経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

「ペロブスカイト」は 最後の命綱 (下)

2023-06-24 07:06:17 | エネルギー
◇ 小池さん、もっと上を向いて! = 東京都はペロブスカイト型太陽光発電の実証実験を始めた。都庁内に5台の装置を設置し、来年5月まで発電効率や費用対効果を調べる。だが、この際は実証実験の範囲をもっと拡大したらどうだろうか。たとえば建物のカベ、さらに高速道路などにもペロブスカイトを張り付ける。それには何社かのメーカーと契約しなければならないが、箇所を限ればそんなに費用はかからないだろう。

もともと東京都は、太陽光発電の普及に熱心だ。昨年12月には条例を改正し、大手の建設会社が手掛ける一戸建てを含む新築の建物には、リチウム型発電装置を設置するよう義務付けた。補正予算を組み、計301億円を補助する。30年までに100万㌔㍗の発電を目指すが、これは原発1基分、都内の家庭が消費する電力の約6%に当たる。

太陽光発電とは別の話だが、東京都はいま銀座の街を囲むように走る「東京高速道路KK線」を、遊歩道に造り替える計画を進めている。ほかにも高速道路の改修計画は数多い。こうした道路や学校・病院など、ペロブスカイトを張り付けられるところには、どんどん張って行く。その結果100万㌔㍗の発電が出来れば、東京都は原発2基を所有することになる。

もちろん送電線や大型蓄電池の整備など、国の関与も必要だ。それを東京都が先導して行けば、他の都市にもペロブスカイト発電は広がって行くだろう。成功すれば、日本の燃料輸入量を大幅に減らすことが出来、ペロブスカイトを輸出の主柱に据えることも出来る。リチウム型のように普及段階で、海外勢に負けたらもうアトがない。小池さん、目を大きく開けて上を向いて走ろう!

         ≪23日の日経平均 = 下げ -483.34円≫

         【今週の日経平均予想 = 1勝4敗】     
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「ペロブスカイト」は 最後の命綱 (上)

2023-06-23 08:04:58 | エネルギー
◇ これに負けたら、もうアトがない = このタイトルを見て理解できる読者は、かなりのエネルギー通だろう。名前が小難しいこともあって、まだ一般には浸透していない。しかし4月に日本で開催されたG7(主要7か国)気候・エネルギー・環境相会議で採択された共同声明には「ぺロブスカイト太陽電池などの革新的な技術の開発を促進する」と、わざわざ固有名詞が書き込まれた。世界でも、その覇権をめぐる競争が激化している。

いま普及している太陽光発電装置は、ほとんどがリチウム・イオン型。住宅の屋根に乗っている、あの形だ。これに対してぺロブスカイト太陽電池は、特殊な結晶構造を持つぺロブスカイトと呼ばれる物質を塗って乾かすだけ。きわめて薄く、重量はシリコン型の1割。自由に折り曲げられるので、建物の壁や車の屋根などにも簡単に張り付けられる。弱い光でも発電可能、製造コストもシリコン型の半分という、いいことずくめ。

しかも、このペロブスカイトは09年に、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明した。日本発の新製品である。さらにこの物質の主原料はヨウ素だが、これは日本が世界で2番目の生産国。条件も全く整っている。ところが不思議なことに、日本のメーカーはぺロブスカイトの実用化・普及にはあまり熱心でない。政府の姿勢もぺロブスカイトに集中しているとは思えない。中国やポーランドの企業が、すでに大量生産を始めているというのに。

嫌な思い出は、シリコン電池の大失敗。日本は00年代に開発・実用化で先行、世界シェアは50%を超えていた。それが普及で失敗、現在は中国製品が世界の80%を占めている。ぺロブスカイト電池は日本のエネルギー事情を大幅に改善、日本経済に革命を起こす可能性がきわめて強い。これを逃せば、もうアトがないと考えるべきではないか。

                           (続きは明日)

        ≪22日の日経平均 = 下げ -310.26円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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失速する 中国経済 (下)

2023-06-22 08:07:20 | 中国
◇ 不動産不況で財源難に陥った地方政府 = 財政面から景気刺激策を実施する場合、中国では中央政府の指示に従い地方政府が実行する。そのときの財源は、地方債の発行・銀行借り入れ・土地使用権の売却など。このうち地方債と銀行借り入れの合計はすでに100兆元、GDPの8割に達している。そこで頼りは土地使用権の売却。中国の土地はすべて国有地なので、タネは尽きない。ところが不動産不況の影響で、使用権の需要がガタ減りしてしまった。1-4月の収入は昨年の55%に減少している。

このため財政面からの景気対策は遅れがち、もっぱら金融緩和に頼っているのが現状だ。しかし景気回復の足取りは重く、失業者の増大が政治的にも社会的にも大きな問題となっている。5月の失業率は5.2%で4月と変わらなかったが、16-24歳の若年層に限ってみると、なんと20.8%で過去最悪の水準に。昨年の大学卒業生は、文系の就職率がわずか12.4%。大卒 即 失業者となっている。

