シリーズ平成の本音 増税は国民への安易な責任転嫁!
9月27日、野田内閣と与党民主党は本年度の第3次補正予算の規模を12兆円とすると共に、今後の復興財源確保の観点から所得税、法人税、個人住民税を中心とする臨時増税案を決定した。今後予想される16.2兆円ほどの復興資金を確保するためであるが、7兆円は財政の節減や特別会計の余剰金、政府保有資産の売却で捻出し、9.2兆円規模の臨時増税案である。約72%は個人所得税、住民税で、個人所得からの増税となる。
政府財政から7兆円を捻出するとの姿勢は旧自・公政権では見られなかったものであり、その努力を評価するところであるが、増税の7割以上を個人所得に転嫁することは国民への安易な責任転嫁と映る。
野田首相は、復旧・復興は同政権の最大、最優先の課題であると就任以来明らかにしている。そうであれば、特別会計を含む旧来予算を一層の節減や、国有財産の処分、独立行政法人の剰余金の圧縮など、政府会計の枠内での工夫により最大、最優先の課題に取り組むべきであろう。明年度予算以降については、復旧・復興と経済再生を最大、最優先の課題として、全般的節約と新たな優先度に従って従来予算の組み替え、再配分を行うのが筋であろう。財源が限られている以上、優先度の変化、社会的ニーズの変化に伴い予算の組み換え、再配分を行うのは当然だ。それを行ってこなかった旧政権以来のツケが1,000兆円に近い今日の借金財政を招いている。予算の組み換え、再配分は、省庁の事務方で行うことは事実上困難である。各省庁は設置法で権限が強固に守られているためだ。それが出来るのは、国民から信託を受けている国会であり、内閣である。そもそも、国会に予算案が提出されると一切組み換えが出来ない状態は異常としか言いようが無い。衆参両院協議会も機能していない。事務方の独裁とも映るが、それを許して来たのが自民党を中心とする旧政権であり、保守系マスコミと一部の保守系評論家であった。他方、これだけの国難に直面し、復旧・復興という最優先課題に直面してもかたくなに省庁の権限を守り、旧来の予算を守ろうとする行政各部の姿勢は、大いに反省の余地がある。
3月の大震災と大津波は、人間の想定力を超えた自然の力によるものであり、誰も責めることは出来ない。しかし2004年12月のスマトラ大地震で20m、30mの津波が発生することが明らかとなり、3陸沿岸地域の脆弱さが多く識者から指摘されていた。にも拘わらず十分な対策を取らなかった国と地方の行政と議会の無作為への責任が問われる。その反省がなければ将来設計も責任逃れの対策になる恐れがある。
また福島原発被災事故については、国の政策として原子力発電を推進した責任は、長期に亘り政権を担っていた野党、自民・公明両党も認めている。地方も受け入れを容認し、交付金その他の利益を受けて来たところであり、気の毒ではあるが受け入れた以上一端の責任はある。特に放射能汚染による「損害賠償」については、除染などの費用を含め、原子力政策を進めて来た行政各部と時の政権や国会、及び受け入れた地方公共団体にも責任がある。その賠償責任は、地方公共団体を含む行政各部と時の政権及び国会が負うべきであり、増税という形で安易に国民に転嫁すべきものではなかろう。
朝霞の公務員宿舎の新築が問題とされている。8万人以上の人が仮設住宅などで不自由な生活を強いられ、家の再建のめども立たないで不安な生活を強いられている住民が多数居る中で、公務員宿舎の新築する予算が割けるのだろうか。神経を疑いたくなる。絵で描いたようなKYだ。これは氷山の一角でしかない。このような神経で現在の予算が作られているということであろう。
そもそも交通が飛躍的に便利となり、民間住宅も首都圏でも多数存在し、選択も豊富な今日、一般論として公務員住宅が必要だろうか。公務員宿舎の家賃も余りにも安すぎる。市場家賃の8割程度は徴収すべきであろうが、それならば市場家賃の2割程度の住宅手当を支給し、住居は個々人が選択する方が合理的であろう。そもそも公務員住宅を建設、管理するために、財務省を筆頭にほとんどの省庁が営繕部局を持っており、そのための人件費なども馬鹿にならない。住宅手当に切り替えれば営繕部局も不要となる上、宿舎建設・管理予算が不要となり、土地等は売却可能となる。民間に売却すれば固定資産税も入ってくるだろう。それらの費用と余力を被災地の住宅支援などに回すことが出来る。
これも氷山の一角でしかない。現在の予算モデルは、地方を含め、高成長期とバブル経済期に積み上げられたものであり、長期の経済停滞と復旧・復興のための費用を前提とした予算モデルに組み替えなければならない時期に来ている。復旧・復興のための費用を「将来世代に残してはならない」、「現役世代で負担すべき」とのいうことはその通りである。そうであればなお更のこと、高成長期とバブル経済期に積み上げられた現在の予算モデルを、低成長と少子化に対応した簡素な予算モデルとして置くことがまず不可欠である。国難のこの機会を逃せば蓄積された予算の負担を将来世代に先送りすることになる。
予算の一層の節減と今日の優先度に沿った組み換え、再配分が先決だ。その上で、行政サービスの急激な低下を招かないように民間事業、民間参入が可能な分野については民間に開放することが望まれる。(11.09.30)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
