確かにオレ様は寒いトコとか、ちべたい所は嫌いである。
が、ソレを理由に母ちゃんが毎日の散歩を家の前一周で済ませるのには
納得がいかない。
で、家へ入ろうという母ちゃんに抵抗すると『ほら濡れるよ』とか『雪がたくさん降ってきたよ』とか
まるで散歩を早く切り上げる理由に自分の都合は全く関与していないようなことを言う。
どう思う?
ここ数日の言い訳は『もうちょっとしたら乾いた土でたくさん遊べる』だった。。
ウソじゃなかったよ。
乾いた土。
久しぶりにひょっこり顔を見せたお日様で真っ白になった道の先の
そのまたずっと先にあったココは
勾配の緩い山道がうねった、なかなかのお散歩道だった。
だけどよ。
杉っ葉がオレ様のこのラグジュアリーな服にどんどんくっついて
いや、耳にエクステしてるくらいは良かったんだけど
そのうち杉っ葉で右足と左足がくっついちまって
足を鎖で繋がれアフリカから連れて行かれる奴隷みたいで歩けやしない。
しかも、その杉っ葉を取ってくれる母ちゃんがどうにもガサツで
一緒にオレ様の毛をむしり取る。
痛ぇっ!って言うと、いっぱいあんだからケチケチ言うなとか言いやがる。
そーゆー問題じゃないっって・・・ワカラン女は困るねぇ。。
テケテケガウガウと歩いた先に、でかいランがあった。
ランを覗く母ちゃんの顔を見上げたら
『大丈夫かな~。。』って書いてあった。
見るとランの中ではデカイ黒い犬がドカドカと何匹も走りまわっている。
ははぁ、母ちゃんあの犬が怖いんだな。
大丈夫だぜ、母ちゃん!
オレ様が守ったるっ!!
要は、こんなん広いんだから近くに行かなければいいのさ。
そして、決して目を合わせてはいけない。
あんな黒くてでかいヤツ、熊みたいなもんだからねっ
けして見ちゃあいけねえ。
ほ~ら、平和だ。
オレ様は楽しい。
きっと、楽しい。 楽しいに違いない。
ひたすら低い視線で、うらうらウロウロ。
間違ってもチュウ太のように見境のないマネをしてはいけない。
目立ってはいけないのだ。
分ったか? 母ちゃん。
ありっ 母ちゃんがいないっっっ
母ちゃんドコ行った??
母ちゃんオレ様を置いて、迷子になっちまったのかー
母ちゃーん。
迷子に行かないでくれよぉー
ぽんちゃんが途方に暮れていた頃。
ズーズーしくもよそ様の手酌で水を飲むチュウ太のもとに
バーニーさんが訪れましてん。
でこれがまたえらい懐こいバーニーさんでしてん。
類は友を呼びますから
バーニーさんがどんどん増えます。
私の周りには四匹の・・・いえ四頭のバーニーさんとネズミ1匹。
黒と白と茶がウヨウヨグルグル。
ま、景色としては絶対ぽんちゃんが見たくない犬だかりでしたでしょうな。
ったって、私等とぽんちゃんの間の距離は、見積もってせいぜい10メートル。
ふだん食べ物に関して恐ろしいほどの嗅覚を発揮し
少しの物音も聞き逃さず警戒吠えをするぽんちゃんが
僅か10メートルの私を見失うとは
如何に意識してこの黒い一団を彼の中で抹殺していたか
想像するほどに笑えます。
その後、声をかけられて嬉しそうに走りよってきた彼。
この笑顔をもって、ぽんちゃんの中の
友好・社交・平静・忍耐 のメーターは振り切れぶっ飛んで
いつものガウガウ犬に戻ったのでした~
はい。 ドッグラン撤収!
あぁ、このきかん坊で甘えん坊で情けないダメ男よ。
キミは可愛い。