「みぃちゃん」といっしょ

ねこの「みぃちゃん」との暮らし。そして何かを思い、感じたこと。そして、やりたいことを見つけたいです。

どうやら異世界に行ったみたいです

2021-12-05 13:59:16 | 異世界
昔からそうだった
いつだってそうだった

だから……

もう諦めていた……

期待すればするほど自分が惨めだった
それでも心のどこかで
桜の花びらのような……淡い色合いの物が
何気なく自然にそこにあるように
期待という言葉を身にまとってそこにあった

ことごとくそれらは風に吹かれ飛び散ってしまっていた
いつだって
昔から

事あるごとにそうなるので
飛び散る花びらをそのままに受け止めようともせず
吹かれるがままにして眺めて終えていた

と、そんな日常の中になんともたとえようのない出来事が起こったのだ



…………………………………………………………………………………


          ある朝起きたら私は異世界にいた


何?
夢?
いや起きてる。多分。目をこすってみた。私は極度の近眼で、メガネをかけないと何もかもがほとんどはっきり見えず、夢を見ているかのようだからだ。
うん。夢じゃない。みたい。多分。まだ目をこすっているのか私は!?
ベッド脇に置いたメガネケースに手を伸ばしたとたん、部屋が揺らいだ。
地震?!……じゃしばらくじっとしてればなんとかな……らない!揺れている。というか、天井を見ているとだんだん高くなっていく。おかしい。壁や家具を見た。揺れていれば倒れたり音がして壊れたりするはず。
壁や家具は、色形を変えながら収まるところに収まろうとしている。

依然として今の自分が、朝起きて目が覚めている、という状態なのだと言い聞かせるように今起きている事から逃避しようとしている。なぜならまだメガネをかけていないからだ。
しかしメガネケースは宙に浮き、手を伸ばしてもほんの指先一つ分先にあって、届きそうで届かない。
メガネか現実逃避か。

そうこうしているうちに自分の周りが見る見る変わってゆく。掛けている布団は体からつかずはなれずふうわりとしている。天井の灯りは少しきらめいて、シャンデリアのような大きさになってゆく。壁には様々な絵画が並び、そこにあった棚は様変わりし、私のお気に入りの写真たちはするんするんと違う物へと変わってゆく。

もうどうでもいいや、痛くもかゆくもない!!

そう思った瞬間、バッ!とすべてが落ち着いた。揺れも収まった。と同時に私はメガネケースを手にしていた。しん……と静まり返って何事もなかったかのように止まっている。
私はメガネを取り出しかけてみた……

うわぁぁぁ~!?

声にならない声が息の中に詰まってきた。

ここはどこ?私はだれ?……とアホなことを言ってる場合じゃない。
マジでここはどこなんだ?!私は……私!なのに、ここは私の部屋じゃない。
見渡してみると、何もかもが違う。いや、違いすぎる。もはや違う、という言葉では表現できないくらい、何と言っていいかわからないほどに驚いている。

わけわからんドリーバッグ!

この期に及んでダジャレで誤魔化してみるがやはり……わけがわか……らない……あぁ……もうダジャレも出ない……
とにかくベッドから起きて、周りを良く見ようとした。ふわりと布団をはぎ足を床についたとたん自分の足にびっくりしたのだ!
白く美しい足……そして白いパジャマ……いや、夕べはスエットを着込んでぬくぬく靴下を履いて寝たはず!まさか夜中に着替えた?
夜中……私は眠るための薬を飲んで寝るせいか、寝る直前のことや夜中に起きて物を動かしたり、などの行動を朝になると忘れていて、はて?こんなことをしたっけ?まぁよくあることだし問題ないし~とスルーしてきた。
現に、インターネットで知らない間に注文していたり、おかしなメールを送信していたり、と、ぼほ日常になっていたからだ。

日常……いやいや、これはそんなレベルじゃない、よくあること、で済む問題じゃない、そもそもスルーすることが出来ない!!
まだベッドから降りることが出来ない。何しろ着ている服が違う!いや、足が!
そうこうしている時、ドアをノックする音がした。
コンコンコン コンコンコン
えぇ?どうしたらいい?え?誰?誰?いや待て、私も……誰??
そう、ドアをノックした音につられ、そっちを見た時、目に入った人物。鏡の中の自分。自分……な
はず!なのに……

ちが~~~う!誰この外人の子!!
何?どうして?どうなってるの?変身しちゃった?え?誰に?私は……誰??
コンコンコン コンコンコン
またドアをノックする音がする。今度はその誰かの声も……
「おはようございます。お目覚めでしょうか」
え、返事しないとダメ?
「ご朝食は出来ておりますのでいらして下さいませ」
朝ごはん?!じゃ、今、朝なのね?そう、朝かどうかさえわからないでいたのだ。
それよりともかく自分だ!もう一度鏡を見てみよう……

