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衆議院の比例代表制、政党助成金を廃止すべし!  (その1)(再掲)

2023-09-30 | Weblog
 衆議院の比例代表制、政党助成金を廃止すべし!  (その1)(再掲)
 2013年11月9日、みんなの党の江田前幹事長他13議員が同党を離党した。離党者は同党のほぼ半数近くになるが、みんなの党側としては、江田議員については除籍を検討することとし、他の13議員については政党別の得票率で決められる比例代表制での当選であるので、議員辞職求めることにしている。
 1.衆議院における比例代表制は廃止すべし
確かに比例代表制においては、有権者は政党名を記載し、各党の得票比率に基づいて各党の比例代表の候補者リストの順位従って当選者が決まるので、離党する以上議員辞職して議席を同党に返して欲しいという主張は理解できる。しかし有権者は比例代表の候補者リストを見ながら投票する者もいるので、各候補者はその限りにおいて有権者の支持を得ているとも言える。
比例代表で当選した議員の離党については、過去に与野党ともに事例があり、その度に同様の疑問が呈されている。しかし党には罷免の権限はないので、直近の選挙で有権者が判断すべきことになるのであろう。今回の場合、党の方針が変質して来ているとして半数近くが離党しているので、双方が有権者の判断を受けることになろう。
 比例代表制については、2012年12月の衆議院選挙においても政党名を記入することとなっていたが、小政党が乱立しどの党に投票して良いか分からなかったとの声が多く聞かれた。そもそも有権者のほぼ4割近くが無党派層であるので、無党派層に政党名を記入しろと言っても無理がある。一部には多党化し有権者の受け皿が増えたとの評もあったが、実際には票は知名度の高い既成政党に流れたようだ。
 共産党や公明党のように共産主義や創価学会というイデオロギーや信仰で明確な教義を持っている政党は別として、小政党は政権の受け皿にはならならず、政権政党と連立等しない限り政策実行能力は無く、その役割が疑問視されている。政治家がお山の大将になりたいという気持ちは分からなくはないが、政策実行能力という観点からは有権者の票はほとんどムダになる可能性がある。
 比例代表議員の最大の問題は、党に依存し、党の政策や公約に拘束されるため、個性がなく魅力に欠ける上、有権者にとっては直接候補者に投票をしていないので影の薄い数合わせ的な存在になっていることだ。そのような観点からは、比例代表議員は民衆の代表とは言い難い。
 このようなことから、衆議院においては比例代表制を廃止し、有権者が直接議員を選ぶ選挙区型にすることが望ましい。なお参議院については、任期が6年で解散がないことなどから、衆議院とは異なる選挙制度とした方が良さそうだ。例えば人口の少ない県でも2議席を確保し、人口比で都道府県に議席を配分する中選挙区制にするなど、各地域で広く国民の意見を代弁出来るような見識のある議員を選ぶようにするなどにすることである。
 2.議員の個性や魅力を失わせる政党助成金も廃止すべし      (その2に掲載)
 
 (2013.4.6.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
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日本学術会議会員拒否、国のあり方に重大な問題提起!(再掲)

2023-09-30 | Weblog
日本学術会議会員拒否、国のあり方に重大な問題提起!(再掲)
 政府は、日本学術会議により推薦された会員候補105名の内、6名を拒否した。同会議は首相が所管する独立の諮問機関で、210名(任期6年)で構成され、3年ごとに半数が改選される。今回は、8月に安倍首相(当時)に推薦されていたが、同首相辞任表明のため、管新首相に引き継がれたものである。
 日本学術会議としては、6名の任命拒否の理由説明と任命要請を内閣府の事務局に提出しており、前例のないこと、学問の自由を制約するなど各方面で問題視されている。
 1、 日本学術会議会員の任命権は首相にある
日本学術会議会は同会議法に基づき設置されており、会員は「同会議の推薦により、首相が任命」と規定されているので、任命権は首相にあり、任命拒否は可能である。因みに、会員の任期は6年、70歳までとなっており、罷免については特段の規定はない。
 管首相も、法律に基づき判断したとしている。また前例がないとの指摘に対しては、研究者の世界は閉鎖的でメンバーシップが既得権化する面があり、前例を踏襲しないこともあっても良いのではないか等とし、「学問の自由」には関係が無いとしている。
  確かに、日本学術会議の会員は特別職の国家公務員であり、手当も受けているので、政府の政策や立場に反対する者や野党支持をするなど政治信条の異なる者などを任命しないことはあり得るだろう。特に拒否された6名の内3名が国立大学の教授であり、もともと国家公務員であるので、政府の政策、立場に従うことは当然であり、国会その他の公の場や授業、或いは論文などにおいて政府の立場に反する立場を表明することは好ましくないと判断されるであろう。また拒否された6人とも、歴史や宗教、行政法、憲法など人文科学に属するグループであり、政府の政策や立場との関係が生じやすい。
  この点は、日本学術会議会に限らず、全ての政府の審議会、委員会の委員についても同様で、そもそも政府の政策や立場に反する者は委員に選ばれることはまず無く、また委員会などで反対の立場を述べる者は体良くお引き取り頂くことになり、再任されることはないようだ。

 2、日本学術会議のあり方が課題
  このような政府の解釈、対応となると、日本学術会議の今後のあり方自体が問題となり、岐路に立っていると言えよう。
 日本学術会議の会員は特別職の国家公務員であり、政府の政策や立場に従うことが期待される。これが常態化すると、いわば政府の御用学者の様相を呈することになる。またその下部グループとして連携会員が多数存在するが、将来会員となりたい者は御用化すること傾向となろう。
 (1)日本学術会議は独立性を保てるのか、御用機関化するのか
 こうなるとやはり「学問の自由」にも影響を与える。会員は、3部構成となっており、1部が人文科学、2部、3部が生命科学、理学及び工学を中心とする科学となっているが、人文科学に属する会員、連携会員が影響を受けやすい。まさに人文科学に属する6人だけが任命を拒否されている。「学問の自由」は、信条の自由や表現の自由と表裏の関係があるが、国会で野党推薦の証人として、例えば安保法制や共謀罪関係法について政府と異なる立場は取り得なくなり、会員、連携会員である限り、自由な研究は抑制されると共に、授業や論文なども影響を受けることになる。政府側は学問の自由に影響はないとしているが、当事者である教授が影響ありとしているので、影響があると考えるべきであろう。会員から外されれば「学問の自由」は確保されるので、影響はないとする考え方もあろうが、それでは著名で業績のある210名の会員と多数の連携会員は「学問の自由」は現実的には制約されることになる。これでは少なくても人文科学の分野では、自由な研究が出来なくなるであろう。
 また政府は研究助成として約4兆円の研究助成を行っているが、助成を受けるためには政府の政策や立場を忖度しなくてはならないので、自由な研究を助成し、研究を活性化させるという趣旨が損なわれ、また助成を検討する日本学術会議も自由な研究を促進する機関ではなく、変質する可能性がある。
 本来であれば、政府機関であるとしても、政府は、憲法で保障される信条の自由、表現の自由、学問の自由を尊重すべきであり、それを任命権や政府権限で制約することには疑問が残る。自民党は、現行憲法は日本になじまない点があるとして、憲法改正を「党是」としており、国家権限の強化や一定の自由の制限などを改正案に入れているようであるが、それを憲法解釈で実態を確保することは適正ではないであろう。
 日本学術会議が、独立性、学問の自由を重視するのか、政府機関として残るため人文科学を切り離すかなど、選択を迫られているようだ。
 (2)国家公務員である国立大学の教授の今後
 国家公務員と言えば、国立大学の教授等は国家公務員である。従って日本学術会議会員以上に、研究費の助成や研究内容、論文、授業内容、国会など公の場での発言には政府の政策、立場に反しないことが求められるのであろう。今回の問題が表面化したことにより、国立大教授等も国家公務員として一層の自覚が求められそうだ。
 しかし、そのようなことでは学問の自由や自由な研究や教育は望めそうにない。特に人文科学の分野がそうであり、日本は経済大国や技術大国等と言われ久しいが、経済学、経済政策等などの人文科学分野で日本人はノーベル賞を受賞していない。こんなことでは、いつまで経っても日本の学問は政府依存になり、御用学問の府となる恐れがある。政府の立場や政策に縛られ、或いは忖度しているようでは真の学問の自由はないのではなかろうか。
 もともと国立大学は行政分野での人材を確保することを大きな目的の1つとしているが、現在、これ程多数の国立大学が必要とも思われない。学生への無利子の奨学金や家賃を含む修学支援を充実させれば、国立大学はもはや必要とせず、より自由に学問を追究できるように私学化する時代ではなかろうか。それは私学と国立の教育費の負担衡平にもなろう。

