シリーズ平成の本音 野田借り物改造内閣は身売り同然?
野田首相は、消費税増税問題で2度に亘り小沢同党元代表と会談し、関連法案への支持を求めたが、その前にすべきことがあり、支持できないとする同元代表の意向を受けて、野党自民・公明両党の支持を取り付けるべく、法案修正協議を党執行部に指示した。
その環境整備として、6月4日、同首相は、参議院で問責決議を受けている田中(直)防衛相、前田国交相の他、在京中国大使館の李一等書記官の工作活動で極秘文書を渡したとされる鹿野農水相、及び法律事務所から顧問料を受領しているとされる小川法相の4閣僚を更迭し、郵政・金融担当相の交代を含む内閣改造を行った。鹿野農水相及び小川法相も野党から問責を含む追及が予想されたもので、野党側に4閣僚を差し出し、野党側の要求に応じた格好だ。
この内閣改造は、消費税増税法案の国会採択に「政治生命」を掛ける野田政権にとって背水の陣とも言える布陣となるが、国民がどう判断するかによっては政局が流動化する可能性がある。
1、借り物の防衛相
防衛相として森本敏教授(拓大大学院)が任命され、民間人であるが、安全保障、防衛の専門家として広く知られており国会での野党の、就職試験のような質問にも答えられるであろう。
民間人が経済関係閣僚などに任命されることもあり、それ自体は問題ないが、安全保障、防衛という国家、国民を守る重要ポストだけに、野党側から民主党には人材が不在と批判されており、政権の信頼性、政権運営能力の上で打撃となろう。
最も問題は、森本新防衛相は、従来より自民党保守政権の防衛政策を一貫して支持して来ている安全保障・防衛専門家であり、麻生政権時代に防衛相補佐官にも指名されており、保守を代表する防衛専門家であることだ。沖縄の普天間基地移設問題では、辺野古への移設を「実現可能な唯一の選択肢」とする米国軍事当局の主張を擁護、促進する一方、鳩山政権の県外移設などの主張を批判し、政権を追い込んだ保守専門家の1人である。米国との集団的安全保障の擁護者でもある。
それを今回借りて来たということであろうが、安全保障政策は政権を与野党の間で余り開きがないことが望ましいとしても、野田政権の安全保障政策は野党自民党と同じなのだろうか。野党にすりより、消費税増税を実現するため身売りをしたようなもので、安全保障政策として何を考えているのか分らない。国民が政権を託したマニフェストの影も形もなくなって来ており、現在の政権は国民から託された民主党ではなくなっている。国民の信を問う時期が近付いて来ているということであろう。
2、官僚の最後の砦、検察当局への指揮権発動を放棄
小川法相が更迭されたことは、野党への先手として仕方が無いと思われる。しかし小沢議員事務所の政治資金記載問題に関連し、検察当局が虚偽の口述調書を作成した上、東京地裁に証拠として提出していたことについて、検察当局は担当検事を起訴しない意向であるのに対し、小川法相が法務大臣の指揮権発動を首相に求めていたことを辞任の際の記者会見で明らかにした。法相の指揮権発動は退けられ、小川法相が更迭されたことは、健全な政治活動、健全な民主主義の確保の上で深刻な影響が懸念される。
4月26日、東京地裁は小沢議員に無罪判決を言い渡した際、検察側が虚偽の口述調書を作成していた上、それを裁判所に提出してことに対し、「あってはならないこと」として強く叱責した。法の番人が「あってはならないこと」と言うことは、法令違反があったということに他ならない。検察当局が虚偽の口述調書を作成し、自らは法令違反を犯しながら、人の罪を追求するというようなことはもとより「あってはならない」。民主主義の根幹、正義の根幹に触れることであり、それを許して良いのであろうか。検察当局は、意図はなかったからなどとしているが、過失も法令違反は法令違反である。軽微な過失は酌量されて良いが、今回の場合は人を罪に陥れる結果となる重大な違反である。官僚の政策ミスや不作為による行政ミスなどもこれまで責任が問われることはなかった。今回もそれで終わるのだろうか。こんなことでは、公務員改革を含む制度改革などは困難だ。野党としても、本来であれば検察の不起訴方針を問題とすべきであろう。
また検察審査会は、陪審員制度が採用された今日、廃止されるべきであるが、もし意味があるとすれば、今回のような官僚の身内の法令違反へのケースの審査であろう。(2012.06.07.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