ちが~~~う!!
だから誰?誰なんだ?あなたは誰?ええ?自分は誰?自分はどこ?待って、気持ちは自分だよ?でもなんで全く違う人が鏡に?!
だがただひとつ、メガネだけは自分のだ。それ以外は全部違う。
ひやりとした足元に、白いスリッパのような靴があった。私はそれを履いて鏡の方へと歩いてみた。体が軽い。歩くのも軽やか。おかしい、ついこの間つまづいて足先を痛めたはずなのに。全然痛くない。ああぁもうそれよりもこの姿……
髪の毛からつま先まで全く違う人間。自分で自分を見る唯一の手段、鏡!私は近づいて両手をそっと前へと横へと上へと動かして。
あぁ、私の意思で動かすことができる。間違いない。私だ。中身だけは!あ、いやメガネも!

頬に触れてみた。すべらかで柔らかく……何より、若い!髪の毛まで若い!甘いブロンドでウェーブが可愛いぃぃぃ~!あぁぁそれどころではない!もはやパニック。そうだ、もう一度寝てみよう!夢かもしれない、多分違うっぽいけど。夢なら覚めるかもしれない、多分違うっぽいけど。
私はベッドにもぐりこんだ。眠れ眠れ眠れ~~~……

無理。
そもそも眠りに薬が必要なくらいの人間。眠くないのに眠れるわけがない!いや薬うんぬんじゃなくてもこの状況を知って眠れるわけがない!
まて、まて、そもそもなぜこんなことになっているの?おかしいよね?目が覚めたら転生していた、って感じのがあったよね?そういうの?リアルに起こっているの?いやいやないでしょないでしょ。さすがにそんなのないでしょ!

頭の中でぐるぐると考えていたけれどお腹がすいてきた。こんな非常時でもお腹はすくのか!
さっき言ってたね、朝食が出来てるって。うぅぅむ。
ぐー……
お腹すいた。
……よし、行ってみるか!……の前に着替えなきゃ!だってこの服、パジャマっぽい。しかも洋画で出てくる白いシャツみたいなやつ。間違いないこれはパジャマだ。
え?着替え?着替えって……あたりを見渡してみた。どうやら向こうにクローゼットのようなドアがある。ちょっと覗いてみよう。私はドアに近づき開けてみた。
えええ!?……って驚いたけど、ここは……バスルーム?あ、トイレみたいなのがある。鏡と桶?
え、じゃあここホテル?そうか、超豪華なホテルなんだ!なるほど……じゃないっ!服!着替え!
どこ?!もう少し部屋の中を見渡して何があるのかを確認した。
ほう~~暖炉。いやはや豪華だわ。その上にあるのは宝石箱?どれどれ?あああああじゃない!着替えだってゆーのに。

暖炉の脇にまたドアがある。ええい!開けてやる!
と、そこにやっと服が並んで掛けられていた。ほっ……で、どれを着ればいいんだ?
よく見ると何やら別々に並んでいるのがわかった。ほほぅ、アイテム別に並んでいるのね。
さらに良く見ると、これを着なさいとばかりに目立つところに一式そろえてかけられていた。
……制服?!しかも男子の!白いブラウス、リボン、上着にズボン、靴下と靴。
はっ……私は学生なの?え、学生になっちゃったの?しかも男子?ちょっとまって。

……女子だよ~?

……
……
私はある物語を書いている。それは女の子を隠して男の子として学校に通ってる物語。ざっくり言うとね。あこがれていたんだよね~そういうスリリングなお話。
……はい?
ということは……これは……物語が事実になってるの?あ、いや、事実になってるっておかしい。
だって物語はフランスよ?私フランス語話せないのよ?あ、でもさっきの声は日本語だった。
……
私的に都合のいいようになっちゃってる?あらま。そりゃすごいわ。あぁおばさん言葉になってる。
ぐーー……
ええいお腹め!わかったわかった。この状況はまだイマイチ理解出来ないけど、自分の物語に似ているのなら、この制服を着ていけばいい、そしてここはフランスパリの一軒家!

パンツから何から何まで全く違う!これどこにあったやつ?まぁいいや、パジャマを脱いで着替えよう。
うーん……14~5歳ってとこだね。初々しい~~若い~~……じゃない、とにかく着よう!