 3、前例、既得権打破とはそういうことだったのか
 管首相は、就任に際し、「縦割り、既得権、前例主義の打破」を表明し改革を進める仕事師内閣とすることを打ち出した。保守党政権としては今までに無い斬新な姿勢として、一本調子の政府支出・国の借金の拡大と規制・既得権益擁護の屋上屋が重ねられ、いわば閉塞状況の日本において各方面で期待されていた。
 ところが今回の日本学術会議の会員任命拒否問題で、自民党参議院議員が、前例にとらわれない姿勢で、これが正に管首相の姿勢だと擁護する始末だ。
 安倍前首相は、党是である憲法改正を推進しようとしたが、与党内でも公明党が慎重な上、野党はじめ憲法学者などがその内容に懐疑的で実現することは出来なかった。国民の多くは改正に理解を示しているが、問題は改正内容だ。安倍前首相は、本格的な防衛活動が出来るように9条を改正する他、自民党の改正案に沿って政府権限の強化、一定の自由の制限などを望んでいた。その思想的背後には、任意団体の‘日本会議’があり、旧帝国憲法に沿った天皇権能の明確化、政府権限の強化、「教育勅語」の復活を含む一定の自由の制限などを支持し、そのような体制の下での「美しい日本」の建設を標榜しており、多くの保守系議員が賛同している。安倍前首相時代の森友学園問題は、「教育勅語」を教育に取り入れ、規律正しい教育を目指した森友学園に安倍夫妻が共鳴し、学園建設の促進課程で生じた問題である。恐らく、教育方針に賛同したことをきちんと国民に説明し、理解を求めていたらあのような公文書の書き換えなど、戦後最悪の行政失態には発展しなかったであろう。
 このような思想を支持する国民も少なくないが、国民平等に基づく民主主義、自由という基本的な価値に立脚した現行憲法を支持する国民層も多く、旧帝国憲法への回帰、専制主義的な政府、自由の制限などを懸念されている。従って憲法改正は内容、方向性の問題でなかなか進まないため、安倍政権は憲法解釈の変更、手直しで安保法制などの実現を図ったのであろう。それは1つの選択肢である。
 現在、日本学術会議任命拒否問題については、内閣委等で閉会中審査が行われ、野党を中心に内閣府事務方の追求が行われているが、首相は出席しておらず、事務方が木で鼻をくくるような一辺倒の答弁をしているが、一向に政策的意図が国民には分からない。事務方は、官邸首脳の主導で行われ、「それに従わなければ配転等を強いられる」ことになるので、必死に忖度し防戦している。官僚も人事の強権で震え上がっているから仕方ないのであろうが、大変気の毒である。森友学園問題や「桜を見る会」などで、文書を書き換えやデータを廃棄したのも、このような人事強権の下で起こったのであろう。官僚にここまでさせるのか。強権人事は行きすぎると、権力の乱用、恐怖政治化、専制政治化するおそれがある。が、一向に政策的意図が国民には分からない。事務方は、官邸首脳の主導で行われ、「それに従わなければ配転等を強いられる」ことになるので、必死に忖度し防戦している。官僚も人事の強権で震え上がっているから仕方ないのであろうが、大変気の毒である。森友学園問題や「桜を見る会」などで、文書を書き換えやデータを廃棄したのも、このような人事強権の下で起こったのであろう。官僚にここまでさせるのか。強権人事は行きすぎると、権力の乱用、恐怖政治化、専制政治化するおそれがある。
 しかし本来、官邸主導、政治主導で進める施策を、官僚に代理戦争させるのは筋違いであり、首相他が国会の論戦に応じ、きちんと対応すべきではなかろうか。
今日、日本は将来を左右する岐路にあり、どのような選択肢を選ぶか、国民が決めなくてはならない。(2020/10/08)
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江戸城最古の石垣発掘、内外の人々に公開すべし (再掲)