野田首相は、消費税増税問題で2度に亘り小沢同党元代表と会談し、関連法案への支持を求めたが、その前にすべきことがあり、支持できないとする同元代表の意向を受けて、野党自民・公明両党の支持を取り付けるべく、法案修正協議を党執行部に指示した。
その環境整備として、6月4日、同首相は、参議院で問責決議を受けている田中(直)防衛相、前田国交相の他、在京中国大使館の李一等書記官の工作活動で極秘文書を渡したとされる鹿野農水相、及び法律事務所から顧問料を受領しているとされる小川法相の4閣僚を更迭し、郵政・金融担当相の交代を含む内閣改造を行った。鹿野農水相及び小川法相も野党から問責を含む追及が予想されたもので、野党側に4閣僚を差し出し、野党側の要求に応じた格好だ。
この内閣改造は、消費税増税法案の国会採択に「政治生命」を掛ける野田政権にとって背水の陣とも言える布陣となるが、国民がどう判断するかによっては政局が流動化する可能性がある。
1、借り物の防衛相
防衛相として森本敏教授(拓大大学院)が任命され、民間人であるが、安全保障、防衛の専門家として広く知られており国会での野党の、就職試験のような質問にも答えられるであろう。
民間人が経済関係閣僚などに任命されることもあり、それ自体は問題ないが、安全保障、防衛という国家、国民を守る重要ポストだけに、野党側から民主党には人材が不在と批判されており、政権の信頼性、政権運営能力の上で打撃となろう。
最も問題は、森本新防衛相は、従来より自民党保守政権の防衛政策を一貫して支持して来ている安全保障・防衛専門家であり、麻生政権時代に防衛相補佐官にも指名されており、保守を代表する防衛専門家であることだ。沖縄の普天間基地移設問題では、辺野古への移設を「実現可能な唯一の選択肢」とする米国軍事当局の主張を擁護、促進する一方、鳩山政権の県外移設などの主張を批判し、政権を追い込んだ保守専門家の1人である。米国との集団的安全保障の擁護者でもある。
それを今回借りて来たということであろうが、安全保障政策は政権を与野党の間で余り開きがないことが望ましいとしても、野田政権の安全保障政策は野党自民党と同じなのだろうか。野党にすりより、消費税増税を実現するため身売りをしたようなもので、安全保障政策として何を考えているのか分らない。国民が政権を託したマニフェストの影も形もなくなって来ており、現在の政権は国民から託された民主党ではなくなっている。国民の信を問う時期が近付いて来ているということであろう。
2、官僚の最後の砦、検察当局への指揮権発動を放棄
小川法相が更迭されたことは、野党への先手として仕方が無いと思われる。しかし小沢議員事務所の政治資金記載問題に関連し、検察当局が虚偽の口述調書を作成した上、東京地裁に証拠として提出していたことについて、検察当局は担当検事を起訴しない意向であるのに対し、小川法相が法務大臣の指揮権発動を首相に求めていたことを辞任の際の記者会見で明らかにした。法相の指揮権発動は退けられ、小川法相が更迭されたことは、健全な政治活動、健全な民主主義の確保の上で深刻な影響が懸念される。
4月26日、東京地裁は小沢議員に無罪判決を言い渡した際、検察側が虚偽の口述調書を作成していた上、それを裁判所に提出してことに対し、「あってはならないこと」として強く叱責した。法の番人が「あってはならないこと」と言うことは、法令違反があったということに他ならない。検察当局が虚偽の口述調書を作成し、自らは法令違反を犯しながら、人の罪を追求するというようなことはもとより「あってはならない」。民主主義の根幹、正義の根幹に触れることであり、それを許して良いのであろうか。検察当局は、意図はなかったからなどとしているが、過失も法令違反は法令違反である。軽微な過失は酌量されて良いが、今回の場合は人を罪に陥れる結果となる重大な違反である。官僚の政策ミスや不作為による行政ミスなどもこれまで責任が問われることはなかった。今回もそれで終わるのだろうか。こんなことでは、公務員改革を含む制度改革などは困難だ。野党としても、本来であれば検察の不起訴方針を問題とすべきであろう。
また検察審査会は、陪審員制度が採用された今日、廃止されるべきであるが、もし意味があるとすれば、今回のような官僚の身内の法令違反へのケースの審査であろう。(2012.06.07.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)