シリーズ平成の乱 白旗を揚げた菅・仙石・枝野民主党政権 (改訂版)
7月12日の参議院選挙で、ほぼ予想通り与党民主党が改選54議席から10議席も減らし、大敗した。小沢・鳩山グループを排除し、黙らせての大敗であるので、全面的に反小沢・鳩山グループ、菅・仙石・枝野民主党政権の大敗であり、責任であろう。一部には小沢前幹事長の責任に転嫁しようとする者もいるが、責任の転嫁でしかない。
一方野党自民党が意外なほど躍進したが、政策的には消費税増税と建設工事中心の公共事業の推進など、旧来の政策を出ておらず、政策による勝利というよりは、敵失による勝利であり、国民が自民党の政策に期待しているわけでもない。そもそも野党自民党は、参議院での過半数どころか、第一党の地位を得たわけでもない。
国民が期待を託したのがみんなの党であるが、国民が強く支持したのは「小さな政府」、消費税増税反対と公務員制度の抜本的改革であろう。しかし同党は、いわば小泉改革路線を継承しているものであり、自民党の予備軍の色彩が強いし、そもそも弱小政党であるので、当面政権を担える政党でもない。
菅首相が小沢元代表に会見を打診したが、実現には至っていない。一部にはこれを批判する向きもあるが、前幹事長を引きずり降ろした上、参院選を前にして“黙っていて欲しい”と公の場で言っておいて、大敗したら会いたいと言っても常識的には無理でしょう。もっとも、民主党は衆議院で多数を占め、任期を3年残しており、また参議院でも第一党であるので、当面政権運営に責任があり、建て直しに最大限の努力をすべきであろう。それが現在の国会に表わされた民意と言えよう。現在の民主主義制度においては、民意は国会に反映されていると理解すべきであり、日替わり弁当のように各種メデイアが実施、公表している世論調査は“短期的な参考”程度のものであり、一部の民意でしかなく、乱用されるべきではない。そうでないと時々の政権が一喜一憂し、不安定化することになり、国会に表わされた民意の実現の阻害要因となる恐れもある。小沢元代表としても、民主党政権がこのような危機に立たされ、建て直しに迫られていることを認識し、反小沢・鳩山グループを含め、窮状を聞き、危機乗り切りに共に努力するとの広い視野と寛容さを持って欲しいものだ。メデイアの向こう側には国民がいることを認識すべきであり、国民に語り掛ける姿勢が望まれる。党利党略と内輪もめにはうんざりだ。
一部に与党民主党と野党自民党の大連立を示唆する者がいる。森元首相がその1人であるが、同首相は小泉政権後いわば森院政を敷き、昨年8月の総選挙で自民党を大敗に導いた責任者の1人であり、権力回復が目的であることは明らかであり、国民の支持は得られそうにない。これに民主党の“おしゃべり恒三”こと渡辺恒三議員が賛意を示しているが、小沢・鳩山グループを排除し、民主党の7奉行と称される仙石、岡田、前原、枝野、野田各議員などを中心とする反小沢グループで菅政権を担ぎ、参議院選挙に大敗したのであるから、同議員も今回の民主党大敗の責任者の1人であり、権力維持のための保身策としか映らない。そもそも民主党は、衆議院で多数を占め、参議院でも第一党であるので、内部分裂した野党自民党と大連立を組むメリットはほとんどなさそうだ。民主党にとっては延命、自由党にとっては権力とポストがメリットとなろうが、一体誰を首班にするのか?
