清き心と未知なるものの為に㉑・・・ダグ・ハマ-ショルドの日記より
安らかに-------凝滞(ぎょうたい)していた苦渋が溶けて、涙となって流れるときのように。
雪が融けてあらわれでた大地。やわらかな光を受けてしっとりと光かがやく、ひろびろした
水面。
私のまわりには、雪どけの霞がふわふわした壁をなし、低く垂れこめた、葵色の空が冬の
夕陽に照らしだされている。
水鏡の世界のなかでは、白鉛の地色に淡いオリ-ブ色をなして、はんの木の裸の枝がゆっ
たりとゆれている。-------あるかないかの波につれて、そよ風に吹かれているようにゆった
りゆれている。
そしてそれから------
やんわりした暗闇のなかに、ただひとつ燃えたつ炎がふくよかな光に包まれている。鏡の
なかは仄暗く深い泉をなし、そのうえにかかる白い片雲とも見粉うヒヤシンスが、ささやき
かわす森林のように並び立つ書物のあいだにちらりと見える。
いまもわれわれのものではなく、おそらくいっかなわれわれのものとはならぬ、安らぎ。
われわれが逃れてきた、だが、われわれが逃れきることのないであろう話あいの、あの声
の音色が、静寂のかなたからいつまでもひびきわたっている。静けさのなかで、思い出が遠
い昔のなかから小声で語りかけ、重荷をいっしょに担うそのときには安らぎが生まれるのだ
と約束してくれる。
すべての人の安息ではない安息はなく、すべてが成就せられぬうちは安らぎはない。
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