なんだかんだで着替えてみた。そばにある鏡には、かなりイケてる生徒。しかもユニセックスな雰囲気をかもし出して、自分が書いている物語のイメージにぴったり。
よし。試してみよう。この世界を。自分の書いている物語になっているのか、それとも似ているだけなのか、それとも全く違うのか。

ぐーーー……
わかった、食べにいくってば。
ノックされたドアに近寄り、そっと開けてみた。
おぉぉ……なんと素敵な家なんだろう……廊下、窓、空気、エアー!
あ、ここ2階だった。そうなんだ。うんうん、確かに自分の物語も2階の設定だったと思う。
まぁとにかく下へ降りてみよう。
それしかないのだから。

手すりをつたって階段を下りていく。
誰かがいた!
「おはようございます」
返事しなきゃ!
「おはようございます」
あれっ?私の声……声まで違う……

「ウィルエンド!おはよう!」
言われた言葉にびっくりして振り向いてみた。
誰っ?!……おっ、イケメンだ。けど……待った待った。今、ウィルエンドって言わなかった?
それって私が書いてる物語の主人公の名前だよ?
「どうした?」
「え、いや……おはよう!」
「今日はピアノを弾くからか?緊張してるんだね」
えぇぇぇ???ピアノ?!んなバカな!弾くって……無理無理無理。
すると彼はさりげなく私の肩に手を置いて移動していく。
ピアノ?弾けないよ?なんでそんなシチュエーションなわけ?
いつの事?ここは実家。それでピアノを弾くって話、書いたっけ?

「おはよう、ウィルエンド。今日は頑張ってね」
何この綺麗な人……うっとりする……はっ、お母さん?
「はい。頑張ります」
え?私何を言ってるの?え、自分の声じゃないし、自分の意思じゃないし?

とりあえずお腹がすいてるのは事実だ。食べたらなにかいい策が浮かぶかも。
テーブルにつくと料理を運んできてくれる。あぁぁ、メイドさんね。いちいち素敵……
おぉやっぱりバゲットだ!
こっちにあるのはバターかな?ほぉぉ~……手作り感。時代なのね。
「今日もカフェオレでよろしいでしょうか」
「はい。ありがとう」
……なんか変……なんだろう……

おわん!?
いやいや待て待て、確かカフェオレボウル?ってなのがあったよね?それ?これが!ほほぅ~
カップとは違って持ち手がない、カフェオレボルがフランス語。ちょっと知っててよかった~
どれどれ……私はカフェオレボウルを両手で包み、そっと口を付けた。
口の中に入り込む優しいコーヒーとミルクがすごく合う!なんだこのカフェオレは!さすが本場フランスのカフェオレ……!
……本場?ここフランス?パリぃ~~?!もういちいち混乱してしまう。
向かい側に座っているイケメンの彼は……はっ……エンディ?ああぁ?
(あなたはエンディですか?)なんて聞けるか??
「エンディはいつまで居られるの?」
「明日まで。イギリスに向かう船の時間がちょうどいいので」
「そう。でも今日はゆっくりできるのね。良かったわ」

だ~~~!!お母さま~よくぞ聞いてくれた!エンディだっ!
そそそっとカフェオレを飲みながら、横目で会話を聞き見ていた。
「ウィルエンド、終わったら行かないか?昨日言ってただろ?今日時間がとれるから」
「うん、行くよ」

……どこへだ??(笑) 昨日がわからないぞ……まぁ話を合わせておけばいいか。
あぁ、フルーツも美味しい。フランスの朝食ってこんなに豪華だっけか。
まぁいいや、なんか食べてたら落ち着いてきた。
これは夢のような現実。なんだかおかしいけど、私の中身は私自身で間違いない。
でもおかれている状況は全然違う。書いている物語にすごく沿っている世界。
とうとう私はそこまで、いやそれがどこまでかわからないけど、この「異世界」に入り込んでしまったのだ。
雰囲気や居心地はいい。そりゃそうだ、私が書いてる物語なのだから。

朝食をとりながらあれこれと考えを整頓し始めた。だって選択肢はそれしかないのだから。
自分の世界に戻りたくても戻る方法がわからないのだから。
それに……
憧れていたシュチュエーション。
だったら楽しんでしまおう!逃げ場がないというのが本当だけど、それを考えていてもどうしようもない。それになぜだか勝手に言葉が出てくるし?不思議だけど。日本語なのは自分が書いている言語が日本語だからだろう。
カットされたオレンジを口に入れながら、エンディを見てちょっと微笑んでみた。
彼も微笑み返してくれる。心の中ではものすごくニヤニヤしてにやけているのだが、どうやらそういうのも物語の人物になりきっているようだ。多分。

そして私は食事を終え、席を立った。おっ、どうやら2階に戻るみたい。
さっき目覚めた部屋に行き、ドアをしめた。
……「ふぅぅ~~~!」
あれっ?私の声じゃん!え?さっきまでウィルエンドの……
ははぁ~~ん……もしかしてこの部屋で一人でいる時、誰とも会話していない時は自分に戻るみたいだ。なるほど、そうじゃないと物語は崩れてしまうもんね。自分が書いてるんだけどね?

