シリーズ平成の本音 消費増税で既成3党、国民に負担を全面転嫁!
野田政権は、消費税増税について野党の自民・公明両党と合意に達し、衆議院採決への可能性が出てきた。
合意内容は、8%(2014年)、そして10%(15年)への消費税増税と低所得者への現金給付である。国民年金の7万円最低保障を含む今後の公的年金制度や後期高齢者医療制度などについては、新たに設置される社会保障改革国民会議に先送りする。
要するに微調整的措置は行うものの、社会保障と税の一体改革などではなく、現行の放漫な行・財政制度、既得権益等を容認し、消費税増税のための分離増税、浪費増税に野田政権と自民・公明の既成政党が合意したということに他ならない。その意味するところは深刻だ。
1、国民への負担の丸投げ、全面転嫁
破綻状態の国民年金と増え続ける生活保護など、膨らむ財政支出と1,000兆円を超える国の借金など、日本の財政は深刻な状態になっている。そのために消費増税を行って歳入を図る。一見説得力のある説明だ。
しかし歳出を削減し、歳出の健全化をはからないまま、歳入を図ることは、悪性潰瘍で胃に穴が開いているのにひたすら輸血をし続けるに等しい。或いは、膨らみ続けるメタボ状態を放置したまま栄養剤を注入し続けるに等しい。
まず政府当局が福祉分野を含む行政管理費を実質的に節減すると共に、議員自身が衆参両院の定員や議員歳費全体を大幅に削減するなど、歳出の節減を行わないまま増税を優先実施することは、放漫な政府支出の負担を国民に丸投げし、全面転嫁しているに過ぎない。
少子高齢化、税負担能力者の減少に対応した放漫財政の抜本的節減とニーズの変化に対応した予算の組替えなどが行われない前の消費増税は、ギリシャ化への前進でしかない。
2、行政当局、野党自民・公明と既得権益グループが高笑い
消費増税の採択で高笑いするのは行政当局、野党自民・公明と既得権益グループだ。これで、横になっていれば既存の放漫な行・財政制度、組織が維持され、従来通りの権益や待遇が継続出来る。
野党自民・公明両党にとっても、悲願だった消費増税を野田政権が断行してくれるのだからこんなに有難いことはない。これで民主党政権を批判し、解散、解散と叫んでいれば政権復帰が転がり込んで来るという計算なのであろう。しかし、国民年金の破綻や放漫な行・財政制度・組織を築き、1,000兆円を超える国の債務を重ねて来た上、制度改革の先送りを繰り返して来たのは戦後長期に政権を保持していた自民党と公明党だ。その責任は消費増税で隠れてしまうが、実質的な行・財政制度改革を行う責任が果たされているとは言えない。その姿勢も見られない。
3、変質した民主党菅・野田政権
国民から信託を得た民主党マニフェストに反し、10%の消費増税を提案する一方、歳費節減、予算の優先度の変更、組み替えなどの改革路線から現実路線に転換した菅政権を継承した野田政権は、消費税増税を先行させ、自民・公明両党と合意した。基本的に旧来制度を前提とする合意であり、民主党マニフェストから現実路線、保守路線への転換を図ったと言える。
従って菅前首相、野田首相始め、岡田副首相他前原、仙石、渡部(恒)各議員など、民主党の菅・野田グループは、2009年にマニフェストを掲げて国民より信託された民主党ではもはや無と言えよう。現状での消費増税が正しく、旧来制度に立脚した自民・公明両党との政策合意が正しいというのであれば、自らの政策、公約を明らかにし、それを掲げた別の政党として国民の信を問うべきであろう。
4、低所得者への現金給付は“福祉ただ乗り”や“過保護行政”を助長
野田政権と自・公両党がひたすら消費税増税にひた走っている。その中で低所得者に対する負担軽減と称して現金給付が検討されているが、国民全体としてそんな余裕はあるのだろうか。
低所得者層は、そもそも所得税や地方税が免除され、或いは最低限の税率しか課されておらず、既に負担は優遇されている。
生活保護者が210万人を越え、そのための予算が3兆7千万円強にも及び、更に増加することが予想されるなど、福祉予算が不足しているので消費税を10%に引き上げるというのに、低所得者は給付を受けるとは何のことだろう。苦しいのは、低所得者だけではない。皆同じだ。最低年金給付額の7万円への引き上げも先送りされることになったが、月額では平均的な生活保護月額の半分程度にしかならない。マニフェストに掲げられていながら、それさえも先送りされ、生活保護や低所得者への現金給付が優先される。
そもそも低所得者層は福祉制度からいろいろな恩恵を受けている一方、所得税や地方税については負担が軽くなっている上、消費増税でも給付、還付を受けるのでは、“福祉ただ乗り”や“過保護行政”の風潮を助長することになる。国民が負う社会的な責任も負わず、福祉の恩恵だけは受けるのでは一般国民にとっては不公平ではないだろうか。一般国民にもそんな余裕はない。
更に低所得者層に一定の給付をする場合、どのような制度、手続きにしても巨額の人件費や事務費が必要になり、その分は行政管理費に喰われてしまう。例えば、食料を含め日常生活費に月4万円掛かるとすると、3%分の増税で1,200円、5%分の増税で2,000円となるが、その分を給付や還付をするとなると全国で可なりの行政経費が掛かる。給付されても1,200円、2,000円程度の話で、費用対効果などの観点の他、福祉改善のための消費増税であるので、かなりの部分が戻って来ると共に社会的責任を自覚するとの観点からも、その程度は負担して頂いてもよいのではないだろうか。選挙を前にしたばら撒きの色彩が強い。
福祉ただ乗り風潮や過保護行政をこれ以上助長するのであれば、まず民意を問うべきであろう。(2012.06.18.)