9月27日、野田内閣と与党民主党は本年度の第3次補正予算の規模を12兆円とすると共に、今後の復興財源確保の観点から所得税、法人税、個人住民税を中心とする臨時増税案を決定した。今後予想される16.2兆円ほどの復興資金を確保するためであるが、7兆円は財政の節減や特別会計の余剰金、政府保有資産の売却で捻出し、9.2兆円規模の臨時増税案である。約72%は個人所得税、住民税で、個人所得からの増税となる。
政府財政から7兆円を捻出するとの姿勢は旧自・公政権では見られなかったものであり、その努力を評価するところであるが、増税の7割以上を個人所得に転嫁することは国民への安易な責任転嫁と映る。
野田首相は、復旧・復興は同政権の最大、最優先の課題であると就任以来明らかにしている。そうであれば、特別会計を含む旧来予算を一層の節減や、国有財産の処分、独立行政法人の剰余金の圧縮など、政府会計の枠内での工夫により最大、最優先の課題に取り組むべきであろう。明年度予算以降については、復旧・復興と経済再生を最大、最優先の課題として、全般的節約と新たな優先度に従って従来予算の組み替え、再配分を行うのが筋であろう。財源が限られている以上、優先度の変化、社会的ニーズの変化に伴い予算の組み換え、再配分を行うのは当然だ。それを行ってこなかった旧政権以来のツケが1,000兆円に近い今日の借金財政を招いている。予算の組み換え、再配分は、省庁の事務方で行うことは事実上困難である。各省庁は設置法で権限が強固に守られているためだ。それが出来るのは、国民から信託を受けている国会であり、内閣である。そもそも、国会に予算案が提出されると一切組み換えが出来ない状態は異常としか言いようが無い。衆参両院協議会も機能していない。事務方の独裁とも映るが、それを許して来たのが自民党を中心とする旧政権であり、保守系マスコミと一部の保守系評論家であった。他方、これだけの国難に直面し、復旧・復興という最優先課題に直面してもかたくなに省庁の権限を守り、旧来の予算を守ろうとする行政各部の姿勢は、大いに反省の余地がある。
3月の大震災と大津波は、人間の想定力を超えた自然の力によるものであり、誰も責めることは出来ない。しかし2004年12月のスマトラ大地震で20m、30mの津波が発生することが明らかとなり、3陸沿岸地域の脆弱さが多く識者から指摘されていた。にも拘わらず十分な対策を取らなかった国と地方の行政と議会の無作為への責任が問われる。その反省がなければ将来設計も責任逃れの対策になる恐れがある。
また福島原発被災事故については、国の政策として原子力発電を推進した責任は、長期に亘り政権を担っていた野党、自民・公明両党も認めている。地方も受け入れを容認し、交付金その他の利益を受けて来たところであり、気の毒ではあるが受け入れた以上一端の責任はある。特に放射能汚染による「損害賠償」については、除染などの費用を含め、原子力政策を進めて来た行政各部と時の政権や国会、及び受け入れた地方公共団体にも責任がある。その賠償責任は、地方公共団体を含む行政各部と時の政権及び国会が負うべきであり、増税という形で安易に国民に転嫁すべきものではなかろう。
朝霞の公務員宿舎の新築が問題とされている。8万人以上の人が仮設住宅などで不自由な生活を強いられ、家の再建のめども立たないで不安な生活を強いられている住民が多数居る中で、公務員宿舎の新築する予算が割けるのだろうか。神経を疑いたくなる。絵で描いたようなKYだ。これは氷山の一角でしかない。このような神経で現在の予算が作られているということであろう。
そもそも交通が飛躍的に便利となり、民間住宅も首都圏でも多数存在し、選択も豊富な今日、一般論として公務員住宅が必要だろうか。公務員宿舎の家賃も余りにも安すぎる。市場家賃の8割程度は徴収すべきであろうが、それならば市場家賃の2割程度の住宅手当を支給し、住居は個々人が選択する方が合理的であろう。そもそも公務員住宅を建設、管理するために、財務省を筆頭にほとんどの省庁が営繕部局を持っており、そのための人件費なども馬鹿にならない。住宅手当に切り替えれば営繕部局も不要となる上、宿舎建設・管理予算が不要となり、土地等は売却可能となる。民間に売却すれば固定資産税も入ってくるだろう。それらの費用と余力を被災地の住宅支援などに回すことが出来る。
これも氷山の一角でしかない。現在の予算モデルは、地方を含め、高成長期とバブル経済期に積み上げられたものであり、長期の経済停滞と復旧・復興のための費用を前提とした予算モデルに組み替えなければならない時期に来ている。復旧・復興のための費用を「将来世代に残してはならない」、「現役世代で負担すべき」とのいうことはその通りである。そうであればなお更のこと、高成長期とバブル経済期に積み上げられた現在の予算モデルを、低成長と少子化に対応した簡素な予算モデルとして置くことがまず不可欠である。国難のこの機会を逃せば蓄積された予算の負担を将来世代に先送りすることになる。
予算の一層の節減と今日の優先度に沿った組み換え、再配分が先決だ。その上で、行政サービスの急激な低下を招かないように民間事業、民間参入が可能な分野については民間に開放することが望まれる。(11.09.30)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)