若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

弁護士報酬の怪

2010年07月15日 | Weblog
実は法学部卒だった私。

先日、知人から民法上のトラブルの相談を受け、ネットで同じような事例を探し、久しぶりに六法を引き、学生時代の参考書を引っ張り出して調べたり・・・ってことをしていた。そして先週、手続きについて知人と一緒に家裁などを尋ねてまわった。家裁の書記官が教えてくれたのは、

「管轄はうちじゃなく○○地裁△△支部と思い・・・いや□□出張所・・・?」
「うちで使用している書式はこれになりますので、一応参考にどうぞ」
「期間は、1ヶ月では済まないですね・・・3ヶ月とか4ヶ月とか・・・」
「本人だけで今回の手続きを行うのは難しいでしょうから、弁護士を立てたら?」
「法テラスに聞いてみた方が良いケースだと思いますよ」

などなど。裁判所は当事者の一方のみに肩入れできない立場にあり、突っ込んだ内容を説明できないというのは理解できるのだが、それにしても要領を得ない。肝心な所は

「弁護士に・・・」

と言われてしまう。
んで、紹介された法テラスに電話で聞いてみたところ、

「そのケースでしたら、当センターで弁護士による無料の法律相談を実施していますので、そこでお話をされてみてはいかがでしょうか」

とのこと。ここでも結局

「弁護士に・・・」

だった。そうだそうだ、法テラスとはトラブルの解決方法を指南してくれるところではない。解決方法を指南してくれるところを紹介してくれるだけ。法テラスが発足した時に資料を貰って読んでいたはずなのだが、そのあたりをすっかり忘れている。自分の記憶力は全くあてにならない。

そして、続けて電話で話をしていたら、突如、

「当事者の月収はいくらですか?当事者の家族や同居人に公務員はいませんか?」

などと尋ねられる。法テラスが紹介してくれる無料法律相談には、所得制限が設けられているのだ。知人の情報を伝えると、電話の向こうから、

「知人の方と同居人の所得を加味すると所得制限に引っかかります」

と告げられる。仮に所得制限をクリア出来たとしても、無料になるのは相談だけで、あとの報酬金やらについては本人負担となる(民事法律扶助制度で一時的な立替えはしてくれるようだが)。

家に帰り、いろんな弁護士事務所のHPを覗いてみたところ、今回のケースでは着手金が10万~20万円。報酬金も同じくらいで、あれやこれやで総額40万円くらいかかるのが相場のようだ。ただ、実際に地元の弁護士に頼んだ時の費用がいくらになるのかは不明。

結局、出費の大きさが障壁となり、知人は弁護士に相談・依頼する道を諦めてしまった。


法的トラブルは世の中にたくさんある。法的知識を持つ人に解決してほしいと願う人は大勢いる。しかし、情報の不足と費用の高さという二重のハードルが、法的トラブルを抱える人々を追い返している。追い返された人々は、自力で手続きをして解決を図るか、ヤクザに頼むか、事態が悪化してどうにもならなくなるまで泣き寝入りするか、といった選択肢しか残されていない。

だいたい、高すぎるのだ。一見すると役場の住民票・戸籍の係で済みそうな手続きに、何ヶ月もの期間と数十万円の費用を必要とする。しかも、相談するだけで1時間5000円~1万円ときたもんだ。

もし40万円払うとなると、私なら3カ月も飲まず食わずを強いられることになる。この弁護士費用が、自由市場における価格ならまだ納得がいく。しかし、この弁護士費用の高さは、

  法科大学院 + 司法試験 + 司法修習制度 + 弁護士法第72条

といった、幾重にも張り巡らされた参入規制によってもたらされたのだから腹が立つ。

相談料や報酬金など込み込みで5万円くらいでやってくれる、お手軽な弁護士がいたら良いのに、と思う。もし弁護士法第72条がなければ、副業として特定の紛争処理のみ引き受けて小遣いを稼ぐような人も出てくるだろう。利用者としては、そうなった方が選択肢が増えて好ましい。

1人の弁護士が憲・民・刑・商・民訴・刑訴・行政・租税・労働法などを一通り網羅しておく必要なんてない。1人で全部をカバーする必要はない。必要に応じて、特定の分野の知識・技能を持つ人が集まって事にあたれば良い。分業ってそういうものだと思う。

パソコンで例えるなら、CPU、メモリ、マウス、ディスプレイ、グラフィックカード、冷却クーラーの製造・組立てや、OSのプログラミングなど、様々な分野の職人や専門家の手を経ることで、初めてお手頃な価格で購入できるようになる。もし「1人で全ての部品の製造、組立てからプログラミングまでできなければ、パソコン製造業に携わってはならない」なんてルールができたら、私はおそらくパソコンを買えないだろう。

弁護士の中には「弁護士を増やすと司法サービスの質が低下する」と主張している人もいるが、司法サービスの質の議論の前に、そもそも司法サービスにたどり着けないまま放置されている人が大勢いることの方が問題だ。

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