旧優生保護法のもと、知的障害を理由に同意なく不妊手術を強制され、救済措置も取られていないのは違法として、宮城県内の60代の女性が2018年1月30日、国に慰謝料など1100万円を求める訴訟を仙台地裁に起こしました。
原告の女性は幼い頃された治療の後遺症で知的障害が残り、15歳の時に宮城県内の病院で卵管を縛る手術を受けさせられたということですが、事前に国や県から説明を受けた記録は確認されていないというのです。
この旧優生保護法という法律によって、驚くべきことに20年ほど前までこうした強制不妊手術が可能だったのです。
訴状で原告は、不妊手術を強制する旧優生保護法について、
「出産という自己決定権を侵害し、基本的人権を踏みにじるもので違憲」
と指摘した上で、強制不妊手術被害を救済する補償制度を作ってこなかった点について、国家賠償法上の責任があると訴えました。
原告側によると、憲法が定める子どもを産む自由としての幸福追求権を奪ったとして優生保護法の違憲性を問う訴訟は全国で初めてとのことです。
私も優生保護法のことを全く知らなかったわけではありませんが、本人の同意なしの強制不妊手術が20世紀末まで行われていたという事実にはあらためて驚き、慄然とせざるを得ませんでした。
この旧優生保護法は
「不良な子孫の出生を防止する」
ことなどを目的に不妊手術や人工妊娠中絶について定め、1948年に施行されました。
同法では、遺伝性とされた病気のほか、精神障害や知的障害のある人に対し、本人の同意が不要な不妊手術を認めていたのです!
手術は医師が申請し、するかどうかを都道府県の審査会が決めていました。
やむを得ない事情があれば体を拘束したり、だましたりしていいと当時の厚生省は通知していたというのです。
その立法趣旨は、第二次大戦後、日本では国外からの引きあげや出産ブームで人口が急増したため、貧困や食料不足を背景に、人口をおさえることが大きな政策課題だったことがあげられるというのです
だからといって強制不妊手術を認めること自体がとんでもないことなのですが、同時に、同法の背景には病気などの遺伝を防いで国民の
「素質の向上」
を図ろうとする、優生思想があったわけです。
このナチス張りの優生思想に基づく法律が、20年前まで施行されていただなんてほんとに信じられません。
1970年前後から、旧優生保護法は病気や障害のある人を差別し、子どもを産む権利をうばう人権侵害だとして、障害者らが抗議の声を上げ、国際機関からも批判されたため、この法律から差別的な規定が削除され、1996年には「母体保護法」に改まりました。
しかし、それまでの約半世紀にわたり、統計に残るだけでなんと1万6千人以上が不妊手術を強制されたというのですから、もう開いた口がふさがりません。
同様の手術をしたドイツやスウェーデンは謝罪や補償をしているのですが、日本では、国は
「当時は適法だった」
「民事上の不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為の時から20年経過すると、除斥期間の経過ということで消滅する」
などとして、謝罪や補償、賠償はしない方針だというのです。
この裁判は、政治上・道徳上・倫理上、絶対に原告が勝ち、同じような被害者の方々へ国による全面的な謝罪と賠償がなされなければならない事件ですし、そうなるとは思います。
しかし、法律上は上に書いた除斥期間の問題が難題として横たわっています。
そこで、原告は、国に立法不作為の違法があったとして、国家賠償請求訴訟を提訴しています。
つまり、旧優生保護法は1996年、
「障害者差別にあたる」
として母体保護法に改正され、不妊手術の規定は削除されています。
さらに、国連の自由権規約委員会は1998年、日本政府に
「被害者が補償を受けるための必要な法的措置を取るよう」
勧告しています。
また、2004年の参議院厚生労働委員会で当時の厚労相も、補償の必要性を問われ、
「今後どうしていくか考えていきたい」
と答えていたにもかかわらず、ただ国はその後、措置をとっておらず、原告は
「国は漫然と放置してきたことに当然過失がある」
と主張しているのです。
立法すべきなのに立法しない立法不作為に基づく国家賠償は、これ自体がかなり裁判上認められるのが難しく、また詳しく書きたいと思いますが、政府と国会は、は裁判での決着がつくまでもなく、被害者への補償立法作ることが急務だと考えます。
めっちゃ遅くなりましたが、明けましておめでとうございます!
せめて1月中に一つでも記事が書けてよかったです!
