若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

田中純・行橋市長の「公約」「実績」を検証してみるコーナー

2021年12月04日 | 地方議会・地方政治
行橋市長 田中純氏の8年間で

図書館は建てたが目的を果たせず、

増やすと掲げた人口は増えず、

借金だけが増え続けています。



以下、見ていきましょう。

【新図書館建設】

まず、市を二分する論争を巻き起こした新図書館建設問題です。
これは、目的を達成することができませんでした。

行橋市議会 平成28年12月 定例会(第4回) 12月14日-04号
======【引用ここから】======
◆4番(井上倫太郎君)
・・・平成26年2月24日、25日の各社新聞の京築版には、行橋市長選の記事が大きく取り上げられております。ここに私も振り返らせていただいて、熟読させていただいたんですが、田中市長は、既に当選前から、カフェ等を併設した価値の高い集客力のある図書館を中心とした公共施設を旧市街地に設置し、再開発する、と公約を掲げられております。
 また当選翌日には、旧ミラモーレ跡地に新図書館を建設する考えを示し、中心市街地に空洞化の歯止めをかけ、人の往来を取り戻し、昼間人口・夜間人口を共に高める呼び水にしたい。運営は公設民営あるいは民設民営にしたい、との記事が取り上げられています。

======【引用ここまで】======

この会議録から読み解くに、田中純市長の公約は、

目的:中心市街地に空洞化の歯止めを掛け、人の往来を取り戻す。昼間人口・夜間人口を共に高める。

手段:旧ミラモーレ跡地に、カフェ等を併設した図書館を中心とした公共施設を建設する。


となります。

手段は実行しました。
しかし、目的を達成できませんでした。

福岡・行橋 マルショク30日閉店 買い物難民懸念、空き店舗課題 毎日新聞 2021/6/29 18:49
======【引用ここから】======
 福岡県行橋市の中心商店街で60年以上にわたって営業を続けてきたスーパー「マルショク行橋店」が30日、閉店する。郊外型大型店の出店などで進んだJR行橋駅東口地域の空洞化を象徴する節目となり、地元住民や商店主の間には焦燥感や落胆の声が広がっている。
======【引用ここまで】======

なお、こうなる事については、多くの人が危惧していました。

行橋市議会会議録 平成29年12月 定例会(第8回) 12月21日-05号
======【引用ここから】======
◎請求代表(松本健二君)
・・・この事業に対して、平成26年秋から市民を交えて検討したとしながら、翌27年春に行われたパブリックコメントには、市民の多くの反対意見が、次のように寄せられています。
1つ、跡地に建設するものが図書館である必要は何でしょうか。
1つ、ミラモーレ跡地は、狭小な道路しかない不便過ぎる場所であり、そこに建設することは、そもそも考えられません。
1つ、建設するのならば、児童館を望みます。
1つ、買い物するわけではないので、図書館が出来ても街の活性化は望めないと思います。
1つ、管理運営を民間事業者が行うのは反対です。
1つ、会議や公募でもいいので、私たちの意見を出させてください。
 以上が出された意見の一部ですが、殆どがこの計画に疑問があるものでした。そしてそれらを解決することなく、市は事業を進めました。現在提案されている図書館等複合施設は、街の活性化に有効な核になり、市街地中心部の空洞化に歯止めをかけるとは、とても思えません。

======【引用ここまで】======

中心市街地の空洞化に歯止めをかける、という目的に対し、新図書館を建てるという手段のミスマッチ。
目的に対し手段がズレていたのです。

本来、中心市街地を活性化させようという目的があって、じゃあどこで何をしようか・・・と考えるのが思考の順序、筋です。

ところが、この行橋市では、上記の請求代表が述べるような「狭小な道路しかない不便過ぎる場所」の土地をあらかじめ買っており、しかも土地購入に際して国補助金を受けているため土地の使途が文化施設建設に限定されています。二重の足枷がはめられた状態で「さぁこの土地で何を建てる?」と考え始めているのです。市街地中心部の活性化という目的は、不便すぎる土地を買ってからの後付け口実でしかありません。