9月に民主党の代表選挙がある。参院選大敗を受けて誰を首班とするかを選ぶ重要な代表選挙となりそうだ。
菅政権は、参院選前に昨年8月の総選挙で示したマ二フェストを実質的に変質させた。消費税増税、政治主導から現実路線への転換、沖縄普天間の県内移設の容認などだ。普天間移設問題では外務・防衛官僚と安保族に完敗しているし、「政治と金」の問題では、検察当局は立件には至らず、鳩山、小沢両議員とも不起訴とせざるを得なかったが、再三に亘る強引な捜査と立証できなかった情報を流し、結果として‘疑わしい’との風評を作り出し、いわば世論操作に成功し、両者を退陣に追い込み、官僚の砦とも言える検察官僚の勝利に終わっている。官僚にとっても野党にとっても、政策論においても政権運営能力と実力においても民主党内で恐いのは小沢前代表であり、同議員のいない民主党は政権運営の経験のない集団に過ぎない。だからこそ保守勢力は小沢外しに余念がない。それに民主党の反小沢グループが乗っかった格好になっている。自信の無さと未熟さが故であろうか。そして参院選後に、政治主導の核と期待された国家戦略局の設置を断念し、官房長官の下への機能移転を表明した。参議院で法案が通らないというのが理由だが、官僚体制に早々に白旗を挙げた格好だ。仙石官房長官が担当大臣の時に、政策面でも法案実現面でも顕著な成果は無く、そもそもやる気がなかったのではないか。また明年度の予算編成では、1兆円超の特別枠を置いて重点配分をするとしているが、それ以外は省庁横並びのシーリーング(基本的に10%一律削減)方式で、旧来の自民党政権時代の方式に逆戻りしており、予算編成でも財務官僚など官僚に白旗をあげた格好だ。反小沢・鳩山グループを中心とする菅・仙石・枝野体制の乱である。
山で遭難したら一旦元に戻れと言われている。今民主党に言えることは、迷ったら、まずマニフェストに戻れということではなかろうか。一部の学者や有識者と称される者や前自民政権を擁護していたコメンテーター等が、‘マニフェストは空想論’などと分かったような批判をして“現実論”への誘惑を行っているが、政権交代は「旧来からの現実の転換」、「社会的価値や優先度の転換」を伴うものであり、それは国民が選択し、任期を有した国会に託されたものであるので、一部の既成社会を代表する有識者が決めつけられるものではない。昨年8月の衆院選で示された民意と今回の参院選で示された民意を分析し、国民が国会に何を伝えよとしているかを理解し、9月の代表選挙で適正な結論を出して欲しいものである。(07.10.)
(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
7月12日の参議院選挙で、ほぼ予想通り与党民主党が改選54議席から10議席も減らし、大敗した。小沢・鳩山グループを排除し、黙らせての大敗であるので、全面的に反小沢・鳩山グループ、菅・仙石・枝野民主党政権の大敗であり、責任であろう。一部には小沢前幹事長の責任に転嫁しようとする者もいるが、責任の転嫁でしかない。
一方野党自民党が意外なほど躍進したが、政策的には消費税増税と建設工事中心の公共事業の推進など、旧来の政策を出ておらず、政策による勝利というよりは、敵失による勝利であり、国民が自民党の政策に期待しているわけでもない。そもそも野党自民党は、参議院での過半数どころか、第一党の地位を得たわけでもない。
国民が期待を託したのがみんなの党であるが、国民が強く支持したのは「小さな政府」、消費税増税反対と公務員制度の抜本的改革であろう。しかし同党は、いわば小泉改革路線を継承しているものであり、自民党の予備軍の色彩が強いし、そもそも弱小政党であるので、当面政権を担える政党でもない。