2023-09-30 | Weblog
江戸城最古の石垣発掘、内外の人々に公開すべし (再掲)
 江戸城趾の1 部である東御苑に開設されている三の丸尚蔵館が2019年から拡張工事を行っているところ、2020年11月に「現存する最古とみられる江戸城の石垣」が発掘された。石垣は、同館の建て替え工事実施に伴い、江戸城趾が所在する東京都千代田区が必要な発掘調査を行ったところ発見されたもので、2021年4月13日なって公表された。
 石垣は、地下約7メートルから7段程度積まれており、高さ約4メートル、幅約16メートルのもので、江戸時代初期の1610~1620年ごろに築かれた堀の石垣と推定とすいていされている。石組みは粗く石と石の間に河原石がそのまま使われているなど、荒い作りとなっている。
 千代田区は、関係当局とも協議の上、積み方が弱く、くずれる危険性もあることなどから埋め戻すこととしている。
 1、折角の貴重な歴史的遺跡、展示する方法を検討すべし
 東御苑尚蔵館は、皇室が国に寄贈した美術品などを展示するために1992年(平成4年)9月に建設されたもので、石垣はその拡張工事に伴い発見された。ここは、現在東御苑とよばれているが、江戸城趾の中心部の1角の「3の丸」があった付近である。東御苑のある一帯には、嘗て江戸城の天守閣があり、将軍の居所であり、接見等の場所である本丸のほか、大奥や二の丸、三の丸があったところである。本丸は江戸初期に火災で焼失し、それとは別の二の丸のあった場所に建設され、その後拡張と焼失を繰り返しながら区画を移動した。従って、東御苑として公開されている区画は、江戸城の中心部に当たり、焼失毎に埋め立て、別の区画を拡張するなどを繰り返しているので、地下に貴重な遺跡が残っている可能性が高い。
 宮内庁は、尚蔵館が手狭になったことから新館の建設を提案したが、文化庁(宮田亮平文化庁長官当時)が反対し、立て替え拡張されることになった。幸いなことに、工事前に遺跡の有無の調査が行われ、江戸城最古とみられる石垣が発見されたものだ。
 今回発掘された石垣は、江戸初期のもので当時の情景を残す数少ない遺跡であり、その後の城内の変化発展している様子を見て取ることができるので、適切な防護、安全措置を執り、公開されるべきであろう。折角の貴重な遺跡を埋め戻してしまえば、国民の目に触れることなく、歴史を埋めることになるので適切でない。
 逆に、江戸城にはなじみのない現代の建物である尚蔵館の拡張工事のために、江戸城の最古の石垣を埋め戻すというチグハグさ、歴史的遺跡への過小評価に違和感をおぼえる。
 2、江戸城趾東御苑などの再発掘の良い機会
 今回尚蔵館の拡張工事に際し、発掘調査が行われ、‘たまたま’石垣が見つかったことは幸いであったと言えよう。ということは、少なくても江戸城三の丸周辺では十分な発掘調査が行われていなかったことを物語っている。
 三の丸のある東御苑には、江戸城天守閣をはじめ、本丸や大奥、二の丸、三の丸など、1603年から1868年までの江戸幕府の中枢部分があった歴史的にも文化的にも非常に興味ある遺構である。現在は、天守閣の石垣や二の丸庭園の一部があるのみで、三の丸の尚蔵館など新たに建てられた建物を除き、更地の庭園となっている。公開はされているが、江戸城の面影は天守閣の石垣や二の丸庭園を除き何もない。265年続いた歴代将軍の生活の痕跡がない。江戸城は、内戦を避け英仏列強の介入を避けるため歴史的な無血開城が行われ、第2次世界大戦での米国による直接の爆撃が避けられ、大手門を失っただけであるので、明治維新には、お堀周辺の石垣や門などだけでなく、東御苑となった場所にも歴史的な建物が存在したはずである。
 本丸や大奥、二の丸、三の丸などの建物は、江戸初期から何回も火事に遭い、本丸、二の丸、三の丸へと移動しながら再建、拡張を繰り返し、使われてきたものである。従って、地上にあった建物等が倒壊されたとしても、地下には江戸時代に焼けた建物の一部や土台、礎石、及び生活用具類等の一部がが残っている可能性がある。
 今回、三の丸尚蔵館拡張工事のため、周辺の発掘調査が行われ、予期していなかった江戸城最古の石垣が「たまたま」発見されたことは、これまで三の丸を含め東御苑等の発掘が十分に行われていなかったことを示している。
 江戸城が無血開城された後、明治維新となり明治政府が江戸城の一部を残しで倒壊したが、担当太政官と写真師内田九一が江戸城内を写真撮影し、また内田九一は自らも当時の映像を残している。その写真師内田丸一については、「内田九一の江戸城新発見写真」 展覧会が2020年3月上旬にお茶の水シェイクスピア・ギャラリーで開催されたようだが、コロナウイルス騒ぎの真っ最中であったこともあり、一部の通信社が伝えているのみで余り話題にならなかったようだ。内田丸一は宮内省御用掛の写真師となったが、32歳の若さで亡くなったこともあり、江戸城の写真はほとんど世に出ることはなかった。
 江戸265年の歴史は、庶民文化や商業主義や家内工業的な匠の技術を含む経済・社会が急速に発展し、地方と江戸との各種の交流等を促進させ、良きにつけ悪しきにつけ、多くの分野で今日の日本、そして将来の日本のルーツの1つになっている。因みに、各藩の藩主に江戸詰めを求めた参勤交代は、謀反を起こさせないための制度とか各藩を疲弊させるためのものとかと批判されることが多いが、その面だけで無く、地方と江戸との交流促進や交通通信制度の基礎となった面がある。歴史研究においても江戸城趾の発掘が進めば、多くのことを学ぶことが出来、また内外の人たちの観光資源となることが期待される。
 3、両国の片隅に立つ「江戸博物館」
 両国にある国技館の裏手に「江戸博物館」がある。展示物等に目を見張る物は少なく、下町の庶民生活の様子は暗く狭苦しい。人影もまばらなことが多い。
 江戸城趾の広大な敷地の中に江戸を伝える博物館や展示場は1つもない。江戸の歴史が消されているような印象を受ける。明治以降の治世は第2次世界大戦後、現行憲法の制定をもって終わっている。もはや江戸の歴史を埋める必要はないのではないだろうか。江戸城趾は全国民の、そして恐らく世界の多くの観光客を引きつける歴史的遺跡となろう。(2021.5.14.)
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石油価格高騰、なぜ特別税率を停止しないのか? (再掲)

2023-09-30 | Weblog
 石油価格高騰、なぜ特別税率を停止しないのか? (再掲)
 <はじめに>2023年5月にコロナウイルスへの対応がインフルエンザ並となり、各種の補助金事業が真直され、同年6月よりガソリン高騰を緩和するための石油元売りへの補助金が徐々に削減され、9月には廃止になる方向にある。これにより7月よりのガソリン価格が高騰し始めており、広範な影響が予想されるので、対策が急務となっている。ロシアのウクライナ侵攻への対抗措置としてロシアからの天然ガス輸入を含む経済制裁措置からエネルギー価格が高騰した2021年の状況が再燃したと言える。
 現在政府自民党が石油元売り企業への補助金とするか検討中だが、2重にも3重にもなっている石油税の暫定税率を中止することを世論は主張し始めている。補助金はかなりの部分が元売り企業の利益となり、消費者への効果に還元せず目減りしていない。事実大手石油元売り3社の2022年4~6月期の決算は、売上高と最終利益が同期比で過去最高となっている!それが企業の内部留保となり、自民党への献金等となっている。補助金は選挙ビジネス化しており、政策目標の効果を減殺している。
 このような状況から、本稿を再掲する。(2023.8.6.補足)

 石油高騰により、レギュラーガソリンが170円/リッターに迫る中、政府(経産省)は、レギュラーガソリンが170円を超えた場合、卸売業者にリッター当たり5円の補助金を出す方針を明らかにしている。
 それにより少しでもガソリンが安くなれば多くの国民、運送業者、物流業者等にとって喜ばしい。しかし補助金分だけガソリン代が下がるとは限らない上、
補助金の財源は所詮国民の税金であるので、税を徴収して配るという施し政治、金権政治をまた行うことになる。所得960万円以下を対象にして、18才以下の子供に10万円給付という施し政治についても、その目的の不明朗さを含めて批判が多い。
 ガソリンには、消費税の他、いわゆるガソリン税が課されている。その1つが「特別税率」(道路財源確保のための旧暫定税率)で、ガソリン税の約半分の25.1円となっている。旧暫定税率は1970年代の高度成長期に、自動車の普及と共に国中で道路建設が行われていた時代の名残りで、「暫定」と言いながら2011年ころまで継続していたが、東日本大地震を契機に批判が高まり、民主党政権時代に一時廃止されたものの、福田(康)自民党政権で「特別税率」と看板を変えて復活された。財源確保のためでしかない。
「特別税率」については、トリガー条項があり、ガソリン価格が3カ月連続でリッター160円を超えた場合、上乗せ分25.1円の課税を停止することが出来る。
現在正にトリガー条項を適用すべき時期ではないだろうか。ところが松野官房長官は11月16日の記者会見で、財源確保の観点から否定的意見を表明した。
コロナ禍で経済が停滞する中で、一部野菜や小麦、牛肉などが値上がりし、カソリン代の高騰で多方面に亘り困っているのに、法律で決められていることを拒否する政府というのは一体どういう政府なのだろう。
もっとも日本の経済全体を見るべき日銀総裁が、ガソリンや一部価格の上昇の影響は、余り大きくないなどとしているのも違和感を覚える。
 明年夏の参議院選挙を前にして、補助金や給付金等の施し政治、金権政治を継続する空気が自・公政権内に強いことを受けてのことであろうが、何時までこんなことを続けているのだろうか。(2021.11.18.)
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‘皇居’を京都御所に戻すべきこれだけの理由!! (再掲)