(なお、この不便すぎる土地の元の所有者は元私設美術館のオーナーでもあり、松本英樹元副市長と親交のあった人物と新聞で報じられています。この縁故による土地購入は田中純市長の就任前の話であることから、図書館建設という失策の責任の半分は田中純市長、もう半分の責任は松本英樹元副市長にあるというのが私の評価です。)

ともかく、目玉施策たる新図書館では、目的たる「市街地中心部の活性化」を達成できませんでした。
公共投資としての典型的な失敗例と言えましょう。

【人口10万人構想】

上記の中心市街地活性化に関連しますが、続いて、田中純市長の公約として
7万2千人の行橋市の人口を10万人まで増やす
というものがありました。

これも未達です。
10万人どころか、8万人になる気配すらありません。

田中純市長の就任が平成26年3月。
その直前の平成26年2月末の人口と、令和3年10月末の人口を比較してみましょう。

人口と世帯の情報 | 行橋市ホームページ
平成26年2月末の人口 72,830人
令和3年10月末の人口 72,830人


ホームページで内訳まで閲覧できた直近のものをたまたま並べたのですが、見事に横ばいでした。

日本全体の傾向としては「人口減少社会」であり、人口増が望めない中での横ばいなので、全国的に見れば決して悪い数字ではありません。しかし、公約との乖離が大きいのは、公約を信じて投票した有権者からすれば背信行為でしょう。

ここで問題になるのは、全国的に人口減少傾向が確実視される中、なぜ田中純市長は「7万2千人から10万人に増やす」という荒唐無稽な公約を掲げたのか、という精神構造です。

この点、田中純市長本人がどう評価しているかと言うと・・・

行橋市議会 令和3年3月定例会(第6回) 03月10日-04号
======【引用ここから】======
◆10番(工藤政宏君)
・・・そこで田中市長に御質問いたします。市長は、1期目から人口問題に非常に取組まれておりましたし、重視をされておりました。特に人口増加を最重要テーマとしまして、10万人都市構想、この大きなビジョンを掲げられておりました。このビジョンに心躍らせた市民も数多くいらっしゃったと思います。
 しかし徐々に市長のお口からは、この10万人都市構想を聞くことがなくなりました。この10万人都市構想は断念されたのか、どのようになったのか、端的にお答えください。

◎市長(田中純君) 
 お答え申し上げます。当時から申し上げておりましたように、10万人はリアリティのある、実現性のある数字として申し上げているのではなくて、目標であり、夢でありという言い方を常にしていたと思います。そういった意味では、リアルにこの人口減少時期に、リアルになるということは、私自身もクエッションだなということは、当時から申し上げていたはずであります。

======【引用ここまで】======

自分の公約に対し、
「私自身もクエッションだな」
と評価しているようです。

嘘でしょ?にわかに信じがたい会議録です。



ちょっと例え話を。

「顧客を7万人から10万人に増やします」
と目標を掲げた営業担当者がいたとします。
営業担当者は
「そのために投資しましょう。経費も使わせてください」
といい、オーナー社長であるあなたは
「今のご時世にそんなことできるのか・・・でもまぁやらせてみるか」
と思い許可しました。

結果、さんざん経費を使ったものの顧客は7万人のまま。
それを営業担当者に問い質すと、
「私自身もクエッションだなと思ってたんですよー」


・・・いつクビを切るの?今でしょ?



