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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

電通過労自殺事件はどうやれば刑事事件になるか。

2016年10月21日 | 労働者の権利

 

電通で高橋さんという若い女性が自殺した事件。

過労自殺ということで、労災認定されましたが、うちのブログにも月間100時間程度の残業は何度もしたことがあるなどと書き込みに来る人がいます。

もちろん、厚労省では月間80時間を過労死ライン、100時間をさらに危険な目安としていますが、もちろん、それを超えれば即座に過労死するというものではありません。

そんな超長時間労働はむしろ人道上絶対に禁止しなければならない基準となるでしょう。

さて、電通は最高裁まで行った有名な電通事件があり、今回の2度目の自殺ということで厚生労働省の「過重労働撲滅特別対策班」(通称かとく)が立ち入り調査(臨検)に入る事態に発展しています。

今のところは、労災ないし民事事件として処理されていますが、過特の臨検次第では刑事事件になりえます。

 

刑事事件として立件するには、労働基準法36条に基づく労使による36(サブロク)協定を超えて違法な長時間労働が常態化していた場合が問題になります。

つまり、労働組合の了承なしにはある程度以上の残業をさせられません。

36協定の残業の限度時間は1週間15時間、1カ月45時間、1年間360時間です。

それを超えて働かせる場合は特別延長時間に関する「特別条項付36協定」を結ぶ必要があります。

この協定を結べば従業員を半ば無制限に働かせることができ、日本の長時間労働の温床ともいえます。

この36協定を結んでいない会社はもう即ブラックですが、36協定による電通の特別延長時間は月70時間時間に設定していたらしいのです。

代理人弁護士によると、電通はこの70時間を死守するために「労働時間集計表」に過小申告するように指導していました。亡くなった高橋さんも2015年10月は「69.9時間」、11月は「69.5時間」と記載していたのです。

しかし、実際の残業時間は100時間を超えていました。

それどころか、建物の入出場記録によると月間130時間にも及んでいた可能性さえあるというのです。

こうした違法な実態が高橋さんに限らず、他の社員にも及んでいたとなれば36協定違反で上司などの責任者を逮捕し、送検することが可能になります。。

罰則は「6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」(労基法32条)にすぎませんが、巨大ガリバー企業電通への頂門の一針は日本社会へのそれにもつながるでしょう。

クリックすると新しいウィンドウで開きます

痛ましすぎる電通過労自殺事件。再発を防ぐには労働基準法を厳守させる労働時間の厳格な法規制しかない。

 

高橋さんというこの娘さんお一人の問題だけでも胸つぶれるような思いがする悲しい出来事ですが、電通全体、日本社会全体ではどれだけの人が苦しんでいるのでしょうか。

これを正せるのはまずは法律しかありません。

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3 コメント

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佐々木亮弁護士の記事より (バードストライク)
2016-10-21 19:34:34
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sasakiryo/20161012-00063150/

【 電通過労自死事件から真の「働き方」改革を考える 】
佐々木亮 | 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表
2016年10月12日 9時28分配信
(抜粋)


■ 労働時間の上限規制を法定化

長時間労働による過労死をなくすためのポイントは2つです。

1つは、労働時間の上限を法律で決めることです。
現在は一応、1日8時間、週40時間の規制があるのですが、例外規定を駆使すると事実上青天井です。
これを規制することが必要です。


■ インターバル規制を制定すべき

もう1つは、インターバル規制と言われる、終業時刻から次の始業時刻まで、一定の時間空けるように規制するものです。

たとえば、ある日、午前3時まで働いたとします。
現在の法律では、次の始業が午前9時であれば、それまでに出社しなければ遅刻となります。

しかし、ここに、10時間のインターバル規制をしたら、午前3時から10時間を空けますので、午後1時までは出社させてはいけないことになります。遅刻にはなりません。


■ 長時間労働を助長する残業代ゼロ法案は撤回を

しかしながら、政府を信用できないのは、「働き方」改革で長時間労働を規制する、と言いながら、既に残業代ゼロ法案と呼ばれる労働基準法改正案を提出し、その成立をあきらめていないところです。
今国会では、解散風も吹いていることもあって、この残業代ゼロ法案の審議入りは見送られたとのことですが、廃案になったわけでもありません。
選挙が終われば審議入りするのでしょう。

・ 問題点
一定の年収を条件に、休憩や労働時間規制などはもちろん、割増賃金支払義務を使用者に課さない

残業代が出ない→労働者は早く帰る、という間違った事実認識
残業をする原因の第一位は「業務量が多い」
残業代をゼロにしても業務量が変わらなければ、単に、残業代だけなくなったという状況になるのみ

・ 長時間労働の温床と言われている裁量労働制の規制緩和

一定の労働時間をみなしてしまい、それ以上働いても、「みなし」分だけの賃金支払いで合法としてしまう制度で、既に存在する

低賃金かつ長時間労働が蔓延
これによる過労死、過労自死、そして、過労による精神疾患は非常に多い
(引用終わり。本文お読みください)


「残業代ゼロ法案」は今国会では引っ込めているようである。
次の国会で、「金銭による解雇問題解決」と共に審議入りし、数を頼みの強行採決(我々から見れば。自民党からすると、違うらしいが w)するのだろうか。

上(国家公務員、人も羨む有名大手企業)から下(人材派遣業)まで、労働関係はもはや無法状態でございますね。

個人の労働力の提供と、企業による賃金の支払いは対等な契約関係なんじゃなかったのかな?

あまりに酷い奴隷状態。
我慢するだけ?
こんな閉塞的な状況では、高所から飛び降りたくもなろうもの。
さらに首吊りの足を引っ張る自民党の「働き方改革案」(残業代ゼロ、金銭による解雇)。
みんな選挙に行って、自公維以外に投票すれば、少しは変わるかもしれないのにさ・・・
皆一斉に (リベラ・メ(本物の))
2016-10-22 21:43:45
独りだと力は弱いが、皆一斉に抗議すれば良い。勿論、電通と国の両者に対して。それと、御遺族の支援。
Unknown (きのこ)
2017-05-26 11:47:32
ニュースで、長時間労働により過労死と、しばしば言うのが気になっている。
一度、靴でビールを飲まされたとか言うような、単なる過労だけでなく、人間の尊厳を踏みにじるアソビの対象にされていたとの記事をネットで読んだ。
真偽のほどは知らないが、ニュースでことさらに長時間労働の・・・と、言うことで、私たちの目を長時間労働のみに持っていかせようとする誘導を感じてしまう。
他の仕事だが、面罵された・・・と、つぶやく友達が居た。
インターバル時間で網をかけるのが、よさそうな気がするし、やりやすそうだけど、
人間の尊厳を踏みにじる行為や言葉の蔓延も、私的には、気にかかっている。

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