2023-09-30 | Weblog
‘皇居’を京都御所に戻すべきこれだけの理由!! (再掲)
 2019年4月30日に平成天皇が退位、5月1日の新天皇が即位され、同年10月22日に新天皇の即位を内外に表明する「即位の礼」が実施される。
 新天皇のご即位をお祝いする。しかし戦後の新憲法の下でのあり方には違和感もある。即位の礼についても、詳細は明らかにされていないが、式典に使用される「高御座(たかみくら)」が保管されている京都御所で解体させたうえ東京に輸送された。それだけに掛かる費用が、総重量8トンの解体・輸送経費などで9億円と言われているが、平成天皇同様、新天皇の即位の礼が東京で行われ、江戸城址内にある‘皇居’に住まわれ続けるのであろうか。
 即位の礼は、伝統に基づき、明治天皇はもとより、大正天皇、昭和天皇も京都御所で行われている。天皇は、明治維新後、江戸幕府が無血開城した江戸城内に‘皇居’を新設し、京都御所からそこに移り住まわれている。それは徳川将軍派の再起を封じ込める意味と米欧列強の介入を抑止する上で必要であったと思われる。第2次世界大戦後も、昭和天皇は江戸城址内の皇居に留まった。これは、米国を中心とする連合軍が進駐し、皇居のある江戸城跡内に連合指令本部が置かれることを防ぐためにも止むを得ない措置であったと考えられる。
 昭和天皇崩御後、平成天皇はそれを継承したが、現在は米軍の進駐はもとより考えられず、また国内情勢は歴史上最も安定していると共に、憲法上の天皇の地位は国民に広く認識されているので、もはや天皇が江戸城址内の‘皇居’に留まっている必要はなくなっているのではないだろうか。即位の礼が東京で行われたのは、平成天皇が歴史上唯一の例外となっている。
 むしろ新憲法の下の新時代においては、伝統に沿って天皇は京都御所に復帰され、江戸城址は国民に開放すべきであり、その理由は次の通りである。
 1、歴史上最も平安な現在、天皇が江戸城址に留まる必要はなくなった
 明治維新となり天皇は京都御所から江戸城内に移り住んだが、上記の通り、明治維新直後や戦後直後と異なり、今日国内情勢は歴史上最も安定していると共に、憲法上の天皇の地位は国民に広く認識されているので、もはや天皇が江戸城址内の‘皇居’に陣取っている必要はなくなっていると言えよう。「帝国憲法」が廃止され新憲法となった居る今日でも、江戸城址内に宮内庁が占拠しているのも適切でない。
 新天皇は、歴史に則って京都御所に復帰することが望ましい。天皇が国民統合の象徴であることは認識されているので、京都におられても問題はない。それ以上に関西及び西日本の人々にとっては喜ばしく、誇りにもなることであろう。無論、京都御所には必要な改修等を行った上である。
 天皇のご公務については、憲法上国事行為として10項目掲載されているが、必要な時には東京等、必要な場所に赴くことは交通事情が飛躍的に向上している今日では問題ない。また東京に滞在し、或いは一定の期日東京での公務が必要な時は、赤坂の迎賓館(赤坂離宮)を所定の改築をし、そこで執務、宿泊されればよい。現在赤坂の迎賓館は、年数回しか使用されておらず、著しい無駄になっており、その活用を真剣に考える時期であろう。日本は、少子超高齢化の本格化を迎え、税負担人口が減少する一方、国民総所得の2倍に当たる1,000兆円を超える公的債務を抱え、これが年金支給額の実質削減と並んで国民の将来不安の大きな原因になっている。国家や地方公共団地が無駄な施設や土地を抱えている余裕はなく、無駄を無くしていくことが不可欠になっている。

 2、旧帝国憲法の下での’皇居’の存在は現行憲法の下では時代錯誤
 戦後日本においては、旧帝国憲法に代わり、新憲法が制定され、主権は国民にあり、いわば大政は国民に奉還されているので、国民の偉大な歴史的、文化的遺産である江戸城跡に‘皇居’を置いておく必要性はもはやなく、江戸城址を国民に奉
 3、日本や世界にとっての偉大な歴史遺産、江戸城址は国民に開放すべき
 江戸城を中心とする江戸の人口は、幕府が発足した17世紀初頭には15万人程度と言われているが、18世紀初頭には100万人を超えたと考えられている。
人口はロンドン(1801年約 86万人)、パリ(同約 54万人)と比較しても世界一の大都市であったと推定されている。文化的にも、参勤交代により地方の文化も持ち込まれ還することが望ましい。それ以上に明治維新は過去のものとなり、天皇専制は終わり新憲法になっても江戸城址を‘皇居’により封じ込めて置くことは不適当とも言える。‘皇居’、‘皇居’と言われ、そのような先入観があるようだが、江戸城址なのである。
 そのようにすることが、日本の歴史に沿うことになると共に、東西の文化的、社会的なバランスが回復し、東西のバランスある発展が望めるのではなかろうか。
、多様性があり、また版画や日本画、歌舞伎、相撲そして魚市場など、欧州でも評価される高い文化が華を開いた。
 その中心が江戸城であり、江戸文化は東京だけの歴史、文化遺産ではなく、日本の、そして世界の文化遺産と言えるので、それを再評価し、人々に開放し、可能な範囲で復元、保存して行くことが望まれる。江戸城址は世界有数の観光資源となるであろう。またそれに関連する城外の江戸時代の遺跡を加えると更に豊かな歴史文化遺産となろう。

 4、首都圏直下地震等の大規模災害等に備え、天皇の京都御所復帰が望ましい
 首都圏直下地震等の大規模災害の発生は現実のものとなりつつあり、各種の、緊急対策が検討されているが、それでも自然災害や何らかの不測の事態が想定の範囲を超える可能性も念頭に入れて置く必要があろう。そのような首都圏緊急事態への対応の一環として、伝統に則り天皇の居所を京都御所に戻しておくことが望ましい。そのような緊急事態の際、立法、行政、司法の政府機能が打撃を受けるが、象徴たる天皇をも巻き込むことを避けるため、皇居の京都御所復帰を真剣に検討すべきであろう。天皇が京都御所に復帰される場合の対応については、上記1.の通りであり、十分対応可能であると共に、江戸城址の国民への開放や赤坂御所の有効活用などの可能性が広がり、有益であろう。
 江戸城址が開放されれば、国民の憩いの場、歴史研究の場や格好の観光スポットとして活用できる以上に、大規模災害時の都民の避難場所となると共に、緊急時総合対策センターとして活用できるように整備して置けば、都心の360度対応可能な緊急センターとして活用も出来る。
東京への一極集中を是正し、地方都市の活性化を図るため、従来型の地方への助成金などでは限界的な効果しか期待できず、もっと抜本的なシステムの転換を図らなければ達成できないことは明らかだ。戦後の歴代政権の施策では地方の活性化を実現出来なかったばかりか、逆に東京への集中を招き、地方の人口減や限界集落の増加が加速していることからも明がだ。抜本的な転換が望まれる。
(2019.5.1.改定、同7.4.補足)
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地方再生は保守政党には出来ない!? (再掲)

