シリーズ平成の本音―踏みにじられる沖縄の民意
米国海兵隊航空基地を沖縄の普天間から辺野古に移設し、海を埋め立てV字型滑走路を敷設する工事が防衛省により強硬に進められている。現在の普天間飛行場については、市の中心部の住宅地にあることから日本側に返還されることが日米間で合意されており、その代替地については両国間の防衛軍事当局間で本土移設を含め検討された結果、キャンプシュワブ海兵隊基地に隣接する形で辺野古沖の埋め立てが‘唯一の選択肢’として合意されている。軍事上はそうなのであろう。
鳩山民主党政権において‘県外移設’が検討されたが、拙速がたたり代替地は見つからず、これが大きな要因の一つとなり、鳩山首相は発足後約8か月で退陣に追い込まれた経緯がある。その際、野党であった自民党と防衛当局や保守系メデイア、防衛評論家などはこぞって‘辺野古が唯一の選択’であり、それを実現しないと日米関係は悪化するとして反対の大合唱を行った。
1、市、県、国政レベルの選挙で支持を失った自・公連立与党
自・公連立政権側は、日米同盟を強固なものにするためにもあくまでも辺野古移設を進める意向のようだ。これに対し2014年11月の沖縄知事選挙で辺野古移設反対を公約した翁長雄志知事が当選したのを受けて、沖縄県側は辺野古移設反対の姿勢を強め、連日のように反対行動が行われている。
安倍政権は、沖縄県の経済開発ため今後5年間で3000億円の財政支援を提案し、辺野古移設に慎重であった仲井間知事(当時)の説得に努めた結果、同知事は2013年12月に辺野古沖の埋め立てを認め、また埋め立てのための岩礁破砕を承認し、これを受けて防衛省は辺野古沿岸の調査、準備を開始した。
しかし仲井間知事は、2014年11月16日の知事選において辺野古移設に反対、普天間基地の早期返還を公約にした翁長雄志氏(自民党県連を脱退)に敗れ、落選した。更に、同年12月の衆院総選挙において、自民、公明両党は同県の4つの1人区で1議席も確保できなかった上、2年前の選挙で獲得した3議席を失った。また2014年1月に行われた辺野古の地元である名護市長選挙でも、辺野古移設反対の稲嶺進氏が当選した。自民党側は、与党候補支援のため500億円の財政支援を表明したが、与党推薦候補は敗れた。
政治的には同県の民意は明らかだ。市レベルはもとより、県レベル、国政レベルでも辺野古移設反対が沖縄の民意と言えよう。安倍政権側は、県の承諾は得ており、‘粛々と進める’としている。しかし辺野古移設工事の開始を認めた仲井間前知事も落選しているので、‘粛々’と進めれば、沖縄県の民意、選択は踏みにじられることになる。それでは何のための選挙かということにもなる。
2、安全保障、防衛問題で踏みにじられる沖縄の民意
確かに、安全保障、防衛活動は中央政府の専管事項ではあり、地方公共団体もそれに協力することが望まれる。だが国家、国民のための安全保障であるので、沖縄県の民意を無視すれば、誰のための安全保障か、沖縄の民意は無視しても米国の軍事政策、日米同盟を優先するのかということになる。特に沖縄には、米軍施設の約75%が集中しており、普天間基地が返還されてもそれを上回る辺野古飛行場が建設されれば負担は軽減しない。有事となれば、米軍海兵隊基地等が初期の標的になる可能性が強い。
更に、有事の際は武器、装備、部隊等の移動などに地方公共団体の協力を得なくてはならないが、その際も民意は無視され、踏みにじられるのか。それでは独裁国家の強権政治と余り大差がない。このような民意を踏みにじる政権運営や防衛省の行動が続けば、緊急事態の際などに国民に銃が向けられることもあるのかもしれないという懸念も出て来る。
3、辺野古や沖縄に固執する米国の思惑
米国は、国務省報道官が辺野古移設の進展を期待する旨の出しており、辺野古移設に固執している。米国の軍事的利益からすれば当然だろう。しかしこのように沖縄の民意を無視する移設が強行されれば、反米感情が一層強まる恐れがある。海上埋め立てにより、貴重なサンゴ礁と絶滅種のジュゴンへの環境破壊の問題もある。米国内でそのような環境破壊が認められるのだろうか。
更に沖縄県民のもう一つの懸念がある。米兵による女性への暴行や風俗の悪化などが背後にあるが、米兵が基地外で女性への暴行や誘拐等を行っても、日米安保条約上、裁判権は米軍側にあり、日本で裁判をすることも出来ないことだ。これは日本全土でも同様だ。戦後70年も経過し、日米同盟の強化が強調されているが、対等な同盟関係などは空事で、日本は属国扱いになっている。沖縄県民は、政党支持を問わず、航空機の騒音や墜落事故に加え、職務外で罪を犯した米兵を裁判にも掛けられない属国状況を懸念している。米国は、建前上は同盟関係や民主主義、正義、人権などを強調しているが、本音はやはり違うのだろうか。
4、地方自治、民主主義の危機か
現自・公政権の沖縄の米軍基地辺野古移設への対応は、地方の民意、地方の自治性、自主性の否定であり、地方自治、民主主義自体の危機と言えよう。これは単に沖縄県だけの問題ではなく、日本全国の自治体の自治性が尊重されるか否かの問題でもある。原子力発電所の継続問題にしても、核汚染物質の最終処理場の問題にしても、また緊急事態や有事の際の自衛隊、警察の移動、展開、武器の移動等にしても、現政権のようでは、民意や地方自治が強権と財政支援で踏みにじられる恐れがあと見られても仕方がないのだろうか。
(2015.3.27.)(All Rights Reserved.)