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<強制不妊手術>宮城の60代女性が国を提訴「重大な人権侵害」「被害者救済策怠った」
旧優生保護法に基づき知的障害者に強制された不妊手術は、個人の尊厳を保障する憲法に違反するにもかかわらず、政府と国会が救済を放置し続けたとして、宮城県の60代女性が30日、国に1100万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。強制不妊手術を巡り、国の責任を問う訴訟は全国で初めて。
訴えによると、女性には1歳で受けた口蓋裂(こうがいれつ)手術時の麻酔の影響で重度の知的障害がある。15歳時に「遺伝性精神薄弱」を理由に不妊手術を受け、30歳前に手術が原因とみられる卵巣膿腫で右卵巣を摘出した。
女性は子を産めない体になったことを敬遠され、縁談が破談になるなどした。「憲法13条が保障する幸福追求権を侵害された。被害者救済の施策や立法措置を怠った政府と国会の不作為は違法」と主張している。
1998年に国連が日本政府に補償法制定を勧告し、2004年に当時の坂口力厚生労働相が国会で「(強制不妊手術の)事実を今後どうしていくか考えたい」と答弁した時点で「被害救済の必要性は国会の中で明確になった」と指摘。賠償請求の起算点は、04年から立法に必要な相当期間3年を経た07年で、賠償請求権が消滅する民法の除斥期間(20年)に当たらないとしている。
提訴後の記者会見で新里宏二弁護団長(仙台弁護士会)は「国は重大な人権侵害の実態を無視し続けた。訴訟を通じ早期の補償と謝罪を実現したい」と強調。厚労省母子保健課は「訴状が届いていないのでコメントしかねる」と話した。
1948年施行の旧優生保護法は、遺伝性疾患や精神障害を持つ人の生殖機能を不能にする強制手術を認めた。母体保護法に改定された96年までに、全国で約1万6500人の不妊手術が行われたとされる。
毎日新聞2018年1月30日 10時36分(最終更新 1月30日 12時01分)
1948年から96年まで半世紀近く続いた旧優生保護法下で、不妊手術を強制された宮城県の60代女性が30日、個人の尊厳や自己決定権を保障する憲法に違反するとして、国に1100万円の支払いを求める訴訟を仙台地裁に起こした。同法に基づいて強制手術を受けた人は全国に1万6475人いるが、国家賠償請求訴訟は初めて。女性側は、被害者救済に必要な立法措置を怠った国の責任について追及する。
一方、国側は、同法が母体保護法に改定されてから20年以上経過したことなどから、損害賠償請求権がなくなる民法規定の「除斥期間」(20年)を理由に棄却を求める構えとみられる。
訴状によると、女性は15歳だった72年12月、「遺伝性精神薄弱」を理由に卵管の峡部(きょうぶ)を縛る不妊手術を強制された。手術後はたびたび違和や痛みを覚え、87年ごろに入院した。卵巣組織が癒着する卵巣嚢腫(のうしゅ)と診断され、右卵巣の摘出を余儀なくされた。不妊手術を理由に地元の男性との縁談も破談となったとしている。
女性側は「子どもを産み育てるという憲法13条で保障された自己決定権や幸福追求権を侵害された」などと訴えている。また、宮城県が女性側の情報公開請求に基づき昨年8月に開示した療育手帳交付に関する資料には、女性の成育歴に「遺伝負因無し」と記されていたことから、「手術の理由を『遺伝性精神薄弱』とした審査過程そのものも信用できない」と主張する。
優生保護法は96年、障害者への不妊手術の項目を削除するなどした母体保護法に改定された。今年で22年が経過しており、除斥期間が大きな争点の一つになる見通しだ。
これについて原告弁護団は「(旧優生保護法下で不妊手術を受けた人がいる)事実を今後どうしていくか考えていきたい」とした2004年3月の厚生労働相(当時)の国会答弁に着目。答弁から救済措置の立法までに必要な「合理的期間」を3年とみなし、それが経過した07年ごろから国の不法行為(立法不作為)が始まったとして除斥期間には該当しないと反論する構え。
女性側はこれまで厚労省に対し、優生手術を受けた人たちへの救済措置などを求めたが、同省側は「当時は適法だった」と全面的に争う姿勢を見せている。【遠藤大志】
コメント控える 厚労相
加藤勝信厚生労働相は30日午前の閣議後記者会見で「訴状が届いておらず、コメントは控えたい」と述べるにとどめた。