2023-09-26 | Weblog
 地方再生は保守政党には出来ない!? (再掲)
 総選挙を前にして、自民党は選挙公約を公表したが、その中で‘地方創生’を一つの公約としている。
 しかし保守自民党には‘地方創生’は出来ないと見られている。事実これまで長期に亘る保守政権において地方が再生されたためしがない。逆に、若干の例外はあるが、地方に過疎村、限界集落、空き家集落が広がっている。
 多くの同党古参議員等は、地方への大型量販店、百貨店や大規模工場、企業の進出を内心嫌っている。これらの産業の進出により、労働組合が出来、野党勢力が進出し、保守地盤が侵食されることを懸念している。従って、地方の産業や市場の自由化や規制撤廃には本質的に消極的だ。
 それが保守政党、保守政党議員の本質だろう。伝統的な保守地盤を維持することが再選への道なのである。地域社会をなるべく閉鎖し、新規の参入を止める、それが保守の本質だ。その最も好例が、世襲議員だ。先祖からの地盤、看板等を受け継ぎ、それを維持し続けることが競争相手を抑え、再選を確実にすることになる。従って、言葉とは裏腹に、経済にしろ、農林業、漁業にしろ、大型の新規参入には内心消極的となっても不思議はない。
 しかしそのような閉鎖的な、保守的な姿勢が、地域の新陳代謝や活力を失わせている。新規の参入、若い世代の進出を阻み、活力が無くなった地域から、若い世代は出て行く。そして年長者だけが残って行く。それが現実に起こっている。
 現在、地方の市町村に老齢者だけが残り、多くの900前後の市町村が消えて行くことが予想されている。それは長い間政権の座についていた自民党の政策がそのような結果を招いたと言えそうだ。
 農業についても、農協の下で新規参入を拒み、同一地域のコメを一律に扱い、農家間の競争を排除する一方、コメへの需要が減少するたびに減反をさせ、減反した農家に補助金或いは所得補償を行って来た。それは生産しない者に所得を保証するということであり、そのような農業に若い働き手は必要もなく、残らない。それが農業の衰退と競争力の退化をもたらしたといえよう。来年もコメへの需要は低下すると予想されており、生産削減や減反が実施され、作物を作らないことに所得補償が行われる。自民党は農家にそれを約束して来た。しかし、それでまた農業は一層退化する。要するに、保守党の基盤に立って、農水省と農協が、税金を使って“俵”を買い上げ、議員が“票”を買っているようなものと映る。
 国民はコメを含む農産物の有り難みを知っており、このような農業政策に寛容であった。しかし働かないことに補償が与えられるような制度は持続不能であることも知っている。現状で農業は退化し、若い働き手も残る見通しもない以上、農業への参入規制を緩和し、大規模化、企業化を図るしかないのではないか。
 経済戦略特区についても、一方で全国一律に規制を維持しつつ、特定の都道府県を選択し、規制の一部解除を行うだけで、新たに地域選択という手続きを追加し、規制制度を更に複雑化させるだけだ。中央管理の複雑化、強化に繋がる。
 また自民党は、選挙公約の中で、‘地方創生’の具体的施策として、中小企業対策や人口減少対策のために‘バラ撒きにならないような’交付金や、商店街などの地域経済の活性化を図るため、‘地域商品券’の発行等を行うとしている。正にバラ撒きではないか。公明党が嘗て‘地域振興券’なるものを推奨したが、地方のシャッター街が次々と増えるのを防ぐことは出来なかったことは誰もが知っていることだ。このような中央から地域振興のための予算、税金のおこぼれを受け取っている限り、地方の自発的、自律的な振興を図れないばかりか、中央―地方の支配関係や制度を保守する結果となり、地方分権の拡大にもならないだろう。もっともそれが保守政党の狙いなのだろう。
 地方がそれに安住する限り、地方の再生はない。それは歴史が物語っている。
 (2014.12.1.)(All Rights Reserved.)
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マイナンバー、官庁のためのユアーナンバーにしてはならない! (追補版) (再掲)

2023-09-26 | Weblog
マイナンバー、官庁のためのユアーナンバーにしてはならない! (追補版) (再掲)
 <はじめに>2021年11月10日、新内閣発足に伴い、与党自民党と公明党がマイナンバー普及のため、総額2万円のポイントをそれぞれの段階で付与することで基本合意した。マイナンバーカード実施から6年近くになるが、登録率は未だに40%程度でしかない。
 その普及のため、2万円のポイント付与をこの時点で行うことは、この制度自体への国民の理解が進んでおらず、広範囲の個人情報の国家把握、相続税を含む徴税強化、情報流出と悪用、及び煩雑な操作・行政事務などが危惧されていることを如実に示している。行政当局は、その普及のため更に税金を使うのでは無く、税申告に関係する所得や個人財産を含む広範囲な個人情報を包含するマイナンバーは、制度設計上の誤りであり、国民に理解されていないことをただちに認め、適用範囲を社会福祉関係に限定し、国民の理解を得やすいよう、簡素化することが望ましい。このまま税金を使って奨励・普及することは2重の不効率であると共に、何時起こるかも分からない大災害の時の安否確認や救済・支援には中途半端にしか役だたないこととなるので、早急な対応が必要となっている。大災害は待ってはくれない。
 また各個人を証明するものは複数あった方が安全だ。マイナンバーに一元化すると、紛失や盗難、電波障害・停電、サイバーアッタックなどで使用不能になった際、存在を証明するものが無くなってしまう。
  IT事業はマイナカードを始め予算(税金)の草刈場となっているが、ITやAIは万能ではなく、人の能力を過小評価し、また個人情報の安全保障を損なう恐れがある。マイナカードに保険証や税番号から銀行口座などまで全てを吊すことは必要ない以上に、個人情報の安全保障を危うくする。政府給付金を出すとしても全て吊してある銀行口座に送金する必要は100%無い。米国は年金やコロナ給付金などに銀行小切手を郵送しており、ITと確立したアナログ制度をバランス良く活用している。IT時代、AI時代に従来のアナログの諸制度や人の能力を確保し、双方の良さをどう確保・共生させるかが今後の最大の課題である。IT独占、IT万能社会を構築することではない。このような視点から本稿を再掲する。(2023.7.25.追記)
 
 コロナ禍対策のため実施された一律10万円給付が、4月30日の第1次補正予算成立を受けて実施に移されたが、一律給付が最も早く配賦できるとの触れ込みにも拘わらず、日時を費やし、7月になってようやく見通しがついた。この配賦の遅れの原因の1つとしてマイナンバーの普及率の低さ(約16%)に加え、申請システム設計の複雑性などが指摘された。そのため総務省を中心として、銀行口座登録の義務化や個々人の医療関係情報の記載などによる適用分野の拡大などが検討されている。
  1、一律10万円給付の遅れはマイナンバー制自体の問題ではない
マイナンバーの普及率は、実施から4年半以上経過しているのに16%程度の低率に止まっている。従って、仮にマイナンバーの利用により迅速に給付できたとしても、全体の16%程度しかカバーできなかったはずである。残りの84%が問題だったということになるが、実際はマイナンバーも機能しなかったことが、マイナンバーに労力が集中され、それが煩雑で機能しなかったため、郵便等への対応が遅れた事による。マイナンバーが複雑で国民に受け入れられていないことが明るみに出たと言えよう。
 米国は、大統領選挙の年でも有り、日本に先立ち一律給付を実施したが、ソシアルセキュリテイ・ナンバーに基づき、「小切手」が直接各個人に送られている。ソシアルセキュリテイ・ナンバーは、米国民や米国で働く者が誰でも加入できるもので、これがないと将来的な年金と公的機関からの社会保障が得られないのでほとんどの人が所持している。
 恐らく、日本も郵送等により実施していたら、もう少し円滑であった可能性がある。行政が普及率の低いマイナンバーに固執したことが一律給付を阻害した形となった。行政が、マイナンバーの普及率が16%でしかないことへの認識不足とこれに固執するミスジャッジを認識することが必要だろう。

