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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

法務省が保護観察中の少年を直接雇用 仕事がある少年の再犯率は無職の少年の4分の1だから厳罰は無駄

2013年05月10日 | 子ども未来法律事務所通信

警察庁生活安全局少年課「少年非行情勢」(平成24年1~12月)6頁より。再犯者率とは少年事件の検挙者数中、再犯のものが占める割合。これが年々上がっていることがわかるが、逆に言うと、罰を受けたことがあるものが再犯し、初犯は減っているのだから、厳罰化の意味はないのである。



 とても良い試みで私も意表を突かれたのですが、少しけち臭いのでもっと頑張ってほしいと思うニュースです。

また来た少年法の厳罰化では、非行もいじめも虐待もなにも解決しない 求められるのは愛と寛容と理解

 法務省は2013年5月10日、保護観察中の少年1人を非常勤職員として採用したと発表しました。地方自治体では、大阪府吹田市(延べ7人)、大阪市(1人)で既に採用実績があるのですが、これは当然、中央官庁としては初の試みで、罪を犯した人の更生や再犯防止を担う法務省が自ら就労支援に乗り出すことで、企業などの受け入れ先を広げたい考えだそうです。

 採用対象は家庭裁判所で保護処分を受けた人や、少年院の仮退院者で保護観察中の少年で、雇い入れ期間は最長6カ月間で、勤務日数は週4日を上限に本人と相談するとのことです。週4日勤務すれば月収は最大約10万円ということで、職務内容としては、国民のプライバシーに触れないデータの入力作業や文書整理などを担当するとのことです。

 法務省保護局社会復帰支援室によると、平成20年以降、無職の保護観察対象者が再び罪を犯す率は、職を持っている保護観察対象者の約4倍で、平成24年に保護観察中に再犯に及んだ人のうち、職業に就いていたのは7.2%で、無職は27.2%でした。 こうしたデータから、保護観察対象者となった後の社会生活で、仕事を持てるか否かが、一度罪を犯した者がさらに罪を重ねる可能性を左右する決定的な要因になっているのは明らかです。

 つまり、少年は環境さえ整えば、再犯を防げるということです。逆に、すでに罰を受けた少年が職がなければ再犯に結びつきやすいのですから、厳罰は役に立たないのは明白です。

厳罰化では少年事件の再犯は防げなかった 「非行」少年に暖かい目を 子ども未来法律事務所通信13

  今回は、複数の候補者の中から、法務省と保護観察所が協議して人選し た。採用数は当面1人にとどめ、期間満了や期間途中に定職が見つかるなどの理由で退職すれば、新たに1人を雇い入れるのだそうです。

 絶対に問題を起こさない子を選りすぐって選んだのだと思いますが、全国の中央官庁で1人、保護観察をつかさどる法務省全体で1人というのはあまりにも少なすぎます。これで、一般企業に協力を求める方が無理でしょう。わたしたち付添人弁護士がつてを頼んで、少年の雇用を確保する努力もとっくに限界に達しています。

 再犯防止のために国が行う就労支援事業メニューの具体的内容も、公共職業安定所と連携して行うものが1 職業相談、職業紹介 2 職場体験学習 3 就労意欲などを見極めるために3カ月以内の期間で雇用する「トライアル雇用」 4 セミナーおよび事業所見学の4項目にすぎません。

 今後は地方自治体でも中央官庁でも、直接雇用とともに、雇用主への減税や補助金など、こうした少年の更生に協力する制度の拡充を求めたいと思います。それが再犯の際に犠牲になりかねない国民の福利にもつながるのですから。

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全体の少年犯罪が著しい減少傾向にあること、凶悪犯罪も性犯罪も平成24年を除き、平成23年までずっと減少傾向にあったことがわかる。警察庁生活安全局少年課「少年非行情勢(平成24年1~12月」15頁

 

 

厳罰化では何も解決しません。

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保護観察の少年、法務省が雇用 再犯防止へ支援

2013/5/10 12:01 日本経済新聞

 法務省は10日、保護観察中の少年を同省の臨時職員として雇用する取り組みを始めたと発表した。中央省庁としては初めての試み。同省は「国が率先して雇用する姿勢を示すことで、地方自治体や民間企業など、社会全体に取り組みを広げるきっかけにしたい」としている。

 谷垣禎一法相は同日午前の記者会見で、10代の少年1人を採用したと表明。「再犯を防止して、安全な国をつくっていこうという取り組みだ」と述べた。

 同省社会復帰支援室によると、対象は家庭裁判所から処分を受けたり、少年院を仮退院したりして保護観察となっている少年。勤務時間は午前 10時~午後5時で、文書整理やパソコンのデータ入力、電話受け付けなどを担当する。国家機密や個人のプライバシーに関わる情報は取り扱わない。日給は他 の臨時職員と同額の約7000円。

 雇用期間は最長6カ月。勤務は週4日以内とし、残る日は就職活動に充ててもらう。民間の就労支援員がハローワークや面接に同行するなどして職探しをサポートする。職が見つかった時点で契約を打ち切り、保護観察所と情報交換して新たに別の少年を採用する。

 採用枠は当面1人とするものの、法務省の担当者は「成果を見ながら将来的には枠の拡大も検討したい」としている。

 同省の2011年の統計によると、保護観察終了時に無職だった人の再犯率は27%で、職に就いた人の4倍近くに上る。同省は就労支援の充実が再犯防止に欠かせないとみている。

 地方自治体レベルでは10年8月以降、大阪府吹田市や千葉県勝浦市など8市が保護観察対象者らの雇用制度を導入。計8人の採用実績があるが、消極的な自治体も多い。

 政府は昨年7月、「再犯防止に向けた総合対策」を策定。出所後2年以内に再び刑務所に入る人の割合を10年で2割以上減らすとの数値目標を掲げている。

 

 


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癒やしとしての暴力 (くろねこ)
2013-05-10 23:44:13
児童性犯罪という暴力をふるう犯罪者は過去にその犠牲となった症例があまりに多い。
加害者となることで被害者として抗うことができなかった自分を忘れたいようとする精神安定を感じる。
それは「癒やしとしての暴力」
悲しみの連続。イジメもまた同じく。
彼や彼女がモンスターになる前に適切な心療カウンセリングが施すことこそ、その抑止力となる。
なぜ気が付かないのだろう。
少年犯罪を厳しく律せよ叫ぶ人達は。
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