話を元に戻しましょう。

人口が7万2千人から10万人になるというのが、単なる予測、見込みの類いであれば、
リアリティのある、実現性のある数字として申し上げているのではない
という評論家然としたコメントで済むかもしれません。

しかし、田中純市長の場合は「人口を10万人にする、そのために図書館建設を始め様々な事業を行う」という理屈で大型公共事業を推し進めてきました。ですから、人口10万人どころか増加トレンドすら生み出せなかった責任は重大です。

別のところで、田中純市長は
人口の動向が全ての要因になり、年1、2%程度、人口が伸びていく状況であれば、全く懸念はないので、諸事業において財政がブレーキをかけることはない。
と述べています。
人口の伸びは止まっているので、諸事業にブレーキをかけないと大変なことになるでしょう。

【補論 人口の内訳】

なお、行橋市の人口は横ばいですが、その内訳も決して楽観視できるものではありません。

平成26年2月末の65歳以上高齢者数 18,738人
令和3年10月末の65歳以上高齢者数 21,906人


人口は横ばいなのに高齢者数が3,000人増えているということは、若年層、現役世代が3,000人減っているということです。
高齢化率は25.7%から30.1%に増加しています。
ちなみに、日本全体の令和3年9月の高齢化率は29.1%。

高齢者が増えるということは、市が支払う高齢者医療や介護の負担金も増えることを意味します。

行橋市では総人口こそ横ばいを維持しているものの、高齢者の増加傾向と現役世代の減少傾向は他の市町村と同じです。今後、高齢化に伴い社会保障経費が膨張するは明らかでありこれに備えなければならない点、全国の動きと同じです。これがいわゆる2025年問題です。

【財政問題】

行橋市では、全国的な動向以上に財政状況が悪化しています。

これについて田中純市長は、自身の財政運営を高く評価して「最高の決算だ」と自負しているようです。

例えば、
ゆくはし市議会だより 平成30年9月定例会
======【引用ここから】======
市長
臨財債が約100億円であり、債務から臨財債を引いた、いわゆるネットの債務とでも言えるものが、約100億円である。そして、基金が約110億円に達しているので、流動資産ベースで見ても、今の行橋市の資産は、ネットでプラスというかたちで、そういう意味も含めて、私は昨日の答弁で史上最高の決算であると申し上げた。

======【引用ここまで】======

地方債残高は200億円あるが、うち100億円は臨財債(臨時財政対策債)だから債務に含めない、基金はそれ以上にあるから決算は最高!という田中純市長。

田中純市長就任が平成26年3月なので、平成25年度決算と直近の令和2年度決算を比較してみましょう。

まずは地方債から。

平成25年度決算
地方債現在高    173億 827万1千円
 
うち、
臨時財政対策債    88億5738万5千円
(差し引きの債務)  84億5088万6千円


令和2年度決算
地方債現在高    214億8623万9千円

うち、
臨時財政対策債   101億4597万1千円
(差し引きの債務) 113億4026万8千円


臨時財政対策債も増えていますが、それを差し引いた債務も84億円から113億円へと29億円近く増えています。

次に、基金の状況を見てみましょう。

平成25年度決算
基金全体   91億6771万2千円

うち、
財調基金   34億 815万7千円
減債基金    3億6627万2千円
その他    53億9328万3千円


令和2年度決算
基金全体  134億9950万2千円

うち、
財調基金   47億7899万3千円
減債基金    3億7168万6千円
その他    83億4882万3千円


基金全体のうち、比較的自由に使える財政調整基金は13億円増え、地方債の償還に充てる減債基金はほとんど増えていません。その他というのは特定目的基金であり、地方自治法上、使途は限定されています。

臨財債を除く地方債は29億円増える中で、特定目的基金を除く基金は13億円しか増えていない。
借金は増えるが預金はその半分程度しか増えていない。
これでよく「最高の決算」と見栄を張ったものだと感心してしまいます。

付け加えると、全国的には、臨財債は増えるがその他の地方債は減る傾向にあります。

臨時財政対策債、急増する自治体財政の禁じ手 | 公益社団法人 日本経済研究センター:Japan Center for Economic Research


人口減少社会の到来に備え、臨財債が債務として増加する中でも他の地方債は減らしていき、地方債総額としては増えないよう手堅い自治体運営を心掛けている自治体が多い、ということだと思います。