2、国民のためではないマイナンバー!
 政府(総務省)は、一律給付金の配賦のもたつきへの反省から、銀行口座記載の義務化や、医療診療関係情報の記載などの分野の拡大などを検討している。同時に普及促進のため、新加入者がキャッシュレス決済のカード等を登録するとポイント付与(マイナポイント)とテレビなどでの普及を行っている。
 政府の認識が大分ずれているのではないだろうか。実施後4年半以上経って普及率が停滞しているのは、国民側が、メリットを余り感じない一方、機微な個人情報の流出や国家管理の強化を恐れているからであろう。政府側がまずこの点を理解しない限り、改善、改革などと行ってみても、国民の財産把握を含めて国家管理し易くする所詮政府寄りのもので、システムが複雑化し、関係官庁には好都合であろうが、国民にとってはほとんどメリットとはならないものになってしまう恐れがある。関係官庁はまず、国民が不安、不要と感じている諸点をそぎ落とし、国民に不安がないようにすることが求められる。
 マイナンバーには既に、住所や本籍、家族構成、年金、健康保険や一部銀行口座・カード情報、所得、税金関連情報等が入っている。これだけでも外部に流失し、犯罪グループの手に入ったら、大きな被害を受ける可能性がある。マイナンバーは法律上加入「任意」としているが、税の申告に当たっては記入事項とされ、また銀行口座や証券投資の際には執拗にマイナンバーを執拗に照会してくるので、登録した人は納税申告関係や銀行口座、不動産を含む資産情報など、個人にとっては大変重要な情報が記録されることになる。
 現状でも、マイナンバーを日常的な支払いやポイント記録などに使用すると、流失や紛失の恐れが高くなるので、持ち歩くことは大変危険であろう。
 更に総務省は、決済サービスのためキャッシュレス使用を登録するとポイントが付くマイナポイントが9月1日より実施されている。そのためにテレビ広告やポイント付与のため、税金を使うということであり、筋が違う。国民がマイナンバーに利点を感じれば加入するだろう。総務省がポイント付与をしてまで普及を図っている事実こそが、国民がマイナンバーに利点を感じていない証拠である。いずれにしても納税関系では、マイナンバー保持者が亡くなると、銀行口座、証券、不動産等があっというまに凍結され、残された者は一円も自由にならず、銀行口座については少額の引き出しは可能になったが、諸費用捻出に苦労することにもなる。
 また医療・診療情報も入れることが検討されているが、医療・診療情報は非常にプライベートなもので、他人に見られるのは気が進まない。ましてや政治家や入社試験、管理職候補などについては、医療・診療情報が万一にでも外部に流出すると昇格・昇進等にとって致命傷になる恐れがある。

 3、現在のカードは官庁のためのユアーナンバーでしかない!
しかし現在のマイナンバーは、税金関係の役割が強く、投網のごとく税申告者を把握し、確実に徴税するために好都合になっている。5年に1度、国勢調査が実施されているが、国勢調査で記載された個人情報は国税庁、警察・公安には明らかにされず、徴税や犯罪調査には利用されないことになっている。国民の協力を得やすくするためだ。
現在のマイナンバーは、国税庁(税金)を含め全ての行政分野が対象で、対象で所得、年金・医療保険、銀行口座、証券、不動産などが全ての個人情報が記載される。国民には年金掛け金納付、健康保険料納付や納税義務があることは分かっているが、このように網羅的に資産状況が国家に把握され、義務の履行が管理、監視されることになると、国民の国家管理の色彩が強くなる。その上情報流失の危険性がある。少なくても国勢調査同様のものとし、国民の生命、安全を守ること中心とする個人の存在基盤と福祉分野に目的を絞り、抜本的に簡素化することが望ましい。
また情報管理のため各種の防護措置が講じられてはいるが、それは逆に操作を複雑にしている。1つ入力を間違えると前に進められなくなり、複数回誤入力すると凍結されてしまい、解除に時間と労力が掛り、悩まされることになる。結局は、利用者の手間や負担を増やし、行政側を楽にするシステムでしかない。その意味でも現在のマイナンバーは、行政のためのユアーナンバーでしかない。
関係官庁の担当官や専門家が集まり、官庁側に必要な個人情報を網羅し、その上に本人確認やその他のなりすまし排除のための防護措置を掛けるのだから、普通人には理解困難な緻密で複雑な制度設計、システムとなる。それでなくても各種申請書は複雑で、馴れている人でもなければ記載に手間取る。それがインターネットとなると、各種のチェック措置が加わるので、一般人には操作が複雑で難しくなる。書類によるアナログ世代にとってはなおさらのことだ。

4、国民を守るためのマイナンバー制度に限定すべし
 国民の年金・医療保険などの厚生福祉、緊急時の安全確認など、国民の基本的な権利と行政手続きの簡素化など、国民の福利に絞ったナンバーであれば、国民もこぞって加入し易くなろう。それを支えるのが国や地方自治体の業務であり、義務ともなる。またカバーする分野を絞ることにより、利用者側は普段持ち歩く必要も、情報流失の際も影響が限定され、犯罪グループへの露出度を少なく出来る。それでも米国のソシアルセキュリテイ・ナンバーよりも複雑だが、国民の福利にとって心強いものとなる。そのような改革が望まれる。

5、行政のIT化促進は行政の更なる肥大化、複雑化の恐れ
 IT化は、情報を多量に処理できるので、仕事をどんどん増やし、行政の肥大化を呼ぶ恐れが強く、万能ではない。
(1) IT化とともに、旧来事務の廃止、整理を行うことが不可欠であろう。
同時に、制度設計の簡素化、単純化に常に留意しなくてはならない。
 デジタル化は、一見効率的に見えるが、そのためには膨大な情報入力作業に加え、情報の迅速な更新が必要であり、必ずしも省力化には繋がらない。情報が常に更新されないと適正な情報把握も対応も難しい。国民年金については、ペーパーからデジタルに移行が図られた際に膨大な記録ミスやご記載があり、多くの年金が消えた事例や、年金情報の漏出や犯罪への利用なども見られている。
 行政当局は、情報の入力、更新を直接できないので、外部委託し、その業者は国内外の会社に再委託するなどが通例となっている。そのためには追加的な予算が必要となり、国民の負担となる。
(2)ITにより一律のサービスを確保出来るが、プログラムから少しでも外れるとエラーとなり、凍結してしまうなど、融通が利かず、非常に硬直的、事務的となる。
(3)保秘やデジタル攻撃に留意する必要がある。そのためにパスワード等を加えると、更にシステムが複雑になる。セキュリテイを強化すればするほど、煩雑となり、エラー、凍結なども多くなり、利用者の負担が大きくなる。
(4)公文書、公的文書類の保存・管理の問題が深刻だ。森友学園問題での公文書改ざんや自衛隊の日報問題、或いは「桜を見る会」などでは、コンピューターに蓄積された記録でさえ廃棄されたと報告された。そのようなことはほぼあり得ないが、問題が生じた時にすべての関連コンピューターを押さえ、調査できるようにするなど、文書管理が非常に難しくなるので注意が必要だろう。重要な文書は、アナログの紙で保存する必要もあろう。 

6 、ITの脆弱性
 更にIT化により電気と電波への依存が大きくなり、電気や電波という生活インフラがダウンするとITは動かなくなる。大規模災害が起こり、基礎的生活インフラが破壊されると、麻痺状態になることはこれまでも経験している。またシステム管理・維持と共に、サイバーテロ等への備えも必要となり、それに問題が生じるとITは作用しなくなる。どんなにセキュリテイを強化しても、それはいずれ誰かに破られる。これらのITの脆弱性を認識する必要がありそうだ。
 従ってITへの過度の依存は国民生活全般を麻痺させる可能性を高めることを十分認識する必要がある。
 マイナンバーカードの安全と普及のためには、機能を国民の本籍と住所に基づく福利厚生に限定し、機能を分散することが不可欠だ。
 (2020.9.1.&9.19.及び2022.2.15.加筆)
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江戸城最古の石垣発掘、内外の人々に公開すべし (再掲)