(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
野田政権は、消費税増税について野党の自民・公明両党と合意に達し、衆議院採決への可能性が出てきた。
合意内容は、8%(2014年)、そして10%(15年)への消費税増税と低所得者への現金給付である。国民年金の7万円最低保障を含む今後の公的年金制度や後期高齢者医療制度などについては、新たに設置される社会保障改革国民会議に先送りする。
要するに微調整的措置は行うものの、社会保障と税の一体改革などではなく、現行の放漫な行・財政制度、既得権益等を容認し、消費税増税のための分離増税、浪費増税に野田政権と自民・公明の既成政党が合意したということに他ならない。その意味するところは深刻だ。
1、国民への負担の丸投げ、全面転嫁
破綻状態の国民年金と増え続ける生活保護など、膨らむ財政支出と1,000兆円を超える国の借金など、日本の財政は深刻な状態になっている。そのために消費増税を行って歳入を図る。一見説得力のある説明だ。
しかし歳出を削減し、歳出の健全化をはからないまま、歳入を図ることは、悪性潰瘍で胃に穴が開いているのにひたすら輸血をし続けるに等しい。或いは、膨らみ続けるメタボ状態を放置したまま栄養剤を注入し続けるに等しい。
まず政府当局が福祉分野を含む行政管理費を実質的に節減すると共に、議員自身が衆参両院の定員や議員歳費全体を大幅に削減するなど、歳出の節減を行わないまま増税を優先実施することは、放漫な政府支出の負担を国民に丸投げし、全面転嫁しているに過ぎない。
少子高齢化、税負担能力者の減少に対応した放漫財政の抜本的節減とニーズの変化に対応した予算の組替えなどが行われない前の消費増税は、ギリシャ化への前進でしかない。
2、行政当局、野党自民・公明と既得権益グループが高笑い
消費増税の採択で高笑いするのは行政当局、野党自民・公明と既得権益グループだ。これで、横になっていれば既存の放漫な行・財政制度、組織が維持され、従来通りの権益や待遇が継続出来る。
野党自民・公明両党にとっても、悲願だった消費増税を野田政権が断行してくれるのだからこんなに有難いことはない。これで民主党政権を批判し、解散、解散と叫んでいれば政権復帰が転がり込んで来るという計算なのであろう。しかし、国民年金の破綻や放漫な行・財政制度・組織を築き、1,000兆円を超える国の債務を重ねて来た上、制度改革の先送りを繰り返して来たのは戦後長期に政権を保持していた自民党と公明党だ。その責任は消費増税で隠れてしまうが、実質的な行・財政制度改革を行う責任が果たされているとは言えない。その姿勢も見られない。
3、変質した民主党菅・野田政権
国民から信託を得た民主党マニフェストに反し、10%の消費増税を提案する一方、歳費節減、予算の優先度の変更、組み替えなどの改革路線から現実路線に転換した菅政権を継承した野田政権は、消費税増税を先行させ、自民・公明両党と合意した。基本的に旧来制度を前提とする合意であり、民主党マニフェストから現実路線、保守路線への転換を図ったと言える。
従って菅前首相、野田首相始め、岡田副首相他前原、仙石、渡部(恒)各議員など、民主党の菅・野田グループは、2009年にマニフェストを掲げて国民より信託された民主党ではもはや無と言えよう。現状での消費増税が正しく、旧来制度に立脚した自民・公明両党との政策合意が正しいというのであれば、自らの政策、公約を明らかにし、それを掲げた別の政党として国民の信を問うべきであろう。
4、低所得者への現金給付は“福祉ただ乗り”や“過保護行政”を助長
野田政権と自・公両党がひたすら消費税増税にひた走っている。その中で低所得者に対する負担軽減と称して現金給付が検討されているが、国民全体としてそんな余裕はあるのだろうか。
低所得者層は、そもそも所得税や地方税が免除され、或いは最低限の税率しか課されておらず、既に負担は優遇されている。
生活保護者が210万人を越え、そのための予算が3兆7千万円強にも及び、更に増加することが予想されるなど、福祉予算が不足しているので消費税を10%に引き上げるというのに、低所得者は給付を受けるとは何のことだろう。苦しいのは、低所得者だけではない。皆同じだ。最低年金給付額の7万円への引き上げも先送りされることになったが、月額では平均的な生活保護月額の半分程度にしかならない。マニフェストに掲げられていながら、それさえも先送りされ、生活保護や低所得者への現金給付が優先される。
そもそも低所得者層は福祉制度からいろいろな恩恵を受けている一方、所得税や地方税については負担が軽くなっている上、消費増税でも給付、還付を受けるのでは、“福祉ただ乗り”や“過保護行政”の風潮を助長することになる。国民が負う社会的な責任も負わず、福祉の恩恵だけは受けるのでは一般国民にとっては不公平ではないだろうか。一般国民にもそんな余裕はない。
更に低所得者層に一定の給付をする場合、どのような制度、手続きにしても巨額の人件費や事務費が必要になり、その分は行政管理費に喰われてしまう。例えば、食料を含め日常生活費に月4万円掛かるとすると、3%分の増税で1,200円、5%分の増税で2,000円となるが、その分を給付や還付をするとなると全国で可なりの行政経費が掛かる。給付されても1,200円、2,000円程度の話で、費用対効果などの観点の他、福祉改善のための消費増税であるので、かなりの部分が戻って来ると共に社会的責任を自覚するとの観点からも、その程度は負担して頂いてもよいのではないだろうか。選挙を前にしたばら撒きの色彩が強い。
福祉ただ乗り風潮や過保護行政をこれ以上助長するのであれば、まず民意を問うべきであろう。(2012.06.18.)
(All Rights Reserved.)(不許無断引用)