米国海兵隊航空基地を沖縄の普天間から辺野古に移設し、海を埋め立てV字型滑走路を敷設する工事が防衛省により強硬に進められている。現在の普天間飛行場については、市の中心部の住宅地にあることから日本側に返還されることが日米間で合意されており、その代替地については両国間の防衛軍事当局間で本土移設を含め検討された結果、キャンプシュワブ海兵隊基地に隣接する形で辺野古沖の埋め立てが‘唯一の選択肢’として合意されている。軍事上はそうなのであろう。
鳩山民主党政権において‘県外移設’が検討されたが、拙速がたたり代替地は見つからず、これが大きな要因の一つとなり、鳩山首相は発足後約8か月で退陣に追い込まれた経緯がある。その際、野党であった自民党と防衛当局や保守系メデイア、防衛評論家などはこぞって‘辺野古が唯一の選択’であり、それを実現しないと日米関係は悪化するとして反対の大合唱を行った。
1、市、県、国政レベルの選挙で支持を失った自・公連立与党
自・公連立政権側は、日米同盟を強固なものにするためにもあくまでも辺野古移設を進める意向のようだ。これに対し2014年11月の沖縄知事選挙で辺野古移設反対を公約した翁長雄志知事が当選したのを受けて、沖縄県側は辺野古移設反対の姿勢を強め、連日のように反対行動が行われている。
安倍政権は、沖縄県の経済開発ため今後5年間で3000億円の財政支援を提案し、辺野古移設に慎重であった仲井間知事(当時)の説得に努めた結果、同知事は2013年12月に辺野古沖の埋め立てを認め、また埋め立てのための岩礁破砕を承認し、これを受けて防衛省は辺野古沿岸の調査、準備を開始した。
しかし仲井間知事は、2014年11月16日の知事選において辺野古移設に反対、普天間基地の早期返還を公約にした翁長雄志氏(自民党県連を脱退)に敗れ、落選した。更に、同年12月の衆院総選挙において、自民、公明両党は同県の4つの1人区で1議席も確保できなかった上、2年前の選挙で獲得した3議席を失った。また2014年1月に行われた辺野古の地元である名護市長選挙でも、辺野古移設反対の稲嶺進氏が当選した。自民党側は、与党候補支援のため500億円の財政支援を表明したが、与党推薦候補は敗れた。
政治的には同県の民意は明らかだ。市レベルはもとより、県レベル、国政レベルでも辺野古移設反対が沖縄の民意と言えよう。安倍政権側は、県の承諾は得ており、‘粛々と進める’としている。しかし辺野古移設工事の開始を認めた仲井間前知事も落選しているので、‘粛々’と進めれば、沖縄県の民意、選択は踏みにじられることになる。それでは何のための選挙かということにもなる。
2、安全保障、防衛問題で踏みにじられる沖縄の民意
確かに、安全保障、防衛活動は中央政府の専管事項ではあり、地方公共団体もそれに協力することが望まれる。だが国家、国民のための安全保障であるので、沖縄県の民意を無視すれば、誰のための安全保障か、沖縄の民意は無視しても米国の軍事政策、日米同盟を優先するのかということになる。特に沖縄には、米軍施設の約75%が集中しており、普天間基地が返還されてもそれを上回る辺野古飛行場が建設されれば負担は軽減しない。有事となれば、米軍海兵隊基地等が初期の標的になる可能性が強い。
更に、有事の際は武器、装備、部隊等の移動などに地方公共団体の協力を得なくてはならないが、その際も民意は無視され、踏みにじられるのか。それでは独裁国家の強権政治と余り大差がない。このような民意を踏みにじる政権運営や防衛省の行動が続けば、緊急事態の際などに国民に銃が向けられることもあるのかもしれないという懸念も出て来る。
3、辺野古や沖縄に固執する米国の思惑
米国は、国務省報道官が辺野古移設の進展を期待する旨の出しており、辺野古移設に固執している。米国の軍事的利益からすれば当然だろう。しかしこのように沖縄の民意を無視する移設が強行されれば、反米感情が一層強まる恐れがある。海上埋め立てにより、貴重なサンゴ礁と絶滅種のジュゴンへの環境破壊の問題もある。米国内でそのような環境破壊が認められるのだろうか。
更に沖縄県民のもう一つの懸念がある。米兵による女性への暴行や風俗の悪化などが背後にあるが、米兵が基地外で女性への暴行や誘拐等を行っても、日米安保条約上、裁判権は米軍側にあり、日本で裁判をすることも出来ないことだ。これは日本全土でも同様だ。戦後70年も経過し、日米同盟の強化が強調されているが、対等な同盟関係などは空事で、日本は属国扱いになっている。沖縄県民は、政党支持を問わず、航空機の騒音や墜落事故に加え、職務外で罪を犯した米兵を裁判にも掛けられない属国状況を懸念している。米国は、建前上は同盟関係や民主主義、正義、人権などを強調しているが、本音はやはり違うのだろうか。
4、地方自治、民主主義の危機か
現自・公政権の沖縄の米軍基地辺野古移設への対応は、地方の民意、地方の自治性、自主性の否定であり、地方自治、民主主義自体の危機と言えよう。これは単に沖縄県だけの問題ではなく、日本全国の自治体の自治性が尊重されるか否かの問題でもある。原子力発電所の継続問題にしても、核汚染物質の最終処理場の問題にしても、また緊急事態や有事の際の自衛隊、警察の移動、展開、武器の移動等にしても、現政権のようでは、民意や地方自治が強権と財政支援で踏みにじられる恐れがあと見られても仕方がないのだろうか。
(2015.3.27.)(All Rights Reserved.)
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