2023-09-26 | Weblog
江戸城最古の石垣発掘、内外の人々に公開すべし (再掲)
 江戸城趾の1 部である東御苑に開設されている三の丸尚蔵館が2019年から拡張工事を行っているところ、2020年11月に「現存する最古とみられる江戸城の石垣」が発掘された。石垣は、同館の建て替え工事実施に伴い、江戸城趾が所在する東京都千代田区が必要な発掘調査を行ったところ発見されたもので、2021年4月13日なって公表された。
 石垣は、地下約7メートルから7段程度積まれており、高さ約4メートル、幅約16メートルのもので、江戸時代初期の1610~1620年ごろに築かれた堀の石垣と推定とすいていされている。石組みは粗く石と石の間に河原石がそのまま使われているなど、荒い作りとなっている。
 千代田区は、関係当局とも協議の上、積み方が弱く、くずれる危険性もあることなどから埋め戻すこととしている。
 1、折角の貴重な歴史的遺跡、展示する方法を検討すべし
 東御苑尚蔵館は、皇室が国に寄贈した美術品などを展示するために1992年(平成4年)9月に建設されたもので、石垣はその拡張工事に伴い発見された。ここは、現在東御苑とよばれているが、江戸城趾の中心部の1角の「3の丸」があった付近である。東御苑のある一帯には、嘗て江戸城の天守閣があり、将軍の居所であり、接見等の場所である本丸のほか、大奥や二の丸、三の丸があったところである。本丸は江戸初期に火災で焼失し、それとは別の二の丸のあった場所に建設され、その後拡張と焼失を繰り返しながら区画を移動した。従って、東御苑として公開されている区画は、江戸城の中心部に当たり、焼失毎に埋め立て、別の区画を拡張するなどを繰り返しているので、地下に貴重な遺跡が残っている可能性が高い。
 宮内庁は、尚蔵館が手狭になったことから新館の建設を提案したが、文化庁(宮田亮平文化庁長官当時)が反対し、立て替え拡張されることになった。幸いなことに、工事前に遺跡の有無の調査が行われ、江戸城最古とみられる石垣が発見されたものだ。
 今回発掘された石垣は、江戸初期のもので当時の情景を残す数少ない遺跡であり、その後の城内の変化発展している様子を見て取ることができるので、適切な防護、安全措置を執り、公開されるべきであろう。折角の貴重な遺跡を埋め戻してしまえば、国民の目に触れることなく、歴史を埋めることになるので適切でない。
 逆に、江戸城にはなじみのない現代の建物である尚蔵館の拡張工事のために、江戸城の最古の石垣を埋め戻すというチグハグさ、歴史的遺跡への過小評価に違和感をおぼえる。
 2、江戸城趾東御苑などの再発掘の良い機会
 今回尚蔵館の拡張工事に際し、発掘調査が行われ、‘たまたま’石垣が見つかったことは幸いであったと言えよう。ということは、少なくても江戸城三の丸周辺では十分な発掘調査が行われていなかったことを物語っている。
 三の丸のある東御苑には、江戸城天守閣をはじめ、本丸や大奥、二の丸、三の丸など、1603年から1868年までの江戸幕府の中枢部分があった歴史的にも文化的にも非常に興味ある遺構である。現在は、天守閣の石垣や二の丸庭園の一部があるのみで、三の丸の尚蔵館など新たに建てられた建物を除き、更地の庭園となっている。公開はされているが、江戸城の面影は天守閣の石垣や二の丸庭園を除き何もない。265年続いた歴代将軍の生活の痕跡がない。江戸城は、内戦を避け英仏列強の介入を避けるため歴史的な無血開城が行われ、第2次世界大戦での米国による直接の爆撃が避けられ、大手門を失っただけであるので、明治維新には、お堀周辺の石垣や門などだけでなく、東御苑となった場所にも歴史的な建物が存在したはずである。
 本丸や大奥、二の丸、三の丸などの建物は、江戸初期から何回も火事に遭い、本丸、二の丸、三の丸へと移動しながら再建、拡張を繰り返し、使われてきたものである。従って、地上にあった建物等が倒壊されたとしても、地下には江戸時代に焼けた建物の一部や土台、礎石、及び生活用具類等の一部がが残っている可能性がある。
 今回、三の丸尚蔵館拡張工事のため、周辺の発掘調査が行われ、予期していなかった江戸城最古の石垣が「たまたま」発見されたことは、これまで三の丸を含め東御苑等の発掘が十分に行われていなかったことを示している。
 江戸城が無血開城された後、明治維新となり明治政府が江戸城の一部を残しで倒壊したが、担当太政官と写真師内田九一が江戸城内を写真撮影し、また内田九一は自らも当時の映像を残している。その写真師内田丸一については、「内田九一の江戸城新発見写真」 展覧会が2020年3月上旬にお茶の水シェイクスピア・ギャラリーで開催されたようだが、コロナウイルス騒ぎの真っ最中であったこともあり、一部の通信社が伝えているのみで余り話題にならなかったようだ。内田丸一は宮内省御用掛の写真師となったが、32歳の若さで亡くなったこともあり、江戸城の写真はほとんど世に出ることはなかった。
 江戸265年の歴史は、庶民文化や商業主義や家内工業的な匠の技術を含む経済・社会が急速に発展し、地方と江戸との各種の交流等を促進させ、良きにつけ悪しきにつけ、多くの分野で今日の日本、そして将来の日本のルーツの1つになっている。因みに、各藩の藩主に江戸詰めを求めた参勤交代は、謀反を起こさせないための制度とか各藩を疲弊させるためのものとかと批判されることが多いが、その面だけで無く、地方と江戸との交流促進や交通通信制度の基礎となった面がある。歴史研究においても江戸城趾の発掘が進めば、多くのことを学ぶことが出来、また内外の人たちの観光資源となることが期待される。
 3、両国の片隅に立つ「江戸博物館」
 両国にある国技館の裏手に「江戸博物館」がある。展示物等に目を見張る物は少なく、下町の庶民生活の様子は暗く狭苦しい。人影もまばらなことが多い。
 江戸城趾の広大な敷地の中に江戸を伝える博物館や展示場は1つもない。江戸の歴史が消されているような印象を受ける。明治以降の治世は第2次世界大戦後、現行憲法の制定をもって終わっている。もはや江戸の歴史を埋める必要はないのではないだろうか。江戸城趾は全国民の、そして恐らく世界の多くの観光客を引きつける歴史的遺跡となろう。(2021.5.14.)
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石油価格高騰、なぜ特別税率を停止しないのか? (再掲)

2023-09-26 | Weblog
 石油価格高騰、なぜ特別税率を停止しないのか? (再掲)
 <はじめに>2023年5月にコロナウイルスへの対応がインフルエンザ並となり、各種の補助金事業が真直され、同年6月よりガソリン高騰を緩和するための石油元売りへの補助金が徐々に削減され、9月には廃止になる方向にある。これにより7月よりのガソリン価格が高騰し始めており、広範な影響が予想されるので、対策が急務となっている。ロシアのウクライナ侵攻への対抗措置としてロシアからの天然ガス輸入を含む経済制裁措置からエネルギー価格が高騰した2021年の状況が再燃したと言える。
 現在政府自民党が石油元売り企業への補助金とするか検討中だが、2重にも3重にもなっている石油税の暫定税率を中止することを世論は主張し始めている。補助金はかなりの部分が元売り企業の利益となり、消費者への効果に還元せず目減りしていない。事実大手石油元売り3社の2022年4~6月期の決算は、売上高と最終利益が同期比で過去最高となっている!それが企業の内部留保となり、自民党への献金等となっている。補助金は選挙ビジネス化しており、政策目標の効果を減殺している。
 このような状況から、本稿を再掲する。(2023.8.6.補足)

