人と記載する教科書が2冊あるとした上で、司法省が1923年11月30日に発表した調査をまとめた内務省警保局発表の朝鮮人死者数は231人だったと指摘しました。

 また、朝鮮総督府官房外事課発表の圧死者や火事による死者を含む関東大震災での朝鮮人総死者数832人には殺害された被害者も含まれていたとして、「(関東大震災での虐殺の)被害者になった方は、この2割から3割ではないかと推測されるという表記があった」と発言。「当時の日本国の正式な発表は200名前後で、数千名というのは事実に対する事象が全く変わってきている」などとして、政府が被害者の人数を認定すべきだなどと訴えていました。

 朝鮮人虐殺の被害を矮小(わいしょう)化するためとはいえ、松野氏が公式な記録をもとに朝鮮人虐殺の事実があったことを前提とする質問をしていたことは明らかです。「記録は見当たらない」という会見での発言との重大な矛盾についての同氏の説明が求められます。

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4 コメント

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教科書が教えない歴史・・。 (時々拝見)
2023-09-14 15:10:27
虐殺の話は、大川常吉氏を持ち上げたいために出したようです。立ち読みでしたので、何ですが。
自由主義史観の教科書くずれには、宮崎県を出発した神武天皇御一行が瀬戸内海を東に向かう話もあったと思います。ご存じの通り、宮崎は瀬戸内海に面してません。

遠藤周作氏、甘須大尉として書いていたと思います。部下の兵隊が泣いて大杉氏の甥の子どもの命乞いをしたとあったと記憶しています。
返信する
Unknown (raymiyatake)
2023-09-14 04:20:00
時々拝見さん、ロハスさん、良い情報良い御本をご紹介いただきありがとうございます!

私事ながら昨日は四つの事件を並行して処理してたら疲れ果て、午後4時台に素麺食ったら5時には寝てしまい、朝4時まで11時間爆睡してしまいました笑笑

とにかく、それらの本、ちょっと探してみます

歴史修正主義者やそんな政府に対抗するにはこっちが手間をかけて勉強するしかないですよね!

ありがとうございました!
返信する
Unknown (ロハスな人)
2023-09-13 22:44:31
☆まず誤情報を率先して流した人々に注目する。それは警察、日本政府だ。警察もこの手の誤情報を流し、民衆に警戒を呼びかけ、内務省は「朝鮮人が暴動を起こした」という電報を現在の各府県知事クラスに流していた。>

 関東大震災時の朝鮮や中国の人達の虐殺の背景には『日本政府によるデマの流布』があり、『事実上日本という国家が朝鮮や中国の人達の弾圧や虐殺を推奨』したのみならず、『虐殺の隠蔽も行った』❓という情報まで出てきました。

 『戦前回帰』の安倍政権以降の自民党政府は『戦前の“日本政府”のヤラカシ』を隠蔽しようとして、かえって『やぶ蛇』になったようですね。

※この時の『デマの流布』は『組織ぐるみのミス』なのか、『確信犯』なのか…まではわかりませんが…。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2b76ac758f7ef56e8898e8a11143b7910eb3c145
☆関東大震災と朝鮮人虐殺「なかった」ことにしたい集会、誰が参加するのか?

石戸諭記者 / ノンフィクションライター
2020/9/1(火) ヤフーニュース

◎ここ数年の研究動向は藤野裕子による力作『民衆暴力―一揆・暴動・虐殺』(中公新書)にまとまっている。藤野は、まず誤情報を率先して流した人々に注目する。それは警察、日本政府だ。警察もこの手の誤情報を流し、民衆に警戒を呼びかけ、内務省は「朝鮮人が暴動を起こした」という電報を現在の各府県知事クラスに流していた。

 そして、民衆による自警団だけでなく軍や警察が自警団結成を促し、朝鮮人への暴力を肯定していたという事実も残る。

 ここで、こうした反論も予想できる。「実際に朝鮮人による犯罪は起きており、日本人の民衆は治安を守るために行動した」

 藤野はこうした点についても最新の研究をまとめている。朝鮮人による窃盗などの犯行も確かに事実として存在はしていたが、日本人のそれははるかに多くあった。震災3カ月で東京市に限っても窃盗だけで4400件あったが、朝鮮人は15件だ。朝鮮人が暴動を起こすというのはデマ以外の何物でもないというのが彼女の結論だ。

 被害者の数が正確にわからないのも、殺害の証拠が多く隠蔽され、遺体の数を数えることすらできていないからだ。公権力によって、暴力が肯定されるとき民衆は「国家に貢献したい」という思い、あるいは日常的な偏見から暴力へと走った。

 「関東大震災時には、暴力の正当性を独占していたはずの国家が、民衆にその正当性を委譲しようとして「天下晴れての人殺し」の許される状態がつくり出された。この時、民衆からは朝鮮人に対する蔑視や敵意に加え、男らしさというジェンダー規範、国家に貢献することの誇り、人を殺すことへの残虐な好奇心などが湧き上がった。殺害のあとには、復讐されることの不安に駆られ、虐殺はいっそう徹底的なものになった」(『民衆暴力』)
返信する
藤岡信勝氏監修 (時々拝見)
2023-09-13 19:13:21
うろ覚え、かつ、前に書いたような気がしますが
藤岡信勝氏監修「教科書が教えない歴史」にも、虐殺の話は載っていて、犠牲者の数は「1万人とも言われている」との記述があったと思います。また、軍人でも兵隊でもなく「軍隊」が虐殺に加わったとも。
この本、産経新聞連載記事をまとめたものだったと思います。
当時、正力松太郎氏は内務省の官僚でしたっけ?
大杉栄氏が殺害された件については、遠藤周作氏がまとめていたと記憶しています。
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