原告らが求める全国的な実態調査については「当事者の話を直接聞いてきたので、引き続きそうした話があれば承りたい」と明言を避けた。
優生保護法の特徴と手術数の地域間格差
遺伝と障害を関係づけ、「不良な子孫の出生防止」を掲げた。国は手術を強制する際の身体の拘束、麻酔の使用、欺罔(ぎもう=だますこと)も認めた。強制手術を受けたのは全国で1万6475人で、記録が残る中で最多は北海道の2593人。次いで、宮城県1406人▽岡山県845人▽大分県663人▽大阪府610人--などと続く。少ない順は沖縄県の2人、鳥取県11人で、都道府県によって大きな開きがあるなど多くの実態が不明。
毎日新聞2018年1月30日 10時41分(最終更新 1月30日 11時45分)
「他にも手術を受けた人は全国にたくさんいる。今回の訴訟をきっかけに名乗り出てほしい」--。旧優生保護法下で強制的に不妊手術を受けた宮城県の60代女性が30日、全国初の国家賠償請求訴訟を仙台地裁に起こしたことを受け、同じく手術を強制された同県内の70代女性が訴えた。県に自身の手術記録の開示請求をしたが「破棄されていた」とされ、裁判を起こせなかった。女性が悲しみの半生を振り返った。
女性は県沿岸部の出身。中学3年の時、仙台市内の知的障害児の教育施設に入所し、卒業後は生活の保証人となる「職親」に預けられた。
しかし、待っていたのはつらい仕打ちだった。「ばかなんだから、それ以上食べるともっとばかになる」。そうののしられ、十分な食事も与えてもらえなかった。
16歳の時、宮城県の知能検査を受けた。「精神薄弱者、内因性軽症魯鈍(ろどん)」と診断され、すぐに市内の診療所に連れて行かれた。何も知らされず、麻酔注射を打たれた。気がついた時はベッドの上。自宅に戻った後、両親の話を偶然耳にし、不妊手術されたことを知った。
女性は就職などで県内外を転々とした。職場の同僚や友人にも手術のことは打ち明けられなかった。子どもがほしいとの思いを捨てきれず、20代で養子をもらった。
「なぜ、私は不妊手術を受けなければならなかったの?」。女性は知的障害者に交付される療育手帳も持っていなかった。父に問いただすと、「民生委員や職親に無理やり(優生手術を承認する書類に)はんこを押せと言われた」と力なく言った。悔しさとやりきれなさで胸が張り裂けそうになった。
女性は、県に手術の記録を開示するよう求めた。しかし、答えは「既に破棄されている」だった。女性は「証拠となる資料があれば裁判に加わりたい。同意なしに、人を産む能力を奪っておきながら、資料を処分したで済まされるのでしょうか」と問い掛ける。
女性は約20年前からこれまでの経験を手記にしたり、国へ補償を要望したりするなどの活動を続けてきた。「ずっと悩みの中にいた。苦しみはこれからも消えない」が、一人でも多くの被害者が救済されるよう国に働き掛けていく覚悟だ。【遠藤大志、写真も】
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奥様と娘さんが確かいたかしら?
復帰記事が家族想いの優しいお父さん記事からなのは凄く印象的でした。
だって、
書きたいこと沢山有ったでしょ?
本当は…? これからでも遅くないですよね?
それにしても、読んでいてここまで突っ込みようが無い所がネット右翼などとは違いますね٩(๑❛ᴗ❛๑)۶感心します。プレッシャーとか思わずに是非、忙しい合間をねってこれからも一筆お願いしたいです。ネトウヨも改心する事間違いなし!一部の商売敵以外ならばね! 人柄も良い人で間違いないと思いました。 ちゃんと資料を記載して証拠あげてる所が私と違う。勉強になります。
取り返しのつかない所業ではありますが、少しでも早くこの女性をはじめ、被害者の皆さんが報われることを祈っております。
記事アップ、ありがとうございました。
人権無視も、いいところですね。
ところで、籠池夫妻拘留は、どうなっているのでしょう?
大阪弁護士会が、橋下に懲戒処分を検討中との事ですが、
籠池夫妻の事も、「人権侵害」で、記者会見して欲しいものです。
人権侵害
で検索かけたら、法務省のページが…。
■法務省:人権侵害を受けた方へ
人権侵害を受けた方へ. 人権
人権が侵害された疑いのある事件を人権侵犯事件と呼んでいます。
↑
国が個人を人権侵害って、どんな国やん!