ところが行橋市では、臨財債と並行してその他の地方債も増えています。
全国的な流れ以上に財政が悪化している、それが行橋市であるといえましょう。

【補論 臨時財政対策債】

ここまで、ずっと除外していた臨時財政対策債ですが、そもそも臨時財政対策債とは何なのでしょうか。除外して良いのでしょうか。

臨時財政対策債とは、国が自治体に渡していた地方交付税が不足した際に、
「とりあえず自治体で借金しておいて。後で元利返済分は国があげるから」
という借金、地方債です。

では、国は地方に対して、どのタイミングで借金返済のためのお金をあげるのか。どういう形であげるのか。

この疑問について、都道府県の臨財債に関し次のような記事がありました。

地方自治体の借金返済金 25道府県で積み立て不足の状態 | 注目の発言集 | NHK政治マガジン 2019年12月14日
======【引用ここから】======
返済のための資金が国から交付される地方自治体の借金、「臨時財政対策債」をめぐり、25の道府県で、事実上、資金の積み立てが不足している状態になっていることが総務省の調べで分かりました。
(中略)
返済のための資金は20年から30年に分割して、毎年、国から交付されていて、多くの自治体が、今後、本格的な返済の時期を迎えることになります。
======【引用ここまで】======

「後で返すから」
というのは、20年~30年の分割払いで毎年返すということだったようです。
そして・・・

参議院議員野田国義君提出臨時財政対策債の発行及び償還並びにその在り方に関する質問に対する答弁書
======【引用ここから】======
 臨時財政対策債を満期一括償還方式(償還期限の満了の日において元金の全部を償還する方式をいう。以下同じ。)で発行した地方公共団体においては、地方交付税の基準財政需要額に算入された当該臨時財政対策債の元金償還額に相当する額を減債基金(地方財政法施行令(昭和二十三年政令第二百六十七号)第十一条第三号に規定する減債基金をいう。以下同じ。)に積み立てていれば、当該臨時財政対策債の満期時においてその元金の償還に必要な財源が確保される仕組みとなっているが、当該相当額を減債基金に積み立てていない場合には、当該臨時財政対策債の満期時においてその元金の償還のために減債基金以外の財源が必要となることもあり得るため、政府としては、満期一括償還方式で発行している地方債の償還財源を確保するため、減債基金への計画的な積立てを行うことが財政運営上適切であると認識している。
======【引用ここまで】======

国から都道府県に対して、臨財債償還分として、毎年、20年~30年の分割払い用として地方交付税に上乗せしているから、臨財債の満期が来た時にスムーズに返済できるよう上乗せ分を減債基金に積んでおきなさい、と政府は述べています。
上のNHK政治マガジンの記事は、この積立金が不足している事を指摘しています。

もし、
「国は、返済のための資金を20年~30年で分割して毎年交付している」
という構図が都道府県と市町村とで同じであったら、行橋市はアウトです。
臨財債が88億円から101億円に膨らむ中で、政府が「計画的に積み立てろ」としている減債基金は3億6千万円から3億7千万円へとほとんど増やしていないのですから。
借金返済のためのお金を政府がくれているのに、それを積み立てて満期に備えることなく消費してしまっているのが、今の行橋市です。

今後、臨財債の償還が始まって減債基金が足らなくなれば、政府が説明するように
当該相当額を減債基金に積み立てていない場合には、当該臨時財政対策債の満期時においてその元金の償還のために減債基金以外の財源が必要
となります。
たとえば、条例改正して職員の退職金支給額を大幅減額すると同時に、特定目的基金である職員の退職手当への積立金を取り崩す、とかね。

これが、田中純市長の言う「最高の決算」の中身です。


~以下、資料~
福岡県 市町村財政状況の推移(平成24年度から28年度) 行橋市

福岡県 市町村財政状況の推移(平成27年度から令和元年度) 行橋市

令和2年度 行橋市歳入歳出決算及び基金運用状況審査意見書

平成28年度 行橋市歳入歳出決算及び基金運用状況審査意見書

行橋市 財政事情 令和2年度決算


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。