で、私は何をしにきた?窓に近い机を見てそこに向かった。ん?これは……楽譜!
皮のカバーにくるまれた楽譜。ほぇ~~……なんて曲?M…モーツアルトか!じゃ、これを弾くのか?モーツアルトなんて弾けるの?
うん、ウィルエンドは弾けるの。はぁ……マジ?今の自分、確かにピアノは好きだけど弾けるか?
多分弾ける設定だろう。わからないけど。どうなるのか。

それを持ってまた下へ降りて行った。
するとエンディがいた。階段の周りも素敵。こんな豪華な家に住んでるんだ……そういうことにしているのは自分なのだけど。
「じゃ、頑張れ!」
「うん、ありがと!」
とその時エンディは抱きしめてきた。
(きゃ~~~……照れ)…な、自分だけど、ウィルエンドは違う!もう長いこと付き合ってきたかのように抱きしめかえす。
(えぇぇ、ちょっと~)
そして少し離れて二人は(もう第三者よ私自身は!)自然なキスをした。
「これでいいね、ウィルエンド」
「うん……」
いい雰囲気じゃん……やるなぁ私。キャッ……うふふ。
そして足は玄関へと向かっていた。ほほぅ……また素敵なドア~。外に出る。すると誰かがいる。
「ウィルエンド様ご用意ができています」
はい?何の?
馬車だった。おぉぉぉ!馬車!乗ったことないの。初めてなの!自分だったらはしゃいでしまうだろう心持ちなんだけど、ウィルエンドだから。
スマートにさりげなく乗った。 そこへエンディが来て見送ってくれた。
なんていい人なんだろう……まぁそういう設定なんだけどね……

ほぉ、馬車に乗ると少し高い位置になるのね。見渡しがいい。
少し揺れるんだね~~ガタゴトガタゴト。パリの道って舗装が石畳でガタゴト。
あぁ、素敵だ……街並み。うっとりするほど綺麗。
パカパカと馬の蹄とほどよい揺れで、さっきまでの緊張感がとけたのか、少し眠くなってしまった。
……
……
…………
………………

はっ!と目が覚めるとそこは……いつもの天井、そしていつものベッド。もちろんいつもの自分!
「あれっ?なんで?さっき馬車に乗ったのに……なんだ、やっぱり夢だったんだ……」
そう、自分の部屋に戻っていたのだ。
「にしてはリアルだったよね。何もかもすべてが。うん。キスも……照れ」
時計はもうすぐ7時をさしていた。
うん、いつもどおりだ。ええと今日は……あ、そっか、休日だわ。良かった。何が良かったのかだけれど。
書き留めねば!あの経験を!実体験よね?夢だったみたいだけど。
そう思い、ふだん開かないパソコンを開いてワードに書き連ねた。
にしてもあの空間、とりまく空気さえ本当だったんじゃと思うほど、思い返せば返すほど体にしみついている。
カフェオレ……味も残っている感じ……
あぁぁ~もっと居たかったなぁ……
また明日の朝もそうなるといいのになぁ…
いやいや、期待はしない!期待したらした分、惨めに返ってくるもの。

いい夢を見させてくれた……

そう思うことにしたけど、あまりに素敵すぎて、夢でした、では終われないくらい想いがつのる……
パソコンに書き留めながらもまだ、実感のように残っていることが切ない
異世界、だったのかな……
……よし書き留めた
……じゃ私は物語を書き続けよう
それが私のいる世界を少しだけ素敵にしてくれる

大好きな猫の相棒、みぃちゃんが虹の橋を渡って3年過ぎて、4年目に入った今日

色んな事があって今が嫌になることもある
でもどっちみち風は吹くんだし、散ってゆく桜の花を止めることはできない

ノートを開き、人物に命を吹き込む
気持ちを込めて、ストーリーを進めていく……うん、現実でも異世界に入りこめる方法だ
書き進めるにつれいろんな出来事が錯綜する
いや、そうさせる力が自分にある

もしかしたら桜の花びらを手にすることだってできるかもしれない
うん……きっと……

異世界帰りの私はとりあえずキッチンに行きカモミールティを入れて
まとめ買いしたクロワッサンをくわえながらノートを出した
(よし、ちょっとしたハプニングを起こしてやろっと)
ニヤニヤしながら没頭~うふふっ……