だんだん北に近付いて来ていますね。
そして「線引き法律ごっこ」で悪事を庇い立てる理屈をこさえるのもお約束か?
他国はそれなりにフレキシブルな対応をしているのだ。法律がどうたらとか理屈で逃げを打たない。どんなに金銭はじめ謝罪しようがこの人たちの身体は決して手術前に戻らない。
そんな当たり前な現実を理屈でもってお茶に濁すことは頭の使いどころを間違えているなんて
言葉で批判をとどめるようではダメだ!
このニュースを知り、そして宮武「休火山」復活のこの記事を読んだことで私は昔、田村正和さんが医者をやるドラマの再放送を見たのを思い出した。タイトルまでは覚えてないが、彼は
自らの胸を手で突きながらこう述べていた。
「ここで考えるんだ」と。ハートで考えろと。
あれはハートに突き刺さった。
向こうの側に立って我が身を考えることをやらなくなって久しいのがこの国なのかもしれぬ。
何とかクリニックのおやじなどは論外だが「歴史とは過去との対話」なんて言葉は今のこの国の流れにはほとんど届かぬようなものなのやもしれぬ。 メディアも日本はこんなにすごいんだ
とライトにポップにバラエティ番組流すことばかりで、先年に報じられた京大をはじめとしたエリート大学と731部隊の結託ぶりを暴いたNHK
スペシャルくらいしか、それこそハートに響かなかった。素手で公衆トイレを子どもたちに奉仕(もうこの言葉づかいから噴飯もの!)させるわ、相当に右翼かがかった講師を公立学校に招いて日本はこんなにすごいんだなどと語らせるのを道徳教育とすることが横行していると聞いたこともある。歴女が語るなんとかとか福岡県でやったのだっけ。たぶんこんなのはゴキブリ一匹みたらの話と同様だろう。市議会議員を
「市民団体」なるものが動かして教育委員会を絡めとり、フジサンケイグループ印の教科書を
採用されるとか、今や市民とは左翼の別名とは
揶揄できぬところにまで来ているようだ(笑)。
片やたかだか俳句を公民館に掲載しただけで公共性に云々(うんぬん)と止めさせたり、これまた文科省に関係する、ただそれだけで数多ある(たしか600人か?失念した60人でもいいけどさ)レポートの中のごくごくわずかの批判でもって講師を教壇から引きずり下ろしたりする放送大学など、こんな不公平、理不尽をやり放題な輩に道徳が云々と指導する資格なしだ。
道徳を内申に含まようとするのはいかにもアベ政治的なものというか、そのまんまだが(笑)奉仕を「やらせる」非常識などをやらせる隙があるなら今回の記事をよく読ませて(これは頭で考える教育だ)次にハートで考えさせることをやらせたほうがよほど、人間育成に有益なことだと思う。
てめえが法律や理屈でガンジガラメにされてメスを振るわれて改造されたらどうなんだと?
そして「そんな超特殊な事情でもって」現在も苦しんでいるのですね?などと良くも悪くも注視されてしまわれることのストレスはどうか?
さらには「そんな理不尽な思いをさせられてどうしてアンタは今まで沈黙していたのか」などと正論っぽい指摘をかまされたらどうよ?と。
相手を思いやるということは、どこかのタマネギおばさんみたいにきらびやかな衣装で現場を
レポートし、涙をためることではたぶんなかろうて。あれは別の意味(有名人によるカンパ集めということ)で大切なのだろうし、このおばさんが極悪非道なキャラでもなかろうからそれはそれとして(といってもオードリーさんはジーパンで汚物を片付けてたな!)、成り代わって想像力を働かせて考えてみたりすることなのではないか。
どこかでエイプでもできるできないとか聞いたこともあるようなないようなだが(笑)人間が人間たるのはそこにつきよう。
宮武さんへ
久しぶりの「噴火」でしたね。
とても良いテーマだと思いました。
身近にある巨悪を紹介していくのも絶対大切ですよね。そちらから「がんばります」等と言われなくてもいいので、たまーには短文でも構わないのでアクションして頂きたいです。
ご無理なさらずに。甘やかしてないけど(笑)。