菅首相が小沢元代表に会見を打診したが、実現には至っていない。一部にはこれを批判する向きもあるが、前幹事長を引きずり降ろした上、参院選を前にして“黙っていて欲しい”と公の場で言っておいて、大敗したら会いたいと言っても常識的には無理でしょう。もっとも、民主党は衆議院で多数を占め、任期を3年残しており、また参議院でも第一党であるので、当面政権運営に責任があり、建て直しに最大限の努力をすべきであろう。それが現在の国会に表わされた民意と言えよう。現在の民主主義制度においては、民意は国会に反映されていると理解すべきであり、日替わり弁当のように各種メデイアが実施、公表している世論調査は“短期的な参考”程度のものであり、一部の民意でしかなく、乱用されるべきではない。そうでないと時々の政権が一喜一憂し、不安定化することになり、国会に表わされた民意の実現の阻害要因となる恐れもある。小沢元代表としても、民主党政権がこのような危機に立たされ、建て直しに迫られていることを認識し、反小沢・鳩山グループを含め、窮状を聞き、危機乗り切りに共に努力するとの広い視野と寛容さを持って欲しいものだ。メデイアの向こう側には国民がいることを認識すべきであり、国民に語り掛ける姿勢が望まれる。党利党略と内輪もめにはうんざりだ。
一部に与党民主党と野党自民党の大連立を示唆する者がいる。森元首相がその1人であるが、同首相は小泉政権後いわば森院政を敷き、昨年8月の総選挙で自民党を大敗に導いた責任者の1人であり、権力回復が目的であることは明らかであり、国民の支持は得られそうにない。これに民主党の“おしゃべり恒三”こと渡辺恒三議員が賛意を示しているが、小沢・鳩山グループを排除し、民主党の7奉行と称される仙石、岡田、前原、枝野、野田各議員などを中心とする反小沢グループで菅政権を担ぎ、参議院選挙に大敗したのであるから、同議員も今回の民主党大敗の責任者の1人であり、権力維持のための保身策としか映らない。そもそも民主党は、衆議院で多数を占め、参議院でも第一党であるので、内部分裂した野党自民党と大連立を組むメリットはほとんどなさそうだ。民主党にとっては延命、自由党にとっては権力とポストがメリットとなろうが、一体誰を首班にするのか?
9月に民主党の代表選挙がある。参院選大敗を受けて誰を首班とするかを選ぶ重要な代表選挙となりそうだ。
菅政権は、参院選前に昨年8月の総選挙で示したマ二フェストを実質的に変質させた。消費税増税、政治主導から現実路線への転換、沖縄普天間の県内移設の容認などだ。普天間移設問題では外務・防衛官僚と安保族に完敗しているし、「政治と金」の問題では、検察当局は立件には至らず、鳩山、小沢両議員とも不起訴とせざるを得なかったが、再三に亘る強引な捜査と立証できなかった情報を流し、結果として‘疑わしい’との風評を作り出し、いわば世論操作に成功し、両者を退陣に追い込み、官僚の砦とも言える検察官僚の勝利に終わっている。官僚にとっても野党にとっても、政策論においても政権運営能力と実力においても民主党内で恐いのは小沢前代表であり、同議員のいない民主党は政権運営の経験のない集団に過ぎない。だからこそ保守勢力は小沢外しに余念がない。それに民主党の反小沢グループが乗っかった格好になっている。自信の無さと未熟さが故であろうか。そして参院選後に、政治主導の核と期待された国家戦略局の設置を断念し、官房長官の下への機能移転を表明した。参議院で法案が通らないというのが理由だが、官僚体制に早々に白旗を挙げた格好だ。仙石官房長官が担当大臣の時に、政策面でも法案実現面でも顕著な成果は無く、そもそもやる気がなかったのではないか。また明年度の予算編成では、1兆円超の特別枠を置いて重点配分をするとしているが、それ以外は省庁横並びのシーリーング(基本的に10%一律削減)方式で、旧来の自民党政権時代の方式に逆戻りしており、予算編成でも財務官僚など官僚に白旗をあげた格好だ。反小沢・鳩山グループを中心とする菅・仙石・枝野体制の乱である。
山で遭難したら一旦元に戻れと言われている。今民主党に言えることは、迷ったら、まずマニフェストに戻れということではなかろうか。一部の学者や有識者と称される者や前自民政権を擁護していたコメンテーター等が、‘マニフェストは空想論’などと分かったような批判をして“現実論”への誘惑を行っているが、政権交代は「旧来からの現実の転換」、「社会的価値や優先度の転換」を伴うものであり、それは国民が選択し、任期を有した国会に託されたものであるので、一部の既成社会を代表する有識者が決めつけられるものではない。昨年8月の衆院選で示された民意と今回の参院選で示された民意を分析し、国民が国会に何を伝えよとしているかを理解し、9月の代表選挙で適正な結論を出して欲しいものである。(07.10.)
(All Rights Reserved.)(不許無断引用)