ユーロ圏の景気後退入りで、輸出も伸び悩んだ。5月の輸出はドル建てで前年比7.5%の減少。これも景気の足を引っ張った。一方、国内景気の回復鈍化で、輸入も7.9%の減少。その分だけ、日本を含む各国の中国向け輸出が伸び悩んだことになる。また産油国が減産しているにもかかわらず、原油の国際価格が上がらない。その最大の原因は、中国の需要が減退していることにある。

このように中国経済が不調に陥った影響は、世界経済に波及し始めている。しかも中国ではいま、コロナの大規模な再流行が起きているという報道もある。いずれにしても政府が目標とする「ことし5%」のGDP成長率は、達成が困難だろう。習政権は7月中に、本格的な景気対策を打ち出すという情報もある。それが、どんな内容で、どんな効果を挙げるのか。この夏の見どころである。

        ≪21日の日経平均 = 上げ +186.23円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ≫  
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失速する 中国経済 (上)

2023-06-21 07:17:55 | 中国
◇ 回復力が弱すぎる = 中国経済の不調が目立ってきた。統計局が発表した5月の主要な経済指標をみると、鉱工業生産は前年比3.5%の増加。4月の5.6%増加から、大きく鈍化した。自動車は17.5%も増加したのに、鉄鋼やセメントなど建設関連の資材が減少している。また小売り売上高は12.7%の増加だったが、これも4月の18.4%増加から大きく縮小した。昨年5月はゼロ・コロナ政策の真っ最中で経済活動が抑制されていたことを考えると、この伸び率は異常に小さい。

固定資産投資額も、1-5月は前年比4.0%の増加。1-4月の4.7%増加に比べると鈍化した。政府がテコ入れするインフラ投資は7.5%の増加だったが、民間投資は0.1%の減少となった。特に不動産投資は7.2%の減少で、1-4月の6.2%減少よりも悪化している。たとえば1-5月の不動産販売面積は、前年比で0.9%減少した。主要都市での価格下落も目立ち始め、マンションなどの建設計画も消えている。

中国経済に占める不動産の比率は高く、GDPの3割に達するといわれる。その不動産業界が不況に陥ったため、鉄鋼やセメントなど建設資材が減産を余儀なくされた。また新築住宅の販売が増えないと、家具や電気などの耐久消費財も売れなくなる。その結果、広範な部門での失業者の増加も招いてしまう。不動産不況の影響は、きわめて大きい。

コロナの流行にもかかわらず、中国では不動産投資が活発化。一時はバブル状態になった。このため政府は融資を抑制するなどの対策を打ったが、その効果が出て不況になったとも言えないことはない。そこで政府は一転して不況対策に乗り出したが、いまのところは融資制限の解除や短期金利の引下げにとどまっている。次は財政対策という期待も高まっているが、それを阻害する大きな要因が、実は不動産不況にあるのだから、話はややこしい。

                        (続きは明日)

        ≪20日の日経平均 = 上げ +18.49円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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日銀は 緩和政策評価の公表を

2023-06-20 07:30:17 | 日銀
◇ 植田新総裁の公約ではなかったのか = 日銀は先週16日の政策決定会合で、大規模緩和政策の維持を決定した。植田新総裁になっても、いまのところは黒田時代と全く変わりがない。超緩和政策を継続した理由について、日銀は「賃上げの持続力を見極めるのに時間がかかる」「引き締めが遅れるリスクは、早すぎるリスクよりも小さい」と説明した。ただ植田総裁は記者会見で「政策の修正は、効果と副作用を比較して決める」とも言っている。

植田総裁は就任直後の記者会見でも「大規模緩和の効果と副作用を比較する形で評価したい」と語っていた。なにしろ黒田前総裁は「緩和政策が最良」の一点張り。副作用などは眼中になかった。それだけに植田総裁は経済学者だけあって、客観的に物事を評価しようとしていると注目された。だが就任から2か月半、いまだに政策評価の結果は公表されない。

一般の国民は、イールド・カーブがどうこうという難しい話は関心の外。だが円安で物価が高騰したり、銀行預金にほとんで利子が付かないなどのマイナス面は肌で感じている。また超低金利で借金をしている企業や住宅ローンを借りている個人が恩恵を受けていることは知っている。だが、こうしたプラス面とマイナス面のどちらが大きいのかは判らない。

日銀はすでに緩和政策に対する評価を終えているはずだ。それを公表しないのは、プラス面よりマイナス面の方が大きいという結果が出たからではないか。こんな憶測も流れ始めている。「賃上げの持続力を見極めるまで、政策の変更はない」などと頓珍漢なことは言わず、この際は現状での政策評価を発表すべきである。

        ≪19日の日経平均 = 下げ -335.66円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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