 石油高騰により、レギュラーガソリンが170円/リッターに迫る中、政府(経産省)は、レギュラーガソリンが170円を超えた場合、卸売業者にリッター当たり5円の補助金を出す方針を明らかにしている。
 それにより少しでもガソリンが安くなれば多くの国民、運送業者、物流業者等にとって喜ばしい。しかし補助金分だけガソリン代が下がるとは限らない上、
補助金の財源は所詮国民の税金であるので、税を徴収して配るという施し政治、金権政治をまた行うことになる。所得960万円以下を対象にして、18才以下の子供に10万円給付という施し政治についても、その目的の不明朗さを含めて批判が多い。
 ガソリンには、消費税の他、いわゆるガソリン税が課されている。その1つが「特別税率」(道路財源確保のための旧暫定税率)で、ガソリン税の約半分の25.1円となっている。旧暫定税率は1970年代の高度成長期に、自動車の普及と共に国中で道路建設が行われていた時代の名残りで、「暫定」と言いながら2011年ころまで継続していたが、東日本大地震を契機に批判が高まり、民主党政権時代に一時廃止されたものの、福田(康)自民党政権で「特別税率」と看板を変えて復活された。財源確保のためでしかない。
「特別税率」については、トリガー条項があり、ガソリン価格が3カ月連続でリッター160円を超えた場合、上乗せ分25.1円の課税を停止することが出来る。
現在正にトリガー条項を適用すべき時期ではないだろうか。ところが松野官房長官は11月16日の記者会見で、財源確保の観点から否定的意見を表明した。
コロナ禍で経済が停滞する中で、一部野菜や小麦、牛肉などが値上がりし、カソリン代の高騰で多方面に亘り困っているのに、法律で決められていることを拒否する政府というのは一体どういう政府なのだろう。
もっとも日本の経済全体を見るべき日銀総裁が、ガソリンや一部価格の上昇の影響は、余り大きくないなどとしているのも違和感を覚える。
 明年夏の参議院選挙を前にして、補助金や給付金等の施し政治、金権政治を継続する空気が自・公政権内に強いことを受けてのことであろうが、何時までこんなことを続けているのだろうか。(2021.11.18.)
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米韓軍事同盟に日本は参加すべきではない (追補版)再掲

2023-09-24 | Weblog
米韓軍事同盟に日本は参加すべきではない (追補版)再掲
<まえがき>岸田首相は2023年5月7日訪韓し尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と会談した。2013年以降安倍政権の下で靖国神社参拝問題、従軍慰安婦問題、戦時における韓国人徴用工問題など歴史認識問題を巡り停滞していた日・韓関係が改善されることは歓迎されるところである。
 その中で、地域情勢、特に北朝鮮問題については、『日米同盟、韓米同盟、日韓・日韓米の安全保障協力により抑止力・対処力を強化することの重要性について一致した』とされ、5月19日より開催されるG7広島サミットの際にユン大統領を招き、日韓米首脳会合を開催することとなった旨公表されている。
 核、ミサイル開発・配備を含む北朝鮮問題については、朝鮮半島情の緊張を激化すると共に、核拡散を助長するものとして強く非難されるところであるが、北朝鮮への『抑止と対処』については、次の通り米韓両国と日本とは立場を異にしていることを認識すべきであろう。
(1)朝鮮戦争は現在休戦状態にあるだけで、南北両国は敵対関係にあり、朝鮮戦争が再発する可能性がある。日本は朝鮮戦争の当事国ではなく、また日本の安全保障・防衛上このような地域紛争に関与すべきではない。従って日・韓が北朝鮮との関係においた協力して『抑止、対処』すべきものではない。
(2)米国は当初より韓国の庇護者として朝鮮戦争の当事国であり、韓国と共に休戦協定の当事国である。また米国は韓国軍隊の指揮権を有しているので、米韓は軍事的に一体となって軍事同盟を形成している。日米同盟は日本の防衛に主眼を置いたもので、基本的に米韓軍事同盟とは性格を異にすると共に、朝鮮半島における紛争当事国である米韓との安全保障上の具体的な協力や同盟関係は、朝鮮戦争を引き寄せ、飛んで火に入る虫のような結果となるので、日本の安全を著しく損なうことになる。日本側外交・防衛当局にこの認識が欠けている。
 北朝鮮を巡っては日本としては米韓両国との情報交換を越えることは望ましくない。日本海における米韓・日の海空合同軍事演習も北を挑発する防衛当局の拙速行為であり望ましくない。
(3)北朝鮮の核開発、生産・配備は核拡散をもたらし、国際的な緊張を激化すのみであり非難される。しかし核不拡散の実態は、インド、パキスタン、イスラエル及び北朝鮮が核保有しており、既に核拡散防止条約(NPT)の枠外で拡散している現実がある。またNATO諸国の内、ドイツ、ベルギー、イタリア、オランダなどが米国と核共有(核シェアリング)していることが知られており、核NPTで禁止されている「非核兵器国による核兵器の獲得又は保有」に実態上違反しているとも言える。従って国際的な核不拡散レジームは後退しているのが現実である。更に5核兵器国(国連常任理事国)はNPT上核軍縮を行う義務があるが、実行されていない。
 その上5核兵器国は核の生産・保有・使用を禁止する核兵器禁止条約にも反対している。日本もこの条約に反対しているが、岸田首相が安倍政権下の外相だった時だ。広島で開催されるG7首脳会議では、この条約を支持する非核兵器諸国にどのような『橋渡し』が出来るのだろうか。

 なお、北朝鮮による日本人拉致問題については首脳会談で言及された趣だが、日本国民の生命と財産の安全ということであれば、ソウルに本部がある国際統一家庭連合(=統一教会)の活動が多くの日本国民の財産と安寧な生活を奪っていると共に、多額の金が韓国や北朝鮮などに送金されているので、統一教会の日本での非社会的な活動の是正に言及されていないことは、この問題を黙認した形となり問題が残る。この時期にソウルで開催された統一教会合同結婚式についても、日本から600人ほど男女が参加したと言われるが、既に農村部に5千人以上の日本人が韓国農村部で生活していると言われているので、邦人保護の観点からこれらの人々の人権、人道、そして尊厳が守られているかも問題であり、韓国側の善処を求めると共に、調査することが望ましい。(2023/05/09追記)
このような動きを踏まえ、その背景として下記評論を再掲する。

 韓国の康京和(カン ギョンファ)外交部長官は2017年10月30日、議会での外交関係の国政監査において、対北朝鮮防衛強化のため配備された米国の迎撃ミサイルTHAADを巡り悪化している中国との関係について、中韓首脳会談開催への期待を表明しつつ、次の3つの立場を明らかにした。
・THAADの追加配備は行わない。
・米国のミサイル防衛(MD)システムに参加しない。
・韓日米安保協力は軍事同盟に発展しない。
 これはTHAADの配備を巡り悪化している中韓関係の‘復元’、正常化を狙った発言と見られており、‘三不’政策とも言われている。
 これに対し中国外務省は、同日午後に報道官が康長官の発言に関連して、「韓国側のこうした3つの立場を重視する」とし、韓国側がこれを実際に行動に移すことを願う旨述べた。しかし中国側が、韓国外交部長官の発言を‘約束’との表現を用いたため、韓国内でも議論となっている。
 中国側は、韓国におけるTHAAD配備と共に、米韓日の軍事同盟化を強く警戒していると見られ、中国が10月の全人代で習体制を固めて以降、日本との関係を改善する姿勢になっているのはこれを阻止するためとも思われる。
 韓国が、米韓日の軍事同盟を望んでいなければそれに参加する必要はない。日本側がそのような意向を表明したこともない。もっとも軍事同盟については、一方の同盟国への北朝鮮を含む第三国からの攻撃は日本への攻撃とみなされ、参戦しなくてはならなくなるので、日本の現行憲法ではそのような軍事同盟に参加することは困難であろう。従って韓国側から言われるまでもない。
 そもそも朝鮮戦争は1953年の休戦協定により軍事対決こそ回避されているが、米韓両国と北朝鮮は現在でも敵対関係にあり、北の核、ミサイル開発は基本的に米韓への対抗措置として進められているものである。日本は、朝鮮戦争の当事国でもない。また第二次世界大戦後、北朝鮮とは平和条約を締結していないが、2002年9月に小泉首相(当時)と金正日総書記(当時)とで調印された日朝ピョンヤン宣言において、拉致家族問題の他、日朝国交正常化交渉の開始などが盛り込まれており、この宣言は自・公連立政権において破棄はされていない。
従って政策論としても、朝鮮半島有事の場合には米軍への必要な後方支援は行うことになろうが、日本及び日本国民の安全のためにも、米韓との軍事同盟に参加しないことが賢明な選択肢と言えよう。(2017.11.23. 2023.5.9追記)
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